旅鼠の厭世詩

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1:レミング◆yc:2019/09/13(金) 12:00

思い付いたときに詩を書いていきます。

詩ではなく短文に思えることもあると思いますが、
本人は詩のつもりで書いております。

乱入は可ですが、感想を添えて頂けると幸いです。
また、こちらからの感想はあまり期待しないでください。
何分、自分の意見を述べるのが苦手なもので。

2:レミング◆yc:2019/09/13(金) 12:31

或る国へと続く路を
不気味なマスクの少女が往きます

まだ知らぬ人々と触れ合うため
まだ知らぬ土を踏みしめるため

少女は踊るような足取りで
口もとには見えない
笑みを浮かべて

さて
国へと着いた少女はまず
小ぢんまりとした喫茶店を目指す
ことにしました

喫茶店では見習いが
カップを磨きながら
口ずさんでいました

「“ ”を崇めなければ
 “ ”はどんなに修行を積んでも
 超えられも逃れられも
 しないのだから」

喫茶店を出た少女は次に
可愛らしい花屋を目指す
ことにしました

花屋では店員が
花束を作りながら
子供に言い聞かせていました

「“ ”を崇めなさい
 “ ”はどんなに健気に咲く花も
 たちまち枯らして
 しまうのだから」

花屋を出た少女は次に
古びた文具屋を目指す
ことにしました

文具屋では主人が
インキをくるくる練りながら
口の中だけで呟いていました
 
「“ ”を崇めろ
 “ ”はどれだけ名のある文豪も
 正確に書き切れは
 しなかったんだ」

文具屋を出た少女は最後に
騒がしい公園を目指す
ことにしました

公園では国王が
唾を飛ばしながら
叫んでいました

「“ ”を崇めよ!
 “ ”はどれだけ金を積んでも
 この私でさえ抗えぬ
 ものなのだ!」

公園を出た少女が振り返ると

喫茶店の見習いだったもの
花屋の店員だったもの
文具屋の主人だったもの
この国の国王だったもの

が、転がっていました

少女は言います

「“ ”を崇めるの
 “ ”は誰にも平等で
 色んな形で忍び寄ってくる
 ものだから
 例えば

 黒い病の間、とか」

3:レミング◆yc:2019/09/15(日) 00:56

貴方のふとした時の
虚ろな表情が好きだ

どこか遠くを見つめている様にも
何も見ていない様にも
思える

思案に暮れている様にも
何かを考える空白の状態にも
見える

いつも陽気に笑っている
貴方が浮かべるには
あまりに無機質で、
感情も警戒も抜け切った
その表情は

目の前にあっても決して見えぬ、
”最期”と目を合わせている様だった

4:レミング◆yc:2019/09/15(日) 17:59

息は切れども、足は進む

肺に流れ込んでくる
空気は冷めたく、
掠れたような情けない
音が漏れ出る

僕は走らなくてはいけない

己が瞳に映るのは
何処までも白い道と
赤以外点かない信号機だけだ

空は厚い雲で
覆われていて、
それでいて
色の抜けたように真っ白で

地平線が水っぽく
滲んでいる

信号機は狂ったように
ピンクノイズの走る
通りゃんせを流し続けている

それを幾つも越えて
感覚も無くなってきて
それでも景色は変わらない

もう、
何処を走っているのか
分からない

体力の限界はとっくに超えていた
目の前は霞み始めた

足が覚束無くなっても
意志に関係無く
ただ足は前へと進む
ただ足だけが

息は切れども足は進む

服は体に纏わり付いて
いっそのこと
脱ぎ捨てたい衝動に駆られる

僕は辿り着かなくてはならない

色を亡くした世界が
何もかもが
手遅れになる前に

あの場所へ

5:レミング◆yc:2019/09/16(月) 14:46

終わりが来ないように
線を引いた

消えて
失なってしまうことを
恐れていた

どうせ
「僕らは最強!」
だなんて嘘だ

思い出も約束も
風が吹けば
浚われてしまうような
不確かなもので

永遠なんて
きっとどこにも無い

だから
せめて閉じ込めておこう

誰も触れられないように
栓をしておこう

あの初夏のときめきを
黄金色に輝く風を
忘れぬうちに

誰にも見つからない場所に
胸の奥深くに
隠しておこう

6:レミング◆yc:2019/09/17(火) 15:05

一度で良いから
あの人に会いたい

しかしそれは
逆立ちをしても
無理だということ
私は知ってるわ

けれども
想ってしまう
願ってしまう

あの人のことを

あの人の躰は
柔らかいのかしら
痩せて骨張って
いるのかしら

あの人のシャツは
糊がきいて
いるのかしら
着潰してくたくたに
なっているのかしら

あの人の纏うのは
趣向品の香り
なのかしら
爽やかな石けんの香り
なのかしら

あの人の声は
明るく陽気なのかしら
妖し気に笑みを含んで
いるのかしら

あの人の手は
白魚のようでしなやか
なのかしら
肉が少なく関節が目立つ
のかしら

あの人の瞳は
強く輝いて狂気を
孕んでいるのかしら
空虚に落ち着き退屈そう
なのかしら

あの人の
心臓は鼓動を打つの?
目覚めるのは早い方?
零す言葉は真実なの?
本当に?

好む音楽は?
好む文章は?
好む天気は?
好む異性は?

私だけが

報われないと分かっていても
妄信だと分かっていても
待ってしまう
夢見てしまう

愛してしまう

……なんて滑稽だわ

叶わぬ恋に身を焦がす
女なんて今どき
寒いだけね

私にとって
とびきりの悲劇は
なんて喜劇?

私はどうせ道化師ね

嗚呼
そろそろ戻らなくちゃ

……私が
道化師ほど面白かったら?

あの人は
私に笑いかけてくれるかしら?


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