半殺し屋の骨牌録

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10:作者不詳◆gU 代表なくして課税なし:2019/08/17(土) 22:21

少女は勢い良く頭を下げると、申し訳なさそうに謝罪した。

「すっ、すみません紗宵(さよい)さん……!」
「まぁいいさ」

紗宵、聞き覚えのある名だと思ったら、先ほど九島少年の話に出てきた人物だ。
つまり九島京子と交流があった人物。

「九島さんとこの息子さんか、久しぶりだね。立ち話もなんだ、座ったらどうだい?」
「はぁ……」

俺と少年は顔を見合わせると、端っこのカウンターへと腰掛けた。
平日の昼間っから酒を飲む酔狂な連中は後ろの麻雀に熱中しているオヤジくらいなもんで、カウンターには俺たち以外の客はいなかった。

「好きなカクテル言いな。アタシの奢りだからうんと高いのでもいいさ」

紗宵と呼ばれていた女性は手際よくカクテルグラスを拭きながら言った。

「俺未成年だし……」
「あ、俺も勤務中なんで飲酒はちょっと……」
「ノンアルのカクテルもあるだろうが! ちっとは腕を自慢させておくれよ」
「んな事言われても俺にカクテルの善し悪しなんか分かんねぇよぉ。ノンアルのカクテルとか知らねぇし」

少年はメニューを訝しげに眺めてブツブツと呟いている。

「じゃあ無難にフロリダで……」
「ふろりだ?」
「ちょっと豪華なオレンジジュースだと思え」

フロリダとはもちろん、あのオレンジの産地で有名なアメリカのフロリダからついたカクテルだ。
オレンジジュースにレモン果汁や砂糖、アロマチック・ビターズ(リキュールの一種)を加えたもので、ノンアルコールカクテルの代表みたいなものだ。

「フロリダのカクテル言葉は元気。両親を亡くして落ち込んでる今のアンタに必要なもんじゃないかい? 少年」
「あっ、そういえばそのこと……! なんでおばさんと百合が知ってんだよ!?」

そんな会話を一言二言交わしたその間に、彼女はいつの間にか二人分のカクテルをカウンターに置いた。
カクテルグラスには夕焼けのようなオレンジが注がれ、レモンとチェリーがトッピングに浮かんでいる。


新見川すみれ◆96:2019/08/21(水) 10:38 [返信]


えー、それでは批評を依頼して頂いたと云うことで、僭越ながら批評していきたいと思います。

先ずはこの小説の良いところから。
最初に読んでみて思ったのは、「思わず冷や汗が出そうな程表現力、組み立て力、応用力、共に長けている。」ということッス。
今まで葉っぱ天国の素晴らしい小説を幾つも読ませて頂いたッスけど、その中でも上位に躍り出る程の文章力だと思うッス。
序盤は主人公とその周りの人物との関係性を描写しながら、そこから死体や証拠物などの捜査等を進めつつ、
人物達の事件への関連性を明確にしていく......いやぁ、正直ドキュメンタリー番組でも観てるのかなと錯覚する程の完成度ですわぁ。
麻雀についての知識、警察の業務に関する知識....メジャーな情報だけ掻い摘むのではなく、
マイナーな情報も小説の節々に取り入れている作者様の知識量に驚愕と同時に感服しましたッス。
更に途中から「半殺し屋」こと紗宵さんが物語に積極的に干渉してくることによって、
さらっと「タイトル回収」もこなしているのがシナリオ管理、そして伏線の回収が上手だと思った所以ッスね。

次にこの小説の改善点を、辛口コメントを御所望と云うことで、気になった所をバンバン指摘していきたいと思うッス。
とはいっても、小説自体の完成度が高めなのでお節介みたいになっちゃうのは目を瞑って欲しいッス。

先ずは一つ目、早速ですが>>3の「東塚黒之助、今年配属されたばかりの新米刑事だ。」の所。
コレ、ちょーっとだけ言葉足らずの様に思うッス。これだけだと一瞬ですが「視点主」、
要するに主人公の説明ではなく「他の登場人物」の説明に聞こえちゃうんスよね。
例えば、「__私は東塚黒之助、今年配属されたばかりの新米刑事だ。」と云う風に書けば
「私は」と一人称と主語が入っているので「この名前は主人公の名前だな、」と認識しやすいッス!
次に二つ目、>>10の「紗宵と呼ばれていた女性は手際よくカクテルグラスを拭き取りながら言った。」の所。
コレに関してはッスねー、「何でカクテルグラスを拭いたか」も書いた方がイイ感じの文になると思うッス!
例えば、「紗宵と呼ばれていた女性は手際よくタオルでカクテルグラスを拭き取りながら言った。」の方が
詳しく情報を伝えられると思いまッス。一度の文章の情報量を多くしすぎてもしつこくなるッスけど、
少なすぎると文章の内容に「厚み」や「ゴージャスさ」を感じられなくなるんですわ。
最後に三つ目、萬屋さんは黒之助さんに想いを寄せているらしいッスけど、
想いを寄せている理由は書いた方が良いんじゃないスかね?人間関係の描写は意外と重要ッス!
コレで登場人物の胸の内や思考、他人に対する関心等が分かることもあるッスからね!

こんな所ッスかね!色々書かせて頂きましたが、この小説を応援してることに変わりはありません!
コレからも執筆を続けて、尚且つ楽しんで、疲れちゃったら適度に休むッス!
それでは私はドロロンッ!させて頂きますね!


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