魔法少女マジカル☆ロジカル

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1:苺ましまろ*◆LM:2015/12/27(日) 23:51 ID:W6s

__人には誰にでも、心の奥に輝く宝石を持っている。


※若干グロ注意です。

28:苺ましまろ*◆LM:2018/01/26(金) 01:26

第六章

「新しい使命」

29:苺ましまろ*◆LM:2018/01/26(金) 01:33

私が訊ねると、その人は待ってましたと言わんばかりに目を輝かせた。
「そう、今日はそれを伝えに来たの。本当は博士が死んだ日に言わなきゃいけなかったんだけど、博士ったら部屋に人を入れたがらないでしょ?家族の私すら入れてくれないのよ?」
「ソンナコト訊イテマセン。私ハコレカラドウシタライインデショウカ。」
私はその人の話を無視して訊いた。
「……そっか。博士は無駄話が嫌いだったものね。」
その人は少しの間黙ってから、そう呟いた。
「ごめんね。ちゃんと教えてあげる、博士があなたに何を望んだのか、そしてあなたは何をするべきなのか。」
その人は、得意げに笑った。

30:苺ましまろ*◆LM:2018/01/26(金) 23:02

「あなたには今日から、完璧な世界を作ってもらうわ!」
「完璧ナ世界?」
完璧って、博士が大好きだった言葉だ。私が記録している限り、二十万回はこの言葉を発していた。
「そう。博士が望んだ世界を、あなたが作るの。」
その人はそう言って、薄汚れたスカートのポケットから、レポート用紙をとりだした。そこには乱れた文字がぎっしりと並んでいた。
多少乱れはあるけど、これは博士の字だ。

31:苺ましまろ*◆LM:2018/01/26(金) 23:06

「これは、博士が心臓が止まるその瞬間まで書いていた、あなたへのメッセージ。ここには博士があなたを作った理由と、あなたがやるべき事が書いてあるわ。でも……」
「……?」
気が付いたら、右の目玉代わりのビー玉を押されていた。
ここは、額に取り付けてあるカメラで、映像を記録する為のボタンだ。
「ここに書いてある事をするだけじゃ、完璧な世界は作れないわ。だから私が、あなたに新しい使命を与えてあげる。」
その人は、目を見開きながら口角をつり上げた。

その人が取り出した別のレポート用紙が、私の中に記録された。

32:苺ましまろ*◆LM:2018/01/27(土) 07:22

第七章

「心臓」

33:苺ましまろ*◆LM:2018/01/27(土) 07:23

――……

『あなたの名前は、』

34:苺ましまろ*◆LM:2018/01/27(土) 07:30

――……

『あなたにはこれから、不完全なこの世界を、完璧な世界にしてもらうね。
その為には、不要なものを始末しなければいけない。
不要なものは、主に他人を貶める人間、罪を犯す人間、それから他の博士が作り出したロボット。
日本の中だけでも、あなたと同じようなロボットが何台も存在する。でも、決して博士と同じ事を望んでいるとは限らない。中には人殺しなんかを当たり前とする世界を作り出そうとしている者も居るわ。人殺しがどれだけいけないことか、あなたの中にはちゃんと記録されているわよね?
だから、博士があなたに教えた不要なものを、ひとつ残らず始末しなさい。』

レポート用紙には、そう書いてあった。
博士の字じゃナい。博士の意思じャなイ?
でモ、こレガ私の使命。
私ハ、完璧な世界ヲ作ル為ニ、不要ナモノを消ソウ。

35:苺ましまろ*◆LM:2018/01/27(土) 07:37

そうと決まれば、早く終わらせてしまおう。
「ちょっと待って。」
肩をぐいっと引っ張られる。
「ネジガ外レテシマイマシタ」
「あ、ごめん」
私が文句を言うと、その人はポケットからドライバーを取り出して、緩んだネジを戻してくれた。
「不要なものを始末する前に、まだやることがあるの。
今のあなたはただのロボットだから、コンセントに繋がれてないと動けないわ。仮に繋がれてなかったとしても、バッテリーはいつか切れる。あのアパートも死体が腐敗してるから、頻繁に出入りすることは難しいわ。
だから、充電しなくても済むように、あなたには心臓をあげる。」
「心臓?」
「そう。これは、――の心臓だから、」
その人は握ったドライバーを、私の胸に突き刺した。
あ、博士もこんなふうにしてたな。もっと優しくしてくれないと、穴が広がって使い物にならなくなるのに。

「大切に、してね。」
心臓と私が、繋がれた。

36:苺ましまろ*◆LM:2018/03/20(火) 18:10

第八章

「初めての始末」

37:苺ましまろ*◆LM:2018/03/20(火) 18:14

気が付いたら、路地裏で寝てしまっていた。
塀と塀の隙間から見える空はもう、深い紺色に染まっていた。
星も月も見えない。寂しい夜。
博士は、そんな夜が好きだって言ってたっけ。誰もが寝静まったこの時間が、とても好きなんだと。ふふ、懐かしいなぁ。
…………。
……あれ?
私、まるで人間みたいだわ。博士との思い出を振り返って、こんなに楽しい気持ちになるなんて。
そう、これが楽しいって気持ちなんだわ。初めて感じたけど、すぐに分かった。私、今、とても楽しい。
それから、すごく寂しい。博士が亡くなったことが、いまになってやっと悲しいと思った。
これも、あの人が私に繋いでくれた心臓のおかげ?
でも、気持ちって心臓から伝わってくるものじゃないはずよね。
確か……脳、だっけ。
あの人は、私に脳みそまでくれたってことなの?

38:苺ましまろ*◆LM:2018/03/20(火) 18:26

そうだ、あの人は今どこに居るの?私が眠っている間に、どこに行ったんだろう。
この心臓が誰のものなのか、はっきり聞き取れなかったから、もう一度訊こうと思ってたんだけどな……。

「あーもう、くそ!」
ガン、と何か硬いものが塀にぶつかった。音がした方を見ると、そこにはベコベコに凹んだドラム缶が転がっていた。
「ちっ……何だよあいつ、いっつもいっっつもえっらそうにしやがってっ……」
再びドラム缶が塀にぶつかる。
誰かがドラム缶を蹴ったんだわ。
「あなたは誰?」
私が訊ねると、その人はびくっと肩をはねらせた。
「は!?何だよっ」
私に気付いてなかったのね。
「どうしてそんな事するの?」
私がもう一度訊ねると、その人は小さく舌打ちをして、私に背を向けた。
「待って」
私は立ち上がって、乱暴にその人の腕を掴む。
「離せよ!」
その人は私に掴まれた腕をぶんぶんと振り回して、何とか振り払おうと必死になった。
でも、ロボットの私の力には適わない。
「くそ、何なんだよ!」
「あなたはだれ、どうしてそんなことをするの、って訊いてるの。」
「は!?何でんなこと話さなきゃいけないんだよ!」
「気になるから。」
「知るかよ!」
「あなた、悪いことをしたのね。だから話さないんでしょう。」
「は!?何で私が悪いんだよ!悪いのは全部あいつだろ!」
「あいつって?」
「父親だよ!いつもいつも偉そうにしてムカつくんだよ!」
「父、親……」
「そうだよ!あいつにムカついたからアレを蹴ったんだよ!
話したからもういいだろ、いい加減離せって!」
「あなた、不用」
「え?」
私のつぶやきを聞き返したその人の口を、腕を掴んでいない方の腕で掴み上げた。

39:子桃__こもも:2018/03/22(木) 23:52

「いったっ……離せってば!」
その人は口をもごもごと動かす。
「あなたは不要だから、排除しなくちゃ」
「な、何言って――」
次の瞬間、私の右腕がステッキ状に変形する。
そして、ぱん、と、小さな音を立てながら、その人は肉塊に姿を変えた。

これが、初めての「使命」だった。

40:こもも◆/s:2018/06/05(火) 23:30

第九章

「排除」

41:こもも◆/s:2018/06/05(火) 23:32

それから、私は何回も、何十回も、何百回も、使命を果たしていった。

弱い者をいじめる者。
嘘を吐いて人を騙す者。
暴力を奮って言うことを聞かせようとする者。
罪のない人をころす者。

もう数え切れない。私は何人も、殺した。

42:こもも◆/s:2018/06/22(金) 22:19

遠い昔、博士が「人が傷付くと、人は胸が痛む」と言っていた。だけど不思議と、私の心は痛まなかった。それは私が人じゃないから?それとも私が消していった不要な人が、本当は人なんかじゃないから?
考えても分からない。分からないのがもどかしくて、私はそれを紛らわすために、不要ではない人間まで殺していった。

43:ちもも◆/s:2018/07/19(木) 20:55

もう何回夜を迎えたんだろう。
朝も昼も夜も、私は鮮血を浴びていった。目の前にある肉塊を蹴散らしながら、私は無我夢中で人を殺した。
もう、不要だとか不要じゃないとか、分からなくなってしまった。
博士は私に何をして欲しかったのか。それが分からないのが、苦しかった。
胸が張り裂けそうになった。細い針金でぐるぐる巻きにされて、そのまま左右に引っ張られるような気分だった。ぶち、ぶち、と、肉が張り裂けるような音がした。
また、一人殺した。私はもう、訳が分からなくなった。

44:ちもも:2018/08/02(木) 21:22

第十章

「残された人間は果たして……」

45:ちもも:2018/08/02(木) 21:25


「ああ……」
全身血まみれの私を見た人間が、悲鳴をあげながら逃げていった。
もう、私の存在は、全世界に知れ渡っていた。
テレビ番組はすべて私の話題で埋め尽くされている。
『この少女を見たら、すぐに屋内に避難して、警察に連絡してください。』
そんな声が、建物に張り付いた液晶画面からながれていた。
この間までは人で溢れかえっていた子の交差点にも、今は私しかいない。
ふと、私は思った。
人間は、みんな敵だ。
みんなみんな、不要だったんだ。
博士は、人間を絶滅させたかったんだ。
完璧な人間なんでいなかったんだ。
みんな、私を見たら逃げていく。それって、弱いから、私に勝てないから。そうでしょう?
だから、私は、人間を1人残さず消さなくちゃいけないんだ。

46:容姿端麗なぷーき、新居浜まで泳ぐ:2018/08/02(木) 22:50

レス失礼します。
めっちゃ面白いです…!
応援してます!

47:ちもも:2018/08/03(金) 18:57

>>46ありがとうございます☺︎︎

48:スノーフレーク◆0ImvZSZ2ic:2018/08/22(水) 23:49

続きかいてください

49:ちもも:2018/08/25(土) 19:57

>>48ありがとうございます!書きますね☺︎︎☺︎︎☺︎︎

50:ちもも:2018/08/25(土) 20:05


残された人間を、ひとつ残らず殺さなきゃ。
そう思った私は、信号が点滅する交差点の真ん中で、くるりと体を半回転させた。
「……あ」
私が進もうとした先に立っていたのは、私に心臓をくれたあの人だった。
「あなたは」
「ねえ、今、あなたがどんな存在になってるか分かってる?」
不思議と、その人の顔は苦しげに歪んでいた。
「分かってますよ。私は博士のために世界を綺麗にしてるだけなので、どうでもいいですが」
「違う!博士は、こんなふうになる事を望んでたわけじゃない!」
その人は叫んだ。
「あなたに博士は、色んな人の気持ちを理解して、人を助ける事が出来るロボットにしたかったの!博士はあなたに学習させたはずよ、博士があなたにしてきたような事をする人が居たら、そんな事をする原因を突き止めて、その人も被害者も両方助けてあげるようにって!なんで、何でこんなこと……」
「はぁ。あなたは何を言ってるんですか?」
「もうやめて!警察に行って、あなたは壊してもらうべきよ!」
「それは出来ないです。」
「なら、私が責任を取って――」
その人は、背後に隠していた手を突き出した。そこに握られた包丁は、太陽の光を受けてぎらりと鈍く光っていた。

「――あなたを」
「責任を取って、死んでくれるんですね」

「――あ」

私は、その人の顔を殴った。目が潰れた。鼻が破れた。口が裂けた。その人の顔は、原型を留めないほど醜く潰れてしまった。

そこに残ったのは、汚い肉塊と、わたしだけ。

「…………私がしねばよかったんですか」

私は、何故か死体に話しかけていた。

51:ちもも:2018/09/11(火) 16:39


それから、私は世界中の人を殺し続けた。

もう、何も無くなってしまった。

動物も、全部殺した。

私しかいない。

地球に残ったのは、私だけだった。

そして、私は自分を壊した。

博士に託された使命を終えて、その博士もいないのなら、もう私が生きている意味も理由もないから。

私頑張ったんだよ、博士。

だから、天国で、私の事、たくさん褒めてね。

52:ちもも:2018/09/11(火) 16:40

完結です。
最後まで読んでくれてありがとうございました。

53:&◆rI:2018/11/10(土) 18:24

良かった👏👏😄😚💓💓

54:ちもも:2018/11/21(水) 15:12

>>53ありがとうございますε٩( ºωº )۶з

55:ちもも:2018/11/21(水) 15:13

こんな三年前のどういうお話にしようとしてたかも覚えてないような継ぎ接ぎの小説を読んでくれてありがとうございます(๑╹ω╹๑)

56:千百宇 なんだか続きが書きたくなったので書きます。:2019/05/06(月) 11:53


いつからか、私の中の設定はおかしくなっていった。
博士は、不要な人間を排除してほしいなんて望んでなかったんだって。本当は、みんなが幸せに生きていけるような世界をつくりたかったんだって。
それじゃあ、私はどうして使命を間違えてしまったんだろう?あの女の人と出会ってから?いや、もっと前だ。私は、ずっと博士は完璧な世界を望んでいると記録していた。でも、違ったらしい。
どういうことだろう。薄れていく意識の中で、私は暗闇を手探りした。

……あ。そういえば。
あの女の人が言ってたな。「私以外にも、私のようなロボットがいる」って。
そのロボット達は、どうなったんだろう。きっと、知らないうちに私が殺したんだろう。
そのロボット達は、自分の生みの親である博士の願いを叶えてあげられたのだろうか。果たせる前に、私に壊されたのだろうか。
分からない、わから――

意識が薄れる中、心臓が止まった。

アレ。コの感触ハ。

「……博士?」

私に埋め込まれた心臓は、博士の、モのダッた、

57:千百宇 なんだか続きが書きたくなったので書きます。:2019/05/06(月) 12:01


「ヤレヤレ。コイツハ失敗作ダッタナ。」
「エ……」
交差点の真ん中に横たわる私を見下ろすのは、死んだはずの人間達だった。
――いや、違う。
「マサカ、ナンデ」
ロボットか、お前らは。
「ドウシテ、生キテルノ」
「ソレハ自分自身ニ言ッテルノカ?」
ア。そうだ。心臓が止まったはずなのに、どうして生きてるの、私。
「オ前ハロボットダ。心臓ガナクトモ動クコトハデキルダロウ。ソウイウコトダ。オ前ハ死ネナイ。私達モダ。」
何を言ってるんだろう。心臓がなくなったなら、あとは電池が切れるのを待つだけだ。
「ハハハ。私ノ主ヲ殺シテオイテ、オ前ダケ天国デ主ト再会スルナンテサセナイカラナ。」
「私達ハ、博士ニ永遠ニ動ケルヨウニ設定サレテイルノダ」
「オ前ノ主ニソノ技術ハ備ワッテイナカッタヨウダガ」
「私達ニハ、ソノ技術モ備ワッテイル」
「ダカラ」
無数の手が、私に伸びる。
逃れたくても、自分で壊した体はもう動かなかった。

『私達ト一緒ニ、永遠ニ地獄デ生キテモラウ』


――……



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