旅鼠の厭世詩

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1:レミング◆yc:2019/09/13(金) 12:00

思い付いたときに詩を書いていきます。

詩ではなく短文に思えることもあると思いますが、
本人は詩のつもりで書いております。

乱入は可ですが、感想を添えて頂けると幸いです。
また、こちらからの感想はあまり期待しないでください。
何分、自分の意見を述べるのが苦手なもので。

101:レミング◆yc:2020/01/28(火) 01:12

素晴らしい詩の集まりでした。
でも、この終わりはきっと、通過点に過ぎないのでしょうね。

私はいつまでも待っております。
又、会うときまで。

102:レミング◆yc:2020/01/28(火) 06:17

【見ている】

私は貴方を見てる
貴方の目を見つめてる

貴方の一挙一動が
愛おしくて
貴方の仕草を
一つとして
見逃さないように

ずっと見てる

103:レミング◆yc:2020/01/28(火) 06:21

【見られている】

僕は君に見られている
どこかをじっと見られている

君を見つめ返そうと思っても
君の目を見ようとしても
僕が視線を向けると
君は外方を向いて
しまうじゃないか

そろそろ見ても良いかい?

104:レミング◆yc:2020/01/28(火) 08:34

【さわみずこおりつめる】

雪が降っていた

雪が降って
そのうち雨になって
霙になった

まるで
シロップに溶けかけの
かき氷みたいに半透明

掴んで潰してみると
しゃらしゅらしゃらと
冷たいきれいな音が鳴る

沢にも分厚く氷が張って
稲光りが走ったみたいな
白い筋が四方八方伸びていた

ばきりと踏んで
破ってやろうか…

靴に水が入るから
辞めておこうか…

105:レミング◆yc:2020/01/30(木) 04:03

貴方はそれに
気づいてしまった

貴方はそれを
見てしまった

貴方はそれから
逃げてしまった

貴方はそれに
気づかれてしまった

貴方はそれに
見られてしまった

貴方はそれから
逃げられなくなってしまった

106:レミング◆yc:2020/01/30(木) 04:35

君は本当はどこにいるの
本当にいるの

ときどき分からなくなるんだ
目の前にいる君は
実は僕の作った夢幻で
本当はいないような気がして

口元に手をやったら
呼吸していないかもしれない

心臓に耳を当てたら
鼓動していないかもしれない

君に触れたらその手は
すり抜けてしまうかもしれない

この夜が明けたら
君はもう
どこにもいないかもしれない

それが
怖くてたまらない

キスをしよう
君が呼吸しているのを
確かめるため

抱き締め合おう
君の心臓が動いているのを
確かめるため

触れ合っていよう
君が存在するのを
確かめるため

夜も起きていよう
君が隣にいるのを
確かめるため

ずっとこのまま
醒めない夢に浸ったまま

永遠に君を生かすように
永遠に僕をころすように

107:レミング◆yc:2020/02/02(日) 06:00

【にわとりはじめてとやにつく】

鶏が卵を生む

ごろりと転がるそれは
まん丸では無い

子供の時分に
聞いたことがある
何故鶏の卵は
まん丸では無いのかと

間違って転がっても
お母さんのところに
戻れるようによ


母親は言った

いつまで転がり続けても
親から離れられることは
無いのだと

冗談では無い

私はどうしたって
逃れられないのか

卵を生み続けるか
肉になるか

私は母親と同じ運命を
辿るのか

次は私が母親になるのか

昔は憧れた白い羽毛が
今は憎くて仕方がない

108:レミング◆yc:2020/02/05(水) 04:38

【はるかぜこおりをとく】

東から吹くぬるい風が
頬を撫ぜる

少しずつ氷がとけ
大地を覆う白が
極彩色に染まるのだろう

積もるばかりの雪は
さらさらと
樹木華に吸われるのだろう

ああ
春が始まる

109:レミング◆yc:2020/02/05(水) 04:44

愛されたいと思っていたら
こんなことには
なっていないよ

僕は別に
愛されなくて良かった
嫌われる方が本望さ

あの子は頑固で
嫌いな奴がいない限り
意見を曲げようとも
しないじゃないか

じゃあ
本当はどうしたかったのか
って?

あの子に何かを
愛してやって
欲しかっただけさ

110:深河春淵◆wc:2020/02/05(水) 12:17

百を超える詩を書けましたね
おめでとう。
本当はもう少し早く御祝いを
したかったのですが、
遅くなって仕舞いました。

深河春淵と云う名は前々から
決めていた名なのです

とある文豪の旧居に置いてある
感想ノートにもそう書き残して
きましたもので

111:レミング◆yc:2020/02/10(月) 02:14

【うぐいすなく】

けきょけきょ
けきょけきょ

嗚呼
まだ上手く鳴けない

ほーっと伸ばして
けきょと続ける

たったそれだけのことなのに
何故か酷く難しい

今年はぼくが一番手
だから
一等張り切っているんだ

けきょけきょ
ほきょ
ほきょけきょ

あと少し
もうちょっと

ほーっほけきょ

あ、鳴けた

112:詠み人知らず:2020/02/18(火) 02:39

【うおこおりをいずる】

暗く冷たい薄氷を
抜け出したいと
一匹の魚が泳いでゆく

背びれを
ザラザラ削りながら
穴だらけの水面付近を
一心不乱に進んでいく

あと少しで
暖かい空に顔を出せる

あの白色に明るいところが
自分の目指していた空だ

そう心を躍らせて
疾く疾くひれを動かす

魚は知らない

薄い薄い氷のふちは
もっともっと鋭利である
ということ

すぱっと切れておろされて
あとには魚の半身だけが
氷の上で冷えていた

113:レミング◆yc:2020/02/21(金) 04:08

【つちのしょううるおいおこる】

しとしとと
さめざめと

雨は乙女の涙ように
ただただ土に落ちてゆく

土砂降ることなく
途切れることなく
大地を目がける

哀しき雫は土に落ちる
土が湿って黒くなる

土はそのうち虫の子を
育てる柔らかな寝床となる

水が空へ還っても
乙女はまだ泣き続ける

空の乙女は救われない
健気に優しく泣き続ける

114:レミング◆yc:2020/02/21(金) 04:25

隠している
潜めている

誰にも
見つけられたくないと

騙している
欺いている

誰にも
知られたくないと

笑っている
黙っている

誰にも
気付かれたくないと

分かっている
分かっていた

誰にも
信用されていないと

115:レミング◆yc:2020/02/22(土) 03:29

深夜の憂鬱
寝惚け眼で蛇口を捻る

グラスがやけに冷たくて
水分に浮腫んだ指先が
冷えて白くなっていく

切れかけの蛍光灯が
無機質に見下ろしていた

深夜の頭痛
眠気も何処かに
消えていた

年季の入ったソファに
投げ出す四肢
冷気が手足に絡み付く

ブランケットを
引き寄せて
テレビをつける

カラーバーと
劈く機械音
補色が混じり合い
目を逸らしつつ消した

深夜の現
珍しいことなど
何にも無い……

116:レミング◆yc:2020/02/27(木) 03:13

【かすみはじめてたなびく】

嗚呼ほらお前さん
見てごらんなさい

あの蒼黒い山は
美しい霞が纏わりついて
輪郭がぼやけて
見えるでしょう

私はあの中に
幽霊がいる気がして
ならないのです

ええ
笑うでしょう
きっと貴方も笑うでしょう

けれど考えてみてください

霞というのは近くに行くと
目には見えなくなるのです

極々小さな水滴と塵が
空中に漂っている
だけなのです

目の前にあるのに見えない
けれど確かにそこにある
そんなのまるきり
幽霊じゃあないですか

遠くから見らば白い雲
近くで見らば目に映らぬ

そんな霞の幻想の中
幽霊がいないと
どうして言えましょう

117:レミング◆yc:2020/02/29(土) 04:14

どんな物事にも
いつかは終わりというのがくる

幾度となく聞いた言葉
幾度となく唱えた言葉

それでも
いざ目の前に叩きつけられると
嫌でも思い知ることになる

心のどこかで
永遠を信じていた
心のどこかで
無限を夢見ていた

忘れられないのだ
人が
居場所が
思い出が

きっといつまでも
私の心を揺さぶるから

次はどうするべきか
終わったあとは何が残るのか
今はまだ考えたくない

もう少しだけ
呆然と感傷に浸ったままで

118:レミング◆yc:2020/03/02(月) 06:03

【そうもくめばえいずる】

未だ冷たく
固い地面から
黄緑色の芽が
顔を出した

とても小さく
名前すらわからない
雑草だった

けれどもこれは
冬を耐えた
長く凍える時を
過ごしたのだ

春に萌ゆ緑色たちは
ただそれだけで
価値がある

厳しい冬を
乗り越えたのは

それは
誇るべき偉業なのだ

119:レミング◆yc:2020/03/07(土) 08:40

【すごもりむしとをひらく】

ぼりぼり
長く伸びた爪で
頬を引っ掻く

爪を指との間に
皮膚片や頭垢が
詰まっている

ずっと前から
決めていた日が
来てしまった

黴の匂いのする
毛布を蹴り上げ
陽に照らされ昇る埃を
ぼんやりと見ている

薄暗いこの角部屋に
最初に入ったのは
いつだったか

最後に出たのは
いつだったか

昼間でも暗いこの部屋で
汚い毛布に包まっている
自分はまるで
来ない春を待つ芋虫だ

そんな醜い芋虫の蛹に
もう何度目の春が
巡ってきてしまった

いい加減
目覚めなくてはいけない

これ以上
惰眠を貪る
気にもならない

ふらつく足を
引き摺りながら
寝床から這い出る芋虫

異臭のするゴミ袋を
掻き分けて

ネジの外れた
ドアノブを握ってみる

少し回すと
がたがた鳴って
胃を握り潰されるような
緊張が走った

一度出たら
もう蛹には戻れない

暗く惨めな蛹には
戻れない

この先鳥に
食い殺されるとしても

この先太陽に
焼き尽くされるとしても

それでも

錆び付いて
耳障りな音と共に

蛹の殻は破られた

120:レミング◆yc:2020/03/12(木) 05:33

【ももはじめてさく】

どこからか
咲きたての花の
甘い香りが漂ってくる

なんだか
良い香りがするね

そう言って貴方は
くるりとこちらを
振り返った

貴方は今日も
こんな私の
側にいてくれる

私と貴方では
住む世界も
見る景色も
違うというのに

私にとって貴方は
寂しく冷たい日陰に射す
柔らかく暖かい光

けれどその光は
周囲の闇を
深くするだけだった

今ではもう
あの日陰が
怖くてたまらない

どこにいても
何をしていても
貴方の光を求めてしまう

私は貴方無しでは
生きていけないの

もうすっかり春だねえ

そう言って
花が綻ぶように
咲う貴方は

間違いなく
この世で一番
輝いていた

愛おしくて
眩しくて
私は少しだけ目を細めた

121:レミング◆yc:2020/03/19(木) 00:01

【なむしちょうとなる】

制服という名の
蛹を破り
青い春の終わりが来る

初めて足を
踏み入れたときと
なんら変わりなく
桜の花びらが
ひらひらと舞う

菜っ葉に穴を開ける
芋虫ではなく
花を愛でる
蝶になるのだ

自由縛るリボンを解き
青空に髪を靡かせた

122:レミング◆yc:2020/03/21(土) 18:08

無限にジョーカーが増え続けるトランプで
終わらないババ抜きをしている

123:レミング◆yc:2020/03/21(土) 18:21

【すずめはじめてすくう】

枝を集めて
葉で縫って

大きく立派な
お家を作るの

まだ顔も見ぬ
かわいいベビーのために
ベッドはふかふかに
しておくわ

あの人は未だ
帰って来ないのね

きっと遠くまで
丈夫な枝を取りに
行っているんだわ

なんだか騒がしいわね
ここは他の家族も
たくさんいるみたい

ご近所付き合いも
大切だものね
あとで挨拶
してきましょう

木を集めて
葉で縫って

きっと素敵な
お家にするの

124:レミング◆yc:2020/03/23(月) 06:17

この世界は全部、僕の見ている夢だったりして。

125:レミング◆yc:2020/03/27(金) 04:55

【かみなりすなわちこえをはっす】

空をも割るような
轟音が響き
窓際レースのカーテンは
真白き光を映し出す

雨が空の涙なら
雷は空の号哭だろうか

泣き叫ぶ空は
一体何を
嘆いているのだろう

風に身を切られるのが
痛むのか

地が離れているのが
寂しいのか

どちらにしても
これだけ激しく泣くのなら
今年の稲は安泰だ

126:レミング◆yc:2020/03/29(日) 05:20

嫌われたくない
嫌われたくない

期待の視線が
何より怖い

裏切られたくない
裏切られたくない

笑顔の下は
考えたくない

そんな考えが
脳を揺さぶるほど
恐ろしいから

いっそ

最初から
嫌われてしまおう

僕の方から
裏切ってしまおう

幸福なんて
知らなければ
不幸も存在しないに
等しい

嫌われたくない
裏切られたくない

いつでも人に怯えてた

だって

人に好かれて
いるからこそ

失うものも
多いのだから

127:レミング◆yc:2020/04/02(木) 05:51

【つばめきたる】

冷やり、と
肌に痛いほどの寒気

冷たくなった枕を退けて
布団から這い出る

この寝床も
暖かく柔らかかったけど
また同じ
冷たく硬いものに
なってしまった

どうしてだろう
私はもっと
暖まりたかっただけなのに

灰色と紫を混ぜたような
不気味な寝床

元はもっと
素敵な色だったのに

ああ
嫌な匂いもしてきた

次の寝床を探さなくちゃ

私1人きりでは
この世界はこんなにも寒い

べたつく身体を
綺麗にしたら
また新しく探しに行こう

次もまた
暖かいところが良いな

128:レミング◆yc:2020/04/11(土) 01:05

同情なんて
されたくない

「可哀想」なんて
大きなお世話

ああ、そうだ

私以外に私のことが
分かる人間が
居てたまるか

129:レミング◆yc:2020/04/14(火) 07:43

【こうがんきたへかえる】

暑いところは嫌いだ

ふんわりと柔らかい羽は
湿気でへたり

心地よく乾いた風は
じっとりとベタつく
ようになる

温もりなんていらない
ぼくはもっと
涼しいところが良い

暖かな日差しも
誰かの体温も
気味が悪くて仕方ない

ほら
今この瞬間も
ぼくの体の温度でさえも

ああ、気持ち悪い

130:レミング◆yc:2020/04/14(火) 07:58

【にじはじめてあらわる】

雨が街を洗ったあとに
大きな大きな虹が架かった

赤に橙
黄、緑
青藍と紫

あんまり鮮やかで美しくて
わたしはそれを
描きたくなった

赤に橙
黄、緑
青藍と紫

クレヨン使って
描こうとしても

絵の具を使って
描こうとしても

あの色合いは表せない
あの美しさは表せない

赤に橙
黄、緑
青藍と紫

早くしないと
虹が消えちゃう

いじわるしないで
ちょっとだけ分けてよ

空いっぱいに広がる虹を
筆の先ですくってみる

全部なんて欲張らないから
少しで良いの
ほんの少しで

赤に橙
黄、緑
青藍と紫

いつか絶対描いてみせるよ
あの鮮やかな虹のいろ

131:レミング◆yc:2020/04/23(木) 05:08

【あしはじめてしょうず】

葦は“悪し”と捉えられて
しまうことから
よしと読む
ことがあるという

あしと読めば
それは悪しなのか?

人は考える葦である

それが悪しきものなのか
はたまた良きものなのか

言葉を鵜呑みに
することなく
ひとつずつ丁寧に
考えるべきであろう

考える葦である君たちは
あしであるかな?
よしであるかな?

132:レミング◆yc:2020/04/27(月) 19:37

何度呑み込んだ
憎悪と偽善を
また吐き戻して反芻する

くちゃくちゃ
噛んで
唾を浴びせて

「嗚呼、
 やっぱり君は間違っている」

味がしなくなって
生温くなる
無意味な妄執

喉が爛れて
新しい味は
望むべくもない

げろり

とうとう
それを消化し切って
何にも出なくなったって
まだ罵詈雑言を
浴びせ続ける

虚を咀嚼
「嗚呼、
 とっくの昔に気づいてた
 間違っていたのは⬛⬛⬛⬛」

133:レミング◆yc:2020/05/03(日) 00:41

最近身の回りが忙しいので、七十二候シリーズは一旦打ち切りにさせていただきます。
勝手ですみません…。

134:レミング◆yc:2020/05/08(金) 03:15

ざわざわと
何かが擦れ合う
音がする

確かめようと
身動ぎするも
眠気と気怠さで
目が開かない

手足は胎児のように
畳んでいて
ときどきごそりと
揺れ動く

身を包む何かは
どこか懐かしい匂いがし
相変わらずざわざわと
鳴っている

空気はきィんと
冷えていて
それが余計に眠気を誘う

ああ、きっとこれは

繭だ

135:レミング◆yc:2020/05/13(水) 11:16

モノクロに褪せて
ひび割れて

振り返るたびに
はらはらと
崩れてゆく

空っぽの断片が
足跡のように
点々と落ちる

軽い音のする頭を
重そうにもたげ
引きずる

朝か夜か分からぬ
青黒い空だけが
私に付き添う唯一の

136:レミング◆yc:2020/05/20(水) 19:46

夏が足りない

ふと
口を溢した

ああ
夏が足りない

目が眩むような
日差しと熱気

どこまでも高い空に
響き渡る
割れんばかりの
蝉の合唱

あの
胸を焦がす疾走感と
流れる青

暑くて
眩しくて
もどかしい

夏が

欲しい

137:レミング◆yc:2020/05/28(木) 02:29

ここに
君の求めているものなど
ありはしないよ

ここには何も無いんだ

『何もない寂しい場所』?
少し違うね

ここでは『何も無い』すら
『無かったこと』になる
そして『無かったこと』も
そのうちなくなる

安心しなよ
もうじき君の存在も自我も
なくなるだろうから

この言葉がここにある理由?
それは僕がいるからさ

分からないならそれで良い
分かったのならそれが答えだ

あるもの全ては
なかったことに

なかったことすら
なかったことに

それはヴォイドか
悟りの境地か

言葉なんて必要ないだろ?
だって

聞くものなんかいやしないんだ
話す言葉もないだろう

138:レミング◆yc:2020/05/28(木) 06:20

私は歩いている

かけらも知らない街並みを
どこか懐かしい街並みを

建物はどこにもない
人の姿もどこにもない

あるのは白い歩道と
赤と緑の信号機

世界はずっと白だらけで
赤と緑が点滅してる

時々ごみ袋が置いてあり
中を覗くと虫がいる

黒いごみ箱いっぱいに
白い虫が詰まってる

空は晴れて白色で
太陽は照って黒色だ

モノクロの街並みに
信号機だけが赤と緑

赤と緑が点滅して
チカチカ
脳を揺さぶった

赤と緑が点滅して
ぐにゃぐにゃ
視界が埋まってく

赤と緑が点滅して
どろどろ
思考は腐ってく

足を止める
何かがおかしい

本当に歩道は
白色だった?
本当にごみ箱は
黒色だった?

白なんてなかった!
黒なんてなかった!

白色は赤と緑だった!
黒色は赤と緑だった!

このままじゃ
気が狂れそうだ!

どこもかしこも
赤と緑でいっぱい

赤と緑しかない
ここには赤と緑しかない

赤と緑 赤と緑
赤と緑 赤と緑
赤と緑以外何もない!

私は走っている

かけらも知らない街並みを
赤と緑の街並みを!

139:レミング◆yc:2020/06/05(金) 03:40

あれが足りない
それが足りないと
強請る私を
頭の隅に追いやる

無駄なんだよ
そんな惨めな行為

どんなに欲しがろうと
望んだものは
手に入らない

疾く走ったところで
黄金のメダルは
落ちてこない

強請るだけでは駄目なのだ
努力だけでは駄目なのだ

泣き喚けばもらえるなんて
そんな時代は赤子のうちに
終わったのだ

どうすれば良いか?
そんなこと私に聞くな

それが分かっているならば
わざわざ言って
聞かせたりしない

140:レミング◆yc:2020/06/16(火) 01:26

終わりが来るのが嫌で
信じたくはなくて

いつまでも夢に
浸っていたいと
駄々をこねる

終わりに気付かないで
中間に縋っていて

最後の頁をめくれずにいる

141:レミング◆yc:2020/06/17(水) 04:55

はつかねずみなんて、こなければいいのに

142:レミング◆yc:2020/06/17(水) 06:08

残されたのは鮮烈な青

過去と未来の淵に立って
消えゆく光を
ただ見つめている

感情が追いついたら
きっと泣いてしまうから
ひたすら無心で
言の葉をなぞっている

それでもやっぱり
涙は溢れて
指先の震えが止まらない

考えなくとも涙が出るなら
このまま
直視しない方が良い


それを受け入れるには
この心はあまりに
脆すぎる

笑ってなんて
いられない

涙もずっと
止まってくれない

いざ終わりを
目の前にすると
人はこんなにも脆弱なのか

残されたのは鮮烈な青
そして沢山の思い出たち

143:レミング◆yc:2020/06/22(月) 21:15

薔薇の花が
枯れるときは
花弁が散ったり
しないものだ

色がくすんで
からからに乾いて
静かに品よく
朽ちてゆくのだ

まるで
壊れてしまった
愛のように

144:レミング◆yc:2020/06/26(金) 22:44

うるさくて眠れないとき

僕の耳を削ぎ落とすのと
君の喉を掻き切るの

どちらが早いのだろうね

145:レミング◆yc:2020/06/28(日) 04:00

君が涙を流すなら
僕はそれを拭う手巾となろう

君が黒を望むなら
僕は何色をも黒に染めよう

君が凹を嘆くなら
僕の身を千切凸としよう

君が己を傷付けるなら
僕はその刃を手前に向けよう

君が夜に怯えるなら
僕が明日を殺んでしまおう

それでも君が俯くならば
僕は

…どうすれば良いのだろう?

どうすれば
君を救えるのだろう

146:レミング◆yc:2020/07/02(木) 02:32

暗くて鬱屈とした
部屋から出たら

空を満たす深い藍が
すぐ前まで迫っていた

底抜けな明るさが
苦しくて
これじゃあ笑えないと
目を細めた

後から湧く入道雲に
思考を追い越されて
しまいそうで
懐かしい名前を呼んでみた

聞こえないだなんて
分かっていた

聞こえないから呼んだのだ

伽藍堂の胸の中
青で一杯に染まって
無彩色には少しだけ滲みた

懐かしいほどに
過ぎてしまった
あの日々をまだ追いかけていた

147:レミング◆yc:2020/07/02(木) 02:51

見えなくなった
子守唄の色
探していたら
セピア色で迷子になった

鉛筆を落とした
白い紙には
低いドの色が残った

隣の家から聞こえるのは
積んだ古本の匂い
麻色の音
冬場の古い雨漏りバケツの音

翌日外から
翡色の音と
セピア色の音

148:レミング◆yc:2020/07/12(日) 00:18

やあ
死ぬには良い夜だ
ね、ダーリン

僕はひと言呟いて
淹れたばかりの
紅茶目掛けて
髑髏印の硝子瓶を傾けた

二つのカップを持って
君の元へ行くと

君はいつもと
変わらない顔で
すっかり寝こけて
いるのだった

随分呑気だ
ね、ダーリン

賭けをしようか

こいつらのうち
どちらか一つを選んでご覧

命の保証はできないさ
けれどこうでもしないと
気が済まないんだ

君は僕から見て
右側のカップを選んだ
…気がした

僕は右側の紅茶を口に含むと
君の口に流し込んだ

そして左側の紅茶を
ぐっと飲み干し
反応の無い君に笑むのだった

死ぬには良い夜だ
ね、ダーリン

もうすぐ僕も
そっちに行くから

二度と言葉を紡ぎはしない
薄い君の唇に
再びそっと
キスを落とした

もう少しだけ待っていて
ね、ダーリン

149:レミング◆yc:2020/07/17(金) 03:49

甘酸っぱい
熟れかけの果実の香りがした

雨上がりのだるい暑さも
一瞬吹き飛ぶように瑞々しい
それは
隣に立つ少年の
腕の中から漂っていた

透き通るほど白く華奢な腕に
抱えているのは
さくらんぼの入った大きな箱

私があんまり見つめるから
少年はふとこちらに気付いて
少し戸惑ったあと

おひとついかがですか

とひと組み摘んで差し出した

悪いとは思ったけれど
興味が湧いたのも事実なので
礼を言って受け取った

ぷちっと茎を摘み取ると
ころんと口に放り込む

柔らかな皮が弾けて
果汁と果肉が溢れて開く

美味しいです

と言うと
少年はふわりとはにかんで
何も言わずにお辞儀した

その可愛らしさに
思わず見惚れてしまい
種はそのまま飲んでしまった

150:レミング◆yc:2020/07/20(月) 04:48

止め処なく流れる涙

こんなつもりじゃ
なかったのにな

気を紛らわそうと
唇を噛む
身体の痛みが加わわるだけ

どうしてこんなに
苦しいのだろう

どうして自分は
泣いているのだろう

滲む視界に君は居ない
居ないのだ

どうしてこんなに
報われないのだろう

どうしてそれが
今更悲しいのだろう

分かっていたはずじゃないか

151:レミング◆yc:2020/07/23(木) 03:35

夜更かしだって?

星が煌々と
照っていることだし

まだまだ眠る時間
ではないだろう

蒼い星が身を潜め
赤い星が顔を出したら

ひぐらしが起きて鳴き
その音で草木が
目を覚ましたら

そのときは布団に
潜ろうか

152:レミング◆yc:2020/07/25(土) 21:54

その春初めての風
雨が止んだ後架かる虹
磨いたばかり希少石の煌き
冬に眠っていた蛹から孵った蝶
愛犬の産んだ子に初めて触れた瞬間

君と目が合う
ということは、
僕にとって
これほどの価値があるのだ

153:レミング◆yc:2020/08/02(日) 07:27

灯台は自らを
照らせはしない

遠く遠くの
知らない誰かに
道を教える
ことしかできない

誰かを探して
救ったのに
遠くを明るく
照らしたのに

灯台が照らされる
ことはない

あれが報われる
ことはない

誰かあれを
照らしておくれ
誰かあれを
救っておくれ

154:レミング◆yc:2020/08/09(日) 02:44

沢山の骸と薄氷の上に
成り立つ王座

骸の中から一つ
頭蓋を抜きとって
仕舞えば

あるいは

薄氷にひと筋
白い罅を入れて
仕舞えば

お前の座る椅子は
上から転げ落ちるのだ

幾つもの犠牲を経て
やっとその位置に
居られることを

ゆめゆめ忘れぬように

155:レミング◆yc:2020/08/09(日) 02:53

きみが僕を見てくれるなら

空に金貨を降らせよう
ここら一帯を花畑にしよう
瑠璃色の水を湧かせよう
全ての人に笑顔を与えよう

きみが僕を見てくれぬなら

空に血の雨降らせよう
ここら一帯を焼野原にしよう
溝色の水を湧かせよう
全ての人から笑顔を奪おう

愛されてしまったのだから
仕方ない

逃れられはしないのだから
諦めなさい

永遠を共にすると誓おう
愛しいきみよ

156:レミング◆yc:2020/08/15(土) 16:08

深く透明を
揺蕩っている

爪先では
光の粒が舞い踊り

頭の方では
黒い影が這い回る

海草が身体に
絡み付いてくる
振り解こうにも
気力がない

地上の喧騒を隔つ
揺らめきに身を任せて
ただ揺蕩っている
波に拐われ
引きずり込まれている

ああ
何も聞こえない……
なぁんにも……

157:レミング◆yc:2020/08/19(水) 05:01

それはある日唐突に
天から降って
気づいてしまった

生きているのか
僕は生きているというのか?

掌をじっと見つめてみる

僕が手を開いている
僕が瞳を向けている

なんてことだ
僕は生きているんだ

僕は今になるまで
自分の意思で生きてきた

朝食は麺麭にするか
白飯にするか

服は白いシャツを着ようか
黒いシャツを着ようか

今日は深夜まで本を読もうか
明日に備えて閉じるべきか

休日は遠乗りに出かけるか
それとも寝てしまおうか

いつまで
ここで働くのか

いつまで
この趣味に没頭するのか

いつまで
呼吸を続けるかさえ

僕は自分で
決めなくてはならない

恐ろしい

僕はなんて
浅はかで軽率だったのだ

今の今まで
僕はどうして決めていた?

人生を大きく
変えるかもしれない
小さな選択肢たちを
どうして切り抜けてきた?

もしや僕は
他の誰かのことだとでも
思っていたのか

僕は僕を生きて
いるのではないと
思っていたのか

なんということだ
僕は僕の人生を生きていた

この顔も性格も
僕が生きた結果なのだ

あと何十年続くのだろう
あと何十年生きるのだろう

僕はいつまで
僕でいるのだろう…

158:レミング◆yc:2020/08/23(日) 05:29

ああ嫌だ
誰かに
不幸になって欲しい
わけじゃない

誰かを
突き落としたい
わけじゃない

誰かに
押し付けたい
わけじゃない

幸せにしたい
笑って欲しい

ただそれだけなのに

159:レミング◆yc:2020/08/30(日) 05:54

美しい

鏡を覗き込んでふと思う

自慢などではない
俺の顔立ち自体は
至って普通だ

そんなものではなく
人の身体というものが
酷く完成され
酷く美しく思えたのだ

ただ寝て食って
生きるだけの身体に

虹を放つ
きらきらしい眼は必要か?
石榴色に
脈打つ"中身"は必要か?

考えれば考えるほど
気味が悪い

生物として完成されている
それがこんな風に
美しさを伴うとでも言うのか

艶の輪を作る髪の毛は
しなやかで器用な指先は
赤肉の下の白くかたい骨は

全てこの身体に
生を受けたときから

何故こんなにも美しいものが
動いている
血を通わしている
熱を持っている
生きている

人間風情が生きているだけのくせに
どうしてこんなに美しい

160:レミング◆yc:2020/09/03(木) 16:14

「私の方が」

思わず口をついてしまいそうになる

その娘は貴方を捕らえる檻なのよと
伝えたってきっと無駄だから

その視線の先にいたくて
貴方を想う胸が痛くて

嫉妬で狂ってしまいそう
貴方を拐ってしまいそう

どうして私じゃないの
どうしてその娘が良いの

私の方が
貴方を幸せにできるのに

私の方が
貴方だけを見ていられるのに

私の方が
貴方をずっと想っているのに

いっそ壊れてしまえば良いんだわ

貴方の心も身体も
ぐちゃぐちゃになって
私がひとつひとつ直していくの

壊れた心をひとかけら
ポケットに隠して

泣いて頂戴
満たされない空虚を抱えて

縋って頂戴
情けなく涙も拭わぬままで

喚いて頂戴
お前しかいないんだと

どうか言ってよ

161:レミング◆yc:2020/09/07(月) 22:08

すっ空かんの金魚鉢
なんにもいないさ
水も入っていない

それでもね
何故か時々縁のあたりに
波紋が見えるんだ

そこに銀いろの膜が張って
まぁるい円がギロギロ広がり
そのうちふいと消えていく

僕は一体
なにを飼っているのだろうねぇ

あまり
穏やかなものじゃないのは
確かだけれど

ほら見て御覧
金魚鉢に虫が近づくと……

汚い体液を撒き散らし
捻れたように潰れてしまう

ああそうだ!
君、ちょっと手を
貸してくれないか?

何もしないさ
僕はなんにも

いきなり突っ込んで来た
“侵入者”に
“そいつ”が何をするかが
知りたいだけだよ……

162:レミング◆yc:2020/09/08(火) 16:40

僕は
「月が綺麗ですね」
と言った

女は
「死んでも良いわ」
と答えた

僕は深く失望し
女の首に手をかけた

僕は
「月が綺麗ですね」
と言った

男は
「どうでも良い」
と答えた

僕は深く憂いを湛え
男を下へ突き落とした

僕は
「月が綺麗ですね」
と言った

貴方は
「今夜は新月じゃない」
とからから笑った

僕は貴方と
生きることに決めた

163:レミング◆yc:2020/09/08(火) 17:02

霧雨が降っていた

カウンター席の真正面
愛想の良い店員に
お茶をもう一杯如何ですか
と聞かれ
緩く頭を振ってみせた

右の客は
これはまた長くなりそうだと
洟を摩った

山を流れる白靄が
蒼黒い木々の輪郭を溶かし
滑らかに線を消している

左の客は
いゝえもう直きやみますよと
珈琲を呷った

忙しなく脚を組み換え
布擦れの音がする

窓を敲く雨粒が
ぱっと拡がり散り散りなって
つうつう転がり落ちてゆく

先程右の客が鳴らした
呼び鈴の余韻が
微かに耳に残っていた

164:レミング◆yc:2020/09/08(火) 17:33

考察途中の脳が揺れた

ふと見ると
両手には何も
残っていなかった

ああこれじゃあまた
最初から

私はきっと
貴方のことを1番知らない

最前層の薄皮さえも
剥がせない

わざわざ教えてくれる
わけはないから

考えるしか
ないじゃあないの

考えて考えてまた考えて

それでも貴方が分からない

まるで万華鏡のように
見るたび色も形も変わる

本当の貴方を教えてよ
張りぼてじゃない
姿を見せてよ

貴方は本当にそこにいるの
貴方は本当に生きているの

熱を感じてはため息を吐く

貴方の鼓動さえも
聞こえてしまいそうなのに

貴方の髪の一本一本も
覚えてしまいそうなのに

それでも何も分からない
思考の一つも読めないの

ずっと昔からそうだった
貴方のことを
愛していたかも

いつか教えて頂戴よ
本当の貴方を聞かせてよ

165:レミング◆yc:2020/09/10(木) 00:59

人魚が溺れて死んだ
らしい

カラカラに乾涸びた死骸が
真夜中の海
光る洞窟に
閉じ込められていたのだ

人魚がどこでどう死のうと
変わりないだろう
とは思う

それでも不思議で堪らない
人魚は生まれて死ぬまで
ずっと泳いでいるのに

何故溺れるようなことが
あるのだろう

死んだ人魚は

最期に何を
思っていたのだろうか

最期に何を
見ていたのだろうか

人魚が溺れて死んだ
らしい

息のできない
陸という場所で

166:レミング◆yc:2020/09/12(土) 02:18

透き通るほど白い
陶器のようにうつくしい肌

それを惜しげもなく
曝け出して
貴方はベッドに縛られている

期待と緊張に潤んだ瞳で
貴方は私を見つめるの

可愛い貴方
もう少しだから
そんな捨て犬みたいな顔
しないで頂戴

もちろん縛ったのは私
今から貴方を沢山たくさん
かわいがってあげるわ

取り出したのは
一本の蝋燭

所謂趣好向けのもの
ではいけないの
あれだと温度が低いから
“痕”に残り辛いでしょう?

かしゅりと燐寸を擦ると
貴方は期待に身動ぎするの

もう少し静かにできないの
と嗜めると

貴方は動きをぴたりととめて
待ちきれないと息を荒げる

いいこね
じゃあ始めましょう

肌を指でなぞって
右手の蝋燭を傾ける

貴方の白い肌に
もっと白い蝋燭の滴が
丸くしたたる

突然の刺激に痩躯は
びくりと跳ねて
その振動で蝋がとろけていく

小さな滴はその場で冷えて
中途半端に半透明で固まった

貴方は痛みと熱さ
そして歓喜に打ち震え
喉をつまらせながら
喘いでいるの

ぽたぽたしたたる蝋燭を
見つめながら想像してみる

この丸い蝋燭が剥がれると
そこは同じくまぁるく
きれいな桃色に変色してるの

輪切りの腸詰めみたいなそこを
優しく口で吸ってあげると

そんな微かな刺激で
信じられないほど痛みが走るの

そのとき貴方は
極上の顔を
見せてくれるでしょうね

しばらく楽しめそうだわ

私が思わずくすりと笑うと
どろりと一気に蝋がこぼれて
貴方は再び嬌声を上げた

167:四月うさぎ◆w6:2020/09/13(日) 22:47

レミングさんがこのスレッドを立てて一年経ったみたいだね。おめでとうございます。
ぼくも書いてみてはいるけれど、どうしても気恥ずかしくなってしまってね…きっと読むだけの方が向いているんだね。
これからも貴方の詩を楽しみにしているよ。

168:レミング◆yc:2020/09/16(水) 00:08

>>167
ありがとうございます。
ここに来て、もうそんなに経つのですね……。私が一番はじめに詩を書き込んだのは別のスレッドなので、詩を書き出したのはもう少し前からですけれど。

四月うさぎさんは所謂“読み専”というやつですね。
主張するばかりが創作ではありませんからね。頭の中に新しい世界を作る、それだけで創作者になれます。

書きたくなったならいつでも来てください。私はいつでも待っています。

169:四月うさぎ◆w6:2020/09/17(木) 02:49

「どうせ私は愚図だもの」

少女はそっぽを向いて
吐き捨てた

どうしてそう思うのと問うと
少女はぐっと押し黙り
はらはら涙を流し始めた

どうせどうせ
私は期待なんて
されてないんだわ

誰も私を望まない
誰も私を愛さない
誰も私を見ていない

私なんて生まれない方が
良かったんだわ
死んでしまった方が
良いんだわ

そう喚いてまだ泣いている

私はもう
うんざりしていた

自分を最底辺と位置付ければ
それを下回る評価を
されることがない

自分を卑下していれば
いつか誰かが励ましてくれる
そう思い込んでいる

どうせなんて言いつつも
不相応なほどのプライドを
影に隠して
いつも必死で宥めている

こんなことを言っていても
死ぬ気なんざかけらもなくて
ただ慰めて助けてくれる人を
待っているだけなのだ

自分で動く気も無いくせに
他人ばかりを非難して

肯定の言葉を否定して
否定の言葉も否定して

自分のことなんか
誰も分かっちゃくれないと
ひたすら蛹を固めているだけ

そんなことないと声をかければ
根拠は無くてもそうなのよ
と喚く

その通りだと声をかければ
そうでしょう
どうせみんなそう言うの
と喚く

助けて欲しいと願いながら
この少女は
己の手で首の縄を引いているのだ

私はもう
うんざりしていた

なんて迷惑なんでしょう
なんて矛盾してるんでしょう

過去の私は
なんて愚かなんでしょう

170:四月うさぎ◆w6:2020/09/17(木) 02:54

………影響されてるなぁ(笑)

171:レミング◆yc:2020/09/19(土) 02:27

>>170
影響されているとは、自惚れでないなら私の詩にということでしょうか。
嬉しいですね、身に余る言葉です。けれど、私の詩もある方にとても影響を受けています。
あの方は本当に、どんな人をも虜にするのですね……。

172:レミング◆yc:2020/09/19(土) 02:33

遠い沖合の方に
大きな暗い漁船が
見える

漁船の周りは何やら
キラキラ光るものが
群がっていて
漁船はそれを
釣っているようだった

しかし今夜は
嵐が来る
ということで
船は全て
仕舞ってあるはずだ

いつの間にか
人だかりが出来ていて
がやがや騒ぐこちらを
気にもせず

得体の知れない
その漁船は
朝まで
光る何かを
釣り続けていた

173:レミング◆yc:2020/09/23(水) 22:52

蝶よ花よ
お前はほんとうに美しいね

蝶よ花よ
人目に触れてはいけないよ

蝶よ花よ
ずっとここにいれば良いんだよ

蝶よ花よ
私の言うことを聞いていれば良い

蝶よ花よ
それがお前の幸せなんだ

蝶よ花よ
どこへもやらない絶対に

蝶よ花よ
お前だけは
私の側にいておくれ……

174:レミング◆yc:2020/09/28(月) 01:03

切る

赤く細いそれは
これまでの繋がりなど
無かったように
ふらりと落ちた

嫌な人だった

自分で何もしないくせ
一丁前に他人を否定し
それだけで自分の価値を
確かめているような人

邪魔な人だった

行く先々で顔を見た
初対面にべらべら喋り
自らの思想を押し付けて
反論は絶対に認めないような人

勝手な人だった

突然喧嘩をふっかけてきて
一方的にまくしたて
こちらが一言言葉をかければ
被害者面をするような人

嫌いな人だった

全てが合わない
全てが神経を逆撫でる
全てが尺に触る
全てが嫌いな人

切った

切断面から血の滴るそれは
ずるりと醜く音を立て
尚も縋ってくるのだった

175:レミング◆yc:2020/09/30(水) 10:31

気づいていないとでも
思っているの?

私はそんなに
馬鹿でもないの

貴方が言う“君”
貴方が言う“あのこと”

全部気づいているからね
全部分かっているからね

あのときは
濡れ烏ではなく黒だった
とか

あの話は
二等辺三角形ではなく
三角形だった
とか

そんなことで
誤魔化せるわけ
ないじゃない?

私はね
貴方が思っているよりは
頭が良いの

期待されても困るけど
勝手に失望されるのは
もっと困るわ

もうやめにしましょうか
もうさよならしましょうか

きっと貴方は最後まで
私の本当が分からないんだわ

176:レミング◆yc:2020/09/30(水) 10:45

私はそいつが嫌いだった

私の何も知らないくせして
私の全てを否定して

私もいい加減飽きてきて
うざったいと距離を置けば
堪らず走って縋ってくるのだ

いやだなぁ
消してしまいたい

ずっと前からそうだった
どうして私は今の今まで
我慢を続けていたのだろう

きっとそいつが縋ってくるから
可哀想だとでも
思ってしまったのだ

さておくも
私はそいつに飽き飽きしていた

すぱんと首を切ってしまいたい
それとも脚か胴体か
手っ取り早く消し去りたい

まだ聞いていたのかい
とっとといなくなってくれ

今度は私が
そいつの全てを否定したいんだ

177:レミング◆yc:2020/09/30(水) 10:57

秋風が肌を撫でる

それは上着をすり抜けて
そのまま熱を奪っていった

思っていたより冷え込むな
乱れた髪を適当に整え
身震いをして洟をすすった

もう少し着込んでくるべき
だったなあ

寒さで震える足を
精一杯に動かして
道路の端を歩いている

ときどき真横を車が通って
新たな寒風を巻き起こす

嚔をひとつ

確か家には梨があったな
家に帰ったら炬燵も出そう

そんなことを考えながら
今日も家路に着く

178:レミング◆yc:2020/10/03(土) 16:14

忘れようにも思い出せない

忘れてしまいたい
人がいた

忘れてしまいたい
過去があった

はずだった

忘れようにも思い出せない

あの顔は覚えてない
確かとても醜かった

あの頃のことは覚えてない
確か恥ばかり気にしていた

覚える前に忘れてしまった
恥じる前に消してしまった

最初から
顔を見ようとなんて
していなかった

始めから
記憶に残そうとなんて
していなかった

忘れようにも思い出せない

忘れたかった思い出は
元よりここに存在していない

179:レミング◆yc:2020/10/04(日) 16:09

ぎゃんぎゃんと煩い
人間風情が盾突くとは
吾が天罰をくれてやろう

ほら

目が見えなくなるぞ
お前の世界は
闇に閉ざされた

ほら

口が聞けなくなるぞ
お前の意思は
亡きものとなった

ほら

立っていられなくなるぞ
お前が今更怖気づき
逃げることも敵わぬな

ほら

手足も動けなくなる
思考もできなくなる
世界もじきにお前を見捨てる

終ぞ終ぞ
お前の自由は無くなった!
お前の命は無くなった!

180:レミング◆yc:2020/10/06(火) 18:05

灰と藍が
混ざり合う空

見上げて吐くため息
乾かない瞳

一番星を見つけて
はしゃぐ君の横顔
今も鮮明に覚えていた

冷え切った空気が
頬を掠めて
流れていって

空気よりも
もっと冷たい髪が
喉元にへばりつく

君の絶叫
君の身体
君の中身

フラッシュバック
脳を侵してく

知らない奴の
下卑た笑み

永遠に奪われた
君の笑顔

あのとき消えた
私の⬛⬛

折れたヒール
べたつく手のひら
鉄の匂いのする紙切鋏

今も覚えているんだ
これからもきっと
ずっと

181:レミング◆yc:2020/10/10(土) 01:54

嫌われていると
気付いて
しまった

何が駄目だったのだろう


性格と口が
よろしくないのは
自覚がある

それでなければ

私の顔だろうか
交友関係だろうか


兎にも角にも

私は嫌われていた

嫌われているらしい

そして
何年か振りの
感情を得た

嫌われるのが嫌だ
嫌われるのが怖い


弱くなって
しまったのだろうか


あんなところに
閉じこもっていたから

傷口を塞いで
只管縮こまっていたから


弱くなったのではない

傷口が

塞いで
見ないようにしていた
傷口が

膿んで
腐って
しまっていたのだ

私は他人に恐れをなして
もう
外に出られない

戻るしか無いのだろうか
あの暗い部屋の隅へ

戻るしか無いのだろうか
あの
音に光に
怯えていた頃に

意を決して開いた
壁の外側は
どうしてこんなに恐ろしい

182:レミング◆yc:2020/10/14(水) 14:37

どうして恐れる
ことがある

その引き金を引くだけだ
さすればたちまち
鉛の弾が発射され
標的に命中
全生命活動を停止させる

それだけのことなのだ

さあ引け
指先を曲げろ

その指先ひとつで
鉛の何倍も重い
命を砕け

183:レミング◆yc:2020/10/15(木) 18:41

滴の落ちる音が
響いていた

あいつは
ぐしゃぐしゃの顔で
感謝の言葉を

君は同じく
ぐしゃぐしゃの顔で
優しい言葉を

そんな空気が大嫌いだった

僕は見せて良い顔が
分からなかったから
影の壁に背を凭れていた

僕がいない方が
良いみたいだ

そこは綺麗な空間で
不純物など無かった

それが嫌いな分際で
不純な僕は息を潜めた

自分だけが
絶対悪であれば

そんな臆病な厄介者は
当然疎ましがられ

僕はもう
いなくて良かった

雨が上がって
水たまりに写る
白々しいほど澄んだ空

赦し合って
頬に残る涙の跡と
力の抜けたような笑顔

今でも鮮明に思い出す

涙を堪えたあいつが嫌いだ
泣き笑う君が嫌いだ
ひどく醜い僕が嫌いだ

僕のことが一番嫌いだった

184:レミング◆yc:2020/10/16(金) 04:14

ねえ
もっとよく見て
僕の一番痛いところ

昔々にできた傷
気付かないうちに
膿んで腐って

それでも触れると
痛くて苦しくて
たまらない

でも君には
知って欲しいんだ

僕の弱くて深くて
触れられないところ

君の手で触って
もっと僕を知って

痛くても良い
苦しくても良い

僕の全てを知って欲しい
君のことを愛してるから

185:レミング◆yc:2020/10/21(水) 03:22

許さない
って

震えない鼓膜を
破るような

魂の絶叫

澱んだ空気に
よく響く

私はお前を許さない

たとえ神が
見過ごしたって
私だけは
お前を呪い続けると

ごめんなさい

ほら
言ってみろよ

許してやらないから

謝って
後悔して
くたばって

乾涸びた死体を
蹴ってやる

186:レミング◆yc:2020/10/22(木) 05:48

好きな人ができた

それは
恋愛だけでなく
親愛に近くもあった

何はともあれ
私は
初めて人を愛した

喜び
私は嬉しかった

次に会うときは
どんな顔を見せて
くれるのだろう

声を聞くのが楽しみだ
顔を見るのが楽しみだ
手を繋ぐのが楽しみだ

哀しみ
私は悲しかった

私が好きな人は
私のことが好きとは
限らないのだ

なんと残酷なんだろう

私は
知らないやつに恋する君を
見なくちゃいけないのかも
しれないのか

そいつは
君を愛している
などと宣うが

きっとその愛は
私の愛の
千分の一にも満たないのだ

それでも
他ならぬ君が
そいつを選ぶというのなら

きっと私は
泣いて
泣いて
泣いて
泣いて

この世界すら憎むのだ

187:レミング◆yc:2020/10/24(土) 02:31

ぎこちない夢
手足は
自由の身であった

醒める流動体
人であったもの

蛋白石のリキュール
見世物の釣り糸
となるには些か早い

世捨て人
××××



これは失礼

天から昇る漂流物
記されたもの

或いは異教徒

或いは悪夢

188:レミング◆yc:2020/10/27(火) 15:24

ついこの間まで
暑かったのに

もうすっかり
寒くなったね

まるで
秋を飛ばして
冬に入ったみたいだ


ぼんやり呟く
君の足元に

小さく揺れる
秋桜のつぼみ

189:レミング◆yc:2020/10/28(水) 13:41

悲しみで
痛みで
恐怖で

弾けて飛び立った
貴方の
心の破片

金剛石のように
きらきらと輝いている

私はそれを
大切に集める

丁寧に
丁寧に
ひと粒ずつ
宝物を拾うように

貴方の心には
ぽっかりと
穴が空いてしまっている

蹲る貴方のそこに
かけらをそっと流し込む

一度割れた心は
もう
元通りにはならない

二度と
屈託なく笑う貴方は
見られないかもしれない

それでも良いのだ

貴方を埋める何かになりたい
だけの私だ

190:レミング◆yc:2020/10/30(金) 16:57

変わりたい
変わりたかった

代わりでないもの

昨日の私

泣いていた
悲しくはなかった

ただ姉さんが
泣いていたから

今日の私

笑った
楽しくはなかった

ただ怒られたく
なかったから

明日の私
きっと変わらない

代わりから
変われない

笑っていても
泣いていても
怒っていても

それは私じゃない

私だから
だから変われない

変わりたかった

代わりでないもの
私でない誰か

191:レミング◆yc:2020/10/31(土) 23:59

腐ったカブに
ゴースト・ダンス

灯りを点けているのに
お菓子をくれないの?

そんな家は
井戸にヘドロをぶち込んで
暖炉に揮発油を撒いちゃうわ!

甘いケーキが食べたいの

カボチャのランプに
ゴースト・ダンス

私はどうせ亡者なのだもの
何をしたって許されるわ

今更我慢なんてしてあげない

死人に口無しとかいう戯言
言ったのはどこのどいつよ

砂糖漬けのドールに
ゴースト・ダンス

でっかいキャンディを
落として割ったひとかけら

それが私よ

どうせこんな世の中だもの
死んだ後くらい思うまま
楽しんだって良いじゃない

チョコレートチップを
がりりと噛んで
今宵もふわりと更けてゆく

生者のみなさまご機嫌よう!

192:なんJ民:2020/11/01(日) 23:23

おちんぽ

193:レミング◆yc:2020/11/02(月) 01:30

禁止ワードの狭さを見せつけてくれましたね……

194:レミング◆yc:2020/11/02(月) 01:34

切ってしまいましょうか

頭が良いですか?
それとも"それ"を?

わざわざこんなことしなくとも
町へ出て服を脱げば
同じ欲は満たされるでしょうに

どうしようもない変態さんですね?

195:レミング◆yc:2020/11/04(水) 23:29

天使の涙を溶いたインクで
貴方への恋文

僕の気持ちは伝わるかな
貴方への愛は届くかな

鼓膜に響く胸の高鳴り
指先に染む恋の高まり

乗せて

虹の橋に渡して
ミルクの河に流して

貴方の元に届きますように

どうか
僕の愛を

196:レミング◆yc:2020/11/09(月) 02:27

その
汚れを知らない
無垢な手で

この
一枚ぶら下がった
首を

絞めて
折って
切ってくれ


良いじゃないか
これくらいが癖になるんだ

壊して
イんだよ

愛するんじゃ
もう
足りない

終わらしてくれなきゃ
閉じきらない

痛め付けて
犯してくれよ

どうしようもないんだ
どうなったって良い

この
下らない生を
あんたにやるよ

197:レミング◆yc:2020/11/11(水) 03:45

星の数ほどあるなかで
どうして僕は
貴方を希ってしまったのだろう

貴方も貴方だ
どうして貴方は
僕を選んでしまったのだ

この激情を
閉じ込めることなんて
できやしない

喚いて縋って地を這ってでも
僕は貴方を求めてしまう

邪魔ならそうと言ってくれよ
この心と共に消えるから

けれど
魂は決して逃れられない
それほど僕は貴方の虜

いずれ水泡に帰すと
分かっていてなお
こんなにも美しい恋なのだ

198:レミング◆yc:2020/11/13(金) 03:17

亡くした昨日

何度
追いかけた

見つかり
はしなかった

追いつかれた
憂い

加齢
してゆく悲しみ


大切
だとは思えない

無いの

自分は
居ないの

心の中
身が
騒つくの

明日を拒んで
籠って
縋って
潜って
抉って
掬って
笑って

いたい

199:レミング◆yc:2020/11/19(木) 05:47

狂気とは何ぞやと自問自答し
乖離的現実逃避を模索する日々

逃げたとて追いつくものでも無く
追いかけたとて届くものでも無く
こちらから介入しなければ
その姿を見せることも無い

果たして狂気とは理解するものなのか

必然でなくとも偶然ではなく
砂に落ちる石を拾うように自ら手を伸ばしたのなら
それは果たして手にしたと言えるのか
それすら曖昧である

一介の人間ごときが得て良いものではないのだ
欲して良いものではないのだ

さしずめ神と呼ばれるその存在は
愚かにも狂気を望む人間を
嗤っているのだろう

大路を走らばとは言うものの
その狂人とて狂気を理解しているとは限らない

いくら同じ路を走ったところで
オリジナルの狂気というものに追いつけはしないのだ

ハイ・ファイのレコード式に狂人を演じようと
そこにあるのはただ狂ったふりをした凡人である

マトモではなくとも狂人でも無く
私は何と中途半端なことだろう

これは私の詩である

これは狂気になろうとしている愚か者の詩である

200:レミング◆yc:2020/11/25(水) 02:05

遠目見回り
隠れて根を張って

心臓は変形
刺激でドクドク

僕の目を見ろ
声を聞け

ぬるま湯に浸かった脳を
滅多刺しにしてやる

煌然と登場
歴史をひっくり返すのは
僕だ


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