思い付いたときに詩を書いていきます。
詩ではなく短文に思えることもあると思いますが、
本人は詩のつもりで書いております。
乱入は可ですが、感想を添えて頂けると幸いです。
また、こちらからの感想はあまり期待しないでください。
何分、自分の意見を述べるのが苦手なもので。
愛を願って真っ逆さま
罰を食らって地獄ゆき
愛想と吐き気を振りかけて
今夜もネオンを浴びている
花束抱えて日陰の方へ
売っているのは油ばかり
そんな顔をしないでよ
他人が勝手に悲しまないで
嗚呼お願いよ触れないで
“それ”が恋しく
なってしまうから
この目が光に
冴えないうちに
さっさとどこかへ
消えて頂戴
憐んでくれるのね
でも私には必要ないの
優しい言葉に心が痛む
痛みと恥に慣れてしまえば
もう元には戻れない
たったひとしずく
川に猛毒を流した
強い強い毒を
ぽとりと落とした
岸の草は全て枯れ
魚は死んで浮いていた
水を飲んだ者の
喉は焼けた
水を被った者の
皮膚は爛れた
それをただ
じっと見つめていた
どうして苦しむのか
分からなかったが
苦しむ姿は滑稽だった
毒だと思っていなかった
だがしかし
それは善意などではなく
興味と押し付けに
よるものだった
今に罰が下る下る
たちまち喉は
焼けるだろう
そのうち皮膚も
爛れるだろう
そうしてやっと
己の罪に気付くのだな
嗚呼悪魔よ
お前のことだよ
あーそうかい
あんたもまた諦めんのかい
黙って離れんなら文句は無いさ
だがこれ以上ゴミを
増やさないでくれ
笑ってられんのも今のうちだぜ
もうじき僕が全てを変える
諦めねぇよ
下手の横好き極めてやんだ
秀才に正論で圧されて
奇才に話題掻っ攫われて
鬼才にねじ伏せられようと
知る人は好む人に敵わない
好む人は楽しむ人に敵わない
天才様のお言葉だ
そんならどうせそうなんだろよ
今に僕が証明する
正しいものじゃなくて良い
生まれ持ってなくて良い
どれだけ頑張っても
いずれ踏み躙られる
ものだとしても
それでもきっと構わないから
今ここで一番になってやる
モノクロームの銃撃戦
ぶち込む鉛
弾けろシナプス
喧嘩祭りの
お囃子が鳴る
鉄塊同士が眩んで
clash clash
頭も吹っ飛べ思想ごと
石頭どもを
均してやんの
子供みたいに
無垢なテのまま
無邪気に亡くせよ
break break
幾十幾百交えた末に
出来上がりましたは
我楽多の山
ウザいか
憎いか
虚しいか
どれもこれもが
これを望んだ
アンタのせいさ
かつての仲間を
踏んづけて
涙を呑んで
嘆いては
拳を打ち付け
敗けを噛む
次の機会があったなら
弾にソイツを
込めてみな
きっと俺が相手してやる
……マジになんなよ
遊戯のハナシだぜ?
君が心から笑えなくなって
一体どれほど経っただろう
何度も何度も同じ傷口抉られて
最初に付けた
だれかはきっと
顔すら覚えてはいないのだ
大丈夫だよって声をかけても
返ってくるのは曖昧な引き攣り
そして赤を隠す君を見るたび
どうしようもなく
苦しくなるんだ
いつか報われるなんて
無責任には言えないけれど
もう一度
あの微笑みが見たい
痛々しい傷を優しく拭って
「辛かったね」と
ひとこと言いたい
なんて
そんなお節介な願望だ
だからこの手を離さないで
今までもそうしてきたじゃないか
どんな道でも
きっとふたりで
乗り越えて
「生きてて良かった」
って思わせてみせるから
いつも通り見慣れた
灰色の雲に覆われた空
ある日突然
ひび割れのような隙間に
ほんの少しだけ差した
蒼
自由とはそれだと思った
それに気付いてしまったら
何だか急にものすごく
窮屈な気持ちになった
なんとなく
その蒼をてのひらで隠して
ぎゅっと握り込んでみた
息が止まる気がした
いつの間にか
鼓動も早くなっていて
蒼が潰されるのを
じっと待っていた
恐る恐る
手をどけてみると
先程と変わらずに
鮮やかな蒼が
そこにはあった
どれだけ無彩色に
邪魔されようと
空は
ただただ蒼く
そこに広がっていた
こんなに美しい色を
妨げるものなら
全て剥がれてしまえば良い
……とも信じ切れなかった
こんなに長く
邪魔され続けた空は
果たして蒼いままで
いられるだろうか
この分厚い雲が
全部流れて無くなったとき
空は蒼いまんまだろうか
赤い糸なんていらないの
指に絡まる糸なんて
いつ途切れてしまうか
分からないから
鉄の鎖でも足りないの
いくら頑丈な鎖でも
遠く離れた貴方に
触れることは
できないから
ほんの少しでも
離れたくない
貴方にずっと
触れていないと
怖くて怖くてたまらない
手を繋いで
抱きしめて
もっと強く繋がって
肌と内臓で触れていてなお
それでもやっぱり
足りないの
何が何やら初の朝
冷たく爽やかな空気が
頬を撫でる
薄っすら漂う雲はまるで
不透明にゆらめいて
牛の乳のように仄白く
それが遮る日の光は
紡ぐ途中の糸みたく
太陽を中心に
縒っている
曖昧な年という概念に
さほど興味はないが
初のものと思うと
なるほど
いつもより一層
美しく見える
明けるだの
初まるだの
言い方はまるで
わけがわからないが
それでもそう
目出度くはあるのだろう
天罰を
嘲笑を
惜しみない喝采を
君が死んだ
やりたいことは沢山あった
言いたいことも沢山あった
それでも君は
死んでしまった
この時世
死という言葉は軽く軽く
いのちよりも重かった
そんな憂き世で
君だけは
喪いたくなかったのに
やり足らない気持ちは
どうしたら良い?
伝えられていない言葉は
どうしたら良い?
最期の最後
たった一つ口から飛び出た
それは
無事君の耳に
届いただろうか
それとも
間に合わなかったの
だろうか
届いていて欲しい
何なら返事も
寄越して欲しい
ありきたりな
別れの言葉でも
薄っぺらな
感謝の言葉でもない
ただ
もっと君と生きたかった
と
金網に手を掛ける
隣の空は色づいて
モノクロの僕に
茜色を塗りたくる
風が脳に心地良い
冷えた血液を
身体中に巡らす感覚
足元に目を落とす
一歩先の空中は
人の匂いがうるさくて
僕は一瞬息を止める
下に下に下に
視線は徐々に
下界に降りて
そのうち
空と平行になる
もうじき
落ちる
……けれど
いつもすんでの所で
足がすくむ
ずるずると
重い体を引きずって
鯖まみれの取っ手を
指先で回す
また今日も
鮮やかな茜に
背を向けて
無彩色の日々に
吸い込まれていく
椅子から
立ち上がろうとして
失敗して
座り直した
この重い腰はどうにも
自立する意思は
無いようだった
誰かのように
幸せになりたかった
そんなことを
夢想するだけで
動く気なんざ
さらさら無かった
気付いた頃には
もう遅く
人に見せられる顔は
持ち合わせて
いなかった
ただ
絞り出すような
嗚咽が漏れるだけで
不安だとか後悔だとか
そんな言葉で
片付けたかった
希望に縋って
裏切られるのが
恐ろしく
絶望して
全て失ってしまうのも
恐ろしかった
何もしないで
何もできないままで
そうしてここで
腐っている
落胆に近い
灰色の道を
下を向いて歩いている
一番星にはしゃぐ気にも
なれなかった
今まで積み上げて来たものは
とか
これからも信じていたかった
とか
そんなのは所詮希望論だった
何も残らなかったわけじゃない
ここには確かに
僕らの歴史が刻まれている
だから
もう良いのだ
良いんだろう?
虚空に向けて問うてみても
かつて輝いた憧憬の抜け殻には
響くはずもなかった
「幸福とは何だと思う?」
自分とよく似た声が
反響して聞こえる
棒立ちで俯いている
足元は暗くて
透明な水面に澱が黒く沈んでいる
水面に
自分の姿は映っていない
「嫌いだ」
おそらく私が言った
長い時間喋っていなかったのか
酷く掠れた声
「幸福になりたくないのか」
何故か愉快そうに
自分とよく似た声
ようやく視線が前に向く
鏡があった
鏡の中には私が映っていた
きっと
覗き込めば
あちらの私の全身が見える
きっと
私は映っていない
「幸福は嫌いだ」
「お前が幸福になるのなら」
続けざまに私が言う
鏡の中の私は
ヒッヒッと気味の悪い
引き笑いをする
「お前は本当に馬鹿だな」
人を不快にさせる引き笑い
人を苛つかせる挑発的な視線
人を見下した言葉選び
全ては私の癖だった
私は無感情だった
「私のことが嫌いか?」
鏡の中の私が言う
私は何も答えない
鏡の中の私が
居心地悪そうに身じろぎをする
「何とか言えよ」
焦りのような
屈辱のような声色
私はやはり何も答えない
ただ
鏡の中の私を
じっと見つめている
長い静寂が流れる
私の
鏡の中の私の口が開く
「お前なんて大嫌いだ」
返ってきた白紙にレイ点
何にも手につかないや
空想ばっかり
もしも話の繰り返し
何やったって空回って
頭は地についている
天地逆転
足は天を目指してる
突然だけど
今日から世界は
裏返しになってしまった
みたいだ
宇宙に堕ちてゆく
嗚呼
きっと僕は
間違えたから
この世界の
ことわりにさえ抗って
このまま君のもとへ
逝けたらな
私が一番でいられないのなら
玉座なんて無くて結構
見知らぬ誰かを褒め称えた
その口は
せめて蝋で固めておきなさい
失望した
言わなくても伝わるだなんて
思い上がらないで頂戴
もう二度と
私の作品を見せてなんてあげない
せいぜい後悔することね
貴方なんて大嫌いよ
群青の泡
弾けてしまえば
空に登るだけ
回る虹の表面に
映る
木の葉の陰
追いかけて
両手で掴んで
壊してしまう
ふいと強い風が吹き
屋根まで逃げた
神秘色のたま
もはや味も無い反芻を
また今日も今日とて
繰り返す
何度も何度も
追い求めたはずだ
この灰色の景色に滲むまで
次第にふやける
輪郭なぞって
剥がれる破片を
必死で集める
生傷だらけの指先を
冷え切った空気が
切り裂いてゆく
砕けた硝子も混凝土も
行く先々に散らばって
美しい記憶を写すだけ
取り戻したい
どうにもならない
知っていた
けど諦めきれない
どうにもできない
見上げた空は飽きもせず
まだ色を失っている
足元の緩衝材が
ざらつく地面を叩く音
だけ耳障りに響く
煩いくらいの雑音が
恋しく感じる時が
来るなんて
苛つく脳を掻きむしって
無駄だと分かって
いながらも
また手を伸ばす
足を踏み込む
視界の外にはいつも
彩度の高い
君の笑顔があると信じて
冬は嫌いだ
熱が恋しくなってしまうから
銀の空を舞う
白く小さな雪の粒
始めは綿のように
柔らかに積もるが
募ればそのうち
重く
かたく
痛々しく
冷えて凍える心身は
もうひとりでは暖まらない
だから
冬は嫌いだ
君が恋しくなってしまうから
現実にも満たない幻想なんか糞喰らえだ
221:レミング◆yc:2021/02/08(月) 09:23 泣きそうな歪な笑顔で
あなただけは
どこにもいかないで
って
馬鹿だなぁ
僕はとっくの昔から
君と生きると
決めているのに
いいよ
僕も一緒に落ちてあげる
喜びも苦しみも
分け合おう
病めるときも
健やかなるときも
君の隣にいると誓おう
君がこれから
どれだけ惨めな
姿になっても
僕だけは
馬鹿だねぇって
隣で笑っていてあげる
大丈夫
離れないよ
君のこと
一番想っているのは
僕なんだから
何年先も
ずっとずぅっと
私はしがないレター・スケヱル
手紙の重さを計りましょう
籠った想いを計りましょう
インクの匂いの染みついた
郵便局が私の仕事場
ほらまた今日も
紙がかさかさ
人がばたばた
手紙が届く
赤い綺麗な蝋封の
恋人同士の手紙が二通
「愛してる」
ってあつい言葉も
小さい錘がひとつ分
「また明日」
って薄味だけれど
大きい錘がみっつ分
酷い男ね
可哀想な女
お節介はご愛嬌
私も何分趣味が無くって
私はしがないレター・スケヱル
手紙の重さを計りましょう
愛の大きさを計りましょう
黴びて汚れた茶封筒
何やら錆の匂いがするわ
「必ずこんど返します」
なんて軽い言葉なの!
一番小さな錘が
ひとつ分にも
満たないじゃない
お節介も手に負えない
呆れてものも言えないわ
私はしがないレター・スケヱル
手紙の重さを計りましょう
決意の緩さを計りましょう
あら?
これは
宛先の無い
簡素な手紙
「ありがとう
忘れない
いつか、また」
たった
21gの手紙
……嗚呼成る程
届くはずよ
きっと、きっとよ
お節介も程々に
無力さが遣る瀬無いわ
私はしがないレター・スケヱル
手紙の重さを計りましょう
籠った想いを計りましょう
貴方からのお手紙を
心よりお待ちしてますわ
改めて気を遣るまでもない
読みかけの小説の表面を
ふらふら目線が滑っていた
意識はうわの空を向いている
言うなら今だと知っていた
それはきっと
私の望まない結果を
生むことも
貴方はこちらを見遣って
愛おしげに微笑んだ
ああやっぱり
言わない方が良い
こんな話をするときは
どうせなら貴方に
珈琲を淹れて
終わりの無い世界
がらんどうの居場所の無い街
繋いだ記憶を語り明かそう
どうせ明日も来ないのだし
2人だけの空間で
君しか見えないよ
笑えないね
濃紺から溢れた星が
煌めく
仄めく
さんざめく
つうと尾を引く
流れ星を見て
「僕らもじきにああなるんだ」
本当に冗談じゃない
憎たらしい君の顔
今にも泣きそうに笑う顔
どうにもできない
緩やかな苦しみ
矛盾した窮屈さが
胸を締め付けるから
一瞬のうちに
消え去ってしまうのも
悪くないかな
車道側を僕が歩く
意味なんて無いけど
喉に閊えた言葉
意味なんて無い
僕らだけが残された
意味なんて
淀みの無い痛覚で
ひしゃげた前足
おたまじゃくしの
泣き声は
誰の耳にも届かない
飛んで火に入る
野次馬どもが
あらあら今更
大層なこと
意味の亡いこと
叫んでは
明けに暮れる
窓越しの殺人
君に流れる鉄の鎖は
千年前の誰かの溜息
貴方はこれ以上
醜いものを
見なくて良いのよ
光の差す窓辺で
自嘲する君
僕の人生の中で
一番美しいのは君だ
どんなに汚い世界でも
君さえいれば
こんなにも
美しく見えるんだ
なんて言えたら
君はどんな顔を
するだろうか
その双眸は炎天下
慈愛のないショウに
苛立っていた
割れてゆく
人工的なダイヤモンド
慌てふためく子羊
リノリウムを滑り落ちる
気味が良いな
笑ってろよ
こうやって
色も冷め
際立つナイフの鋭さに
ただ延々と
脈動を抑え込む
役に立たない心電図
傷跡の痛々しさが
チャームポイント
衝動性の症
口角の鋭さに
ただ延々と繰り返す
無機質
診察券はお持ちですか
?
独り占めしたい
君の視線
君の心
聞かせて頂戴
君の声
君の鼓動
君の呼吸音
私だけが
知っている
君の過去
君の寝巻き
君の黒子の数
そばに居させて
お願い
見せて頂戴
君の本心
君のなかみ
見て頂戴
私の本心
私のなかみ
こんな現実を
生きるくらいなら
夢の世界に
閉じ籠っていたいの
ローズマリーの
花に埋もれて
有刺鉄線が
肌に食い込んで
緩やかに緩やかに
死を迎える
世界でいちばん美しい屍
鉄の匂いで満たされた
レースカーテンの内側
冷たい雨が
霧のように吹き込む
ワイン色の浴槽
夢の領域
目覚めたくはないの
この瞳を開いたものなら
すぐにでも
腐った果実のような
穢れた現実が押し寄せる
気持ち悪い
体温から逃げたい
目蓋をかたく閉じて
外側に線を引いて
世界とはもう
お別れしたい
結末は分かっていた
分からないふりをした
きっと
私は幸せになれないこと
貴方は幸せになれること
貴方の幸せに
私は必要ないこと
寂しい夜に枕濡らして
貴方の隣を夢見てみたって
薄い月に嘲笑われるだけ
満天の星が俯くだけ
それでも
貴方が幸せなら
なんて
そんな風に
思える筈もなくて
妬ましい
貴方に愛される
あの子が羨ましい
私の方がきっと
貴方のこと愛してるのに
意味もなく美しい夜空に
たったひとつのお祈りを
私は貴方の幸せを
喜べない
願えない
どうか貴方とあの子が
不幸になりますように
どうか傷を負った貴方が
私に救いを求めて
くれますように
どうか
私と貴方が
幸せになれますように
もし賢くなって
世界を楽しめなく
なるのなら
馬鹿のままで良い
幸せしか
知らないままで
この世界を
生きていたい
もし夢を手放して
希望を失くして
しまうのなら
夢追い人のままで良い
限界なんて
知らないままで
暗闇の中を
走り続けたい
もし君に告白して
心に傷を負うのなら
片想いのままで良い
優しい君を
好きなままで
ずっと君だけ
見つめていたい
もし
生きるのが辛くなって
この世を
発ってしまうのなら
本物の幸福も
心からの愛も
確かな生の実感も
全て知らぬまま
死ぬくらいなら
今はまだ
辛いままで良い
だって
癪じゃないか
せっかく世界に
生まれ落ちても
幸福も
愛も
命の重さも
なんにも知らずに
終わるだなんて
だから
今はまだ
苦しいままで
悲しいままで
いつか絶対
不幸を楽しむ無粋な神に
脳無く嘲る愚かな人に
この
未だくだらない世界に
復讐してやる
そんなに
遥か遠のいて
君はどこへ
向かってしまった
嘘だって
縋って
泣いて
抱き合った
あの夜の出来事は
忘れてあげるから
きっと
逝く笑も
知らぬまま
僕らは離れて
しまうんだろう
広げた腕を
差し伸べた手を
素知らぬ顔で
すり抜けて
もう二度と
出会えないんだね
視界を奪う
散りゆく翅も
きっと
君のもとへ
運んでくれや
しないのだ
温い風が
ぐるりと渦を巻いた
足元に俯いた頭を
目の前のベンチに向ける
古ぼけた街灯の下
腐りかけのそれの端に
女が座っていた
人を
待っているんです
手に持った花束に
顔を埋めたまま
くぐもった声で
女は言った
異様であり凡庸
返事をする気も起きず
ただ黙っていた
街灯の照らす円形に
女の当たる凹凸は無い
横切る間際
女は小さく舌打ちをした
花束は全て枯れていた
生臭い匂いに身震い
踵はとうに失くしたのだ
心の
一番柔らかいところに
誰かの声が
割れた硝子の
破片みたく
深く鋭く突き刺さる
一度痛みに
触れたなら
傷を増やすのが
怖くなって
保身ばっかり
上手くなる
歯の浮くような
臭い台詞を並べ立て
真っ黒なインクで
虚ろな表情を隠す
本心を
悟られないことだけ
考えている
それでも君は
僕に
笑いかけるんだろうな
屈託の無い笑顔で
輝くばかりの瞳で
「信じてる」なんて
こんな僕には
過ぎた言葉だ
ああやっぱり
私じゃ駄目なんだね
君は笑って泣いていた
薄紅滲む春空に
逃げ場を
塗り潰されていく
言いたいこと
伝えたいこと
きっと君に
見透かされている
だろうから
きっと今更
意味は無いから
浮かんでは消える
言の葉たちを
膨らむ蕾を眺めてた
咲ききる前に
離れてしまえば
良かったな
花はいずれ散って
地面に落ちて
汚く朽ちるだけなのに
そう言って涙を溢す
君は淡い桜いろ
そこで私は絶望した
明け方の空
夜の帳上がり切らぬ四畳半
脱色した毛先
そこで私は絶望した
旧校舎の北側
ボール紙のようにしなる床
4-4の片隅
そこで私は絶望した
通院先の花壇
アイスの棒の金魚の墓
日陰の葬式
そこで私は絶望した
コーポの404号室
冷え切った壁際の写真立て
アルコールの匂い
そこで私は絶望した
三面鏡の44番目
剥がれ掛けのアルミ箔
蝶番の断末魔
そこで私は絶望した
クレヨン塗れの両手
繊維のささくれ立つ紙粘土
こびり付いた着色料
そこで私は絶望した
そこで私は絶望した
白昼
蝉の声に似た絶叫
潰れた夏野菜
勝手口のドアノブ
中廊下前の古い振り子時計
片方の落ちた物干し竿
大広間の掛け軸
ホルマリン漬けの兜蟹
点滅する蛍光灯
衣装箪笥の四段目
勉強机の鍵付きの抽斗
羽毛の飛び出た掛け布団
埃の浮いた湯呑み
西側の窓
腹を見せたまま動かぬ錦鯉
ばねの伸びた鼠取り
乾いて間もない万年筆の先
羽の折れた扇風機
客室の穴だらけの障子
××の
そこで私は絶望した
そこで私は絶望した
そこで私は絶望した
そこで××は絶望した
そこで私は絶望した
君の後ろ
予備の予備の予備が無いと
安心できない
目覚めない朝が怖くて
眠れない
脳を侵す毒に取り憑かれて
食事ができない
噛み合わぬ会話が億劫で
声が出ない
醜悪さを直視するのが嫌で
鏡と目を合わせられない
視線の水圧が苦しくて
息ができない
拒絶ももはや頂点に達して
家から出られない
すり減る自我を捨てたくて
今
麻縄を首にかける
翳る眼差し
高架下に佇む
街灯に示す熱
反撃は難航
窮地に立つ学舎
井戸水に八咫烏
七並べで灯台の上
遮る眼差し
炎天下に斎く
人道に反す夏
観劇は断行
碌な言葉は無く
乞うもにべも無く
死戦の甲斐無く
散々たる通り雨
蜻蛉の二つ名
一人部屋にて
翻る眼差し
急降下に毒吐く
正答に絶えず放つ
惨劇の残響
それはまさしく
晴天の霹靂
突如
平和な世界に降り注ぎ
全てを薙ぎ倒した
その中心に君臨した
君は雷
君がふらりと右を向けば
皆も一斉
右を向く
君がひと言声を発せば
皆は一斉
耳を澄ませる
全ての争いのもと
全ての救いのもと
全ての始まり
全ての終わり
世界はまるで生まれ変わった
色も形も在り方さえも
僕の心を引っ掻き回し
声も目線も奪い攫った
僕の全てを変えてしまった
それら全ては
たった一瞬の煌めき
君は神なり
夏の空に
塗り潰された標識
寂れた駄菓子屋の前
撒いたばかりの水が
青色に滲む
サイダーの泡のような
夏だった
空中を舞う青い春に
目を凝らしていた
ふと振り返ると
君は鞄と
朝顔の鉢を抱えて
泣きそうな顔で
僕を睨んでいた
滲む汗を拭って
昔の二倍重い
登り坂を歩いた
耳を劈く
ひぐらしの聲が
煮詰まった感情を
掻き回す
水面まで上り詰めて
弾けたら
それで終わる夏だった
錆付いたベンチから
もうずっと
離れられない
蝉の鳴き声が
頭を反響している
送電塔の落とす影が
遠い遠い正義の手が
僕から君を
奪っていった
生ぬるい風が
頬を撫ぜる
届くはずのない
瓶の底のような
透き通った硝子色に
触れたくて
思い出の淵で
身悶えしている
死にかけに駆ける風
遊ぶ春の柔らかな陽射し
ハートの形の
小さなかけらが
地面も水面も
覆い尽くして
見上げてもいないのに
確かな存在を示している
いっそ僕も花弁に紛れて
跡形残さず
散ってしまいたい
ねえ愛おしい君
君の好きな春が終わるよ
連れ戻したいなんて
思っていないから
せめて君とお揃いの
白い箱に
入らせてはくれないか
春の朗らかな陽気の中
君に最期の口づけをして
そのまま
逝ってしまいたい
甘い香りが
涙を誘う
草花萌ゆる優しい季節に
世界で一番
残酷なお別れを
薄桃色が包み込む
白と黒の人の列
思い出すのは
桜舞い散る中で微笑む
君の横顔
もう二度とは見られない
ああ
と嘆息
足りない
私には
夏が足りない
何も考えずに遊ぶ時間こそ
私には一番必要なものだった
それなのに
靴を泥だらけにして
運動場を駆けた記憶も
田んぼで虫やら蛙やらを
捕まえた記憶も
なぁんにも無い
何にもないまま
大人になってしまった
あの頃
なんていうものは無い
何も
私は教室で本を読んでいた
校庭の笑い声には目もくれず
内容もほとんど覚えた本を
ただ何度も繰り返し読んだ
後悔している
もっとするべきことが
あったはずだ
本を閉じろ
そんなものはいつでも読める
驚け
その本は10年後もずっと読んでる
靴を履き替えて校庭へ出ろ
いつまでもチーム分けの
ジャンケンをしている子たちに
「仲間にいれて」
それだけで良い
みんな良い子だったろう?
夕暮れまで遊んで
疲れてくたくたで家に帰って
どろどろの服を怒られて
それで
鬼ごっこはいつも
真っ先に標的にされる
花一匁ではいつも
最後の最後まで残る
それで良いんだ
それで良かったんだ
蝉の声に
逸る気持ちを
目いっぱいに抱えて
自転車のベルを鳴らして
靴の底を焦げ付かせて
日に焼けた顔で
水道水をがぶ飲みして
道路に落書きして
空き缶を蹴っ飛ばして
汗だくで
遊んで
ふざけて
怒られて
笑って
走って
夏を
ああ
と嘆息
こんなに
感傷に浸るのが
上手くなるはずじゃなかったのに
奈落の螺旋階段は
緞帳と共に降り立った
ワイングラスを傾けて
腐臭を発す
アジのフライの
面倒を見てやる
さあ酔いも醒めぬ内に
ちり箱に頭を突っ込もう
軟膏を食器棚に
塗ったくってやろう
天使の梯子を
外したお前は
もう誰からも救われない
永遠の中を歩けよ
大地の奴隷よ
紳士淑女と
その他有象無象の皆様
今宵もどうぞご静聴ください
世にも悍ましい
大衆劇でございます
X県在住のAさん
彼は今日も草臥れた顔で
原稿に向かっております
兎にも角にもネタが欲しい
闇夜を照らす光のような
つまらない日常に紛れる
不可思議な事象
knock knock!
窓の外を
何者かが呼んでいます
「やぁ“ロマンチスト”くん
僕と一緒に遊ぼうよ
そんな窮屈な部屋ん中で
一体何が思いつくのさ?」
Aさんは
ぱっと目を輝かせます
そりゃあそうだ!
こんな埃だらけの部屋で
碌なことを
思いつくはずがない!
がらりと窓を一気に開けて
夜の澄んだ空気を
タールの染みた肺
いっぱいに吸い込みます
濁った視界で見る星空は
この世のものと
思えないほど美しく
まるで煌めく大海のよう
あの光に飛び込みたい
そして泳いでみたい
あの美しい波間を縫って
藻屑にでもなってしまいたい
そうすれば
そうすれば……
Aさんは
いてもたっても居られず
机を乱暴に横に倒して
部屋の隅から助走をつけて
たった今
星空へ飛び込んで行きました
いえ
窓から飛び出して逝きました
彼が最期に会話したのは
窓に映った自分自身でした
あら
紳士淑女と
その他有象無象の皆様
どうして笑わないんです?
とびきりのジョークでしょう!
刹那の浮遊感
のち急降下
空を蹴る
宙を舞う
空気の抵抗に暴れる長い髪
背後の誰かに焼き付ける
とびきり廃れた
このどうしようもない世界に
手を振る
さらば世界
さらば青春
生憎去った後には興味が無い
この目で見ぬ色に意味は無い
揺れる
ガラス張りの高層階
手繰る見えぬ命綱
乱反射する生命の葛藤
刹那の浮遊感
のち急降下
溢れ出す丸い雫が
重力に従って落ちてゆく
さらば人生
さらば
目の前の一面の白が
空っぽな頭の中が
それが私の行く先だ
インクに浸したまま
紙の上を滑らないペン先
渇いたインクの塊を見て
やるせなさが込み上げる
指一本たりとも
動かす気が起きない
ただベッドの上で
死を待ちたい
電話口から聞こえる
締め切りを訴える
切羽詰まった声
何日も風呂に入っていない
ことによる
全身の痒みと悪臭
それが余計
生きる気力を削ぐ
もう
目を開けていることすら
億劫だ
何なら
呼吸をするのだって……
ドクドク脈打つ
君の心臓が
まだこの手のひらの中に
遺されているから
なんだか
勘違いしてしまいそうだ
君がまだ生きている
なんて
気のせいでいたかった
君のせいにしたかった
思い出したくもないのに
あの藍が
忘れさせてくれない
君の側にいたかった
君のせいで痛かった
切り取ったような
わざとらしいくらいの
快晴で
君はそうだ
泣きそうな顔で
「また明日」
って
ジクジク焦げつくような
君への執着が
まだこの胸の中でに
存在してしまうんだ
なんだか
信じられそうもないや
君がもう笑わない
なんて
それは
無意味な排気ガス
廃れた街中に
蔓延する憂鬱
吐き出されては
灰色に濁る
また吸っては
肺を蝕んでゆく
何度も繰り返し
吐いては吸って
吸っては吐いて
溶けては沈んで
登っては降りて
私の幸福を
連れてゆくもの
私の人生を
曇らせるもの
感染る
病む
所謂それは
ため息というもの
夜明け前の
透き通った空気の匂い
隣で眠る君を見て
ふと思う
君は果たして
本当に幸せなのだろうか
君の何もかもが狂った日
あの日が訪れなかったら
君はどうしていたのだろうか
きっと
たくさんの人に
愛されただろう
たくさんの努力を
たくさんの成功を
たくさんの名声を
そして
その全てを愛しただろう
世界が君から全てを奪った朝
それが来なければと
いつかの君は
思ったのだろうか
空っぽになった君が
中身を埋めるために
手にしたものは
僕と
僕に対する執着だけ
それでも君は言うんだ
貴方がいれば幸せだと
後悔など何も無いと
そして笑うのだ
嘘偽りを
疑う余地も無いような
この上なく幸せそうな顔で
何も望まない君のために
不幸になれない君のために
僕にできることは
あるんだろうか
ぬるい風が頬を撫ぜて
レースカーテンの外は
俄かに明るくなり出した
人は愚かであるかもしれない
全て無駄になるかもしれない
例えそうだとしても
否
そうであるからこそ
諦めたくない
ひたすら真面目に生きた
罪の無い人格者は
今朝通り魔に刺されて
死んだ
人を騙して貶した
どうしようない屑は
天寿を全う
幸せそうに逝きやがった
不平等だけが平等で
報いも救いも狂いもしない
どこまでも残酷で
やるせない世界
それでもそれを
嘆いていたい
それでもそれに
歯向かいたい
時代と共に変わりゆく
曖昧な倫理を
守っていたい
それが現実の常だとしても
バッドエンドを
憎んでいたい
来るかも分からぬ
ものだとしても
永遠の明日を願っていたい
人はいずれ朽ちて逝く
逃れられぬ定めとしても
それでもそれに抗いたい
人間風情でいたいのだ
自販機でコーラを買った
YESかNOか
虫眼鏡を踏んで割った
YESかNOか
三角コーンを裏返したら猫がいた
YESかNOか
水溜まりに落ちた洗濯物を拾った
YESかNOか
角砂糖を取り落とした
YESかNOか
油の浮いた池を眺めていた
YESかNOか
入道雲に手が届く気がしていた
YESかNOか
ビー玉をポケットにしまった
YESかNOか
リビングに死体が転がっていた
YESかNOか
冷え切ったコンビニ弁当を食べた
YESかNOか
イヤホンのコードを切った
YESかNOか
泥塗れの靴を持って立ち尽くした
YESかNOか
虫籠の中身は空だった
YESかNOか
鉛筆の芯を折った
YESかNOか
インクを倒した
YESかNOか
頁を破いた
YESかNOか
YESかNOか
私は貴方が好きだ
YESかNOか
私は貴方が嫌いだ
YESかNOか
自他の境界線が
薬のせいで潤んでいく
水に落とした墨のように
結んでは解ける思考回路
それはいずれ混ざり切る
自由の効かぬ
声帯と舌はべらべらと
出鱈目を並べ立て
その内容に気を取られて
余計に脳が溶けていく
純度の高い狂気の中で
一握りの正気を求めて
喘いでいる
感情と思考の逃げ場が欲しい
それは依存か執着か
はたまた愛か憎しみか
飴の舐めすぎで
擦り切れた口内
湿度が高く低い気温は
ひどく不快で
舌打ちをした
唇の端が切れていた
ぼんやりと街灯を眺める
鮮烈な光に目を奪われた
哀れな虫の亡骸が
光を僅かに遮って
胡麻粒のように
貼り付いていた
黴と生ゴミの匂いのする
部屋から出ても
世界はこんなにも
変わらないのだ
それに何故か安堵して
それに何故か憎悪する
洟を啜って踵を返す
用など端から無かったが
用が済んだ気がしたのだ
私はどうして生きている?
ふと我に返って思う
私のような人間が
ひとり生きたとて
世界が変わる
わけでもない
ベランダの向こうでは
思想をひけらかしたい集団が
これから襲う大惨事を
見ているだけで良いのかと
言葉にしなくて良いのかと
声を上げろと
唾を飛ばして叫んでいる
対岸の火事は楽しい
画面の向こうの非日常
止まぬ雷鳴、暴風雨
顔も知らぬ誰かの語り
それら全てが
面白くて仕方ない
意味を成さない
全てが可笑しい
言葉にならない
全てが愉しい
口角が下がらない
これが愉快という感情か
嬉しや今世
楽しや人生
僕と君の間
穏やかな凪のそれは
沼
綺麗なのは上澄みだけで
底にはへどろのような
醜い悪意が渦巻いている
君と手を取り合ったとき
触れた温度の不快さに
思わずぎちりと
力を込める
すると君は
にこりと微笑み
余計に強く握り返す
互いに血が滲むほど
握り締め合い
振り払った手の中には
赤い鮮血と
黒く煮詰まった因縁が
べったりとへばり付く
へどろのような
君との縁は
とっくのとうに
腐り落ちて
僕の心に膿を残した
どこまでも続く晴天に
思い出さなくていいことが
ふいに脳裏に
浮かんだ気がした
まだ
諦めていないのかと
嗤う自分の首を抑え付ける
まだ
許しはしないのかと
呪いを吐く口を縫い付ける
そうして変わらない朝が来て
絶望しながら布団を這い出る
きっとまたその繰り返し
それでいい
じわじわと血溜まりを
広げるように
本心さえも押し殺して
血が吹き出すことの
無いように
その日が来た時には
もう血が尽きて
壊れてしまえるように
ああそれでも
嫌がって目を背けていても
いつかは
分からなくちゃいけない
その日はきっと今じゃない
と渋る脳に
言い聞かせて
そしてまた
ひとりの世界に閉じ籠もる
永遠に
その日が来ないことを願って
ふと捲ったページ
君の名前が目に入る
その途端に胸が高鳴る
ああ
君はなんて魅力的なんだ
君はなんて人気者なんだ
君は美しい
君は賢い
君は恐ろしい
君は可笑しい
君は強い
君はとにかく素晴らしい
こんなに魅力に溢れている
のにも関わらず
君のその不思議な雰囲気は
見る者の警戒を溶かし
芯に触れ
その全てを狂わすのだ
手を伸ばせば
届いてしまいそうな気さえする
それだから
僕みたいな人間が
一瞬でも
勘違ってしまうんだ
君のことを真に理解するのは
自分だと
ね
全く馬鹿らしいな!
君の目は
誰も何も映しちゃいないさ
君の目に映るのも
君の心にあるのも
全て君の世界だろう
君には誰も触れられない
君には誰も近付けない
麗しき高嶺の花だ
恐るべき異常の華だ
誰も彼もが
血を流す思いで
君の気を引こうとも
君は毛ほども気にしない
それでこそ
毛高き孤高の君だ
ああ
愛おしい君よ
どうか僕から
逃げ切っておくれ
いつまでも
手の届かない君でいてくれ
やたらと喉が渇く
陽はとうに落ちきって
冷えた空気が
足元を抜けていく
最後に君を歌ったのは
いつだったか
もう覚えていない
確かあの日は
目に沁みるような
遠い遠い青空で
昔のことを
思い出していた
まだ純粋に笑えた頃
隣に君だけがいた頃
それが辛いと泣いていた頃
名前を呼びたい
君の名前を
僕の周りには
人が増えすぎた
誰かに聞かせるために
呼ぶんじゃないのに
この声に応えるのは
お前たちじゃないのに
元より
答えは求めちゃいない
ただ
音に君を感じたくて
液晶に映る君も
インクで描いた君も
僕の中の君でさえも
ほんとうの君ではないのだ
夜の空は暗くていけない
涙で滲めば星もぼやける
全てが曖昧でくだらない
青が恋しい
君が恋しい
嗚呼
今日も今日とて
君に会いたい
怒りにも嫉妬にも似た
どす黒い感情が
ぶわりと神経を逆撫でる
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
どうしてあの人は
私以外の声で
呼ばれるのだろう
どうしてあの人は
私以外の声を
耳に入れるのだろう
あいつに
あの人の何が分かる
あの人の名前を
ノートいっぱいに
書き綴ったことは?
あの人を理解するため
月夜の晩土砂降りの中
立ち尽くしたことは?
あの人への愛に悶えて
精神に異常を
きたしたことは?
私はこんなにも
あの人に恋焦がれて
いるというのに
あの人はそんなこと
微塵も興味を
持たないのだ
しかし
それは当然のこと
自然の摂理と
いっても良い
あの人は
こちらに介入しない
それで良いのだ
問題はあいつだ
そんな軽い気持ちで
あの人の名前を呼ぶな
あの人の何も
分かっていないくせに
あの人を本気で
愛したこともないくせに
声に出してふと気付く
私は
あの人の何を知っている?
私は
あの人の何なんだ?
あの人なんていないのに?
期待されても迷惑
失敗して失望されるくらいなら
最初からそのままでいい
チェケラ!!おぽーーー!
>>260
キリ番、取られてしまいましたね。
最後の奇声に全ての感情が詰まっていますね……。
貴方のその
言葉を発した後に残る
氷の粒が転がるような
涼やかな吐息の余韻が
貴方のその
太陽に照らされて煌めく
柔らかな毛先の光沢が
貴方のその
低いテーブルに
窮屈そうに折り曲げられた
長い両脚が
貴方のその
退屈そうについた頬杖が
笑みを湛えた薄い唇が
危うく輝く瞳が
酷くがさつな動作をする痩躯が
瞬きの度に音のしそうな睫毛が
大袈裟に開かれた
口から覗く獰猛な歯が
演技がかった態度に隠した
底の見えない本性が
そして何より
貴方は心の底から
貴方であるという
その自我の全てが
私を狂わせる
やるならとことん
大袈裟に淑やかに
威風堂々と謙虚に
本心なんて柄じゃない
最後まで飾らない
中々ままならない
しかしそれで構わない
さァ
賭けよう
fifty-fiftyなこの勝負
切り札はジョーク
または言わば漁夫の利
死角から飛び出せ
誰も見ちゃいないか
それも今のうちだ
どん底通り越して
裏っ側さえも目に
焼き付けた
生半可じゃない覚悟
決めて
放り投げた賽の
目は見ずに
今
飛び立ってやんのさ
他人の心に唾吐いて
震える手でチャカ持って
喧嘩腰のダサい虚勢
煩い
黙って騙されろって
汚い
寄って来ないでって
我儘も大概にしな
奈落の底で藻掻いた
っていつまで
縋ってんの
手首の傷は生命線
強めのお薬増やして
鍵付きの部屋でしか
生きられない
惨めにならない?
ああそうか
感性もランダムで
売ったんだっけ
哀れな姿
見せびらかして
ノータリンから
金巻き上げて
挙句の果てには
孤独です
笑わせんなよ
まるで新興宗教
信者は盲目
倫理なんかは
とっくに捨てた
玉座に凭れた教祖様は
今日も
安全網の中から吠えてら
君のいない世界に意味はない
ありふれた言葉だ
君がいる世界は
君が笑う
君が呼吸をする
君が僕を見つめる
君がいて
そこで始めて意味を持つ
それなら
世界が先に壊れたとしたら?
回ることをやめた星
進むことをやめた物語
生きることをやめた人々
それでも君が
そこにいるなら
無意味に鋭利な言葉に
心底嫌気が差す
機嫌取りは得意じゃないんだ
そう一斉に叫ばないでくれよ
他人が信じられない?
正義は思考停止の象徴?
悪こそが真理?
もう生きていたくない?
この世の全ては金?
この世の全ては嘘?
人間に価値などない?
知らねえよ
わざわざ足を運んでまで
言うことがそれか
ご苦労なこったな
可哀想な人生
ため息と共に煙を吐いて
逆さまの十字架を
薪に焼べた
カーテンを揺らす
初夏のぬるい風が脳を梳く
全身を覆う柔い熱が
気怠くまどろみを誘う
四畳半の空洞に
秒針が時を刻む音だけが
響いていた
夢を見た気がする
天国の庭師が枝を落とした
鋏が溢れて星となる
願いを聞けば鋭く刺さる
そんな夢を
貝殻の中から覗く眼差し
見つめ合うは新海の姫
目が合ったことは一度も
そんな夢を
幽霊さえも躓かせる石
何度も躓いてしまうから
死んだことさえ気付かずに
そんな夢を
命の砂時計は角砂糖
甘い夢を見て眠りにつく
落ちても溶けても同じこと
そんな夢を
操り糸とピアノ線が絡まる
操られなきゃ動けずに
操られれば四肢が飛ぶ
そんな夢を
夜花が今更泣いている
朝露になるには遅すぎた
そんな夢
鳥の声さえ聞こえない
淡い眠気に囚われていた
昼下がりは憂鬱とともに
邪魔なほどに
飛び交う賛辞に
目が眩む
成功は枷だ
どれだけ
煌びやかな宝を
渡されようが
重みに耐えられぬ
脆弱な身体に
変わりは無く
きっとそのうち
身動きが取れなく
なってしまう
湧く有象無象の足元に
踏み潰された花を見て
私は思わず嘔吐した
心臓を穿つ
衝動に悶えながら
今日も
脂汗の滲んだ
笑顔を作る
手は振ってやらない
そんな動作に意味はないから
そっと本を閉じた
目を瞑ると涙が
溢れてしまいそうで
口を開けば嗚咽が
漏れてしまいそうで
放心したように
ただぼうっと手元を眺めた
それでもやっぱり
視界は歪み
喉がつかえる
あと一歩で泣いてしまう
そんな時
“終わらない”と
声が聞こえた
私達に終わりなどない
忘れるのが怖いなら
見に来れば良い
会いたいなら
会いに来れば良い
私達はずっとここにいるから
狡いじゃないか
そんな優しい声色で
そんな優しい眼差しで
私の心を撫で付けるなんて
ついに
ぼろぼろと涙が溢れる
それは想定より
ずっと暖かく
ずっと晴れ晴れとしていた
本の匂いがする
埃を被った古本のような
新しく刷られたばかりのような
それはとても心地良く
どこか刺激的な匂い
今日も私はノックする
新しく古びた
懐かしいようで新鮮な
通い慣れた部屋のドア
開けば
きっと貴方がそこにいて
紅茶を淹れて待っている
“ただいま”と言えば
本から顔を上げて
“おかえり”と返して
“さあ今日は、どんな話が聞きたい?”
と
手は振ってやらない
これは
さよならなんかじゃないから
空がやけに遠いから
見上げた首が逆さに落ちる
水面を蹴る
底の灼けたサンダル
弾けるように
飛沫が上がる
行き場の無い感情に
囚われたまま
何処へも行けず
燻むほどの青の中心で
立ちすくむ
意味もなく
胸が痛むから
助けを求めて
手を伸ばすけど
青にも白にも
手は届かずに
透明でいて空を切る
染まるのが嫌だった
僕は僕のままでいたかった
けれど今
手を見ると
ぐちゃぐちゃに混ぜた
欲張りな色が
細胞の奥まで潜り込んで
もう一生
拭えない
いらないのに
いらなかったのに
無ければ
生きてゆけないのだ
誰の声も
誰の歌も
灰色の雑踏にしか
聞こえない
あんなに鮮やかだった
君の声ももう
あの灰色に紛れてしまった
守りたかった
とっくに色を見失った
僕を守って欲しかった
目も眩むような壮大な夢を
胸が躍るような壮大な色を
いつまでも
大事に抱えて
けれど
幻想は
目を離した隙に掻き消える
汚されてしまった
いつのまにか
居なくなっていた
汚い僕が居るだけだった
空は綺麗だ
どこまでも青く透き通って
救いもせずに
ただそこにある
一面の絶景に
僕だけが
蟲のように醜く
未練がましく
貼り付いていた
どれだけ言葉を
飾ってみたって
それが届かないことに
変わりはなくて
眩しいくらいの幻想を
空っぽの心に
詰め込むだけ
煩いくらいの高鳴りを
両手の奥深くに
仕舞うだけ
酸いも甘いも
そこには無くて
ただ血のような
生臭い苦みが
口の中いっぱいに
充満していた
笑顔も真顔も変な顔も
全て等しく
緩やかに
残酷に
心を掻き乱す
怒りも憂いも喜びも
全て等しく
たった一つの視線で
面白いほど
操られる
どれだけ屁理屈を
並べたところで
それが恋なことに
変わりはなかった
足元が
波に浚われ崩れるような
感覚
削り取られた
角があったはずの場所を
てのひらでなぞり
爪先に吐いた
“そういうのはもう
恥ずかしいから”
その言葉を聞いて
また胃液が込み上げる
ぞわぞわと
全身に鳥肌が立ち
膝が震えて
立って居られない
素晴らしい夢物語を紡いだ
その口で
そんな
つまらない現実を
吐かないでくれ
美しい美しいその毒は
水なんかにならないだろう
禍々しく鋭いその刃は
今更溢れはしないだろう
自ら滴る猛毒を呑んで
自ら手に持つ刃で刺して
挑発的な笑みを引っ込め
無理矢理人の良い演技をして
個性を殺して
それは
そんなのは
貴方じゃないだろう
見ている世界が
あまりに狭いのだ
私はただ
箱庭を覗き込んで
生きた気に
なっているだけ
井戸ですらない
水溜りの底を浚って
光る砂利を見つけて
喜んでいる
滑稽で
愚かで
どうしようもなく馬鹿だ
そうだ
始まりはいつだって
突然で
そして終わりは
ひとつじゃない
いつまで閉じ籠っているつもりだ
いい加減
現実に目を向けろ
開き切った瞳孔を
引き絞れ
無理にでも光を見つけろ
苦しくても肺で息をしろ
そうしないと
人は生きられないのだ
倦怠感と微熱に囚われて
眠れない
このどうにもならない
感情の澱を
消して、ブルー
凭れたいだけだった
ただ
少しだけ体重を預けて
淡い安堵に浸らせて
酩酊感と哀傷の板挟みで
眠れない
脳内にまで染み付いた
薔薇の香りを
消して、ブルー
貴方に酔っていた
背中に回る腕が
熱く
私の理性を溶かしてゆく
焦燥感と未練に苛まれて
眠れない
甘く思考を鈍らせる
唇に乗った体温を
消して、ブルー
幸福と温もりは
一瞬の煌めき
私をすり抜ける雑踏
貴方は明後日を向いて
瞳を輝かせて
私の瞳を曇らせて
ああ
ブルー、
滑稽なほどに恋をした
哀れな私の身と心を
消して、ブルー
知らない子供の
噂で聞いた
夏が死んだらしい
幾ら何でも
早すぎるだろう
僕は信じていなかった
ドアノブを引いて
外に出る
風が吹いていた
青空が広がっていた
夏が死んでいた
風はただの風だった
空は青いだけだった
ぶわりと
吹くだけで
息が止まりそうな
風が死んでいた
目に沁みるほど
鮮やかで透明な
わたあめ雲を乗せた
青空が死んでいた
耳元で生命の絶叫をする
蝉が死んでいた
茹だった意識の手を引く
熱が死んでいた
景色を指で擦ったような
陽炎が死んでいた
夏が好きだった
僕が死んでいた
夏が死んでいた
これで最後だ
グラスに残る
ひと口を見つめる
身体が火照るような
ぼやけるような感覚
本当は
君に見せたかった
命の灯る美しい夜景も
静かに見下ろす星空も
それなのに
約束したじゃないか、
この
この、
嘘吐き
宛ての無い悪態は
視線の先の
真っ赤なそれに
溶けてゆく
徐に力が入らなくなり
椅子から転げ落ちて
のた打ちまわる
生理的かもしれない
涙が流れる
吐き気がこみ上げる
吐くな
まだ
まだ
駄目なんだ
空の小瓶の注意書きが
歪んで見える
これで最期だ
震える四肢を
無理矢理伸ばし
テーブルの前に
這い戻る
グラスを引っ掴み
底の一滴まで飲み干す
これで
また、
君に会える
ああ
苦くて苦くて
吐き出してしまいそうな
人生
みんな妥協のカプセル
飲み込んでくのに
私だけが往生際悪く
底を掻いて
水を吐いて
お綺麗な言葉も
出てきそうにないから
とっとと醜く
くたばっちまいたい
宵闇は別に怖くない
嘘怖い
けどそれよりずっと
醜い私を照らしてしまう
光が怖い
はずでした
理由はこの際どうでもいい
とにかく私はお前に会った
出逢った
お前は
サーチライトみたいな
凶暴な光で
私の目を潰しやがった
それ以来
そうさ知ってんだろ
そんで今
このどうしようもなく
ぐちゃぐちゃなテーブル
片付けてみようと思うんだ
嫌だね
今度は
甘くて甘くて
しょうがないのに
吐き出すわけにいかなくなった
食器棚が開いていた
透明な羽の虫が飛んでいた
風邪薬の箱が落ちていた
ペットボトルを踏んだ
画鋲が取れかかっていた
盛り塩が崩れていた
スマホのカバーを割った
サプリのチラシがはためいた
飴の包みを破いた
花壇が掘り返されていた
リモコンの電池が切れていた
近くの川で子供が溺れた
整髪料が切れていた
カレンダーをめくり忘れた
君が死んだ
蜂蜜が白く固まっていた
靴箱に蜘蛛の巣が張っていた
ウイスキーのグラスを買った
キッチンの小蠅を潰した
昨日の新聞を踏んだ
君が死んだ
空き缶が水を弾く音がした
イヤホンが絡まっていた
鞄の底のレシートを捨てた
ゴミ箱がマスクで一杯だった
枕から綿が飛び出ていた
牛乳パックが干してあった
時計が埃を被っていた
蚊取り線香が終わっていた
炬燵を出したままだった
乾麺が散らばっていた
饐えた匂いが充満していた
君が死んでいた
腐った水が飛沫を上げる
肺を覆う
生温い虫の吐息
頬を伝う
溝色の倦怠感
綱渡りから落ちている最中
足を進めるごとに
首のロープが
締まってゆくような
時間をかけて
積んだ石を
目の前で崩されて
いるような
そんな
錯覚
虚しくて
馬鹿らしくて
辛くて
もうこれ以上は
生きられない
いずれ土に還るものならば
それが今であっても
同じこと
ふと
頭上に確かな質感
借り物の言葉を安く飾って
表面だけの声で汚して
本当の言葉の意味を
分かっているのか
目先の流行りに
飛びついて
リスペクトの語彙で
泥を塗りたくり
雑音で想いを掻き消した
ダブルが主なスタンダード
機械には人権は無い
深ければ良いのだ
評価が全てだ
見られる価値しか
見てはいない
浅はかな考えだ
浅はかな人生だ
それに騙される奴らも
みんな揃って大馬鹿どもだ
どうせ
こんな想いは届かない
最初に言葉を生んだ者の
気持ちなど
雨のにおいがする
水溜りに跳ね返った
クラウンが
今日の王さま
傘が飛沫を上げて
逃げ出すまえに
停留所に辿り着く
赤いランプが水滴に
飾り立てられている
何を、
待っているんだっけ
ふと
我に返る
青ばかりが目立つ
まるで稚拙な
絵画のような
眼球に映る景色
レンズ越しと
何が違うんだ、
そう不貞腐れて
水が這ったあとを
指先で伸ばす
ずぶ濡れのスカートは
いつもよりずっと
綺麗に見えた
空に
地面に
逆さまに落ちていく
球の鏡と私の心
誰の唯一にもなれない
私は乾き切った
汚い愛の器であった
私が血を吐くほどの
愛を捧げようと
持つ者には到底敵わず
いっそ笑えるほどに
ちっぽけな
掌に残る愛のかけらを
見つめるばかり
愛されなくてもいい
ただ愛したい
だが
こんなにも穢れた愛を
誰が受け取ると
いうのだろう
毒にも薬にもならない
醜いだけのそれを
私が愛した者は
きっと
受け取りはしない
だからといって
嘆いても喚いても
死んだとしても
その時ですら
何者にも
看取られることはない
誰かの心に
ちいさな擦り傷を作って
この惨めな愛の一生を
ああ狂気よ
美しき異常よ
私を助けておくれ
私を
この感情の澱から
救ってくれ
狂気よ
私はそれを
否定しないよ
狂気の果てに
殺めようと
くたばろうと
それが醜くても
許せなくても
消したくても
否定しない
だから
この手を取って
疲弊しきった
この脳を
底の無い
思考の檻に
閉じ込めておくれ
陽だまりの真ん中
淡い光に溶けていって
しまいそうに
君が僕に
手を振っていた
はやる心臓を抑えて
君の名前を呼ぶ
いや、叫ぶ
消えてしまわぬように
拐われてしまわぬように
全速力で駆け寄る
まさか会えるだなんて
思わなかった!
喜びに震え
汗でびっしょりの手を
差し伸べると
君はそっと受け取った
あまりの感動に涙を流す
僕を見て
君はくすりと笑い
いつでも会えるよ、
__がそう望むなら
と言って
消えた
呆然と立ちすくむ僕
手元にはひと束の紙
それは途中までかいてあって
完成はしていなかった
僕はしばらく
それを見つめて、
踵を返す
すぐにでも
続きをかかなくてはならない
望まなくてはならない
だって僕がかかなければ
君に会えないのだ
貴方は特別な人じゃない
それは正しく
確かな事実で
しかしあくまで
世界にとって
私の世界は
貴方を中心に回っている
私は
貴方が起きるであろう
時間に起きて
貴方が食べるであろう
ものを食べて
貴方がしたであろう
姿をえがく
そうして夜も
貴方の夢を見て眠る
貴方という存在が
貴方という言葉が
私の目覚める理由であり
心臓を動かす理由である
貴方という世界は
今日も今日とて
歯に沁みるほど
甘ったるく
私の脳を侵してゆく
その痛みは
苦しみは
もどかしさは
もはや
恍惚ですらあるから
きっともう手遅れだろう
もしも貴方が
今更実在を否定したとて
私の
哀れに暴走した愛は
止まるわけがなかろうが
飛ぶネズミの騒めき
ひゅうと喉を通る
湿った風
子供が誤って手放した
色とりどりの風船は
灰色の空によく映える
横転したバス
火薬の匂い
冴え渡る笑い声
招待状
弾む心音
浮き足立つ胸ポケット
歩調は早歩きからスキップ
スキップからのターン
重々しく
聳える廃ビル
嗚呼
それもあと僅か!
盲目なんだ
白昼夢の隨に
薄れてしまうような
それなら
乱反射した
青色さえも
今は忘れていたい
湿気った
あの日の憧憬
釣り針に指先を
夕焼けに葛藤を
剥き出しの心臓を
宥めて
愛して
惨い
そんなのは反則だ
お前は
泣いている
ばかりじゃないか
鏡を殴って
怒鳴りつける
ああ
世界はこうして
終わるんだろうなって
人の死に
意味があってしまう
それは酷く単純な
須く消えたいような
これだけ
ぶつくさ言ったって
きっと誰の耳にも
届いてやいないんだ
ならば
さらば
さらば
夏の風
夜はあげられない
君は
苦笑いをしてそう言った
私は沈む太陽で
登る月だから
月が沈んで
太陽が登ったら
私のものじゃなくなるの
紫色の煙を纏って
無限の光を引きずって
君は夜になる
月の鐘が鳴るたびに
君は眠りの糸を紡ぐ
私はきっと夜だけど
夜は私のものじゃない
だから、
そう繰り返して
一層悲しげに笑う
いらないことを
言ってしまったと
今更悔いたところで遅い
こんなにも熱く
激しい季節が
物悲しいのは何故だろう
呑み込まれそうな
入道雲は儚くて
目に刺さるほど鮮烈な
青空は涙を誘う
刺激的なのと同じくらい
夏は寂しい
夏は悲しい
青が全てを浚ってしまう
波の音で霞んでしまう
ひりつく暑さに胸が高鳴る
それはきっと
夏に恋をしているから
ふと視界が翳る
闇を引き連れてきた
それは
涼しい顔で
私の人生を
踏みつけていった
私が死ぬほど欲した
それを
いくつもいくつも
掲げていた
血反吐を被る
天才とは
それは
凡人にとっての
絶望そのもの
凡人が
人生をかけて
作り上げるものを
凡人が
人生をかけて
理解することを
凡人が
人生をかけて
遺すものを
もうすでに
掌のなかに
なす術もない
劣等感
敗北感
今までに無い
焦り
妬み
憎しみ
憧れ
吐瀉物で溺れる
私は貴方の
慰み者
私は貴方の
癒しの木陰
冗談じゃない
その煌びやかな
足の下の
泥まみれの努力
知らないとは
言わせない
いつか膝をつかせてやる
いつか寝首を掻いてやる
笑顔は威嚇と
同義だという
今日も私は
微笑んで
皮膚の一枚下で
牙を剥く
明日を夢見ては崩れゆく
灰色の廃遊園地な脳内
そうかい
そんならここで
くたばろう
三、二、一で
トんでやろう
自傷にすら疲れた
愚民どもが今
恩を仇で返しやがる
ナメクジをピストルに
詰めて応戦しよう
ジョークは常套句だろ
ほら
ClownはCrownになり得る
からこそ
継ぐのが難しいんだろう
忘れ去られた夢の国の
我が王よ
悲劇の夜を笑おうよ
革命前夜に何を思うか
なぁ、どうよ?
無い
何もかもが足りない
大切だったものはすべからく
掌から溢れていった
欲しいものは
時間が経っても
金を積んでも
決してこの手は
届かない
妬みに嫉み
僻みに怨み
まずは
邪魔なこれらを
捨てなければ
目の前にあったとしても
手に入れられない
できたらとっくにそうしてる
一生手に入ることはない
一生離れることはない
もう本当に
いやになる
目に刺さるような晴天で
泡立った雲は際限なく
縦を横を白で埋め尽くす
ああまったく、
どうしようもない人生だった!
日は昇ったばかりと見えて
暗がりを抜けた尊い光は
そのうち燃えるような
赤に染まって
再び闇に溶けてゆくのだ
つまり、
全盛期なのだ!
青は歓喜と涙の色だ
目尻にたっぷり涙を溜めて
大笑いする
最高の夏だった
身を焦がす青空を前にしても
薄れないほどの夏だった
本当に
本当に、
最高の人生だった!
ああ、お前はまた
泣いているのか
忙しないな全く
いつまで頁を
広げてるつもりだ
さっさと閉じろ
いいや違うな
終わりなんかじゃないさ
おしまいなんかじゃない、
言うべき言葉があるだろう
ほら
めでたしめでたし
ゴミクズみたいな人生だった
黴と埃で濁った世界は
足元も見えなくなるほど
嫌いなものが溢れてた
劣った人を見下した
本当に最底辺だったのは
僕の方だった
自分より下を浚って漁って
不安と嫌悪が纏わりついた
粗探しをして時間を殺した
誰も彼もに見放された
何より自分が大嫌いだった
全てを悔やんでいた
そんなことすら
どうでもいいほど
脳内はとっくに
腐敗しきった
どこを見ても
泥と闇でいっぱいだった
生きた心地はしなかった
死んだまま生きていた
そこに
手が、差し伸べられた
暖かかった
光っていた
希望の色をしていた
笑っていた
いつのまにか
笑えていた
今も、
生きることは未だ苦痛だ
全部変わったわけじゃない
けれど
もう諦めない
明日を信じられるから
ありがとう
なんて言葉で表せない
きっと忘れない
終わらせなんかしない
ずっとずっと、ここにある
長いような短いような
例えるなら
闇を照らすには充分な
刹那の煌めき
思っていたより随分
呆気ないな
なんせ
エンドロールも
カーテンコールも
無いのだもの
惜しみない拍手を
君へ
君たちへ
ああ
ごめんねやっぱり
笑顔だけじゃ
済まなかった
でも涙を湛えたままじゃ
心が伝わらないだろう?
惜しみない拍手を
愛おしき物語へ
退場したあの子へ
君へ
それではまた、
いつか出逢う日まで。
貴方は言った
「刺激が足りない」と
貴方に嫌われたくなくて
私は刺激を作ることにした
椅子の底を抜いてみた
貴方は底が抜けても驚かないで
空気椅子で本を読んでいた
部屋を一面赤く塗ってみた
貴方はひと目見回して
「センスが悪い」と毒づいた
紅茶に塩を入れてみた
貴方は少し眉を顰めて
そのままぐっと飲み干した
カップを爆発させてみた
貴方は破片を放り投げ
新しいカップを取り出した
貴方は何をしても驚かない
ここに連れて来たときも
そうだった
声色ひとつ変えないで
「哀れな奴め」と
たったひと言
どうしたら貴方は
満足してくれる?
どうしたら貴方を
引き留められる?
私はあの娘になれないのに
貴方は笑いもしなく
なってしまった
どうしてよ
どうして私はダメな子なの
頭も悪いの
センスも無いの
愛し方も分からないのよ
私は貴方を幸せにできない
貴方を幸せにできるのは
あの娘だけ
私はあの娘にはなれないの
なれないのよ
それでも貴方は
あの娘じゃないと駄目なのね
私は貴方を引き留められない
きっと貴方は
あの娘のもとへ帰ってしまう
でもそれまでは
ほんの泡沫の夢を見させて
私は貴方を愛していたの
私は貴方と幸せになりたかった
私は貴方を幸せにしたかったのよ
本当よ
愛していたの……
乱入失礼いたします
とても素敵で、惹き込まれます…
ファンになりました。
>>298
ありがとうございます。お褒めに預かり光栄です。
自己満足のつもりでしたが、褒めて頂いて更にファンにもなって頂けるとは、とても嬉しいです。
きっと、詩も喜んでいます。
貴方が何か見るたびに
貴方が何か言うたびに
血反吐を吐く
思いがする
それのひとつひとつが
私に向けられたものなら
どんなに良かったか
そんなふうに
考えていることすら
吐き気を催す
自己嫌悪を呼ぶ
ああ気持ち悪い!
汚らわしい!
愚かしい!
私はこんなにも
醜い
汚い
惨めったらしい!
私は愚かな邪魔者だ
私は当て馬
かませ犬
泥棒猫だ
私さえいなければ
貴方はきっと幸せになれる
私さえいなければ!
けれども今更
貴方への想いを
捨てられない
部外者の自覚はあるのに
それでも貴方を愛していた
貴方を愛している
それだけは確かだ
それだけ、
私にはそれだけしかない
それさえあれば
別に良いんだ
貴方に愛されなくとも、