" 音 " という単語には
何かしら縁があったのかも知れない 。
思えば名前も「 音村 」な訳だし 、
昔から音楽は得意教科だった 。
成績は常にオ−ル5をキープしていた 。
付いたあだ名は「 ベ−ト−ヴェン 」.
最近はたまに「 ゴ−ストライタ− 」と
呼ばれることもあるが 、耳は聞こえる 。
まぁ それほど音楽が好きであり 、
音楽の分野に関しては他人からの評価も
篦棒に高かった 。
♡.✡*。・
>>2 .、 / 色々 。
/ >>23 / 匿名様
うわぁ、ほんとですね.
ごめんなさい (。´-ω-);
ご指摘ありがとうございます!、
『 え−..、 』
「 ダメかな? 」
『 私そんなに人様の歌うたえるほど自信ないし. 』
「 一生のお願い 」
『 それ何回でも使えるよね 』
「 うん 」
会話は終わった。
ああ、もうなんなんだ。
このあとも粘ってみたものの、
" そんなにうまくない " の一点張り。
小澤葉月は意外に頑固だった。
数十分経過した。
粘って甲斐があった、
小澤葉月は漸く頷いてくれた。
彼女は" しょうがないなぁ " と一言溢した。
>>25
下から4行目、
粘って×
粘った○
とりあえず僕の家に集合することになった。
歌詞とメロディ−はできていたので、
あとは小澤葉月が歌を覚えてくれれば
完成に近づく。
僕と葉月は家に向かった。
「 どうぞ、あがって 」
『 おじゃましま−す、 』
葉月はちょっと緊張したように言った。
「 親仕事だから別にそんな
堅苦しくしなくていいよ。」
小澤葉月はほっとしたような表情になった。
「 でさ、これなんだけど 」
『 お、聴いてみるね 』
小澤葉月はそういうと
僕がつくった音楽を聴いた。
途中、表情が少し綻んだ。
『 いい曲だった、 』
全部聴き終わったあと、
小澤葉月は一言だけそういった。
てか小並感ハンパないな。
「 でさ、これを明日までに覚えてくれない? 」
『 ん? 』
美声を発するとは思えない声で
葉月は聞き返した。
『 なんで? 』
「 見てこれ。 」
僕が見せたパソコンの画面。
『 なに..?
[ あの ようたん こと " ようげつ " が明日、夜8:00から ねこねこ動画で生配信! ]
『 ...え? 』
「 ネット上にこう書き込まれてるけど。だから、この曲覚えて。 」
『 ..なんで知ってるの?ていうか配信ってなに?..なんで!? 』
小澤葉月は慌てていた、
というかこんな状況なら慌てるだろう。
「 昨日聴いたんだ、ようげつの " 歌みた " 。 葉月にそっくりだった。 あと"葉月"って"よくげつ"って読めるでしょ? 」
『 うん。ようげつは私だけど...
でもそれとこれは別っていうか.. 』
「 僕が、歌ってほしくて。 」
『 はぁ? 』
「 だから、僕が書き込んだの。 」
『 は?なにそれ、いつ? 』
「 今さっき。 」
『 なんでそんなことしたのよ!.. 』
小澤葉月は大きな声を出して僕に詰め寄った。
「 君が、誰かの歌うたいたいって言ってた。 」
『 ... 』
「 葉月の動画の中に、一つだけ歌みたじゃないのがあって、見たら自己紹介動画みたいな感じで、最後に
" 次は誰かの歌をうたってみたい "
って言ってたから。 」
『 でもだからって.. 』
「 悪かったとは思ってるけど、
僕も歌ってほしいと思ってる。 」
『 分かったよ!私も歌いたいし!覚えますよ! 』
翌日。
「 よし、覚えた? 」
『 う、うん!頑張ってみる! 』
PM 7:59 。
" ようげつ " こと小澤葉月の
生配信予定時間まで残り1分。
画面には " 音の手品【ようげつが歌ってみた】(オリジナル) " とある。
『 うああぁ、緊張する。私がコピ−以外をみんなの前で歌うのはじめて... 』
「 似たようなもんじゃん.. ちなみに閲覧数8396人だよ。 」
『 えええ!?多くない!?そんな人の前で歌うの!? 』
「 ちょっと人数の少ない武道館で歌ってくれてると思えば... 」
『 はぁ... 』
「 じゃあいくよ 」
『 うん... 』
8:00。
画面には葉月の姿と沢山のコメント。
[ようたんキターーーーーー!]
[何歌うの??]
[あくしろよーー]
[楽しみ!!]
[ようげつ可愛い]
[早く早くー]
『 みなさんっ、こんばんは!ようたん こと ようげつです!今日はオリジナル曲、"音の手品" を歌わせて頂きます! 』
そこから曲紹介、ようげつのちょっとした雑談が入った。
『 では、"音の手品"です. 』
画面には先程同様、たくさんのコメント。
[キターーーー]
[ようたんかわいい!!!]
[楽しみ!!ついに歌う!]
[頑張れーーーーー(`・ω・´)]
僕は " 音の手品 " を流した。
静かで僕ら二人しかいない部屋に、
音楽が響きわたる。
『 音の手品 君に聴かせるよ 〜.. 』
相変わらずの美声に、
僕と画面の前の人々は驚く。
[ うまっ!!! ]
[ 安定の美声☆ ]
[ がんばれー ]
[ 歌詞もいいね!! ]
[ 最高!! ]
[ 声きれいすぎ!!うらやましい ]
( やっぱり、葉月凄いなあ。 )
僕は改めて想う。
才能が違うよね...
なんか自分が小さく想えるよ。
僕は想わず聞き入ってしまう。
『 音の手品、君に届け 〜.. 』
[ ようたんいいぞーー!!!!! ]
[ 神ーー ]
[ めっちゃ盛り上がる!うまい! ]
[ ようたん最高すぎる!! ]
『 ..ここまでご視聴ありがとうございましたっ!! 』
こうして葉月の生配信は終わった。
終わるなり、葉月は床に膝を付くように落ちた。
まあ無理もない、
人数的には武道館でライブやったんだから。
『 うああぁぁぁぁ...緊張した 』
葉月は息をふーっ、と吐いた。
「 お疲れ様、 」
登場人物整理。
音村一希 _( おとむら かずき. )
高校1年。男。
基本的に人とは接しないが、
趣味があう人とはすぐに打ち解ける。
少し強引なところがあったり、
人と違うところがある。
小沢葉月 _( おざわ はづき. )
高校一年。女。
普通に友達も多く、元気。
初対面の人には多少、人見知りすることも。
とても歌がうまく、
小学生の頃は合唱団に入っていた。
歌みたは中学二年生のころからやっていて、
徐々に人気を博す。
『 ん、こっちこそありがと。意外と楽しかった。 』
ぺこり、と軽くお辞儀をされる僕。
反射的に"僕こそ"とお辞儀を返してしまう。
なんか自分の曲を世にこういう形で披露出来たのもそうだけど、小澤葉月が歌ってくれて嬉しかった。
【 音の手品 】は僕の中でかけがえのないものになっていた。
青春ってこれか。みたいな。
よくわかんないけどそういう感じだ。
『 まあもう遅いし、とりあえず帰るね。
今日はありがと。 』
「 送ってこうか? 」
『 んーん。大丈夫。 』
玄関で一言 おじゃましました と言って
葉月は自宅に帰った。
それから1時間ほど経った。
ネット上では " ようげつ " の生配信について
Twitterなどで盛り上がっていた。
改めて人気だなと思い知らされる。
そんな人気な同級生に曲を提供出来たこと
奇跡に想う。
なんてことを考えていると、
僕の携帯が振動した。
【 差出人:小澤葉月
今日はありがとう。
意外に楽しくて、良い日になりました✌
前まではほんとはすごい嫌で、
お前が生配信って書き込んだって知ったとき
割りとガチで3発殴ろうかなって思った。👎💢
けどまぁ、悪くないね。
また、良かったら曲ください🎼
生配信も君が良いなら、またやろう。】
小澤葉月は意外に丁寧なやつだなって想う。
きっとこれも人気の理由なんだろう。
リアルに女子とのメールはしたことなかったので
すごい緊張するが、
僕はお礼のメールを返した。
『 おはよう 』
朝の昇降口で話しかけられた僕は、
家族以外からめったに言われないその挨拶に
とてもびっくりする。
話しかけた人物は、1年6組小澤葉月。
昨日生配信を共にした仲間(?)だ。
「 お、おはよう.. 」
『 なにビクビクしてんの? 』
朝から強気な彼女。
朝からちょっと気弱な僕。
家だと葉月に対しても普通なのに。
学校というものはなんて不思議なんだろう。
普段、僕が学校でぼっちなせいかな。
朝の挨拶を交わすと、小澤葉月は
さっさと階段を上っていった。
僕も後に続くように
階段を駆けていく。
教室につくと、僕はいつものように席につき、
本を読み始める。
まわりの女子はスマホ片手にきゃあきゃあと
騒いでいるが、僕は
友達やらなんやらと喋る必要もないし、
そもそも喋る意味も見出だせない。
初夏の風が心地よく、
指で紙を押さえてないと
すぐにページが捲られてしまう。
窓際の席はなんていいものなのだろうか。
「 席につけーーーー!授業始めるぞー! 」
理科の教師の声で生徒は慌てて席につく。
一時間目からの理科はとても面白味のないもの。
寝ろと言ってるようなもんだ。
初夏の風に揺られながら、
僕は眠りについた。
とっても面白いです!
40: 茅光 ◆iI :2016/02/21(日) 17:19 ID:woU
>>0039
ありがとうございます!
そういって貰えて嬉しいです(*´`)、
続き楽しみに待ってます!
42: 茅光 ◆iI :2016/02/23(火) 22:17 ID:woU
>>0041.
ありがとうございます!!、
ゆっくり更新ですが、
よろしくお願いします(*´-`)、
「 だから、大地の変動によって地面が・・・ 」
この眠気はいったいどこから来るのだろうか。
授業開始10分。
・・僕にとっては睡魔との格闘時間だ。
正直理科とかどうでもいい。
音楽やりたい。音楽やりたい。
そんなことを考えてたら、
僕のかばんから音がした。
周りには聞こえないくらいの、小さな音。
発信源がスマホだと気づき、
僕はポケットから、本来、授業中に触るはずがないそれを取り出した。
メールが来ている。
家族以外とほぼやりとりしたりしない僕だ。
家族は今、仕事だし、妹は学校だし、
と、なると。相手は・・
" 差出人:小澤葉月 件名:急いで来い "
世界一の美声の持ち主( 僕調べ )、小澤葉月だ。
件名だけからすると、完全に借金取りだな・・。
おそるおそるメールを開く。
『 あなた、今どうせ暇でしょ?
第二音楽室に集合☺ 10分以内ね!✨
遅れたら....👎💢 』
暇だけど暇じゃない。
そう言う人の気持ちがよくわかった。
世界にはまだまだ知らないことがあるなあ。
彼女は最初こんなんじゃなかった。
もっと可愛いげがあって、ふわふわしていた。
今はこんな緩いヤンキーみたいなメールを寄越すようになった。人間は変わる。