私だけしか入れない
誰一人として通さない楽園
そう、これは
不特定の者に告ぐ警告の一種だと言うことを──
>>2 本編
いつも通る人気のない公園をいつものように歩いて行こうとすると珍しく誰かが居るのが見えた。
そのままつっ立って眺めているとどうやらベンチに座っているのは女子らしい。
するとちょうど後ろにちょうど小学生女子2人が通った。
「この公園さー、幽霊出るらしいよ」
「え?じゃああのベンチに居るお姉さんって……」
そう噂話を繰り広げると小学生女子2人チラッと俺の方とベンチに座っている女子の方を見ながら顔を見合わせている。
まさか──とは、思うが。
あのベンチに座っている彼女こそ本物の噂通りの幽霊なのかもしれない。
視線を気にせずこっそりと俺は公園の中に入っていき、恐る恐るベンチに近づいて行った。
くるくる、くるくるとまるでお人形のように廻るステージ上の私が───
幸せそうに笑みを浮かべながら踊っている様子が見える横に、一人見慣れない男が立っている。
私と年齢が寧ろ近い気がしなくもなく気がついたら無意識のうちに話しかけてしまっていた。
「あなたは……」
しかし何も答える事なく無言のまま顔を近づけてこようとしてくるのが分かった。
「!?!?!?え、ちょ………?」
なんとその男には顔がなかったのだ。思わず口をぽかんと開けてしまう。
これは一体何を訴えかけているのか、重要なメッセージなのか。
するといつの間にかその男は視界から消え去っていたのだった。
忘れきれずにどういう意味だったのかと考えながらゆっくりと重い瞼を開けてみる。
目の前には……見知らぬ制服姿の少年が立っていた。
私は今、初めて見る少年と見つめ合っている───
それを確信するとみるみるうちに恐怖で体が震えてきた。
「い、いやあああああああああああああああ!!!」
ベンチから立ち上がり彼が立っている方向から目を逸らすと自然と叫び声が出てきてしまった。
「こ、来ないでえ」
「はあ?なんで俺嫌われて…」
「あんたが今りいりにしていた行動を考えなさいよ!」
「いや、まじでわかんねえって」
「今のよ!レディーの寝顔をずっと見つめてるなんて…それも初対面のレディーに!いったいどういうことなんだよ!?」
言い終えてスッキリするとはあ、と深くため息をついた。
でもちょっと言いすぎたかも──
私はもう一度チラリと様子を伺うように視線を戻してみた。
すると、私は予想外の展開に目を丸くしてしまう。
なんと彼は───私が持っていたはずのキャリーバッグを手にしていたのだ。
「…なんで………っ」
怒りが沸き起こってくると耐えきれず私は彼の方に近づいて行く。
抑えきれずに気付けば行動してしまっている私が居たのだ。
「ねえ、どうして持ってるのよ……それりいりのだから。返して!」
「じゃあついて来いよ」
相手は真面目な顔で言って退けているものの私は本気だった。私のことを馬鹿にしているのだろうか?
「どういう事……?」
彼は私の独り言を無視して公園から出て行こうとしている、しかし落ち込んでいてもしょうがない。
下を向いてでもついて行くしかないのだ。
私のキャリーバッグを持ってまるで逃げるように走っていく彼を追いかける。
思ったより彼はとても足が早かった。
「はあ、はあ、……早すぎるって!」
その場で立ったまま私は息を整える。
「早く行かなきゃ見失っちゃう〜〜!」
少し休憩するとまた走れる体力が戻ってきた気がする。
しかし非常に喉が渇いていた。
あれ───
頭がくらくらする──
私はいつの間にかバタッと倒れていた。思えば視界もだんだんと暗くなっていくような。
空無調ホリズライツェ - カクヨム https://kakuyomu.jp/works/16817139556301224792
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