川上奈緒の事件簿 リターンズ <お嬢様学園のいじめ>

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1:りさ:2019/02/24(日) 16:49

***************キャスト***************
いじめられる側

・川上 奈緒(かわかみ なお)
普通の学校からお嬢様学園へ転校。
のちに罠にはめられ退学になる

・修倉 未南(しゅうくら みなん)
奈緒が転校後にできた最初の友達。
いじめによって自殺未遂に追い込まれる

いじめる側

・姫川 椿(ひめかわ つばき)
日本有数のお金持ちの一人娘。
未南の元大親友

・和田 萌奈(わだ もえな)
椿の親友。男子にモテモテ。
可愛くてお金持ちだが素行が悪い


・野村由香子(のむら ゆかこ)
姫川椿に忠誠を誓う家来のような存在。
父親は椿の会社の重役

2:りさ:2019/02/24(日) 16:53

(1)

「転校生を紹介する。川上奈緒さんだ」
担任の先生が私を紹介した。

教室の女子生徒全員が私のことを見つめる。

「よろしくお願いします!!」

元気よく挨拶した。
その瞬間。
さっきまでザワザワと、にぎやかな
教室がシーンと静まりかえった。
うわ・・・・・。やっちゃった?

クスクスクスと静かな笑い声が聞こえる。

「え・・・・・・・・」
私の挨拶に誰も反応しないので
きっと失笑されたのではないかな?

「みんな、拍手」
先生がそれをフォローするかのよう
にみんなに拍手を促した。

そうすると、まばらだがパチパチと
拍手が起こった。

あれ?
なんだか、みんな嬉しくなさそう。
もしかして歓迎されてない?
そんなの気のせいだよね……。

「川上さんは親の仕事の都合で
 転入してきました。みなさん
 仲良くしてあげてくださいね」

3:りさ:2019/02/25(月) 21:52

挨拶が終わったあと。
先生から窓際の一番後ろ
の席に座れと言われた。

隣の席には、飛切りの美少女がいた。
びっくり!
まるでアイドルみたい!
うわぁー。かわいい。
この子と友達になりたいな。

そう思い。
ホームルームが終わるとすぐに
隣の席の美少女に話しかけた。

「川上奈緒です。よろしくね」
「あ、修倉未南です。よろしく」
急に話しかけられたからか
彼女は驚いた表情を見せた。

「この学校のこと何も知らないから
 いろいろ教えてね」

私が、そう、お願いすると。

「うん、困ったことがあったら
 何でも聞いて」

未南は、やさしくほほ笑んでくれた。
まるで天使のような笑顔だ。
かわいいだけでなく性格もいい感じ。
これは絶対、友達になるべきね。

「私のこと奈緒って呼んでね。
 ねえ? 未南って呼んでもいい?」

「いいよ」

「あとで私のこと、友達に紹介してね」
「あ……。私ね、いま、一人ぼっちだから」

未南は、小さな声で
そう言って顔を伏せた。

「え……。友達いないの?」
「いたよ。親友がね。でもいろいろあってね」
尋ねられた未南は表情を曇らせた。

「そっか。それじゃあ。私達、友達にならない?」
「うん、いいよ、私なんかでよかったら」

「ありがとう、すごく嬉しいよ」
「こちらこそ。ありがとう」
未南に笑顔が戻ったのがうれしかった。

やったね。

すぐに友達ができた。

友達ができなかったらどうしよう

という不安から一気に解放され

清々(すがすが)しい気分で

新しい学校生活が始まった。

4:りさ:2019/02/26(火) 21:29

(2)

キーンコーン・カーンコーン
チャイムが鳴った。
それと同時に先生が来た。

一時限目は数学の授業だ。
先生は、いかにも数学教師って
感じがする中年の男性教師だった。

先生は出席を取ったあと
「問題出すから解いてみろ」と
いきなり黒板に問題を書き始めた。

いきなりかよ……。

「難しいが良く考えれば解けるはずだ。
お前らは選抜クラスなんだ。これくらいは
解けるようになっておけ」

そう、このクラスは二年生の成績上位者
だけを集めた選抜クラスなんだ。

私は転校する前の学校で成績トップだったから
このクラスに入ることができた。
て、今朝、校長先生が言っていた。

「解答時間は15分!」
と先生が言ったので
問題を解き始めた。

私は無言でシャーペンを走らす。
夢中になっていると15分なんて
あっという間だった。

「誰か解けたやついるか?」
先生の問いに反応する人はいなかった。

手をあげようかな?
私は恐る恐る手をあげた。
自信はないけど一応解けた。

「おっ。お前、たしか転校生だったな?
 できたか? 前に出て答え書いてみろ」

「はい!」

前に出て、黒板にスラスラと解答を書く。

「できました」
「よし、正解だ」
即行、正解って言われた。

「よく勉強しているな」
先生に褒められた。嬉しい。

とてもいい気分で、席に戻ると
隣の席の未南と目が合った。
未南は嬉しそうに、ほほ笑んでくれた。
私も同じように笑い返した。


(3)
終了のチャイムが鳴る。
一時限目が終了して休憩時間になった。
さっそく、未南に話しかけようとした時。

「あなた、スーパールーキー川上奈緒でしょ?」
「はっ、はい」

不意に誰かから声をかけられ、慌てて返事をした。

「やっぱりそうだ。テレビで見たことある。
女子の高校バスケ界じゃ、ちょっとした有名人だよね」
「有名だなんて、そんなぁ……」

そうそう。そうなんだ。
私はスーパールーキーの異名を持ってる。有名人かな?
なんか、私のこと知ってる子がクラスにいた。

「私は柄谷央弥(からたに おうみ)。私たち友達にならない?
 あっちに私の友達がいるから。あっちで一緒に話そうよ」

央弥ちゃんはショートカットでよくしゃべる活発そうな子だ。
うん。大歓迎だよ、私も友達になりたい。

「え! いいよ! 未南も一緒に行こう!」
未南に声をかけた。
「未南は来なくていいよ」
しかし、未南の返事を聞く間もなく
なぜか央弥ちゃんに拒否られた。

「なんで未南は来ちゃダメなの?」
「私、未南のこと嫌いだから」
「ええ? なんで?」
「その子いじめられてるから一緒にいない方がいいよ」
央弥ちゃんは小さな声でポツリと言った。

「はっ? いじめ? どういうこと?」
私が、そう聞き返すと
「チッ」
央弥ちゃんは急に険しい表情になり舌打ちをした。

あれ? 怒った? と思ったら……。

「はじめまして、川上さん」
私はその声に振り返る。
超美人でスタイル抜群な子に声をかけられた。
この子は誰だろう?

5:りさ:2019/02/27(水) 20:47

「私は学級委員の姫川椿です」

わっ。この子は。
クラスのリーダー的存在の子かな?
そうかもしれない。そんな雰囲気ある。

この子。顔がすごく整ってて綺麗!
めっちゃ顔ちっちゃい! 
それに細くてスタイルいい!
姫川椿は、いかにもお嬢様って感じ
がする気品に満ちた美女だった。

そこから、ひょこっと、またまた美女が現れた。

「和田萌奈でーす。椿の大親友だよ! よろしく!」
「フフッ。萌奈っていつもこうなのよ」

和田萌奈の印象は……ギャル。
まず、はっきりとした茶髪がひときわ目を引いた。
メイクはバッチリとギャルメイクだし。
それと、大きな胸と、くびれたウエスト。
すらりとした細い足。さらに超ミニの
スカートからは大胆に太ももが露出していた。

清楚な椿とは、まったく対照的な印象を受けた。

「姫川さん、和田さん、これから二人のことなんて呼べばいいかな?」
「私は普通に椿でいいわ」
「私も、萌奈でいいよん」
「フフフッ。萌奈はね、私達のムードメーカーなのよ」
イメージ通り。たしかにそんな感じがする。

「私のことは奈緒って呼んで。仲良くしてね」
「こちらこそ、よろしくね」
椿は、そう言って上品に、ほほ笑んだ。
その美しさは、まるで女優やモデルのようだった。

私って、超幸せ者じゃん!!
転校初日から。こんな可愛い子
と友達になれるなんて!!

6:りさ:2019/02/28(木) 20:38

「さぁ、そんな子、放って置いて別の場所で話しましょうよ」
「そうそう。未南の奴は相手にしなくていいよ」

だが突然。
椿と萌奈の態度が豹変した。

「ええ? なんで? みんなで、ここで話せばいいじゃん」

「ダメよ。未南と友達になっては」
「そうだよ。不幸になるよ。コイツといるとね」

椿と萌奈のひどい言葉に
一瞬、自分の耳を疑った。

なんだか、わけがわからないよ。
未南のどこがダメなの?
かわいいし、性格も良さそうなのに……。

そんなことを言われている未南は
「椿…………どうしてそんなこと言うの?」
と今にも泣き出しそうだった。

「ふん。あんたとは絶交って言ったでしょ?
 口も聞きたくないわ、話しかけないで」
椿の辛らつな言葉に、さっきまでの
よいお嬢様なイメージが一瞬で崩れ去った。

「椿……? どうしてそんなひどいこと言うの?」
私は、ちょっと咎(とが)めるように言った。

「ああ、この子はね。クラスのみんなから
 嫌われているのよ。だから、みーんなで
 無視してるの」

未南が嫌われている?
無視されている? 
どうして?

横を見ると、未南はうつむいていた。
涙を流しながら……。

7:りさ:2019/03/01(金) 20:07

「あーあ。また始まったよ。もう、うんざり。じゃあね」

央弥ちゃんは呆(あき)れた様子で、この場から離れていった。

ああ、さっきまでの幸せな気分が崩壊していく。

「私が転校してくる前。
このクラスで何があったの?」

私は椿と萌奈に聞いた。

「ね? 椿。転校生の小人ちゃんに
 何があったか、教えてあげたらー」

「そうね。教えてあげてもいいわね。
 教えてあげて、由香子」

椿が由香子と言うと、椿と萌奈の間から
小柄な女の子が現れた。

ツインテールに幼い顔立ちの女の子は
一見すると中学生と錯覚するほどだった。

「この学校のテニス部の監督だった、こいつのお父さんはね。
 電車内で中学生に痴漢して警察に捕まったんだよ」

由香子が、未南を指差しながら語気を強めて言い放った。

「え……。マジな話?」
それが、本当なら嫌悪感を持たれてもしょうがないけど……。

「未南。あなたも学校を辞めるべきじゃない?
 責任を取りなさい! そうでしょ? みなさん!」
と椿が言うと、教室にいた生徒から
一斉に未南を非難する罵声が飛び交った。

「椿さんの言う通りよ」
「犯罪者の娘は学校に来るなぁー」
「学園の恥だわ!」
「あんたなんか、この学校に通う資格ないよ」

「お父さんはそんなことしていません……」
未南は消え入りそうな声でそう言った。

それでも、その言葉はしっかりと椿の耳に入った。
「は? あんた今、何て言った?
 嘘つき。あなたのお父さん、まだ
 警察から帰ってきてないじゃない」

「お父さんは間違えて逮捕されたの。
 犯人は絶対にお父さんじゃない!」

「もしかして、犯行を否定するわけ??」
由香子が、そう聞くと
たちまち、あちこちから
未南を非難する声が上がった。

「でも、痴漢したって言う目撃証言もちゃんとあるのよ?」
由香子が、さらに未南を問い詰める。

大勢のクラスメートが一人の生徒を責める。
教室は異様な空気に包まれていた。
ダメだ!
このまま傍観者になってはいけない!
止めなければ……。

8:りさ:2019/03/02(土) 08:19

「待った!!」

私が、そう大声で叫ぶと
騒がしかった教室が
静かになった。

「ちょっと、やり過ぎなんじゃないの?
お父さんのことで傷ついている未南を
全員で責めるなんて、どうかしてるわ。
こういうときは、クラスメート全員で助けて
あげるべきじゃない?」

「ハァ? あなたは偽善者だわ」

椿は呆(あき)れた様子で首を左右に振った。

「私達にとって痴漢とかの性犯罪は
最も卑劣で最低な行為よ。だから
非難されるのは当然のことじゃない」

「それは違うわ。確かに痴漢は許せない。
 でも罪を犯したのは未南じゃない。
 こんな風に集団で無視をしたり
 悪口を言うのは、人を深く傷つける
 卑怯な行為だわ」

9:りさ:2019/03/03(日) 07:27

「今日、来たばかりの転校生のくせに。
 私の意見に反論するなんて生意気よ」

椿は不愉快そうな顔をする。

「この学校は地位が上の人に逆らってはダメなの!
 もし逆らったとしたら、いろんなきつくて
 辛い罰が下されるのよ。覚えておきなさい!」

椿は私を、にらみつけた。

「……?」

「ねぇ、奈緒。今の私とあなたは
 どのくらい地位が違うのかしら?
 会社だったら私は社長、あなたは
 今日、会社に入ってきた新入社員
 じゃないかしら?」


「私が新入社員っていうたとえは分かるけど
 あなたが社長っていうのは納得がいかない。
 だって同じ学年の生徒じゃない?」

「言ったそばから、また反論?
 素直にハイと言えないのかしら?
 私はね。至極特別な存在なのよ。
 普通の生徒と一緒にしないで。
 いいわ、教えてあげる。
 由香子! 私がどんな存在か
 この子に説明しなさい」


由香子が、すかさず「ハイ」と
歯切れの良い返事をした。

「ええい! 頭(ず)か高い。
 この方をどなたと心得る!
 日本有数の巨大企業である
 姫川グループ社長の御令嬢で
 あらせられるぞ!」

由香子は誇らしげに語った。

「…………?」
「驚いて、声も出ないみたいね。ハハハッ」
椿の、せせら笑いが教室に響く。

「……えっ。あの有名な企業のヒメカワ?」
「そうよ。超が付くほど有名のね」

「マジで? すごっ」
「お父様の年収は、十数億円で総資産は数千億円と
 言われているわ。一人娘の私はその跡取りで
 将来は日本の経済界の頂点に立つ存在よ」

なんだかすごい。
この人は本物のお嬢様なんだ。
目の前にいる椿が、よりいっそう
美しく高貴な人に見えた。

10:里奈:2019/03/04(月) 20:27

「すごい、すごい。美しい上に、お金持ちだなんて」

本音を言うと。正直、うらやましいや。
私なんて、見た目も、生活も普通なんだもん。

「フフ、私がどういう人間がわかってもらえた?
 これを聞いたら友達になりたくなったでしょ?」

「え……ああ、うん」
私は戸惑い気味に答えた。

「そう。それでいいのよ。仲間に入れてあげるわ」
「あっ。でも私、未南とも友達になってて……」

「あのね。そんなの破棄しなさい。いますぐ」
「…………はぁ」

ど……どうしよう?
ハイなんて言えない。
でも反論したらまたキレるかも……。

「これはあなたにとって、大変重要な選択よ。
 奈緒の今後の学校生活を大きく左右するわ。
 私と友達になってバラ色の道を進むか
 未南と友達になってイバラの道を進むか
 ここが天国と地獄の分かれ道よ」

「…………?」

未南と友達になることが地獄だなんて思わない。

むしろ、ここで未南を無視したり、みんなと
一緒になって非難したら一生後悔するだろう。

「簡単な選択肢じゃね? 迷う必要がどこにあんの?
 未南なんて無視して私達と友達になればいいだけじゃん」

萌奈がギャルっぽい言葉使いで口をはさんだ。

「で、……でも、無視するのよくないと思う」

「こんな奴、無視すればいいんだよ! キャハッハ」

突然。萌奈が、そう言ったあとで
平手で未南の頭を力いっぱい叩いた。
頭をパーンって叩く音が、ハッキリと聞こえた。
未南は叩かれたのに硬直したまま微動だにしない。
なんで怒ったりしないの未南???

私はマジでキレそうだよ。
いや…………。
我慢できねえ。
マジギレしなきゃ友達じゃねーだろう!

11:里奈:2019/03/05(火) 20:17

「やめなさいよ!!」
私は思いっ切り机を叩くと
同時に立ち上がった。
椿たちとクラスメイトの
視線が一斉に私へ集中する。

「未南を傷つけるのは、友達の私が許さない!」
そう言い、萌奈をにらみ付けた。

「椿―――!こいつ、私達に逆らう気だよ!どうする?」
萌奈が椿に、すがるように言う。

「まあ、いいわ。今日のところは大目に
 見てあげましょう。転校生だからね。
 でも、一つだけ忠告しておくわ……・。
 私を本当に怒らせた者は、この学校から
 居なくなるってことをね。覚えておきなさい」

は……? 居なくなる? どういうこと……?
椿が言ってることの意味がわからなかった。

「もう行きましょう」
椿は、そう言うとクルリと反転して歩き出した。

「馬鹿な奴! せっかく椿が友達になってやるって言ってんのに!」
萌奈は吐き捨てるように言ってから椿のあとを追った。

「しつれいします」
由香子は丁寧に頭を下げると教室を出る二人のあとを早歩きで追った。

ああ、なんかショックだった。
いろいろあって、私も傷ついたなぁ。
自分のことより……いまは。

「未南、大丈夫??」
心配になり声をかけた。

「大丈夫だよ……ごめんね……」
「謝らなくていいよ。悪いのは未南じゃないから」
「でも……みんな……私が悪いって……」

泣きながら途切れ途切れに
話す未南を見ていると。

なんとしても、この子を
守ってあげなければという
気持ちが込上げてきた。

「私は未南の味方だよ。なにがあってもね。
 もう誰も未南を、これ以上、傷つけたり
 しないように、私が守ってあげる。だから
 もう泣かないで」

私は必死に思いを伝えた。
未南はハンカチで涙を拭いた後
無理やり笑顔を作った。

「ありがとう。奈緒は本当に優しいね」
「当然だよ!このくらい」

ありがとうって感謝してもらえたら
なんだか心が暖かくなって嬉しくなる。

小さい頃に亡くなったお母さんも言ってたなぁ。

お母さんが好きな言葉は、ありがとうかな……って
お母さん。私もそうだよ。ありがとうって言葉が好きだよ。
私は小さい頃のことを思い出していた。

12:里奈:2019/03/06(水) 19:40

(4)
おなかは鳴る。
恥ずかしくなるほど大きな音
で教室に鳴り響いてしまった。

四時限目が終了するまで。
あと数分。
耐えてくれ!
私の胃よ!
再び鳴ったら恥ずかしいじゃないか!

どうして おなかが へるのかな
おやつを たべないと へるのかな
いくら たべても へるもんな
かあちゃん かあちゃん 
おなかと せなかが くっつくぞ

キーンコーン・カーンコーン
こんな歌を歌っているとチャイムが鳴った。

はー,お昼だ。
なんとか、おなか鳴らなかったよ。

「ねえ? 奈緒は食堂でお昼、食べるの?」
未南が私に声をかけた。

「うん」
「じゃー。一緒に食堂行こう」

未南に誘われ食堂に行くことにした。
場所もわかんなかったから、ありがたい。


私と未南は教室を出て
食堂に向って歩き出した。

「だれかと一緒に昼御飯食べるの久しぶり
 奈緒と友達になれて良かった」
未南は嬉しそうに言った。

そうだった。
未南は一人ぼっちって言っていた。

でも友達って誰なんだろう?
仲直りできるなら、させてあげたい。

「未南の友達って誰だったの?」

名前を聞いても分からないかもしれないが
思い切って聞いてみた。

「椿だよ」

「椿って姫川椿?」

「そうだよ。椿は私の親友だった」

ここで予想外の名前が出てきた。
あの姫川椿が未南の親友とは驚いた!

未南の話によれば、椿と未南の両親が友達で
未南と椿は赤ちゃんの頃から友達だったようだ。

また、野村由香子は幼稚園からの友達で
和田萌奈は中学からの友達だと言う。

先ほど、未南に向って、あんなひどいことを言った
人たちが友達とは意外だった。

ところで、未南が一人ぼっちになった原因は
あの痴漢事件なのかな?

それを聞く前に食堂についてしまったので
また、あとで聞くことにした。

13:里奈:2019/03/07(木) 20:16

(5)
ここが高校の食堂?
すごく豪華で、だだ広い。ここは
まるでリゾートホテルのレストランだった。

ここらへん、さすが名門お嬢様学園って感じがした。

さらに中に入ってビックリした。
ホテル並みのクオリティーの
バイキング形式になっている。

ハイテンションで浮かれながら
お皿にたくさん料理を盛ったあと。
二人で空いているテーブルに着き
しばし料理を堪能した。

しばらくして。
先ほどの話の続きを切り出した。

「さっきの話、途中だったけど
 椿たちと何があったの?」

未南は暗い表情を見せ黙ってしまった。

言いにくいことなのかな?
絶交されるほどの理由ってなんだろう?
やっぱり気になるなぁ。

「私と椿、萌奈と由香子はね」
しばらく沈黙が続いたあと
未南は口を開いた。

「中学の頃からテニス部で同じだったの。
 みんな仲が良かったわ。でもね
 私のせいで今はこんな風に」

「やっぱり原因は、痴漢事件?」
「違う、テニス部のいじめだよ」

「いじめ?」
「テニス部は先輩によるいじめが慣例化してて
 1年生の頃、私も椿もいじめを受けていたんだ。
 でもね、2年生になると、先輩に強要されて
 私達も1年生をいじめることになったの。
 テニス部内では、かわいがりって言うんだけど
 実質、いじめと変わらないものだった」

「未南もしてたの?」

「私は、断固拒否していた。いじめは絶対にダメだと思っていたからね。
 でも椿達は楽しんで後輩をいじめていたような気がする。練習を口実にね。
 みんなにやめようって言ったら、先生に告げ口をするなって言われた。
 ねえ奈緒?私のお父さんが、テニス部の監督だったこと知っている?」

「うん、由香子が言ってた」

「新学期から、お父さんが、この学校に転任して来て
 テニス部の顧問になったの。そのとき、いじめのこと
 相談するチャンスだと思ったんだ。お父さんが
 どうにかしてくれると思って。でも私のお父さん厳しくて
 いじめをした全員を退部処分にしちゃったの。
 椿や萌奈は、かつては自分達も、いじめの被害者だったと
 お父さんに訴えたらしいけどお父さんは聞き入れなかったわ」

「絶交されたのは、その逆恨み?」

「そうだと思う、突然もう私は友達じゃないって言われた」

そうか……・そんな理由があったのか。
未南は悪くない!
勇気を持っていじめを止めようとしたんだ。
友達として、その勇気に心から敬意を表する!

14:里奈:2019/03/08(金) 20:12

(6)
食べ放題だから、ついつい。
「食べ過ぎちゃったよ」
「次の授業、体育だよ、そんなに食べて大丈夫?」

未南に言われて、ハッとした。
そうだった、次は体育、しかもバスケット。
ほどほどにしないと…体調悪くなりそう。

でも皿には、さっき取ってきたばかりの
ケーキが、まだ乗っている。
ええい、甘いものは別腹だ! 食べちゃえ。

思う存分、バイキングを楽しみ、私は昼食を食べ終えた。
食後は。
未南と一緒に、食堂から教室に戻り
体操服を持って更衣室へ向かった。

「次、バスケだよね? バスケ得意なんだ。
 実は、私、バスケで全国大会に出たことあるんだ」

私は、ちょっと自慢げに話した。

「私もあるよ。うちのテニス部はね。毎年
 全国大会に出場するような強豪校だったの。
 椿や萌奈もレギュラーで、もしいじめが発覚
 しなければ、今年のインターハイにも出場
 してたかもしれない」

へえー。未南もあるんだ。
まぁ、私は準優勝したんだけど自慢していると
思われるかもしれないから、今は黙っておこう。
それにしても。あの椿たちが全国大会に出場
するような選手だったとは、意外だった。

(7)
私達はいろいろ話しながら廊下を歩き
やがて女子更衣室に着いた。

女子更衣室に入った瞬間。
女子特有の甘酸っぱい香りが鼻腔をくすぐった

初めて入った更衣室の中を興味深げに見回す。
第一印象は広いって思った。
ロッカールームはたくさんあって、鍵が付いていなかった。
ドレッサーは贅沢にも20台ほど。
ドライヤーや扇風機もある。
さらに、奥にはシャワールームがあった。
設備、充実。

「ここで着替えようか」
「うん」
未南に言われたとおり、ここで着替えることにした。
すると、奥の方から

「転校生、生意気だよね! 椿さんに逆らうなんて」
「それが、どんなに無礼なことか分からせてあげないとね」

なにやら悪口っぽいことが聞こえてきた。

「どうする?あたしたちでやっちゃう?やって欲しい?」
「やって欲しいでーす」
「でも椿さんの許可がないとねー。勝手には動けないよ」

15:里奈:2019/03/09(土) 21:41

物騒な話をしていた。
話の内容からして私のこと?
って思ったら怖くなった。

「うん、転校生には手を出すなって言われた」
「転校生より、やってやらなきゃならない奴、いるよね」
「うん。あいつ、うちらで、こらしめてやろう」
「賛成。そうしよう」

話してるの誰だろう? クラスメート? 
椿たちじゃないと思うけど。まだまだ
クラスの子って、よくわからないや。

私は聞き耳を立てながら、体操服に着替えた。
「行こうか?」
着替え終わった未南が私に声をかけた。

「そうだね」
未南にも、あの会話が聞こえていただろう。
だが、そのことについては何も言わなかった。
だから、私もその話題には触れないことにした。

私達は一緒に更衣室を出て
更衣室から目と鼻の先にある
体育館へと足を踏み入れた。

クラスメートの女子生徒が、所々に
グループを作って固まっていた。

特に入れるグループもないので、未南と
他愛ない話をして授業の開始を待った。

やがて体育館にチャイムが鳴り響いた。

(8)
授業の冒頭、チーム分けをすることになった。

「チームのキャプテンを決める。
 バスケ経験者いるか? 
 いたら手をあげろ!」

男性教諭が私達に聞いてきた。

別にキャプテンをやりたいわけではない。
と思いつつ、私は右手をあげた。

もう一人,手を挙げたのは央弥ちゃん。
この子、バスケ部だったのか……。
それで私のこと知ってたんだ。

「二人か? 柄谷と、お前ダレだ?」

「川上奈緒です」

「川上? 例の転校生か? 俺はバスケ部監督の星野だ。
 お前には期待しているからな。早く部活に参加しに来い」

この人、監督だったのか?
なんか怖そうな人だなぁ。

このあと八名のキャプテンが決まった。
「残りのメンバーは、自分達で決めていい」
キャプテンの私達に星野先生が言った。

私は一瞬、動揺する。自分で選べと
言われても今日、転校したばかりで
あまり知ってる子いないし。
困ったなぁ。

16:里奈:2019/03/10(日) 07:05

私が最初に声をかけたのは未南だった。
クラスで唯一、友達と呼べる存在。
予想通り二つ返事で応じてくれた。

最初のメンバーはすんなり決まったものの。
そのあとのメンバー集めには苦戦する。
何人か誘っても、すべて断られた。

私が途方に暮れていると
「こっち、人数が余ってるんだけど?」
そう声をかけてくれたのは央弥ちゃんだった。

「こっち、足りてないから誰か入って」
都合がいい、渡りに船というものだ。

これですんなりメンバーが決まると思いきや
みんな険悪な表情になっている。

「誰がいく?」
「私は、やだ。あなた行けば?」

みんな、いやがってる。
な、なんでだろ?
私、そんなに嫌われているのかな?

「なにしてるの? 早くしなさいよ」
じれったいのか、央弥ちゃんが少しキレてる。

「未南と一緒になりたくない……」
ボソッと誰かが言ったのが聞こえた。

その瞬間、なんでこのチームに入りたくないか
わかった気がした。

未南に対して、またそんなことを……。

怒りを、ぐっとこらえて沈黙していると。

「はぁ? 何を言ってるの? いったい
 この子が何をしたって言うの?」

周りの態度に央弥ちゃんが憤慨した。

「ねえ、知ってるでしょ? あの話」
「ああ、アレでしょ? ……きもいよね……」
「先生が痴漢とか最悪じゃない?」
「マジありえないよね」

皆、未南の父親を軽蔑するような態度を見せた。

「いいかげんにしないさいよ! 
 こんなのただの、いじめじゃない
 おかしいよ、あんた達がやってること!」

央弥ちゃんが激怒する。
央弥ちゃんはクラスの中で唯一
いじめに反対してくれる生徒だった。

17:りな:2019/03/11(月) 20:03

(9)
央弥ちゃんの一喝で、なんとかメンバーが決まり
バスケの試合が始まった。

だが、未南の悲劇は、これで終わらなかった。
バスケの試合中、足を引っ掛けられ転ばされたり
勢いよく突き飛ばされたりした。

しまいには、ボールを顔面にぶつけられ
コート上に倒れてしまうのだった。
「痛い、痛い、痛い」
痛そうに顔面を抑えて、うずくまる未南。

「なにしてんのよ! こんなプレー許されるわけないでしょ!」

マジギレ発動!

「わりぃ、わりぃ、手元が狂った」 
わざとやったのでは? と詰め寄ると
相手チームのメンバー達は、しらばっくれた。

ぶつけたのは、茶髪のヤンキー女だった。
「わざとぶつけたでしょ?」
彼女に詰め寄った。

「ちげえよ」
ぶつけた子の声、さっき更衣室で
しゃべっていた子の声じゃない?
こういう意味だったのか?
そうだとしたら許せない!

「あんた、他にも、足引っかけたり
ぶつかったりしたよね。あんたの
プレーは退場ものの悪質プレーだ!」

「あんだよー。うるせえなぁ。いいがかり付けんなよ」
一触即発の険悪ムードとなった。

「おい、どうした? なに揉めてんだ? おい。
ケガしてんじゃねーか! 大丈夫か?」
星野先生の声で我に返った。

未南を見ると、鼻から微小の出血があった。
鼻血だ。
「顔面にボールが当たったんです」
星野先生に報告する。
「おい、誰か保健室に連れてってやれ!」
「私が行きます。行こう未南」

私はこの時、未南が、みんなから日常的に
いじめられているのではないかと感じていた。

18:りな:2019/03/12(火) 21:02

(10)
未南は保健室で鼻血の処置を終えた。その後。
軽い頭痛があるため、ベッドで休むことになった。

「大丈夫、吐き気とかない? 頭痛ひどくなってない?」
私は横になって寝ている未南に尋ねた。

「平気……心配かけてゴメンね」
「ホント、災難だったね」

「最近、ツイてないなぁ。次々に不幸な目に遭う。
 なんか、なんでこんな風になっちゃうんだろう」 

未南は流れ落ちた涙を右手でぬぐった。

「辛かったね。でも未南は、なにも悪くないよ」
「そうかなぁ? 悪い方、悪い方に考えちゃう」

「思いつめすぎないで!」
「最近、すごく気分が落ち込むの。
 それにね。毎日、夜、眠れなくて……。
 ほんとうに辛くて辛くて。もう死にたい……」

ええー! 死? 死にたいって?
それを聞いた私は激しく動揺した。

「死んじゃあダメ!」
焦った私は、そう声をかけた。

「ごめん、思わず変なこと口走っちゃった。
 別に自殺しようとか考えてないからね」

辛いとき、思わず死にたいとかって
思うことは、あったりするかもだけど。
今の未南、なんか心配、すごく心配。
なんとかしてあげたいなぁ。

19:りな:2019/03/13(水) 20:56

(11)
この日、最後の授業は英語だった。

春のうららの教室。
体育の授業のあと。
ゆえに睡魔が襲ってくる。

とっ。思っていると、スーピースーピー。
あれれ。どこかから寝息の音が聞こえる。

隣を見ると、未南が突っ伏して寝ていた。
はっ! やばっ! まさか顔面にボールが
当たった影響で脳にダメージでもあったのか?
ちゃう。
ちゃうちゃう。夜、眠れないって言ってたやん!
あかん。先生にバレたら怒られるっしょっ。

「未南、起きて」
私は小さな声でささやいた。
しかし、未南は目を覚まさなかった。

「起きて。ねえ、起きて」
と言いながら肩を揺らしても未南は目を覚まさない。

「修倉、居眠りか? 起きろ!」
ゲッ、いつの間にか先生が目の前にいた。

「はっ、はい。すみませんでした」
急に大声がして未南はびっくりし目を覚ました。

「学年トップのお前が居眠りしてどうする?
 夜遅くまで勉強でもしていたか? 勉強
 熱心なのはいいが、俺の授業もちゃんと
 聞いてくれよ」

「はい、いえ、最近、寝不足で……」

「まぁ、いい。教科書の26ページ。
 最初から読んでみろ」

先生に、そう言われると立ち上がり
英文を読み始めた。未南はスラスラと
ネイティブな発音で読み上げていく。
うわっ。なんか先生よりも,うまいや。
学年トップだって言うし,才色兼備やん。

(12)
この日の放課後。

教室で未南と談笑したあと。
二人で下校することになった。

未南は電車通学をしていた。
他の、お嬢様みたいに高級車で
送迎ってわけではないようだ。

一階の下駄箱へ着く。

上履きを脱いで自分の下駄箱へしまい。
通学用のバスケットシューズに履き替えた。

そのあとで、後ろを振り返ると
未南は、まだ下駄箱の前にいた。
しかも、なんだか様子がおかしい。

少し心配になってきて……。
私は未南に声をかけた。
「どうしたの?」
「クツがないの……」

未南は涙声だった。

私は、思わず「えっ?」となって
未南の所へ駆け寄った。

20:りな:2019/03/14(木) 20:24

修倉未南ってシールが貼ってある下駄箱を
覗き込むと、確かにクツが無かった。

「朝、ここにしまったのに、ないの……」
「それは大変だ。一緒に捜(さが)そう」

「うん……」
「掃除の時、どこか別の場所に移動
 したのかも? どんなクツ?」

「黒色のローファーだよ」
「黒のローファーだね。サイズは?」

「36。日本の23だよ」
「メーカーは?」

「グッチ」
「グッチって、あの高級ブランドのグッチだよね?」
「うん、そうだよ。おばあちゃんが買ってくれたの。
 ビットローファーって言って靴に金具が付いてる」

通学用のクツがグッチなんて
さすがはお金持ちって感じだ。
でもグッチってことで捜しやすくなった。

未南と共に下駄箱の中や、その上
周辺も、くまなく捜した。

しかし、簡単には見つからなかった。

「別の場所も捜してみる」
未南がふいに言った。

もし誰かがクツを隠したとしたら
みつけるのは困難を極める。
ましてや、盗まれでもしていたら
まず発見できないだろう。

しばらくして、未南は下駄箱から
ちょっと遠くにあるゴミ箱の中を
捜し始めた。

まさか?
あの中にあるわけないよね……。
そう思った。

「あったよ!」

未南が声を上げた。
その手には、黒のローファーがあった。

あわてて未南の所に駆け寄る。
「見つかって良かったね」
「誰かに捨てられちゃったのかな……」

泣くのを我慢していたのか、未南の目から
涙がとめどなく、あふれてきていた。

ひどい! ひどすぎるよ!
誰が、こんなことを……。
もし……これがいじめだとしたら……。
そう考えれば考えるほど腹が立ってくる。

未南…………。

このいじめは、私が必ず解決してみせる!
川上奈緒の名にかけて!

私は、強い意志を持った。
それは、いじめから絶対に未南を
守るという意志を持ったのだった。

21:りな:2019/03/15(金) 20:23

(13)
この日の夜。
自宅でお父さんと夕食をとっている時。

「友達が、いじめられているみたい」

私は、いじめのことを相談することにした。

「いじめ? その子は何をされたんだ?」
お父さんが食べる手を止め、私に聞いた。

「親友に絶交されたり、みんなから無視されたりしてた。
 下校の時は、クツをゴミ箱に捨てられて可哀想だった」

「それは大変だ。奈緒が助けてあげなさい。
 その子はすごく辛い思いをしているはずだ」

「うん。そのつもり」

「先生にも協力してもらった方がいい。
 きっと力になってくれるだろう。それで。
 誰がいじめをしているのか分かっているのか?」

「まだよくわからない。今はクラスのほとんどって感じ。
 その子のお父さんが痴漢で捕まったみたいで……」

「痴漢? たとえ、どんな理由があったとしても
 いじめは絶対にしては、いけないものなんだ。
 すぐにやめさせるべきだ」

「そうだよね。私もそう思う」

「いじめは早急に解決した方がいいよ。
 不登校や自殺の原因にもなりかねない。
 新聞やニュースでよく目にするだろ?
 いま大きな社会問題になっているんだ。
 お父さんも協力するから何でも相談しなさい」

心強い味方を得た。
お父さんに相談して少しだけ心が軽くなった。


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