川面に、私の姿が映る。
石を投げ込むと、チャポンと、沈む。
私も、消えてしまいたい。
儚く、泡になった、人魚姫のように。
そして私は_________
遠い…!
とにかく、遠い…!
さすがに、水の中とはいえ、疲れた。
リューが、気遣うように、
「少し、休みましょう。」
大きく根を張った、大樹の下で休む。
この大樹、何千年前から、あったのかな?
水は、蒼く透き通っていて、キレイ…。
砂利が、道みたいに、なっている。
どこを見渡しても、同じような、風景だらけ。
こんな所、知らなかった。
昔、茜とこの池を見た。
「あれ………?」
なんで、泣いているのだろう。
茜なんか、嫌いなのに。
茜を考えているせいか、涙が止まらない。
「葵様……。」
リューが近付いてくる。
chu
私の頬に、キス、した。
ビックリして、涙が止まる。
「良かった……、葵様には、笑顔が似合いますよ。」
ドキッ!
そんな言葉。。
私の胸が、キュウッとなる。
今まで感じたことのない、暖かな感情がわきあがる。
なに、このキモチ。
休憩を終え、再び歩く。
「まだ〜?」
「もう少しですよ。」
もう少しって、どのくらいなのだろう。
「ねえ、リュー。」
「なんでしょうか?」
「朱火様には、朱火と言う名前があるじゃん?殿川の水神の名前って……?」
リューは、少しの間、悩んでいた。
もしかして、リューも知らないのかな?
「…葵様は、まだ知られぬ方が、良いと聞いています。」
えっ!
まだって…。
いったい、いつまでも待てば良いの!?
「俺が言えるのは、葵様が、真の宿命をさとった時と、しか。」
真の宿命…?
私に、何の宿命があるのだろう?
リューの態度からして、まだ知らないコトがあるのは、分かった。
カミノミコトバ
遥かなる遠き記憶に、いひ伝える巫女が現れん。
巫女と水神が結ばれん時、巫女は使命を全うし、魂よびの巫女とならん。
水神の真の名は、巫女が真の宿命を悟らん時。
巫女と眷属が結ばれる時、水神は荒れ狂わん。
水の国のすべてを破壊する、破壊神とならん。
破壊神を戻すのは、巫女の使命。
魂よびの巫女は、自らの魂を、天地におさめん。
カミノミコトバ
「朱火様のもとです。」
朱火様の祠は、真っ赤な炎をかたどっていた。
「殿川の花嫁と、この間の飛び魚か。」
声とともに、真っ赤な髪に、銀の瞳の少女が現れた。
「朱火様ですか?」
「我は朱火。そなたは、葵か。」
なんで知っているのかな?
朱火様は、フフフと笑って、
「挨拶の印に、これをやろう。」
きれいな、翡翠のブレスレットを、つけてくれた。
「あ、ありがとうございます!」
「それでは、気をつけて。」
朱火様は、そう言って、祠に入っていった。
「葵様、帰りましょう。」
リューの言葉にハッとして、
「うん。」
うなずいて、クルリと向きを変えた。
クラウは、水晶玉を苦い顔で、見つめた。
「リュー…。」
黒髪をパサリと、かきあげる。
「…様、どうしましょうか。」
水神は、不機嫌そうに、
「アイツとだけは、結ばせるな。」
しかし、葵を見る目は、優しかった。
「我が、今必要なのは、葵だけだ。」
クラウは、困った顔をする。
(…様も、葵様には、優しいのですね。)
「そろそろ帰ってくる。迎えにいこうではないか。」
クラウを手招き、玄関(?)に向かった。
__________________
私は、リューと一緒に、(当たり前だけど!)もとに戻ってきた。
「朱火の機嫌は、損ねなかったか?」
水神は、少し笑いながら、聞く。
「損ねなかったよ!」
うん、だってリューを飛び魚に変えなかったもん!
水神とクラウが、くつくつと笑う。
リューは、真っ赤になった。
水神は、少し笑う。
「翡翠のブレスレットとは。皮肉か?」
翡翠のブレスレットが、どうかしたの?
「ねぇ、もしかして、ひ「葵様!!」
切羽詰まった、リューの声。
振り返って、体の芯がヒヤリとする。
なんと、あの、化流が現れたのだ。
「………!ヒッ!」
涙で、視界がにじむ。
リューが、私を助けようと、手を伸ばす。
「…!あっ。」
小さな水流。
次の瞬間。
水神の冷たい体が、私を包み、
別の岩に座らせる。
えっ、今のって、助けてくれたの?
じっくりと、化流が近付いてくる。
そして、取り込まれる。
泥が、ゆっくりと私を包み出す。
今度は、負けない。
化流から、怨念のにおいがする。
気が遠くなりかけた。
でも……
リューを怪我させたくない。
その重いが、バネになった。
体の中が、熱くなる。
〈巫女よ、今目覚めの時。〉
涼やかな、女のような、男のような声が聞こえる。
〈真の宿命、悟らん。〉
新たな、私の何かが、入る。
ソレは、恐ろしく巧みに、私の中に侵入する。
突き上げてくる、ナニカ。
〈巫女のチカラを授けん。〉
熱いのが、なくなる。
目を開けると、私は私じゃない気がした。
×重いが
○思いが
カッ!
いつの間にか手にあった、刀剣を化流に斬り込む。
サアッとかき消える。
ふうっ。
「巫女に目覚めたか。」
水神の声に振り向く。
やっと戻った気がする。
「リュー!!」
思わず抱きつく。
「!?//」
リューの顔が、赤くなる。
「我はどうでも良いのか…(怒)」
水神の怒った声に、クスリと笑ってしまう。
笑いが、止まらない。
「ねぇ、水神…クス…子供、…クス…みたい…クス…だよ。」
クスクスでは、終わらない。
「アハハハハ…!」
水神は、不思議そうに、首を傾げる。
面白い以上に、愛しくなる。
不思議。
恋とは違うけど。
背伸びをして、頭をなでる。
この、子供のような、不思議な水神を…。
リューside
嫌だ。
葵様が、…様をなでているなんて。
「ッ!」
胸をくすぶる、よく分からない炎を消そうとしても、消えない。
このまま、奪って行きたい。
葵様は、無邪気な顔で、ずうっと、なでている。
嫉妬なのか、よくわからない。
これだけは言える。
俺は、葵様を愛している。
「…いる〜?ちょっくら、泊まらして〜。」
明るい声がする。
水神を撫でる手を止め、
「誰か呼んでるよ?」
水神は、ハッとして、玄関?に向かう。
「玉か。」
はあっと、ため息をついたのが分かる。
そこには、
薄紫の髪をおろしている、少女がいた。
大人しげな雰囲気。
私の視線に気づいて、
「あ〜、……の花嫁?うち、玉姫。」
玉姫は、くるくると喋る。
大分印象違うな〜。
「麗麻(レマ)の所、行くんやけど、ちょっくら、泊まらして〜。」
水神は、仕方なさそうに、
「良いが、我の家の中だけだ。」
家の中??
「この岩から、100qの所までだ。」
へえ。
結構広大なんだね。
と言うか。
私、一睡もしてない!
かと言って、眠くもない。
不思議〜。
玉姫が、ニコニコ笑う。
「じゃあね、葵!」
そう言って、ゆっくり向こうへ歩いていく。
水神は、笑みを漏らす。
「今宵は、我と過ごそう、葵。」
え。
一応、夜、あるんだ!?
「葵様、俺と過ごしませんか?」
え!?
リューが、そんな事言うとは、思いもしなかった。
水神が、ジト目で、私をみる。
「我とだろう、葵。」
リューは、何も言わなかったけど、その目は、私を求めていた。
ええっ!?
「じゃ、じゃあ…3人で過ごしましょう!」
とりあえず、コレで良いよね!?
とりあえず、割り当てられた部屋?に行く。
一応、ついたてもある。
「ふぅ。」
なにもドキドキする事が、なかったのに、胸がトクントクンする。
何??
頭の中に、リューの顔が浮かぶ。
体の芯が、熱くなる。(巫女としてでは、無く。)
もしかして……
コレが好きと言う感情なのかもしれない。
私、リューが好きだ。
けど、口にしたらいけない気がする。
言った瞬間、誰かが、壊れる。
昔からの掟が、私達の仲を阻む気がした。
水神の目の届かないところで、リューに告白したい。
水神が見ないところ。
風呂場だ!
「ね、リュー、ちょっといい?」
「葵様?」
首を傾げつつ、リューが来た。
「私ね、リューが好き!!」
言っちゃった。
果たしてリューの返事は!?
「お、俺も……////」
ウソッ!
両想い!?
嬉しいなあ。
「でも、水神に言ったらダメなやつでしょ?」
「……そうです。葵様は、…様の花嫁ですから。」
風呂場から戻る。
「ねぇ、水神。」
水神は、チラッと、私をみる。
「……………お風呂入っていい?」
「もちろんだ。」
ふぅー!
改めて、言えなくなる。
風呂場
脱ぐ前に、お風呂を見る。
広い!
とにかく広い!
はやく入ろ〜!
脱いで、タオルを持って入る。
まず、体を洗おう。
石鹸は?
石鹸の代わりに、
『体洗う用』
と書かれた、ビンを開ける。
中には、ジェリービーンズみたいな、粒があった。
色は、赤。
えっと、使用方法は。
『タルの中に、お湯と商品を入れる。少し待つと、泡立つ。体につけてから、お湯をかけても良い。』
なんかすごそう!
タルに、ジェリービーンズみたいな赤色の粒を入れ、お湯をかける。
わあっ!
フワッとした、泡ができる。
タルから取り出す。
泡からは、オレンジのような、甘酸っぱい香りがする。
だけど、ローズみたいな香りもする。
洗って、流すと、もとからコンプレックスだった、ブツブツが消えた。
代わりに、すべすべ。
ひゃ〜!
うれしい!
シャンプーも、ジェリービーンズみたいな、薄紫の粒があった。
タルで作り、頭に乗せる。
気持ちいい!
こっちは、爽やかな香りがする。
流したら、さらに気持ちいい。
湯船にはいる。
あったかい。
じんわりとしたあたたかさに、眠くなる。
寝ちゃダメ!
この後、リューと水神と過ごすんだから!
茜&結菜side(人間界)
走っても、走っても、お姉ちゃんの姿が見えない。
「お姉ちゃん……!!」
「金坂!!」
誰かと、ハモった。
振り返ると。
「あ……!!お姉ちゃんをいじめてた、結菜さん!?」
「もしかして、金坂の妹?」
やっぱり、お姉ちゃんを捜してたんだ。
「お姉ちゃんをいじめるために、捜してるの??そんなのだったら、捜してあげない方が、お姉ちゃんのタメなんだよ。」
結菜さんは、ゆっくりとくずおれた。
「違う。金坂がいなくなって、罪の重さに気付いたんだ。」
嘘っぽい。
あがって、風呂場に行く。
体を拭き、衣をまとう。
下衣は、白色。
上衣は、淡い朱色に、クリーム色の花が、縫われている。
まとうと、ふんわりとした、柔らかさが私を包む。
湯上がりの温かさが、体のすみずみまで、届く。
髪は、まとめなくて良いよね。
確認し、風呂場を出た。
「ハアー、気持ちよかった!」
「そうかのぉ……!////」
水神と、リューの顔が、赤くなる。
「大丈夫、熱あるの?」
リューと水神の顔をまじまじと見つめる。
ぽわんぽわん
謎の発光体??が、現れた。
シューッ!
「ウワッ!?」
発光体??は、煙を出して。
巫女になった。
『私は、瀬蘭。葵の先代の大いなる巫女。』
瀬蘭さんは、ニコニコッと、私をみる。
『さすが、私が見こんだだけありますね。』
へっ!?
『今日から私も、葵と過ごしとうございます!』
こうして、水神と巫女と、眷属2人と、人間の私の謎?生活が始まった。
「瀬蘭さんは、何歳で嫁いだ?んですか?」
瀬蘭さんは、ふわふわ笑う。
『17です!』
私より、3歳上!?
『これから、葵に、金坂家と、殿川の水神の関係を…。』
気になるなぁー!!
*とある所*
「恋亜様!」
執事らしき老人が、恋亜を捜す。
恋亜__ウサギの耳を持つ、茶髪の少女は、仕方なく出る。
「もう!…様の所に、行くのです!リューにも会いたいし。やっぱり、私は、クラウが好きだなー!」
執事は、恋亜を引き止める。
「おやめください!」
恋亜は、うざったそうな顔をして、
「花嫁様と友達になりたいの!良いでしょう、いってきます!」
「恋亜様!」
執事の声に、耳を貸さず、恋亜は出発した。
金坂と水神の関係(殿川)
これは、私(葵)が、簡単にまとめたよ!
昔、昔。
ある時、イケの水がかれてしまった。
困った人々は、金坂家の娘を花嫁と言う名目で、生贄にしてしまった。
生贄を出した次の日から、雨やイケの水が、増えていく。
人々は、おおいに喜んだ。
この(黒?)歴史がもとになり、金坂家では、時に虐待する親が出、子が、殿川に飛び込むと、いうことになった。
若干、嫌だよね。
ホントに嫌だったのに、こっちでは、予知されてたなんてね。
瀬蘭さんは、ニコリと笑う。
『葵、湯殿に行きましょう!』
ええっ!?
さっき行ったのに!?
『はやく。』
仕方ないな。
瀬蘭さんは、巫女の服を脱ぐ。
めっちゃ、スタイル良いなぁ。
これ、現代だったら、モテるのに。
『葵は、湯船に浸かってたらどうでしょう?』
「そうだね。」
瀬蘭さんが体を洗ってる間、湯船に浸かる事にした。
カポーン
桶の音。
湯煙越しに、瀬蘭さんの姿が見える。
あったかい。
じんわりしたあたたかさに、のぼせそう。
そろそろあがろうかな。
湯船から足を延ばし、立ち、歩き出したら。
ツルンッ!
転ぶ!
ギュウッと目をつぶると。
リリカは、やっぱり、小説書くの上手!頑張れ!応援してるね!小説書く同士お互い頑張ろう!
31:リリカ@恋歌◆JA:2017/03/27(月) 20:06 みかぜありがとう〜〜〜!
みかぜの小説も、楽しみだよ★
ありがとー!私もリリカの小説楽しみにしてるね!
33:リリカ@恋歌◆JA:2017/03/27(月) 20:34 楽しんで読んでもらえるよう、がんばるね!
小説
叩きつけられる……!!
「シチュリ…アク」
瀬蘭さんの声がした。
と‥
フワッ!
浮いた!?
浮いた私の体は、空中で体制を整え、床に降り立つ。
ふと振り向くと。
瀬蘭さんは、肩で息をしながら、倒れ込むように湯船に沈む。
「瀬蘭さん!溺れますよ!?」
「久しぶりにチカラを使ったので、疲れたのです。」
久しぶりなんだ。
さすが巫女だね。
瀬蘭さんを背負いながら、湯部屋を出る。
のぼせるぐらい、浸かってたせいか、冷たい。
風邪ひかないうちに、服を着よう。
帯をしめながら、瀬蘭さんを見る。
瀬蘭さんは、また何か呪文を唱える。
真っ白な光に、瀬蘭さんが包まれる。
目を開けると、巫女服をまとった瀬蘭さんがいた。
『葵、行きましょう。そろそろ、…と、リューが心配する頃です。』
心配性なんだ?
瀬蘭さんは、私をギューッと抱き締める。
『葵を譲りたくありません!』
ええっ!?
部屋の角のほうから、殺意を感じる。
「瀬蘭、我が葵を譲るわけなかろう?(怒)」
「……瀬蘭様。(怒)」
振り返ると、リューと水神がいた。
「まあまあ、4人で過ごしましょう!」
とりなしながら、内心ホッとしていた。
女子1人じゃないからね!
瀬蘭さんは、ニッコリ(黒笑い)笑う。
『葵は、あなた達に譲りませんよ?』
水神とリューは、
「めんどくさいのぉ。」
「仕方ないですね。」
瀬蘭さんは、私の肩をつかむ。
『葵、女子トークいたしましょう?』
水神とリューは、ヒソヒソと、
「瀬蘭は、女子なのか?」
「俺も疑問です。」
2人とも、瀬蘭さんに失礼だよ!
襖を開けて、(なんと!和風の部屋があったの!)中に入る。
『此処なら、聞かれませんね。』
私は、着物の裾を整えながら、座る。
『葵には、好きな者がおりますか?』
真面目な顔で、瀬蘭さんは私の頬に触れる。
ぶっちゃけて良いのかな?
……ダメかも。
私が、リューと両想いなことも、瀬蘭さんには、言ったら水神にバレる。
「私は‥…」
「私は‥…」
ピインッと張りつめた空気。
どこか頼りなげに、私の声が響く。
ドンッ!
ドアが開く。
そこには、水神とリューがいた。
「恋亜様がきました!葵様、来てくれませんか??」
『ちょっ……!』
「瀬蘭は、我と。」
水神は、瀬蘭さんと私の間に入る。
リューが私の手を取る。
「早く行きますよ!」
わわわ…!
顔近いよっ!
玄関?に行くと。
ウサギの耳を持つ、少女がいた。
「私、緑川の水神の娘、恋亜で〜す!葵、あっそぼ!」
恋亜ちゃん、かわいい!
妹の茜と違うよ!
*prologue*(新章の)
遠くにある、リューへの恋心。
毎日、毎日、恋い焦がれていく。
伝えられたら良いなあ。
そう、伝えられたら。
水神にバレたらいけない、恋。
私は、花嫁だから。
いつか、ハッキリさせたい。
この恋が、かなう日を。
新章 ヒミツの恋
恋亜ちゃんは、可愛いし、ワガママじゃないし、茜の百倍いい子!
「恋亜ちゃんは、今日どうするの?」
「もちろん、泊まるのよぉ。」
ああ、可愛すぎる!!
『葵……。』
わっ!瀬蘭さん!?
瀬蘭さんの周りから、ブラックオーラがある。
こ、怖いッ!
リューの顔も、こわばってる。
「葵様、恋亜様を可愛がりすぎですよ。」
そんなぁ。
でもでも、可愛いよぉ!
水神も、呆れたように、
「葵、とりあえず恋亜から離れるのだ。」
ええっ!?
仕方なく、離れる。
「ヤダ!葵と離れたくない!!」
恋亜ちゃんが、私の腰に腕を回す。
アハハ、くすぐったいよ!
瀬蘭さんが、ベリッと、恋亜ちゃんと私を引き剥がす。
あ〜あ、また後でかぁ。
って、もう朝!?
一晩寝なくても、眠くない。
此処って、やっぱ不思議だぁ。
おなかも空いてない。
不思議。
恋亜ちゃんが、すぐ駆け寄ってくる。
「葵大好き〜!!」
わわわわ……!!
メッチャうれしいよぉ!
ズイッと、瀬蘭さんが来る。
ものすごい殺気を放ちながら。
『葵〜、恋亜〜?(怒)』
怖い怖いッ!
瀬蘭さんを怒らせたら、メッチャ怖いのは、分かる。
嫌にでもね。
恋亜ちゃんは、瀬蘭さんを睨んだ。
「イヤ!…なら、勝負しよーよ?勝った人が、葵を独り占めできるって事でね。」
……………え?
水神と、瀬蘭さんとリューの目が、光った。
「「「のった!(のりました!)」」」
どええ!?
や、やだ。
リューが、不意に、私の耳に囁く。
「必ず勝ちますから…。」
ドッキュン!
カッコよすぎだよ///
*とある所*
「葵……。必ず、僕の花嫁にするからね?」
少年は、小さく呟く。
グッと、握られた手には、大きな鎌があった。
「そのためには、…と、眷属を殺すから。君のためなら、何でもするよ。___たとえ、嫌われても。」
不穏な言葉を残し、少年は、水の渦に取り込まれる。
「化流、お疲れ。…恋亜と瀬蘭がいるのか。めんどくさいが、やるか。」
少年は、大きい鎌を振り回す。
ブン、ブンッと、音を立てた。
****葵side****
一体、誰を応援すれば__!?
そうだっ!
恋亜ちゃんを応援しようっ!
「まずは、彼処まで走るよっ!」
かけっこ?
「葵、スタートを言って!」
分かったよ〜!
「じゃ、よーいスタート!」
ダッダッダッ…!
う〜ん、皆同じくらいだなぁ。
『勝ったのは‥…!』
ドキドキする!
『恋亜です‥!』
瀬蘭さんの声がして、恋亜ちゃんが飛び上がる!
「わ〜い!」
良かったね、恋亜ちゃん!!
恋亜ちゃんは、私をギュッと抱きしめた。
「やっと、葵を独り占めできる〜!」
えっ、そこ!?
まあ、賭は賭だしね。
ザッと、突如水が渦巻く。
えっえっ!
なにっ!?
渦がなくなると、そこには。
金色の髪の、少年がいた。
翡翠の色の瞳が、ぎりっと歪む。
「…は、葵を何だと思ってるんだ。」
えっえっ!?
なんで私の名前を!?
少年の顔が、ゆるむ。
「君と僕は、太古の昔から、結婚することを、定められていた。」
どういうこと‥…??
それよりも驚いたのは、水神だった。
「今は、我の花嫁だ。」
少年は、笑って、
「僕の花嫁、花蓮を奪った上に、葵も奪うのか?」
水神は、口を開いた____
少年の話
僕と、花蓮は、昔から仲がよかった。
だから、一緒に結婚の約束もしてた。
そんなとき、お前(水神)が、花蓮を娶った。
僕は、次の縁談を受けた。
それが、葵だったわけ。
なのに、またお前は、僕の幸せを阻止する。
許すも何も、ない。
花蓮をどうした!?
捨てたのか!?
許さない‥…!!
花蓮さん!?
どういうこと、リュー!?
リューは、不思議そうに首を傾げる。
水神は、冷たく言い放った。
「勝手に死んだ。」
その言い方には、さすがの私もカチンとした。
「何それ!酷いよ!!」
水神は、
「葵の好きなのは、誰なのだ。」
イライラしてる私は、素直に
「もちろん、リューだよ!」
途端、水神の雰囲気が変わった。
新章 破壊神
メキメキと、音が鳴る。
ヤバい!
流石の私も気がついた。
怒らせちゃった。
これから何が起こるの‥…?
気分転換に、番外編
【互いの心】
私は、瀬蘭。
先代の、魂呼びの巫女。
葵は、可愛くて、賢い。
だからすぐ好きになった!
私は、幽霊?的な存在。
葵をサポートするだけだと、思うけど、絶対!リューに譲らない!
そんなとき。
クラウから、呼ばれた。
『何なんです?』
クラウは、ニコッと、
「あなたなら、よく知ってらっしゃいますよ。」
いやな予感。
「_____優蘭さんの事ですから。」
ゾワリと、背中が寒くなった。
優蘭の事なんて、ここ最近忘れていた。
固まっている、私をよそに、クラウは、
「瀬蘭様なら、分かっていると思います。葵様がするべき事が。」
そう言って、口付けした…。
いつもなら、甘いと思うのが、苦いしこりとなって、いつまでも残っていた______
水神の周りから、大きな渦がまき始めた。
うわあ!
怖い‥…!
ギュッと、リューが私を抱きしめた。
安心した。
瀬蘭さんが、少年を連れて、来た。
そう言えば…
「あなたの名前、何?」
少年は、水神から目を離さず、
「ユィヤ。」
ユィヤ君か〜。
水神の姿が、渦に囲まれて、見えない。
カラカラ
殻が取れるように、水神が現れた。
その姿は、銀色の光。
どういうこと‥…?
瀬蘭さんと、クラウが、
『恐れていたことが…。』
「起こってしまいました…」
どういうことか、よくわからない。
瀬蘭さんが、戸惑っている、私とリュー、ユィヤ君に、微笑む。
『今、話しますね。私の妹、優蘭の事について。』
パアッと、光が出る。
そこには、桃色の巫女服をまとった、瀬蘭さんによく似た人がいた。
優蘭さんは、透けていた。
でも、ニコニコと笑った。
『久しぶり、お姉ちゃん。』
優蘭さんは、優しく笑って、話し始めた。
『お姉ちゃんと私は、双魂の魂呼びの巫女でした。
お姉ちゃんが使命を全うし、私は水の国の御殿に仕えていました。
御殿には、夢花と言う、大いなる巫女を呼び、こちらの世界でも生まれる花です。
ある日_____』
優蘭さんは、私に柔らかく笑いかけた。
『夢花が咲いたのです。夢花の中心に、葵様の命が出来たのです。
私しか見えませんでしたが、葵様の真の姿が、垣間見えたのです。
その後すぐ、夢花は枯れました。
枯れたという事は、大いなる巫女が、どの道を行くのか、誰にも分からないと言う事なのです。』
そうなんだ…
私は、この世と、水の国の双方で生まれたんだ。
瀬蘭さんが、
『葵には、破壊神、…様、いえ、翡翠様を止めていただきます。』
翡翠…
水神の名前なんだ。
「はい、止めま「やめてください。」
私の声に、被さるように、リューが叫んだ。
「俺は、もう、麗奈も葵様も失いたくないんです!」
麗奈さん?
朱火様のところに行った時だった。
リューの口から、麗奈さんの名前が出たこと。
麗奈さんは一体、どうなったの?
リューの話をまとめると。
百年ほど前、リューは麗奈さんと此処に来た。
リューと麗奈さんは、恋仲になり、それがそのときの代の、水神にバレたそうだ。
水神は、破壊神となり、麗奈さんはある決意をしたらしい。
「ウチ、水神を止めるんよ。やから、もう帰って来れんけど、______リュー、大好きやよ。」
そう微笑んで、水神を自らの身をていして、破壊神を封じ込めた。
悲恋だ。
今も、その状況…‥…
リューは、悲しげに私の頬にふれた。
そんな表情しないで___
「麗奈と似ている、葵様を失いたくない___」
麗奈さんと、似てる?
私は、麗奈さんの代わりなの?
ホントの私が、好きじゃないの?
暗い想いが、私の中を突っ切る。
そんなわけ、ない。
違うよ。
思い込ませても、無理だ。
結局、私は誰かの代わりなんだ‥…‥…
何度も、違うと暗示をかけても、無理だ。
____リューが好きでいるのは、私なの?私に似てる、麗奈さんなの?
悩みながら、へらりと瀬蘭さんと、クラウ、リューに笑いかけてると。
____そなたは、いつの世も”代わり“なのだ。
翡翠の声がした。
ただ、その声にかげりがある。
____優蘭の前の前、千佳の時もそなたは代わりだった…。
違う!!違う!!
ズキズキと頭が痛い。
それに伴って、私の口から、とんでもない言葉が飛び出した。
「リューは、麗奈さんと似ているから、私が好きなの?!」
嫌。
こんな心が狭い、発言なんか、したくない!
嫌われたくない!
ギュウッと目をつぶったら、リューが言った。
「それもありますが、」
それも、あったんだ…‥…。
目を開けたら、微笑んでいる、リューがいた。
「オレは、そのままの葵様が好きです。」
きゅんっ!
私、なにを考えていたの。
なんで、リューを信じれなかったの?
自分に自信がなかったから?
_________違う。
今は、分からないけど、いつかきっと分かる。
ゴゴゴゴォ
翡翠である、銀の光が、ユィヤ君を襲う。
「だめ!ユィヤ君!!」
ユィヤ君を庇うように、立ちはだかる。
グワーン!
大きな音がして、私の体は吹き飛ばされた。
私の意識も、深い闇の中に落ちていった。
新章 守るべきもの
パチッと、目を開けると、優蘭さんがいた。
「優蘭さん…瀬蘭さん達は……?」
優蘭さんは、まじめな顔になった。
『皆、翡翠様を止めています。翡翠様が、葵様を依代にと、暴走して…』
最後の言葉を聞かずに、私は駆け出した。
私には、分かっていた。
だけど、認めたくなかったんだ。
今、すべき事___守るべき者を守りたい。
パアアッ
私の姿が、変わり始めた。
髪が、腰まで伸び、和服をまとう。
「リュー!瀬蘭さん!ユィヤ君!」
叫ぶと、3人が振り向く。
ボロボロだけど、今の私には、心強い。
___この命賭してもやる。
私は、水底を蹴った。
銀色の光目指して、地を蹴った。
お願い届いて________
そして、その光を手で受け取る。
溢れんばかりの光。
私は、それを自分の胸に入れた。
「くっ!あぁあっー!!イヤ____」
熱い!!熱い!
『なぜ、我を受け入れる?』
冷たい、翡翠の声。
どこか、物悲しい。
「あなたに寄り添うのは、私の使命だから。」
そう言って、私は自分の胸の中に、翡翠を受け入れた。
エピローグ
「葵!」
ああ、また愛しい人の私を呼ぶ声を聞ける。
この喜びは、果てしない。
私は、笑って、リューのもとに駆けだした。
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次章は、三角関係です!
リューを巡って、新キャラが大暴れ!?
*introduction*
「紅蘭、何処に行くのよ?」
鮮やかな赤色の髪の少女が、振り向く。
ニヤリと笑って、答えた。
「大切な人を探しに行くの。」
破壊神との戦いの後、翡翠はもとの水神となり、(呼び方も水神に戻るよ)私とリューの交際も認められた。
恋亜ちゃんや瀬蘭さん、優蘭さんはスッゴい残念にしていた。
それと同時に、殺意もわいていた。
「リュー!」
あれ、私以外の声。
でも、瀬蘭さんや優蘭さん、恋亜ちゃん、ユィヤ君の声でもない。
振り向くと、鮮やかな赤色の髪の美少女が微笑みながら、立っていた。
「貴女が、葵?」
「はい‥…?」
美少女は笑いながら、言った。
「私は、紅蘭。リューを取り戻しに来ましたの。」
リューを取り戻しに来た‥…?
その言葉を飲み込むのに、30秒ほどかかった。
紅蘭さんは、ほんわかと笑っている。
「葵…!紅蘭!?」
リューと、紅蘭さんって、知り合いなの!?
って、知り合いじゃないと、名前知らないか‥…
私が一人、戸惑ってると、紅蘭さんが口火を切った。
「リュー、あの約束の通りに、此処まで来ましたのよ。」
そして、頬を紅く染めた。
「結婚してくださいまし。」
け、結婚!?
紅蘭さんは、リューの腕をとる。
「もちろん、ですわね?」
ううむ。
あまり認めたくないけど、こうやって、腕組んでる二人は、お似合い。
こーんな美少女のほうが、良いよねぇ‥
リューは、紅蘭さんの腕を離して、
「オレは、葵といるって決めた。だから、紅蘭__お前とは、いられない。」
ハッキリと言い切った、リューを紅蘭さんは凝視。
「私の、どこが駄目なのですか?」
そう言って、走っていった。
「ねぇ、リュー。あんな言い方って‥…」
ヒドいよ、という前に、言葉を飲み込んだ。
リューは涼しそうに、
「紅蘭は、コレくらいでキレるヤワな奴じゃないよ。」
うわぁ。
絶対的な信頼を置いてるんだね。
その夜のこと side 紅蘭
憎い、憎い。
リューの心を奪った、葵が憎い。
なんで、リュー。
あの約束、覚えてるわよね?
なんで葵が好きなの?
私は、このときのために持ってきた、薬を出した。
これで、リューの心は私のモノ。
私は、微笑んだ。
葵 side
私は、リューを信じている。
それは、これからもきっと。
でも、その信頼が壊れてしまいそうな、事件が起きたんだ。
その前に、桜美姫が来たところから、始めよう。
『貴女が、葵ですか?』
春のような、暖かいのんびりしたような、声がした。
「そうですが‥…?」
振り向くと、長い艶のある髪を持つ、十二単のような衣を纏っている、美少女がいた。
美少女は、ふわりと笑った。
『私は、桜美姫と言います。』
桜美姫は、フフフと笑った。
「貴女は、神族ですか?」
桜美姫の周りには、神々しい光があるようだった。
桜美姫は、笑顔をかき消して、
「流石、水神の花嫁ですね。私は、樹齢千年を超えた桜に宿っています。」
「此処に来た、理由は?」
驚くべき事を、桜美姫は告げた。
「紅蘭____しかるべき報いを下さないと、いけない者を見つけるためにね。」
キャラクタープロフィール
桜美姫
神族の長。
樹齢千年を超えた桜に宿る。
大罪ノ1 【紅蘭】
桜美姫の宿るはずの桜の幹を切って、術に変えたこと