脱出 〜デスゲーム〜

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1:ちか◆g:2019/05/19(日) 10:23

誰かを救うためには誰かが犠牲にならなければいけない―――


感想◎ 荒らし× なりすまし×

2:ちか◆g:2019/05/19(日) 10:50

「ただいま」も言わずに、靴を脱ぎ捨て、すぐに自室へ向かう。

今日は非常に眠かった。

私の足音に気がついたのか母がこちらを向く。

「あら、帰ってたのね。おかえり」

「ただいま」

私は無愛想に答え、自室のドアを開ける。

私はいつもは真っ先に宿題をする派なのだが今日は真っ先にベッドに倒れこむ。

倒れこんだ瞬間、一気に眠気は襲ってきた。

意識がぼんやりとしていき、私は寝た。


「………い……おーい。聞こえてんのかー?」

誰かが私に呼びかけてるような気がした。

体を起こし、誰かを確認する。

「……ぬいぐるみ?」

右耳は破れ、継ぎはぎのクマのぬいぐるみがボタンの目で私を見つめていた。

あ、これは夢だな。私はすぐに気がついた。

「ぬいぐるみじゃなーーーーーい!!!おれは悪魔だ。次、ぬいぐるみだなんて呼んだら、どうなるか分かってんだろ
 
 うな?」

「悪魔…?」

クマは誇らしげに話した。

「そうさ、おれは悪魔なんだ。夢の中のわっるーい、悪魔さ。おれたち悪魔はテキトーに人を選んで、夢の中に連れ去

 り、夢の中に閉じ込めてしまうんだ。お前は運が悪かったな。

 あ、いいことを教えてやろう。おれたちが命令を出す。その命令に全部従えたら、出してやるよ」

「おれたち」ということは他にも悪魔が複数いるのだろうか?

夢の中に連れ去った?もし「命令」とやらに従えなければ――――。

「命令に従えなかったらどうなるの……?」

「おっと、物好きだねぇお嬢ちゃん。従えなかったら―――――


 死んでもらうよ」


「し、死ぬ?夢の中で?」

「夢の中だから大丈夫だと思ったか?もう二度と目を覚まさなくなるよ。

 だからせいぜい頑張ってね。

 おっと、言い忘れた。閉じ込められてるのはあんただけじゃないよ。だから協力して頑張るんだね。

 さ、他のやつらはこっちにいるから――――」

とクマは言い。私を暗闇に突き落とした。

3:ちか◆g:2019/05/19(日) 11:09

気がつくと、私はつめたい床の上に倒れていた。

辺りを見渡すと、人が一人だけいた。

クマは「閉じ込められてるのはあんただけじゃないよ」と言っていたが、私の他は一人しかいないのだろうか?

「やっと起きたみたいだね。じゃあ命令を始めるよ」

クマの姿は見えないのに、声が部屋中に響き渡った。

「ちょ、ちょっと待って!」

私は思わず、声をかけた。

「ん、なんだい?」

「閉じ込められてるのって二人だけ?」

「ううん。他にも違う部屋にいるよ」

「会える?」

「ここの部屋を脱出できて、生きていたらね」

クマはニヤリと笑った。

「それって、死ぬかもしれないっとこと?」

私よりも先に、私と閉じ込められている人が聞いた。

「うん。じゃあ命令に移ってもいいかな?」

私たちは返事が出来なかった。

死ぬかもしれない………。

「命令1。

 ―――鍵を制限時間内に見つけてこの部屋から脱出しろ―――

 制限時間は二人の自己紹介とかもかねて、今回は長めに設定してあげるよ。

 生きていれば、これからも協力していく「ペア」となるから、しっかりとね。

 「ペア」っていうのはね、これからの命令でも一緒になることが多いよ。「ペア」の片一方が死んだら

 一人で行動することになるから「ペア」はちゃんと守ってね。

 命令1の時間制限は2時間。命令1だから、簡単だよ。これからもっと楽しませてもらわないといけないからねぇ。

 ルール説明は終わり!

 ―――スタート―――」                                         

4:ちか◆g:2019/05/19(日) 12:04

「おれはお邪魔だと思うから失礼するよ」

といいクマは姿を消した。

「と、取り合えず自己紹介でもしましょうか…?」

と私は話しかけてみた。

「あ、うん。そうだね。僕から言うよ。

 僕の名前は 福積 千夜(フクズミ チヤ)チヤって呼んでくれて良いよ。

 年齢は16で高1だよ。帰宅部だから、足手まといになったらごめんね……」

チヤと名乗った人は気弱そうな人だった。

ブカブカな黒い服を着ており、襟ぐちは大きく開かれていて肩から今にも服がズレ落ちそうだった。

丈も長く、尻まですっぽりと隠れる長さだった。

明らかにサイズが合っていないようだが、そういうのが流行っているのだろうか?流行に疎い私にはさっぱり分からな

い。

「……この服装気になる?」

ジロジロ見すぎたのだろうか。チヤが自分から聞いてきた。

「あ、はい。私、流行に疎くて……」

「あはは、流行ではないと思うよ

 あ、時間もないと思うし、自己紹介お願いしてもいい?」

私は「はい」と言い、自己紹介をする。

「私の名前は 桜木 凪(サクラギ ナギ)です。ナギって呼んでくれていいです。

 歳は14で中二です。部活は陸上部をやってるので、チヤさんを連れて逃げるのは任せてください!」

「……頼もしい」

とチヤがつぶやいた。

「あ、ありがとうございます。

 あの、自己紹介も終ったので、そろそろ鍵を探しませんか?」

「そうだね、どこにあるのか全く分からないし、散らかしてみる?

 散らかすのは……得意なんだよね」

最後の一言を聞き、チヤの自室は想像できた。

「そうですね、散らかしてみましょう」

二人で散らかしていると、思ったより早く、容易に見つけることができた。

「思ったより……早く見つかったね」

「はい。あとはこの鍵で脱出するだけですね」

私はドアに鍵を差し、まわすとカチャリっと開く音がした。

ドアノブに手をかけまわして開けて見ると、何も見えないほど真っ暗な空間が広がっていた。

「い、行きますか……?」

思わず足がすくみ、チヤに聞いた。

「行くしかないよね。僕が先に行くよ」

チヤはそう言い、足を踏み出した瞬間チヤは消えた。

「ち、チヤさん?」

とドアの向こう側に行ったはずのチヤに呼びかけるが返答は返って来ない。

もしかして、真っ暗な空間には道はなくてチヤさんは堕ちた……?

私は落ちることを覚悟して、一歩踏み出す。

思ったとおり、そこに道はなく私は闇に堕ちて行った。

クマに突き落とされた時のように……。

もしかしたら、ここでの移動方法は堕ちることなのかもしれない。

私はそんなことを考えていたが、すぐに気を失ってしまった。

5:ちか◆g:2019/05/25(土) 13:03

「……さん…ナギさん…!」

私は誰かに呼びかけられる声で目が覚めた。

「ナギさん…!大丈夫?」

チヤが私を心配そうに見ていた。

「ち、チヤさん……ここは…?」

私はあたりを見渡した。チヤと私以外にも複数人の人がいて、みんな私と同じように混乱した様子だった。

「ここは命令2を行うところだよ。でも、新しく会う人もいるから情報交換をする時間を与えてあげるよ」

クマがチヤの代わりに答えた。

「く、クマ…!命令2の内容って……?」

「それはぁ教えられないよ。そんなことよりも情報交換……自己紹介をしておくといいさ。

 これから協力していくことになるからね。


 ……生きていれば…だけどね。


 それじゃぁ俺は失礼するよ」

クマは質問をする時間を与えずにさっさと消えてしまった。私だけではなく、他の人たちも呆然としているようだっ

た。

その中でも、スーツ姿のしっかりとしたような風貌の男性が皆に話しかけた。

「敵の言うとおりにするのは悔しいが、情報交換は必要だと思う。自分がなにものか。

 ここに来る前、何をしていたか。命令1の内容とか…。

 最低限の情報でいい。初対面の人を怪しんで自分のことを言いたくないのは分かる。

 だからこそ、皆を信用して言ってくれる人はいないか…?」

私たちは俯いたままで誰も言おうとしない。


「私……言ってもいいです」


小さい声だが確かに聞き取れた。

「私、皆さんのこと信用してみます!」

そういって立ち上がったのは私と同じくらいの年齢に見える、制服姿の女の子だった。

6:ちか◆g:2019/05/25(土) 13:31

「私の名前は 宇都宮 琴 (ウツノミヤ コト)です。

 15歳で中学生です。まさか…こんなことが起きるなんて思いませんでした…」

コトと名乗った女の子は勇気を出して、自分のことを話した。

「ここに来る前、何してた?」

スーツ姿の男性が聞くとコトは少し思い出すような素振りを見せた。

「そうですねぇ……。あ…確か、私は受験勉強してて疲れて寝ちゃったはずです。

 いつもは寝ないのに……」

「命令1の内容は?」

スーツ姿の男性がまた問う。

「【ペアと協力してドアを破壊する】という内容でしたよ。幸い、ペアが男性で、ドアが思ったより脆かったので助か

りました」

「そうか……命令1の内容は同じとは限らないんだな。

 俺とペアが実行した命令1は【鍵を探して脱出する】とうものだった。

 命令1は簡単に作られているようだな」

「そ、その命令1の内容は私たちと同じです…!」

私が口を挟むと、男性はこちらを向いた。

「同じ?命令1はランダムだったのか…?なんか遊ばれているみたいで悔しいな…」

男性はなにかを考え始め黙り込んでしまった。


「このスーツ男。人の情報は聞くのに、自分のことは何も言わないんだね」


誰かがつぶやく声が聞こえ、私は反射的に振り返ってしまった。

目が合う。

「なに?だってそう思わない?人のこと聞くなら先に自分から話すのが常識だろ?」

スーツ姿の男性は彼のことを見ていた。

彼の言うことは正しい。でも、そんなにはっきりと言わなくても………。


―――喧嘩の火種になる。


 

7:ちか◆g:2019/05/25(土) 13:48

「そ、そうだな。すまない」

スーツ姿の男性は私が思っていなかった、大人な反応をした。

「俺の名前は 依田 信二(ヨリタ シンジ)だ。

 32歳の会社員だ」

32歳…。学生だけかと思いきや、色々な年齢層の人が閉じ込められたのだろうか?

どっちにしろ、大人がいてくれると安心する。

「ヨリタさんは私のペアです」

とコトは言った。

大人の男性がペアならコトの心配は要らないだろう。少し安心した。

「きみは自分のこと、話したくないのか?」

ヨリタは私に聞いてきているようだった。

「あ、私も…自己紹介します!

 私の名前は 桜木 凪(サクラギ ナギ)です。

 歳は14で中二です。なので…コトさんと仲良くできたら嬉しいです…!」

「わ、私もナギさんと仲良くしたい!よろしくね、ナギちゃん!」

コトは顔を少し赤らめて言った。

8:ちか◆g:2019/05/25(土) 13:50

>>7名前ミスりました。
コトのペアはヨリタではないです。まだ名前が明かされていない男性です。

9:ちか◆g:2019/05/25(土) 14:11

「そろそろ、僕も自分のこと話したほうがいいよね…」

チヤが小さな声で言った。

「ああ、簡単なもので構わん」

ヨリタがそう言うと、チヤは話し始めた。

「僕の名前は 福積 千夜(フクズミ チヤ)

 年齢は16で高1だよ。ナギさんのペアね」

「ナギとチヤがペアか……。

 コトのペアは自分のこと…話したくないか?」

今までずっと黙り、私たちと会話のする気のなさそうな男性に聞いた。

「あぁ俺か。俺は 倉井 俊介 (クライ シュンスケ)

 17歳の高校生」

シュンスケは私たちのほうも見ずにそう言った。

「あまり俺たちに協力する気配はなさそうだな…」

ヨリタは彼の様子を見てそういった。

私のペアはチヤ、コトのペアはシュンスケ、ヨリタのペアは…?

『このスーツ男。人の情報は聞くのに、自分のことは何も言わないんだね』

とヨリタに悪態をついた男性を思い出した。

「あ、あの。ヨリタさんのペアって…もしかして…」

「あ?あぁ。彼じゃないよ。俺のペアは命令1の部屋を出てからはぐれてしまったんだ。

 俺のペアもはやく捜さないとね……」

ヨリタは辺りを見渡しながらそう言った。

部屋がたくさんあり、見つけるのは時間がかかりそうだ。

10:ちか◆g:2019/05/25(土) 14:27

「きみのペアはいなくなったのか?あと、そろそろ自己紹介を頼む」

とヨリタは彼に言った。

「……美川 京(ミカワ キョウ)

 21歳。大学生。

 僕のペア?そこにいるじゃん」

そう言って、キョウと名乗った男性が私たちの後ろのあたりを指差した。

「え?」

私たちが振り向くと、少しはなれたところに壁にもたれかかって座っている女の子がいた。

ヨリタが駆け寄って優しく話しかける。

「どうしたんだ?」

「あ……あの、えっと、私……。話すの…苦手で…」

彼女はしどろもどろに話した。

「そうか…。自己紹介はできるか?」

ヨリタは慎重に話しかける。

「は、はい。私は 柚木 桃香 (ユギ モモカ)です…。

 中一…です」

「よし。良く頑張ったな」

とヨリタは言った後、キョウに向き直る。

「こんな状態のモモカとどうやって命令1をクリアしたんだ?」

「えっと――――」

11:ちか◆g:2019/05/25(土) 14:51

「【ペアと協力してドアを破壊する】ってコトさんたちと同じ命令だったよ。
 
 モモカさんに話しかけてもまともに話してくれなかったから、モモカさんのこと何も知らないけど…」

『まともに話してくれなかったから』って……。もう少し相手を思いやった言動ができないのだろうか。

中一の女の子がこんな人とペアだと心配だ。

「おい!クマ!いるんだろ?出てきてくれ!」

ヨリタが不意に呼びかけた。

「な、何故クマを……?」

コトが不安そうに問う。

「なにか用かい?さっかく寝てたのになぁ」

クマが何もなかった空間からいきなり現れた。


「ペアって代わる事はできるのか?」


「えぇ?うん。いいよ。でもペアの交替は一度きりにするよ。

 ちゃんと、しっかり話し合って決めてね。

 もういいかな?失礼するよ」

クマは再び消えた。

一度きり………。今するべきなのか、とっておくべきなのか…。

「交替は…とっておくべきだと思います。

 まだ、どんな人なのか分かっていないし……」

「僕もコトと同じで交替はとっておくべきだと思うな…」

コトとチヤはヨリタにそう言った。

キョウがどういう人か分からないけど、モモカを放っておくのは危険なような気もする。

12:ちか◆g:2019/05/26(日) 15:17

「それはそうだな…。でも、ペア関係なくできるだけ大人数で動くように気をつけろ」

「はい」と私たちはヨリタの言うことに頷いた。

「もう、いいかなぁ?命令2を始めるよ」

クマはいつものようにどこからともなく現れた。

誰も返事はしない。死ぬかもしれないのに覚悟を決められるわけがない。

「う〜ん。相変わらずみんな、おれのこと無視するね。肯定ってことでいいかなぁ?」

クマは私たちに答える暇も与えず続きを話し始める。

「命令2。

 ―――かくれんぼ―――

 ルール説明をするね。

 そこのキミ」

クマはそういい、ヨリタを指す。

「キミのペアは命令1の部屋から出てからはぐれてしまったんだろう?

 キミのペアと同じように命令1の部屋から出て違うところに飛ばされた人が、あと3人いるんだ。

 その人たちを捜してあげてね。制限時間内に彼らを見つけないと、見つけられなかった人たちは死ぬよ。

 彼らの命はキミたちにかかっているのさ。よろしくね?

 制限時間内は3時間。十分だろう?じゃあ……

 ―――スタート―――」

私たちに命がかかっている?

そんなの重すぎる……。

そんな重大なこと、私が出来るのだろうか?

もし、見つけられなかったら―――――――――。

私が思考を廻らせていると、不意に肩にぬくもりを感じた。

「大丈夫だよ。ナギちゃん。みんなで協力するんだから…。ね?」

コトが私の様子に気づいてか、私の肩にポンと手を置き、優しく言った。

「こ、コトちゃん……。ありがとう」

私はコトに笑顔を向けた。

心配させてはいけない。私だけではなくコトも……みんな不安なのだから。

13:ちか◆g:2019/05/26(日) 17:24

「そろそろこの部屋を出て他の部屋を探索してみようか」

ヨリタは立ち上がって私たちに声をかけた。

「ねぇ、別行動なの?それと………」

チヤはそういって、モモカに視線を向けた。

「全員で行動するようにしよう。モモカは…歩けるか?」

「歩け…ます…」

モモカはヨリタの手を借りて立ち上がった。

「キョウ、キミがモモカの世話をするんだ」

ヨリタは私たちが思ってもいなかった発言をした。

「何故……キョウさんに…?」

私は思わず尋ねた。

「キョウが直接モモカになにかしたわけじゃない。

 ただ口調がきついだけかもしれないだろ?このゲーム内では仲間を信じることが大切だ……。

 それに、これから先ペアで動かされることもあるかもしれん。今のうちに慣れておかなければな…」

ヨリタは「モモカをよろしくな」と言い、キョウの方へ促した。

「えぇ、なんで僕が……はっきり言って足手まと…」

体格の良いヨリタがキョウを睨み付けるとキョウは呆気なく黙った。

「はいはい、僕がモモカさんに手を貸せばいいってことだね」

キョウはそういうと、モモカに肩を貸した。

不安だけど何事もなく全員を見つけ出せればいいのだが……。

「じゃあ行こうか」

ヨリタは先頭で歩き始めた。

「みんな、しっかりついてくるんだよ」

14:ちか◆g:2019/05/26(日) 17:56

<人物まとめパート1>
【仲間】
・桜木 凪(サクラギ ナギ) 
年齢:14歳 学年:中二 部活:陸上部 ペア:チヤ
外見:身長は152a 体重は41kg セミロングの髪型 目が大きく可愛らしい顔立ち 
備考:主人公

・福積 千夜(フクズミ チヤ)
年齢:16歳 学年:高一 部活:帰宅部 ペア:ナギ
外見:身長は165a 体重は48kg 黒髪でストレートな髪型 中性的な顔立ち 細身な体型

・宇都宮 琴 (ウツノミヤ コト)
年齢:15歳 学年:中三 部活:吹奏楽部 ペア:シュンスケ
外見:身長は155a 体重は43kg 髪型二つ結び 童顔 大人しそうな雰囲気

・依田 信二(ヨリタ シンジ)
年齢:32歳 ペア:???
外見:身長は183a 体重は68kg 髪型は短髪 はっきりとした顔立ち 筋肉質 
備考:まとめ役

・倉井 俊介 (クライ シュンスケ)
年齢:17歳 学年:高二 部活:パソコン部 ペア:コト
外見:身長は174a 体重は58kg 髪型は前髪が目にかかっている 暗い雰囲気
備考:協力する気はない

・美川 京(ミカワ キョウ)
年齢:21歳 学年:大学生 ペア:モモカ
外見:身長は168a 体重は52kg 癖毛 顔は整っているが性格が悪いと思われがち

・柚木 桃香 (ユギ モモカ)
年齢:13歳 学年:中一 部活:文芸部 ペア:キョウ
外見:身長は148a 体重は38kg ロングヘア 可愛らしい顔立ち
備考:コミュ障

【敵】
・クマ(悪魔たち)
夢の中にみんなを閉じ込めた悪役。
外見:右耳は破れ、継ぎはぎのクマのぬいぐるみ。目はボタン

※詳しいことが決まれば人物のまとめを再び出すかもしれません。

15:ちか◆g:2019/05/29(水) 19:07

ヨリタが私たちのいた部屋の隣の部屋のドアをそっと開ける。

中は真っ暗で音は一つも聞こえない。

「誰かいないか!!!」

ヨリタが真っ暗な空間に向かって呼びかけた。

返事は返って来ない。いないようだ。

「部屋は何部屋あるんでしょうか……」

コトがヨリタに聞く。

「見たところ……5部屋だな。部屋数も少ないし、時間もある。みんな、焦らずに捜そう」

「はい」と私たちは返事をした。

ヨリタが部屋の外に出て、また隣の部屋のドアをそっと開ける。

電気は点いており、うずくまった人の姿がはっきりと見えた。

「だ、大丈夫ですか!!!!????」

私は思わずかけよる。

「大丈夫です……。

 ヨリタさん…。あなたなら私を見つけてくれると……信じていました」

確か、ヨリタは『ペアとははぐれた』と言っていた。それなら彼女は――――

「ヨリタさんのペアですか…?」

「ああ、そうだ。【ペア】だけじゃない。彼女は会社の同僚だ。

 ツグミ。みんなに自己紹介をしてやってくれ」

ツグミと呼ばれた女性は「はい」と大きく頷いた。

ヨリタの方が上司なようだ。

「私の名前は 明石 亜実(アカイシ ツグミ)です。

 28歳でヨリタさんと同じ会社に勤めています」

ツグミもヨリタと同様、スーツを着ており、しっかりとした雰囲気の女性だった。

「ツグミは今回の命令は知っているのか?」

「はい、知っています。【かくれんぼ】ですよね?

 私は隠れる役でした…。本当は速く見つけて欲しかったんですけどね。私は物音に気づいてくれたおかげで…」

隠れる…というより隠される側の人間の方も今回の命令の内容は知っているようだ。

なら、見つけてもらうためにツグミのように物音を出すなどして存在を知らせてくれるのかもしれない。

「知っているのなら話は早い。次の部屋に入ろう」

ヨリタはそういい、隣の部屋のドアを開けようとする。


「あ、開かない……?」


ヨリタはドアノブをガチャガチャと回す。

しかし…開かない…。

「そ、そんな……。誰かいるの!!??」

チヤは部屋に向かって呼びかける。


「いる!!います!!助けて…」


中から声が聞こえた。

「何人だ!!??」

ヨリタが呼びかける。

「2人です!!だけど、中からは…どうにもできない…」

「そんな…!!今助ける!!」

そういい、ヨリタは力ずくでドアをこじ開けようとする。

「ヨリタさん待ってください…。まだ時間はあります!!落ち着いてドアを開ける方法を考えましょう!!」

私はそう言ったが、全くと言っていいほどドアをあける方法は考え付かなかった。

16:ちか◆g:2019/05/31(金) 17:51

「ガラスを割るしか……」

ヨリタは手を振り上げる。

「ま、待ってください!!!」

私は慌てて止める。

「ヨリタさんが怪我してしまうじゃないですか!!それに、穴を開けたとして、ある程度の大きさじゃないと入れませ

んし、仮に人が通れる大きさの穴が出来たとしても、通っている間にガラスの破片が突き刺さってしまいます…!」

「クソ…!どうすれば…」

ヨリタは再び手荒にドアをこじ開けようとする。

「なにか方法があるはずです!シュンスケさんもこんな時ぐらい協力してください…!」

私は興味がなさそうに辺りをフラフラしているシュンスケに声をかけた。

「俺は協力する気はないね。俺には関係ねえから」

あまりにも冷たすぎる態度に私は呆気にとられていると―――――


ガシャン!!!!


ガラスの割れる音が不意に聞こえた。

まさか…ヨリタが素手で……ガラスを……。

この私の考えはドアの方を見た瞬間打ち消された。

―――キョウが左手にそれほど大きくない金属のような棒を持っていたのだ。

キョウの見ている方向には小さな穴があった。

「その穴の大きさじゃ手しか入らないじゃないか。一体どうするつもりだ」

ヨリタはその小さな穴を見ながら言った。

「ヨリタさん。その穴に手を入れてみてよ」

ヨリタは言われ通り恐る恐る手を入れようとする。

「ヨリタさん…!危ないです!」

コトがとっさにヨリタの手を掴んで引きとめる。

「大丈夫だ」と言い、ヨリタはガラスの破片に当たらないようにそっと手を入れた。

「……これは……!!」

ヨリタが目を見開く。

「うん」とキョウが頷くとヨリタはゆっくりと手を回し始めた。

動いたら危ないと思い、私が止めようとしたが、その必要はなかった。


―――カチャリ


鍵の開くような音が聞こえたのだ。

17:ちか◆g:2019/05/31(金) 18:21

「なんで…開いたの?内側に鍵があったのだったら中に閉じ込められている人たちは開けれるんじゃないの?」

チヤが私が同じように思っていた疑問を述べる。

「ドア、開けて見て」

チヤはキョウに言われるがまま開ける。

部屋には真っ暗な空間が広がっていた。

「内側に鍵があることに気がつかなかったのか…!」

ヨリタがそう言い、「なるほど」と私たちは納得する。

「一番最初の部屋も真っ暗だったから、この部屋も真っ暗で閉じ込められた人たちは内鍵の存在に気づいていないん

 じゃないかって思ったんだ。最初は閉じ込められた人にドアのもとまで行かせようと思ったんだ。

 でも、真っ暗な部屋で人を歩かせるのは危ないと思ってね、外側から内鍵の近くのガラスを割って、手を入れて

 開けることにしたんだ」

キョウが頭の整理のつかない私たちに説明した。

キョウは今まで人のことを考えた発言ができていなかったため、キョウが協力的な行動をとったのは意外に思えた。

「なぁ電気はないのか?」

私が思考を廻らしている間もヨリタは部屋のドアの近くを手探りで電気を探していた。

「ないみたいですね……」

私も同じように探ったが手に何かがあたる感触は感じられなかった。

「大丈夫か!?出てこれるか!?」

ヨリタが部屋の方に向かって呼びかける。

「大丈夫です…!」

部屋の中の二人は廊下の薄暗い電気を頼りに恐る恐る出てきた。

閉じ込められていたのは制服を着た女子高生と優しそうな男性だった。


「お前だったのか………。助けるんじゃ…なかった……」


消え入りそうなぐらい小さな声が聞こえた。

声のした方を見ると殺意のこもった目で男性を見るキョウの姿があった。

18:ちか◆g:2019/06/01(土) 18:01

「キョウ…さん?どうしたんですか?」

私は小声でキョウに呼びかけた。

「あ、あぁ。全員見つかって良かったんじゃない?」

まるで会話が噛み合っていない。やっぱり何かこの男性と過去に何かが―――――

「やぁ。命令2は達成できたみたいだね。次のルール説明に移ってもいいかな?」

いつものように突然クマが現れた。

「待て。この二人との情報交換が先だ」

ヨリタは女子高生と優しそうな男性を指した。

「そうだね。ごゆっくりどうぞ」

クマはそう言い。再び消える。

次のルール説明、とクマは言っていた。やはり命令はまだ続くのだろうか……。

「じゃあ、俺から話します」

優しそうな男性がそう言い、話し始める。

「俺の名前は 神埼 優(カンザキ ユウ)です。

 年齢は21歳で大学生です。

 さっき、あんな部屋にいた。理由は分かりません…。命令1をクリアして、部屋を出ると下に落ちていくような感覚

 がしました。その後気を失って、気づいたらあの部屋でした」

21歳で大学生………。キョウさんと同じだ。やはり何か関わりが……。

「キョウとは知り合いか?」

ヨリタはキョウを指しながら言った。ヨリタもキョウと同じ21歳で大学生というところに疑問を持ったようだ。

「…ち、違います。知らない人です」

ユウはキョウを見た瞬間、少し表情が変わったような気がした。

驚いたような、戸惑っているような……。

「そうか」

ヨリタはそれ以上追及しようとはしなかった。

「あ、あの、私も話したほうがいいですよね…?」

女子高生は遠慮がちに言った。

19:ちか◆g:2019/06/01(土) 18:24

「ああ、頼む」

ヨリタがそう言うと女子高生は話し始めた。

「私の名前は 綾瀬 楓(アヤセ フウ)です。

 17歳の高校2年生です。

 あの部屋に閉じ込められていた理由は私も分かりません…。気づいたらあの部屋にいました。

 あ、私はユウさんのペアです」

「そうか。ありがとう。

 おい、クマ!情報交換は終った。次は何の用だ!」

ヨリタが何もない空間に向かってクマを呼ぶとクマは姿を現した。

「あぁ終ったんだね。じゃあ少し話しをさせてもらうよ。

 みんな、そろそろ命令にはなれたかい?」

なれるっていうか…。まぁ簡単だし…。と私たちは思い、曖昧に頷く。

「簡単だって思ってるでしょ?これからメインの命令に移るよ。

 今までの命令はサブだと思ってくれていいよ。これからメインの命令を合計三回下すよ。

 生き残っていていたら生き残っていた人の勝ち!どうだい?楽しそうだろ?

 メインの命令の間にもサブの命令をちょくちょく挟んでいくよ。サブの命令は休憩だと思ってくれていいよ。

 これまで通り簡単だからね。

 試しに今からメインの命令1をやってみよう。

 …あ、ちなみにメインの命令では必ず最低一人は死ぬよ」

「ま、待ってよ!今からって……。まだ覚悟できてないよ!!」

チヤは焦ったようにクマに訴えかけた。

「大丈夫だよ。メインの命令も最初は難易度を低めにしているからね」

「でも…最低一人は……死ぬんでしょ?」

コトが怯えたように聞くとクマは悪気のないように「うん」とあっさりと頷いた。

「そんな…!どうすれば!!!」

動揺がどんどん広がっていく。

「みんな、落ち着いて!少し時間をくれないか?クマ」

その中でもヨリタは私たちに何かを訴えかけようとしていた。

「…少しだけね」

20:ちか◆g:2019/06/01(土) 18:41

「みんな!!落ち着いて俺の話を聞け!!」

ヨリタの声に私たちは少し平静を戻した。

「これから最低一人死ぬことは確実だ…。その中でも協力していくことが大事なんだ!!

 絶対に殺し合いなんかしちゃいけない!これから聞く命令の内容がどんな内容だとしても平静を出来るだけ保つんだ!

 焦っちゃいけない。正しい判断をして、出きるだけ犠牲が出ないようにしよう…!分かったな!?」

焦ってはいけない。私は自分に言い聞かせた。私は命令の内容を聞く覚悟を決めた。

チヤもコトも先程よりかは平静を保って、覚悟を決めているように見えた。

「やれやれ。暑い事言うねえ。それじゃあメインの命令1を言うよ。

 メイン命令1。

 ―――女神の生け贄―――

 ルール説明をするね。

 この棟の中央に女神の像があるんだ。100年に1度女性を生け贄に捧げないといけないんだ。

 それで今日は丁度、100年に1度の生け贄を捧げる日なんだ。だから、せっかくだからキミたちに犠牲になってもらお

 うと思ってね。ちなみに生け贄は女性じゃないといけないんだ。ここを注意して生け贄を決めてね。

 男性を捧げたところで意味はないんだ。この空間は壊れて、おれたちもキミたちも全滅だよ。

 制限時間は3時間に設定しておくけど手早く決めてね。それじゃあ………。

 ―――スタート―――」

21:ちか◆g:2019/06/02(日) 16:08

クマは命令の説明をするだけして、姿を消してしまった。

辺りは静まり返り誰も口を開こうとしない。

誰か一人を生け贄にしなければいけない…。

「誰かさっさと生け贄になってくれ。あ、そうだ。モモカがタヒねばいいんじゃないか?」

それほど大きくない声だったが静まった空間で確かにそう言ったのがはっきり聞こえた。

――――シュンスケが…。

「わ、私……?そうですよね…。私、みんなの役に立てないし迷惑かけてばっかり。

 私が生け贄になります……」

「シュンスケ…!!なにを言ってるんだ!?モモカが生け贄になる必要はない!!子どもをころすなんて絶対しちゃい

 けないことだ!!」

ヨリタが慌てて反論をする。

「じゃあ誰が死ぬっていうんだよ?本人も死ぬっつってんだよ。誰か一人を犠牲にしないと全滅だぞ?わかってんのか

 よ!!」

「ヨリタさんの言う通りです。子どもを生け贄にするのはあってはならないこと……。

 ここは大人の私が生け贄になるわ」

今まで黙って話を聞いていたツグミが口を開いた。

「ツグミ…!!ダメだ!!!!!!」

ヨリタは慌ててとめる。その様子を見てシュンスケが嘲笑う。

「ヨリタさんはツグミさんとモモカ。どっちが死んで欲しくない?ツグミさんだろ?

 やっぱり役立たずのモモカを生け贄にするべきなんだよ。

 あ、それとも役立たずのチヤが死ぬ?」

私はシュンスケの言葉に違和感を感じた。

『ちなみに生け贄は女性じゃないといけないんだ。ここを注意して生け贄を決めてね。

 男性を捧げたところで意味はないんだ』

クマは確かそう言っていたはずだ。

「待ってください!生け贄になるのは女性ではないといけないはずです!チヤさんを生け贄に捧げたとして無駄死に

 になってしまいます…!!」

全滅だけは免れないと……。私はそう思いシュンスケに説明する。


「知ってるよ」


シュンスケは当たり前だろ?とでも言うようにそう言う。


「チヤは男性のふりをした女性だ。

 チヤ……キミが死ぬべきだ。発言力がなくて体力もない。高校生だからモモカほど幼くない。

 だから、みんなもモモカを生け贄にするよりも心は痛まないはずだ。キミが生け贄に抜擢なんだよ。

 だから――――――――――――

                                     死んでくれ。チヤ」

22:ちか◆g:2019/06/02(日) 16:43

「チヤさん…!!女性じゃないですよね!?」

私はチヤに問う。

「………」

チヤは無言のままだ。これでは肯定したようなものじゃないか…!!

「いいがかりだ!!チヤが男装する理由なんてないじゃないか!!」

ヨリタがチヤを庇う。

「お前はチヤの何なんだ?チヤの何が分かる?なにかしらの理由があるかもしれないだろ!

 それでお前はチヤを庇ってどうするんだ?他に誰が死ぬんだ!!??チヤかモモカが死ぬしかないんだ!」

シュンスケは目血走らせていた。感が高まっているようだ。

「僕の…」

チヤが恐る恐るといった様子で口を開いた。

「僕のどこが女性だと思ったの…?僕を生け贄にしても意味はない。死にたく……ない……」

「その黒いブカブカな黒い服…。体のラインを隠そうとしてるんじゃないか?

 喋り方も女みたいだ。一人称が「僕」っていうのも男のふりをしていることからの罪悪感じゃないのか?

 何故男のふりをしているかは分からないが、自分の身を守るためにしていることはなんとなく分かるぞ。今だって、

 そのおかげで助かっているじゃないか!!!」

シュンスケは早口でまくしたてた。

チヤは肩を震わせて俯いたままで反論をしようとしない。

否定してくれ…。私はそう思った。【ペア】というだけで特別な関係はないが、命令1のときチヤのおかげで私は脱出

できた。きっと一人だったらパニックになって何もできなかっただろう。お願い…反論して…。

「あはっ……あはは。スゴイ想像力だね。でも、キミの推理は全部間違ってるよ。

 ブカブカな黒い服でラインを隠そうとしてるって?笑えるね。そんなわけないじゃないか」

チヤは躊躇うことなく黒い上着を脱ぎ捨てた。

チヤが肩を震わせていたのは泣いていたのではなくて笑っていたのか……。

チヤはシュンスケの推理をさらに覆す。

「一人称が「僕」っていうのも男のふりをしていることからの罪悪感ってさらに笑わせるね。

 だったらキョウくんもそういうことになるんじゃない?キョウくんの一人称も「僕」だ。

 自分の身を守るために男装?意味が分からないね。

 これで、僕が死んだところで無駄死にってことが分かったでしょ?僕の他に死んでもいい人を決めるんだね」

チヤが捲くし立てるとシュンスケは呆気に取られているようだった。

死んでもいい人――――――――――――

そんな人なんで誰もいない……。

誰を生け贄にすればいいんだ?

―――――――――――― 私…か?

23:ちか◆g:2019/06/02(日) 18:18

「んなっ…!じゃあやっぱりお前がタヒね。モモカ」

シュンスケは矛先をモモカに戻す。

「あ、あぁぁぁ。さっきは私が生け贄になります…なんて言いましたけどやっぱり死ぬのは……怖いです…」

コトは震えるモモカの背中を優しくさすった。

「モモカちゃん……大丈夫だから…」

モモカの嗚咽だけが聞こえる中、フウが小さな声で呟いた。

「私……生け贄になってもいいです」

フウの表情に怯えた様子はなく、既に覚悟は決まっているようだった。

私たちが呆然とした中、フウは続ける。

「私、実は自殺しようとしてたんです。

 親からもクラスメートからも嫌われていて辛かったんです。私のことを好きになってくれる人はいないんだってこと

 やっと分かって、死ぬ覚悟は決めていました。でも、いざ屋上に行くと怖くなってたった一歩が踏み出せなかったん

 です。私は今が今度こそちゃんと死ぬ機会だと思ったんです。しかも今回は私の死が人の役に立てる。

 こんなチャンスはもう二度と来ないと思います。長く語ってすみません。私のことなんて興味ないですよね。

 短い間でしたが…ありがとうございました!

 みなさんお元気で…!!」

フウはそう言うと中央にある女神の像の下へと歩き始めた。

後ろを振り返ろうとはせず、一歩一歩には躊躇いがなかった。

止めるべきなのか、止めないべきなのか私は迷った。どっちか彼女にとって良いことなのか……。

女神の像まであと3歩……。

「フウちゃん…!!!!!私はお前のこと好き!!!!」

コトが掠れた声でそう言った。

「少ししか話したことないのにそんなこと言わないでよ…。

 死ににくくなっちゃうじゃん……。またね…コトちゃん。私もコトちゃんのこと大好き!!」

フウはそう言って、誰にも止めさせまいと女神の像の下へ走った。

フウが女神の像の下まで辿り着くと女神の不気味に光った。

その瞬間、フウの姿は跡形もなく消え去った。

残ったのはフウの身につけていたブレスレットだけだった。

 

24:ちか◆g:2019/06/02(日) 18:22

>>23
ミスです。
「フウちゃん…!!!!!私はお前のこと好き!!!!」ではなくて
「フウちゃん…!!!!!私はキミのこと好き!!!!」でした。
もともとこの台詞はヨリタに言わせるつもりだったので「お前」となってしまいました。

この小説見てる方いますかね?
感想お待ちしております。

25:ちか◆g:2019/06/03(月) 13:27

「このブレスレットはキミが持っておくんだ」

ヨリタはフウの身につけていたブレスレットを手に取ると、女神の像の前で嗚咽を漏らしていたコトに渡した。

コトはブレスレットを受け取ると、手首に身につけた。

「フウちゃん…。フウちゃんの分まで頑張るからね…!」

私はこんな時でも人のことを想って泣けるフウを美しく思った。

私はフウが死んだ悲しみよりも、次は自分が死ぬかもしれないという恐怖に吞まれていた。

『じゃあ誰が死ぬっていうんだよ?本人も死ぬっつってんだよ。誰か一人を犠牲にしないと全滅だぞ?わかってんのか

 よ!!』

と騒ぎ立てていたシュンスケも流石に黙っていた。

「みんな、ここで立ち止まっていても仕方がない。フウを無駄死にしないようにするんだ。

 これ以上誰も死なせやしない。みんなで脱出するんだ…!!」

ヨリタは力強くそう言ったが、ショックで誰も動こうとしない。

「そりゃ…そうだよな。今すぐ動けないよな…。

 なら、今動ける人だけでも最善をつくそう。今、少しでも動ける人は俺のまわりに来てくれ」

ヨリタは再び私たちに声をかける。

私は遺された人たちのためにも少しでも最善をつくしたい、うじうじしていても仕方がないと思い、私はやっとの思い

で立ち上がった。

ヨリタのもとへ来たのは、チヤ キョウ ツグミ ユウ 私 の5人だった。

シュンスケが来なかったのはショックで動けなかったのではなく相変わらず協力する気がないからだろう。

「…まずは【ペアの交替】をするべきだと思うよ。モモカさんやシュンスケさんのことも考えてね」

チヤがそう言うとヨリタは少し悩んだ後、話し始めた。

「俺が思う、最善なペアは ツグミとモモカ シュンスケと俺 コトとチヤ………。

 ん?待てよ。フウがいなくなったから奇数になるじゃないか…!!」

この場合はどうするのだろう…。最悪の場合、また一人が死ななければならないのか…!?

「あぁその説明してなかったっけ?」

クマが不意に現れ面倒くさそうに説明し始めた。

「ペアが死んだ場合は一人行動だよ。だから今回みたいに奇数でペアを入れ替えるのならペアが既に死んでいる人
 
 が出てくるね」

「ペアが死んだ場合不利になることはあるのか…?」

「ペアで命令に従わなければいけない内容のときはペアが死んでいた場合、ペアは死んだ人のダミー人形になるよ。

 ダミー人形だからペアは人形として存在はするけど全く役に立たないから不利になるよ」

なら、フウのダミーのペアになる人は自分の意思で動けるしっかりした人ではならないといけないのか。

「なるほど。なら、最善なペアを考え直さないといけないな。

 俺とシュンスケ ツグミとモモカ。これは絶対だ。あとはキョウを見張ってくれる人が欲しいな。

 彼はサブ命令2のとき協力はしてくれたものの何を考えているか分からない」

26:ちか◆g:2019/06/03(月) 13:44

「モモカさんは弱い人ではないと思うわ。だから、モモカさんを精神面でサポートしてくれる人がいるのなら、私はフ

 ウさんのダミーのペアになります」

ツグミがそう言うとヨリタは悩みこんだ。

「私がモモカちゃんを精神面でサポートします…!」

いつの間にか目元を真っ赤にして泣き腫らしたコトの姿があった。

「コトは…大丈夫なのか?」

ヨリタの問いにコトは大きく頷く。

「私に出来ることは精神面のサポートだけなんです。その役、私にやらしてください」

ヨリタは「頼んだよ」と言って優しくコトの頭を撫でた。

まだペアが決まっていないのは チヤ キョウ ユウ 私の4人だった。

私はキョウとユウを一緒にしてはいけないと思い、私はキョウの見張りを立候補することにした。

「私がキョウさんの見張りをします」

ヨリタは残ったメンバーを見て「そうだな」と頷いた。

「見張りはナギが最適だな」

「そんな…!ナギさんが!?危険じゃないの?僕が見張ろうか?」

チヤが心配そうに言った。

「チヤ、ナギ。少しこっちに来てくれ」

ヨリタは私とチヤをみんなから少し離れたところに呼び出した。

「ナギはもう、気づいてるかもしれないが……キョウとユウのことについて話したいことがあるんだ」

27:ちか◆g:2019/06/03(月) 14:06

「サブ命令2で、部屋の中からフウとユウを救出したときのことだ。

 キョウはユウの姿を見たときに

 『お前だったのか………。助けるんじゃ…なかった……』

 と小さく言っていた。聞こえたのは俺だけだと思っていたけど、ナギはそれが聞こえた瞬間、キョウの方を見ていて

 たから気づいていたんだろ?」

私も聞こえてたのは私だけだと思っていたが、ヨリタも聞こえていたのか…。

「はい。そのときのキョウさんは殺意のこもったような目でユウさんを見ていました」

「そう、そこが問題なんだ。あの二人は間違いなく過去に会っていたことがあってトラブルがあったはずだ。

 だから、あの二人を放置しておくとあの二人の間でなんらかのトラブルが起きる可能性がある。

 大きな問題にもなりかねない。

 そこで、ナギにはキョウ。チヤにはユウを見張っていて欲しい」

私とチヤは「はい」と頷いた。

「頼んだぞ」と言うとヨリタはみんなのいる方へ行き、最善なペアを発表していた。

「聞いてくれ。俺の中での最善なペアを考えたんだ。異論があったら迷わず言ってくれ。

 俺とシュンスケ コトとモモカ ナギとキョウ チヤとユウ ツグミとフウのダミー。

 …異論はあるか?」

私は異論はなかった。みんなも納得しているようだった。

「クマ!!ペアの交替は終ったぞ!!」

ヨリタが呼びかけると、クマが現れた。

「ほぉ、良く考えたペアだねぇ。じゃあこれでもう確定するよ。

 今日はメイン命令もあって疲れただろう?個別の部屋を用意しているからゆっくり休むといい。

 三日後にメイン命令2を出すからね。覚悟を決めておくんだよ」

クマは私たちを小さな個別の部屋に案内すると、とっとと消えてしまった。

夢の中でこんなに疲れたのは初めてだ。

部屋に入って座っていると、どっと疲れが来たので少しの間考えることをやめて休憩することにした。

28:ちか◆g この小説みてる方いますか?:2019/06/03(月) 20:02

改めて確認すると部屋の中には小さなベッドとモニターしかなかった。

モニターは真っ暗で点く気配はない。

なんのためにあるんだろう?

不意にコンコンっとノックが聞こえた。

「少し、入ってもいいかい?」

ドアの向こうからクマの声が聞こえた。何の用だろうか。

「何の用?ドア越しに伝えてくれない?」

クマは敵側なので私はクマを部屋に入れて二人っきりになるのは避けることにした。

「う〜む。警戒してるようだね。二者面談をしにきただけだよ。おれたち悪魔はデスゲームの参加者の精神的サポート

 も必要だからねぇ。で、仲イイ人は誰だい?」

クマは学校の先生が聞くような質問を投げかけてきた。

「コトちゃん…かな」

私は隠す必要もないので素直に答える。

「そうなんだね。コトのところにも二者面談に行って来たけど「ナギ」って言っていたよ。

 これから、心配なことは?」

これからのこと、全てが心配だ。と言いたいところだったが、一番心配なことを告げる。

「新しくペアになった、キョウさんとの相性……」

「なるほどね」とクマは言い、私が思ってもなかったことを口にする。


「彼は大嘘つきだよ。彼の嘘を暴くのもペアのキミの使命じゃないかなぁ」


「どういう…こと?」

クマは「詳しくはプライベートのことだから言えないけど…」と少し考えてから言った。

「根本的な嘘をついてるんだよ…」

29:ちか◆g:2019/06/06(木) 17:38

「ど、どういうこと!?」

その嘘がデスゲームに関係することだったら大変なことになりかねない。

「んー、デスゲームに関係することではないよ。でも、彼の嘘で仲間内での空気は険悪になる可能性はあるね」

「そんな……!」

命令に従うためには「チームワーク」が一番大切だ。険悪にさせるわけにはいけない。

「これ以上のことは詳しくは言えないよ。

 だいぶここで時間をくってしまったようだね。おれは他の奴らのとこにも二者面談しに行かないといけないから

 失礼するよ」

クマはそう言うとさっさと消えてしまった。

ただ中学生の私に出来ることは「人と人のつなぎ役」

それぐらいだ。私は「チームワーク」が崩壊する前に嘘を暴くことを静かに決心した。

まずはキョウとユウの関係について情報を集めよう。私はチヤと合流したときにユウが何か情報を漏らしていないかに

ついて聞いてみようと思った。

考えていると少し疲れてきたので部屋の隅に追いやられているベッドに寝転がった。

すると、すぐに眠気が襲ってきた。

夢の中なのに眠れるんだ。

そう思うと同時にこれがただの夢ではないことを改めて実感する。

このまま寝ようとしていると再びコンコンとドアをノックする音が聞こえた。

「起きてる?飯持ってきてやったよ」

クマの声が聞こえた。このような場所でもご飯はくれるんだなと思った。アメとムチの原理で

私は「ありがとう」と言いかけたが、クマは私たちを夢に閉じ込めた悪い奴だということをとっさに思い出し無言で

受け取る。

「なんだよぉ。せっかく持ってきてあげたのに「ありがとう」の一言もないのぉ…?」

私が無言で受け取るとクマが不満そうな声をあげたので私が「あ、ありがとう…」というとクマは満足そうに帰ってい

こうとした。

このご飯は食べても大丈夫なのだろうか…?

「ちょ、ちょっと待って!!」

私が慌てて止めるとクマはゆっくりと振り向いた。

「毒…とか入ってないよね?」

私がそう言うとクマは自分の体に縫い付けられたポケットから紙を取り出した。

「この紙に書いてあるとおりね、おれたちクマは直接参加者に危害をくわえていはいけない決まりになってるんだ」

30:ちか◆g:2019/06/06(木) 17:40

>>29
ミス。
「おれたちクマは直接参加者に危害をくわえていはいけない決まりになってるんだ」…×
「おれたち悪魔は直接参加者に危害をくわえていはいけない決まりになってるんだ」…○

31:ちか◆g:2019/06/06(木) 17:55

【ゲームを進行する悪魔たちのきまり】

1.参加者に直接危害をくわえてはならない。
2.食事は与えなければならない。
3.参加者の体調管理はしなけなばならない。
4.参加者に触れてはならない。


紙にはそう書かれていた。

この【きまり】はクマの上の人たち。…つまり黒幕が作ったのだろうか。

「取り合えず、おれたちには警戒しなくてもいいってことさ。ちゃんと食べるんだよ。キミたちが体調崩して怒られる

 のはおれたちだ」

そう言うとクマは部屋を出て行った。

クマが持ってきた料理を改めて見るとハンバーグにレタス、スープなどと以外と普通なもので食べてみると味付けも

良かった。お腹いっぱいになって再びベッドに寝転がった。

キョウの嘘や明日の命令のこと。そもそもクマたちは私たちを脱出させる気があるのか。

一人になると、不安なことばかり考えてしまうので早めに寝ることにした。

と、いっても時計がなく、時間なんて分からないのだが。そもそもこの空間では時間がないのだろうか。

もし、時間が進んでいたら今頃家ではいつまで経っても目覚めない私を家族は心配しているだろうなと思った。

――――必ず脱出する。

みんなで、だ。

これ以上犠牲を出してはいけない。

私はフウのことを想った。

32:ちか◆g:2019/06/22(土) 10:34

「……おーい、起きてるかー?」

不意に部屋にクマの声が響き渡り私は目を覚ました。

声のする方に向くと、モニターの画面にクマの顔が映っていた。

「起きたようだねぇ。それじゃあ、昨日みんなが集まっていたメイン部屋に来てね。

 あ、拒否権はないよ。来なければキミは死ぬからね〜」

プツリとモニターは消え、再び真っ暗な画面が広がった。

こんなところで死ぬわけにもいかないので、私はすぐさま行くことにした。

部屋から出、私はうろ覚えに廊下を歩いていると、突然後ろから声をかけられた。

「おはよう、ナギちゃん」

振り向くと、柔らかい笑みを浮かべたコトが立っていた。

その優しい表情中に、疲労が雑じっているような気がして私は少し心配になる。

「おはよう。コトちゃん……どうしたの?なんか…しんどそうだけど…」

「な、なんでもないよ」

コトは必死に笑顔を取り繕っているようだった。

「コトちゃん…。私、協力するよ。大丈夫だから…」

私はコトの手を優しく包んだ。コトは私の手を握り返すと躊躇い勝ちに口を開いた。

「じ、実はさっき自分の部屋から出たときに部屋の目の前にこんな紙が落ちてたの」

コトは制服の胸ポケットから紙を取り出して私に見せた。


【ここに連れてこられたのは偶然やランダムじゃない。お前らには心当たりがあるだろ?】


鉛筆かシャーペンのようなものでしっかりとした字で大きくそう書かれていた。

「偶然やランダムじゃない。お前らには心当たりがあるだろ?って書かれていたから、私たち何か悪いことしたのかな

 って思って…。コトちゃんは何か心当たりある?」

私も人に恨みを買うようなことなどしていない。

「ん〜、心当たりはないかな…」

「だよねー。これ、誰が書いたのかな?敵側が書いたのかな…。でもあの子達ぬいぐるみだし…」

「う〜ん…敵側が全員ぬいぐるみだとは限らないし、仲間の中にこのデスゲームの真相をしっている人がいるのかも」

私は仲間の中に裏切り者がいる可能性も考えたが黙っておくことにした。

「まぁ考えたって分からないよね。いたずらの可能性もあるし、あまり気にしないで置こうか」

コトは紙を再び胸ポケットにしまった。

メイン部屋に着くと、私とコト以外の全員がすでに集まっているようだった。

私はヨリタとユウが真剣に話しこんでいるのが目に入った。

33:ちか◆g:2019/06/22(土) 11:05

ユウが話し終え、ヨリタから離れて行くと私はすぐにヨリタに駆け寄った。

「何を話していたんですか?」

「…キョウのことだ。キミにはユウとの話しの内容を伝えるべきか迷ってるんだキョウのペアとして知っておいたほう

 がいいのか悪いのか」

ヨリタは最後の方は私に言ってるのではなく独り言のように呟いているようだった。

私はクマとの会話を思い出した。

『彼は大嘘つきだよ。彼の嘘を暴くのもペアのキミの使命じゃないかなぁ』

ユウとの会話がキョウの嘘に繋がるのであれば、私は仲間内で険悪な空気になるのを防ぐために知っておかなければ

ならないと思った。

「あの、ヨリタさん…昨日、クマが言っていたんですけどキョウさんは大嘘つきらしいです。

 その嘘を暴くのが私の使命でもないんじゃないのかなって言われたんですけど……。

 ユウさんとの会話はそれに関係しそうですか?」

「そうだったのか…!関係するかどうかは分からないが、許容範囲の話の内容を教える。

 ユウのペアはチヤだろ?チヤも連れてきてくれないか?ユウにも関係することなんだ」

「分かりました」と私は言い、辺りを見渡してチヤの姿を探した。

チヤがユウと話している姿が見え、チヤと目が合ったので、私はユウに気づかれないようにチヤに手招きした。

チヤはユウに「少し抜けるね、ごめん」と言って、私たちの方へ来た。

「少し場所を変えよう」

私とチヤはヨリタについて行き、みんなから少し離れたところで話をすることにした。

「ユウから気になることを聞いたんだ。この話はユウやキョウ、他の人にも言ってはいけない。約束できるか?」

「はい」と私たちは頷くとヨリタは重い口を開いた。そして思いも寄らないことを言った。



「キョウは既に死んでいるのかもしれない…」



 

34:花鳥風月:2019/06/30(日) 19:23

「ど、どういうことですか!?」

「ユウが言うに、キョウは高校生の頃に自殺しているんだ。

 ユウとキョウは高校の同級生らしい。何故自殺をしたのかはユウも分からないと言っていた」

キョウは自殺をしていた…?

なら、ここにいるキョウは――――――――

幽霊…なのか?

「じゃあ、キョウくんは何でここにいるの?実はキョウくんは生きていたって落ち?」

チヤが聞く。

「ここは夢の中だ。死んだ人間も来れるんじゃないのか?」

なるほど、と私とチヤは頷く。

「キョウさんは「生きている」ってことが嘘だったんでしょうか…?」

「いや…微妙だな…。キョウは自分で「僕は生きている」と言っていないからな」

確かに「僕は生きている」とキョウは言っていない。もし、彼が死んでいたとしても嘘をついていることにはならない

のだ。

「なら…嘘とは一体…?」

「考えるだけ無駄だ。想像にすぎない。いつか本人の口から吐かすしかないだろう。

 この話から推理できることは【死んだ人間もこの空間に来ることができる】だ。

 もしかしたら、消えてしまったフウたちも助けることが出来るかもしれない…」

『助けることが出来るかもしれない』

私たちに少し希望が与えられたような気がした。



――――――――――推理に…すぎないが、だ。

35:あ:2019/07/04(木) 18:43

「はいはい、注目〜」

クマが短い手をパンパンと叩く。

「みんな集まったし命令するよ。

 サブ命令1。

 ―――拘束を解け―――

 ルールはまぁそのまんまの意味だね。拘束を解くんだ。

 ペア同士で手首と足首を片一方ずつ拘束するから鍵を見つけて拘束を解くんだよ。ペアとの相性が試されるね。

 制限時間は…んー、そうだねぇ……サブだし一日あげるよ。

 それじゃあ…―――スタート―――」

クマが「スタート」と言うのと同時になにもなかったところに手錠が現れ、私とキョウの手首を拘束した。

足元を見ると二人三脚の状態になっていた。

辺りを見渡すとみんなもペアどうしで拘束されていた。

取り合えず、鍵を探さなきゃ…。

辺りには鍵が置いてそうなところはない。

「移動しましょう」

私は足を踏み出そうとしたが、キョウと息が合わず私はバランスを崩し、私たちは転倒してしまった。

「痛!」

「……何してんの?」

キョウは冷たい目で私を見ていた。

―――私だけが悪いんじゃないのに…!

「キョウさんもちゃんと息を合わせてくださいよ!!立てりますよ!せーの!!」

しかし、上手く息が合わず、再び転倒してしまった。

「ちょ、ナギさん重い重い重い!!」

私はキョウに折り重なるように転倒していた。

…重いとは失礼な!!

「ご、ごめんなさい…!」

文句を飲み込み私は取り合えず謝った。

36:ちか◆g:2019/07/04(木) 19:45

私はふと気づいた。

―――キョウは体温がある。

生きている…のか?死んでいないのか?
ならユウの知っているキョウは何者なんだ?
私の頭の中で疑問が溢れる。しかし、答えなんて見つかるわけがない。


「何ぼーっとしてんの?取り合えずどいて!!」
私はキョウに押しのけられ我にかえる。
私は身動きにしにくい拘束された体をなんとか動かした。
「あ、すみません…!取り合えず立てりましょうか。せーの!!」
やっと私たちは立てる事が出来た。
「鍵を探しにあの部屋へ入ってみましょう」
私は適当な部屋を指した。
「そうだね。ナギさん、次こそ転ばないでね」

―――だから私だけが悪いんじゃないってば…!

私は争ってる場合ではないと思い、その言葉を腹の底に飲み込んだ。
私たちは転倒しないようにゆっくりと覚束ない足取りで部屋へ向かった。
やっとのことで部屋に入ると、私はさっそく探索を始めた。部屋の中は意外と綺麗に整頓されていた。それほど時間は
費やさなくても大丈夫そうだ。
私たちは時間のロスを少なくするため言葉も発さず、黙々と探索を続けた。
時間のロスを少なくするため、といっても実質、話さないのは彼と話すことなどないからなのだが…。


部屋の探索を一通り終えると、「ここにはないみたいだね」と言って他の部屋を探索すること3時間。
一向に鍵は見つからなかった。
私たちは少しの間だけ休憩することにした。

「はぁ一体どこに隠してるんだよ……鍵なしで開けられないかな」
キョウはガチャガチャと手錠をいじった。
「まぁ無理でしょうね…。まだまだ時間もありますし、焦らずに探しましょう」
「そうだけど24時間も他人と拘束されたまま過ごすなんて絶対無理だろ。最大でも5時間ぐらいじゃない?さ、行こ行こ」
私はキョウに急かされるまま立ち上がった。
あんまり休憩してないのに……。

私たちは再び、部屋を入っては出るの作業を繰り返すことにした。


*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*
文章の書き方変えました!!
前の書きかたの方が良かったな、と思ったら教えてください~!

37:Re~ありさ:2019/07/04(木) 20:45

>>36
初見失礼します(^^)とても面白いです
投稿頻度もちょうどよくて、いいです!!

文章の書き方ですが、今の方がいいと思いました。(個人の感想です)
これからも読みます‼よろしくお願いします!

38:ちか◆g:2019/07/05(金) 17:58

>>37
見てくださってありがとうございます!!
受験生なので投稿頻度が下がってしまうかもしれませんがこれからも宜しくお願いします<(_ _)>

わかりました!では次回もこの書きかたで行かせてもらいますね~!
ありがとうございます。こちらこそ宜しくお願いします!!

39:花鳥風月:2019/07/08(月) 17:19

「キョウさんは仲間を信頼してますか?」
探索中、私は何気なく問いかけた。
「いいや、少なくともあのスーツ男とユウさんのことは信頼してないね」
キョウは冷たく言い放った。
スーツ男とはヨリタさんのことであろう。
「…そうなんですか。私は皆さんとのこと信頼…してます」
私が言い切るとキョウは冷たい目で私を見た。
「どうせ、口だけでしょ?」
「そんなことありません!!キョウさんは冷たいこと言いますけど、本当はいい人だって、信じてまよ!」
「どうせ口だけだ」とキョウに言われることを覚悟していたのだが、キョウは呆然と私を見るだけで何も言ってこなかった。キョウの真っ黒な瞳をみていると吸い込まれそうだった。

「あ、あの…」
私は静かな空間に少し気まずくなり、話しかけた。
「あ、ごめん…えっと…僕…」
キョウは何か言いかけたが口を閉ざしてしまった。
「どうしたんですか?」
私が問いかけるとキョウは意を決したように私を真っ直ぐな目で見た。

「俺、実は――――――――」

キョウがそう言うと同時にカチャリ、とドアの開く音がしヨリタとシュンスケが入ってきた。
「どうしたんだ?二人ともそんなに改まって…。お邪魔してしまったか?
でも、キョウ。女子中学生とは駄目だぞ」
ヨリタが真顔でそんなことを言い放った。
「いやいやいやいやいや!!そんな趣味ないから!!!!」
キョウは今まで見たことのなかった必死さで否定していた。

―――『実は』の続きは聞けそうにないな。

一体なんだったんだろう、と考えているとヨリタが不意に話しかけてきた。
「ナギは何か手がかりを見つけたか?」
「いや、まだ鍵も見つけられていません」
「そうか…どこにあるんだろうな」
そういうとヨリタは部屋の中の机の上を探り始めた。
ふと、シュンスケの方を見ると、シュンスケも意外にも鍵を探しているようだった。

「手分けした方が早いよな…。俺たちはキッチンみたいな部屋に行ってくるからナギとキョウは実験室みたいなところを探してきてくれないか?」
ヨリタは私たちにそういい残すと部屋を出て行った。

40:花鳥風月:2019/07/08(月) 19:55

番外編(フウ)

「私、実は自殺しようとしてたんです。
親からもクラスメートからも嫌われていて辛かったんです。私のことを好きになってくれる人はいないんだってこと
やっと分かって、死ぬ覚悟は決めていました。でも、いざ屋上に行くと怖くなってたった一歩が踏み出せなかったん
です。私は今が今度こそちゃんと死ぬ機会だと思ったんです。しかも今回は私の死が人の役に立てる。
こんなチャンスはもう二度と来ないと思います。長く語ってすみません。私のことなんて興味ないですよね。
短い間でしたが…ありがとうございました!
みなさんお元気で…!!」

言い切った。言い切ったぞ。私はもう、過去みたいな弱い私じゃないんだ。
私は女神の像まで歩きだした。

――――嫌な思い出を思い出しながら…。

一歩踏み出す。
私はクラスメートに屋上に閉じ込められたことを思い出す。
私は「ごめんなさい。ごめんなさい」と謝るが、彼女たちは私を開放する気はない。私を見て高笑いをしている。

二歩目を踏み出す。
私は親に裏切られたことを思い出す。
私は親にいじめのことを相談する。親は「今、忙しいから」と言って、私の相談を明日に後回しする。
明日も明日に後回しする。そして明日も――――。

三歩目を踏み出す。
私はあの、ヒドイ担任の先生を思い出す。
私は先生にもいじめのことを相談する。先生は「彼女らにいじめをやめさせる」と私に約束する。
しかし、実際は先生は彼女らを注意すらしていなかった。

女神の像まで後一歩。

「フウちゃん…!!!!!私はキミのこと好き!!!!」

突然私に声をかけられ、私は思わず振り向く。
そう言ったのはコトだった。私は思わず嬉しくなるが、すぐにその感情を抑える。

―――私は今から死ぬんだ。

この決意は今さら変えれない。
「少ししか話したことないのにそんなこと言わないでよ…。
死ににくくなっちゃうじゃん……。またね…コトちゃん。私もコトちゃんのこと大好き!!」

41:花鳥風月:2019/07/08(月) 19:58

フウの番外編が思ったより長くなってしまったので、次に番外編#2を更新します~!
他のキャラの番外編が見たい!というのがあればリクエストお願いします!

42:花鳥風月:2019/07/09(火) 19:42

番外編(フウ#2)

私はそう言うと、決心をし、誰にも止めさせまいと振り返りもせず女神の像の下へ走った。
走っている間、みんなのことを考えていた。

コトちゃん。コトちゃんの持ち前の明るさで、みんなと仲良くして欲しいな!
ユウさん。サブ命令2の【かくれんぼ】で、私たちが閉じ込められたとき、怖がる私を励ましてくれて安心できました!
ヨリタさん。あなたがいるととても安心できます!みんなのことをよろしくお願いします。
チヤさん。今まで通り、みんなに優しくね!絶対、みんなで脱出するんだよ!
シュンスケさん。いつか、みんなと笑って話せるときが来ることを願っているよ!
キョウさん。少し、冷たいけれど本当は優しいですよね!モモカちゃんのことよろしくね!
モモカちゃん。どうしたのかな?少し、心配だよ…?モモカちゃんと話してみたかったけれど、時間が許してくれないみたい…。
ナギちゃん。ナギちゃんともっと仲良くなりたかったなぁ…。もう誰も失わないでね!犠牲者を最低限にする。じゃなくて、みんなで脱出が目標だよ!

みんな、頑張ってね!
…少しの間だってけれど、私のこと、忘れないで欲しいな…。

―――またね。

フウが女神の像の下まで辿り着くと女神の不気味に光った。
その瞬間、フウの姿は跡形もなく消え去った。

残ったのはフウの身につけていたブレスレットだけだった。

43:花鳥風月:2019/07/09(火) 19:44

>>42
ツグミさんを忘れてしまいました~…
申し訳ないペコリ(o_ _)o))

44:花鳥風月:2019/07/13(土) 19:48

「はい…あの……話の続きを…」
私は『俺、実は――――――――』の後、何を言おうとしたのか気になって、思い切って聞いてみた。
「…あ、あぁ忘れて。…実験室、行くよ」
キョウは私と拘束されている側の手を引っ張って部屋をそそくさと出て行こうとした。私も引っ張られて仕方なくついて行く。

部屋を出ると、目の前に実験室があった。中に入ってみると、かすかに消毒の臭いがした。
「うわっ、不気味だね…」
キョウは部屋を見渡してそう言った。部屋の真ん中にはベッドがあり、その周りには点滴や注射なども置いてある。
「そうですね。手速く探索を終えて、部屋を出ましょう…!」
あまり長居はしたくないような場所だ。さっさと探索を済ませよう。まずはあの棚から……。
私が歩き出した瞬間……。

――――――――うわっ!!!!!!!!

足にぬるっとした感触がし、私は転んでしまった。

「ナギ!!!何してんの!?!?――――――――ってうわ!!な、ナギさん…足もと、それって…」
私は反射的に足元を見た。床にはドロドロとした液体が広がっていた。

……血?

「ナギさん!!大丈夫!!??それってナギさんの血じゃないよね!!??」
私は自分の足を見てみるが、傷もないし、痛くもない。
「はい。私の血じゃないです…。…ん?これって…」
私は床に違和感を感じた。
「ど、どうしたの?」
「…この床板、外すことができます!!キョウさんはそちら側を持ってください!!」
私たちは床板を外そうとしたが、ぬめぬめとした血が邪魔して上手く持ち上げることが出来ない。
どうすれば……。
「何か棒みたいな、床板を持ち上げられそうなつっかえになるものはないかな?」
キョウは血だらけの手で、ベッドの周りを探索し始めた。
「確かに、つっかえになるものがあれば床板を持ち上げることができますね。探しましょう!!」

45:花鳥風月:2019/07/15(月) 15:11

私はごちゃごちゃとした棚の上を必死に探した。
「ありました!!」
意外とすぐに見つけることが出来た。私は何に使うのか分からない、細長い棒を見つけた。
「よし!じゃあ、その棒を床板に挟んで持ち上げよう!」
私が棒を使って、少し床板を浮かせると、キョウは手で床板を外した。
床板のあった下には真っ赤な水溜りがあり、血が私たちのいる場所へと溢れ出した。
「…なんなんだ?罠だったのか!?ナギさん!血で動けなくなる前にこの部屋から出よう!!」
キョウは床に溢れ出した血に滑りながらもなんとか立ち上がった。

…あれ?水溜りの中になにか見えるような……。

「ナギさん!何してるの?早く立って!」
キョウはいつまでも座って真っ赤な水溜りを見ていた私を急かした。
「待ってください!!水溜りの中に何かあります…!!」
水溜りを凝視していると、何かがだんだんと浮かび上がってきた。
「ほ、本当だ…どうする?取ってみようか」
キョウは一瞬躊躇ったが、真っ赤な水溜りの中に手を入れ、「何か」を掴んだ。
「それって…鍵の形をしてませんか?」
血が周りに凝固して、見えにくかったが鍵のような形をしていた。
キョウは自分の着ていたTシャツの裾で血を拭った。

「鍵だ…!!!!!」

「これでやっと拘束が解ける!!」
キョウは手錠に鍵を差し込んだ。

ガチャガチャ…ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ…。

「あ、あれ?おかしいな…。なんで…」
キョウは次は足の拘束に鍵を差し込んだ。

―――――ガチャッ。

足の拘束を解いた瞬間、鍵は消え去ってしまった…。

「足の拘束専用の鍵だったんですかね…。手錠専用の鍵も見つけないといけないのでしょうか」

46:セーラームーン 月にかわってお仕置きよ:2019/07/15(月) 15:12

すごい!!頑張ってください!

47:花鳥風月:2019/07/15(月) 15:15

>>46
ありがとうございます~!そう言って下さるとやる気がでます!

48:タピオカパン:2019/07/15(月) 15:25

>>47 
いえいえ〜✧◝(⁰▿⁰)◜✧

49:花鳥風月:2019/07/15(月) 16:01

>>48
実は自分もタピオカパンさんの小説読ましてもらっています!
面白いです!!頑張って下さい~!

50:タピオカパン:2019/07/15(月) 16:30

>>49
ホントですか!?
ありがとうございます!嬉しいです!(◍•ᴗ•◍)❤

51:花鳥風月:2019/07/19(金) 16:21

「そうっぽいね…。時間に余裕はまだあるのかな」
「時計がないので分かりませんけど、制限時間が24時間なので、焦る必要はないと思います」
「そうだよね……」

しばらく私たちが無言でいると、突然、カチャリとドアが開けられた。
「どうだ?何か見つかったか?
 ……って!!うわっ!!どうしたんだ…!!それ……」
ヨリタは血だらけの私とキョウに驚いたようだ。
「大丈夫か!!」
ヨリタは慌てて私たちの元へ寄ってきた。
「大丈夫です。私の血じゃないんです」
「じゃあ、その血はなんだって言うんだ!?」
「えっと、それは――――――――」
     






「なるほど…そんなことがあったのか。俺たちも鍵を見つけて足の拘束だけは解くことが出来たんだ…でも、手錠はまだ……」
ヨリタはシュンスケと拘束された左手を私に掲げて見せた。
シュンスケを改めてみてみると、かなり不機嫌なようだった。彼はメイン命令1。 ―――女神の生け贄――― の時以来、特に言葉を発していない。少し心配だ。

「二つも鍵があるとなると、少し、探索を急いだほうがいいのかもな。…行くぞ」
ヨリタはシュンスケを連れて部屋を出て行った。

…もしかすると、シュンスケはヨリタに仕切られることが気に入らないのかもしれない。
いつ何かが起きてもおかしくないぞ…。
「キョウさん!ヨリタさんが心配です…!二人の後をつけましょう!」


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