戻ってきました
先刻にも書いた通り
「アビス」と呼んでくれて
構わないですよ
閲覧は自己責任で
御願いしたいです
猫も食わない生魚の戯言は
聞き入れる心算は御座いません
(1)
僕はね
ある時まで
幸せと云うものを
感じた事がないんだ
ある時と云うのはね
気紛れに他人と公園で
遊んでた時なんだけど
その子がね
大事にしてた人形を
無くしちゃって
僕もいっしょに
さがしたのだけれど
結局見つからなくって
その子が泣いちゃって
家に帰って行った時かな
その子が公園から
いなくなって
夕日が沈んで
影も映さなくなった頃
僕は笑った
その子の人形を持って
心の底から
笑った様な気がした
それまでも笑った事は
いくつかあったんだけど
表面的なだけで
ひとりになってから
なんであんな下らない事で
笑ったんだっけって自問してた
この時から
理解したんだ
自分は他人が
不幸になる事でしか
幸せになれない
人間なんだって
(2)
その時から僕は
皆の前では今以上に
良い子になって
その陰では
皆が作った物を壊したり
皆で飼ってた動物の餌に
毒を混ぜて歿なせたりして
皆が泣いてたり
怒って犯人は誰だって
云ったりしてるのを見て楽しんでた
不幸なんだろうなぁ この人達は
その中でたった一人だけ
僕は幸せだって
喜びをこっそり
噛み締めてた
危なかった時も
あったけれど
基本は誰も
僕を疑わなかった
だって僕は
自分の感情に素直なだけの
良い子だもの
星に願う 破滅を
宇宙より飛来する
彗星よ 来たれ
大気圏なぞと云う
地球を包む
穴だらけの脆弱なヴェールを
摩擦により燃え尽きる前に突き破り
空を 割れ
地上を 燃やせ
海を 蒸発させよ
あまねく生命に
終焉を もたらせ
散文の何が悪い
高尚な文を紡ぐ事が
良い事だと思うな
ナンセンスだって良いだろ
ハイセンスかぶれ共が
あおぞらのねこのことなど
わたしは知りません
わたしが知りたいのは
いま めのまえでしんだ
いぬのことなのです
少しだけ
眠らせてくれ
世界に希望を
抱く事が出来たなら
また私は目覚めるから
皆が笑って
私を崖に
追い詰める
そして私を
数多の手で突き落とす
黒虚底を背に
落ちていく私を
皆は追い詰めた時と
変わらぬ笑顔で見ている
助けてくれる訳が無いのに
私は何故か手を
皆に伸ばしている
勇気をひとつ持ったら
後の事は 考え無い様にしよう
空を見よう
きっと青い
白い雲は偽の綿飴
鳥は歌を歌っている余裕はないや
翔ぶ事に必死でそんなこと
思い出してみよう
良い事も 悪い事も
思い出しても 悲しくならないで
これから起こる事をすれば
なにもかも 全部
消えるよ
私がいない方が
皆にとって
清々するかもしれない
だって誰も私の事をもう
気にかける必要なんて
無くなるから
嫌だったに違い無い
私と接する事が
我慢していただろうな
現実は勿論
最近は電脳世界の貴方達も
私の事を画面の向こうで
冷たく嘲笑しているのではと
思えてきた
頑張らなきゃいけないのに
そうでなきゃ私は誰にも
見て貰えないのに
努力らしい努力をしないで
他人に見て貰えるのは
可愛い人と 綺麗な人と
格好いい人と 面白い人
そのどれかを
持つ人のみです
その世界は
別の世界
そんな世界に
私はいた
行きたくなかったが
無理矢理
連れて来られた
其処は
食い物と飲み物と
人の声が
混じる場所
皆は楽しそうだ
だが私は何ひとつ
楽しくなぞ無い
好かないからだ
元来そう云う場所は
少し目の前の冷たい
肉だの寿司だの食べて
約一時間後に来たる
ケェキを待つ為
喧騒より離れた場所で
持参したゲェムをしていた
少しすると
私と仲が
良いなんて騙る
私が勤める職場の
同僚女がとなりに来て
何か話しかけていた
何かを話しかけているなと
聞こえてはいたが
内容までは
聞いていなかった
その内同僚女は
私と会話するのを
諦めたのか
向こうへと行き
他の同僚と
話を始める
それで良いんだそれで
お前は綺麗なんだから
こんな可愛気の無い
私なんかと話すよりも
他の同僚と話でもして
チヤホヤされると良いさ
(1)
ある川原の土手で
男をハンマーで殴る
牛の刻ドンが鳴り
働く人間達が
昼餉を食べようと
ゾロゾロ出てくる時間に
其の男は
知らない男である
其の男は歿んだ
頭からダラダラダラダラ
血を流して
其の男は背が高く
メガネをかけていて
痩せている
まるで羽の無い
蜻蛉の様だった
何故殴ったのか
男の歿体を見詰めて
じっと考える
其の間も
男の頭から
流れる血は
止まらなくて
土手の青い草は
赤く染まっていった
(2)
もっと近くで見てみれば
判るかもしれないと思い
歿体の側でしゃがんだ
殴った頭の箇所からは
皮がベロンとめくれて
脳味噌が見える
ずいぶん強く
自分は殴ったのだと
少しだけ
口角が上がる
(3)
酉の刻になって
辺りが暗くなり始め
人が影の朧となろうとも
私はずっと
男の歿体の側に
しゃがんでいた
漂う血の匂いを嗅ぎ付け
引き付けられたのか
野犬が涎を垂らして
男と私を見ている
男の脳味噌が
見える箇所には
ブゥゥン…ブゥヴン…と
蝿が飛びかよい
脳味噌に
時折止まっては
口で肉を
ちびちび喰い
臀部の穴から
白っぽい蛆虫を
プリプリ産んでいる
なんだか見てると
どうだって
よくなってきた
なので川に蹴落とした
男の歿体は流れて
それを魚が
追従していった
上司や同僚が求めているのは
今休職している自分じゃなくて
病まずに出勤して
仕事をする自分なんだ
頑張らなきゃいけない
早く直さなきゃいけない
でないと自分は役立たずだ
何処にも居場所が無くなるんだ
(1)
いなければ良いのに
あいつがいるせいで
何かと比べられる
容姿だって
勉強だって
運動だって
あいつは優秀で
周りもあいつを
褒めるばかり
一方の私は
何をやっても駄目で
周りの誰もが
私を罵る
何故あっちは出来るのに
お前は出来ないのか等…
私だって何かひとつ位
出来たかった
あいつよりも秀でた所が
欲しかった
だけども叶わなくて
どうすれば良いのか判らなくて
其の結果が
いなくなれば良いと
妬みから来る
あいつへの憎しみだった
(2)
そうして私は
あいつを憎む
あいつの一挙一動一声が
気にくわない
なんて苛々
するのだろう
ひっぱたいてやりたい
お前ばかり
お前ばかり
お前ばかり…
…調子に乗るなよ
おー ばー ど うず
おー ばー ど うず
薬
白い楕円と丸
今飲んでいる
薬の形
これを飲むと
嫌な事が消えて
嫌な事を
考えられなくなる
おー ばー ど うず
おー ばー ど うず
崩れていく心を
薬が直してくれる
口に含んで
水で飲み込む
すると私は
たちまち常人に
なる
おー ばー ど うず
おー ばー ど うず
薬が
楽しみ
いじわるな子供がいました
その子はいつも
みんなにイタズラをしかけては
困らせて
笑っていました
ある日の事です
その子がイタズラを
考えながら
歩いていると
その子の足下に
突然大きな穴が開き
落ちてしまいました
その穴は
深くてとても一人では
出られやしません
おーい と声を
上げました
けれども返事が
返って来る事は無く
辺りは暗く
なるばかり…
その子は泣きました
わんわん泣きました
すると突然
雨が降ってきて
その子の
入っている穴を
水で埋めつくして
その子は溺れて
歿んでしまいました
貴方にされた悪き事
それをどうして
忘れられようか
元よりこの心病んでいます
それが貴方の所為で
殊更病みました
赤い布端縫い付けて
ぬいぐるみを貴方に例え
こうなれば良いと願い乍
ぬいぐるみの腹を裂き
ワタを引きずり詰め込んで
残りのカワもバラにして
これが貴方 未来の姿と
呟きたく存じます
アビス、すげぇ…
53:深河春淵◆wc:2020/04/04(土) 19:21 >>52
見てくれたんだね、ありがとう。
そう云ってくれるのは嬉しいですな。
私が悪う御座いました
貴女の了承を得ずに
勝手に夕餉を
食べてしまったのは
今 私は貴女のぶちまけた
飯だった物の上に
頭を垂れて
後頭部を貴女の
飯の汁にぬったくられた
素足に踏んづけられております
それは貴女の足の
匂いではないのだけれど
これもこれで悪くないと
思います
後頭部の足の感触が
ぬるぬるしていて
私はある衝動に
駆られております
舐めたいのです
貴女の足を
後頭部をひっくり返して
顔面に足がある状態にして
私の舌の味蕾で
味わいつくしたいのです
気持ち悪いと
思われるかもしれません
そう思われたのなら
どうぞこの卑しい私めを
貴女の口から出てくる
モザイクがかかりかねない
酷き言葉でどうか
罵倒して下さいませ
呪われちまえ
お前なんて
お前なんて
お前なんて
誰も彼もが
お前のせいで
お前のせいで
お前のせいで
俺の事を馬鹿にするんだ
つらい つらい つらい
つらい つらい つらい
つらい つらい つらい
苦しい
笑うな 笑うな 笑うな
笑うな 笑うな 笑うな
笑うな 笑うな 笑うな
聞きたくないんだよ
森に出口は無い
あるのは入口だけ
持っているのは薬と水
自分を証明する物は
持っていない
呼んでいる
誰かが
行かなきゃな
早く
何処へ?
何処だろう
何処でも良いよ
あの空の雲よ
あの空の雲
あの空の雲より
発行される券は
お星またたく宇宙より来たる
機関車に乗る為に
必要な物なのです
若し無くしてしまったなら
あの空の雲は
意地が悪いですんで
ずい分とこちらを
焼きもきさせてから
渡しに来ます
機関車の乗客は
あなた地球人だけじゃ
ありません
火星人の乗客もいます
水星人の乗客もいます
木星人の乗客もいます
金星人の乗客もいます
天王星人の乗客もいます
土星人の乗客もいます
まぁとどのつまり
地球人が認知している星体の
者達は全て
乗っている訳です
線路は星ですよ
地球人が
天ノ川と呼んでいる物の事です
織姫や彦星なんて
そんなロマンチカルは
存在しません
乗るにあたりお客様には
守って欲しい事がありまして
それは決して
窓を開けては
なりません
窓を開けられますと
放り出されて
宇宙の亡者となりますので
あれの事です
右に見えます
あの物体です
星の帯の一部に見えますが
あれは昔この機関車の窓を
注意も聞かずに開けて
身を乗り出し
星を取って
家族へのお土産にすると
云い出したから
止めたんですよ?一応
でも聞かなかった
お客様が悪いと
今でも此処を通る度に
思いますね…
さて そろそろ
出発しましょうか
カレンダーを見る
時計を見る
刻々と時計が
針を進める音がまるで
処刑台の一番上まで歩く
自分の足音の様に思えてくる
後何分かすれば
忌々しい“誕生日„と云う
物がやって来るからだ
歳をとる
それは別に構わない
人間だから
歳をとるのは
当たり前だ
それよりも
恐ろしい事がある
祝われないのだ 私は
誕生日と云う物を 迎えても
誰からも
プレゼントなんて
何十年前にもらった以降
記憶が無い
おめでとうなんて言葉も
聞いた事が無い
だのに私の家族は
己が仕事先から
プレゼントを貰える
私だけが 祝われない
ぼっちだ 友達いないから
なんだか 目から
温い水が出てきた
渦巻く妬みは
くちなわと化し
吐き出される嫉みは
毒炎となりて
輝く生命を蝕み
とこしえに癒えぬ
禍恨の傷を残す
恨んだって良いじゃないか
許せないんだから
謝ったからって
お前の罪が
消える訳じゃないよ
しつこい?何を云っている?
お前の謝罪に
誠意が無いからだよ
謝って終わり?
其の考え方 嫌いだわ
丸く収まってたまるか
何時何時だって論(あげつら)って
お前の眼前に突きつけて
覚えるまで脳味噌に
捻り込んでやる
私は誰よりも
愛に飢えているのかもしれない
気がつくと
目で追っている
幸せそうな家族を
幸せそうな恋人を
幸せそうな友人を
私は一人
何をしているのだろうと
自問する
私は一人
ゲームをしていると
自答する
私は寂しい
何時も泣いているのだ
誰か助けて
くれないかと
誰か私を
見てくれないかと
布団の上で眠る私は
自らの周りに
火の点いていない
白く短き蝋燭の幻をみる
やり場の無い怒りと
行き場の無い悲しみは
其々炎と水になり
私の胸中に渦巻く
本来ならば炎と水
相反する二つの属性は
交わる筈は無く
どちらかが消えるが必定
だが私の胸中にある
炎と水は其に逆らい
互い互いに融合し
炎が水を消す度に
水が炎を消す度に
怒りとも云えぬ
悲しみとも云えぬ
混沌めいた感情の
水蒸気を発生させた
水蒸気はやがて
黒雲となる
黒雲は雷を放つ
雷は胸を貫き
暴れ狂いて心を
憎悪に焦がさせる
憎悪に焦がされた心は
標的を求めんとする為
嫉妬の血眼を見開き 彷徨う
虫がいる
否 正確にはある
其の虫に名は無い
どの著名な図鑑にも
其の虫の姿は
載っていない
虫の姿は小さい
人々が其の虫を
踏み潰しても
誰も気付かず
誰の靴にへばりついても
気にも止められない位の
虫は自分が
何を食うべきか
判っている
それは人間
だが外部からでは無い
人間の人体に開いている
穴と云う穴から入り
内部を巡る血をすすり
臓物を小振り乍も
金物屋の先に並ぶ
何も斬った事が無い
新品の刃物の様な
鋭き正三角の歯牙で
動物が動物の肉を
噛み千切る時のあの
ぶちぶちぶちと云う音を
立てて 食べる
気に食わない お前がな
何か私に別に
した訳じゃないが
見ているだけで
何か 苛々する
笑顔 泣顔 怒顔
どの顔も私の癪に
触れるにゃ充分だ
お前ばかりが褒められる
お前ばかりが味方される
お前が善人だから
それと真反対の私は
お前の扱いの
真反対の扱いをされる
私ばかりが怒られる
私ばかりが敵にされる
私が悪人だから
知らないんだろうぜ 皆はな
お前の秘密
私が今云ったって
悪人の虚言だと
誰も意に介さんが
電脳でなら
どうだろな?
誰も気付かない
噂の発信元は 私だと
真実として
伝わるのも良いが
尾鰭が付いた方が
どうせなら得だ
曲がりに歪んだ
原型の無い噂
そっちの方が
お前を苦しめられる
お前を好きな皆が
お前を攻撃する
これ程愉快な事は無いね
いっその事
くたばっちまえと
素面で酒を呑み
酔払の状態で
空瓶を持ち乍
看板ネオンを練り歩く
夜の匂い特有の
甘い女に手を引かれ
淫湯の一夜を過ごせども
素面ではあらぬので
隣で眠る女は誰ぞと
腕を組んで首をかしげる
其の内女も起きだし
うどんをすすれば
金の無ェもんに
用は無いぞと追い出され
くたびれた財布を
投げつけられる
開いて数えようにも
数えるべき銭は無く
あの女 全部取りやがったと
毒吐く様に呟いて
己が家への帰路を行く
何故貴方は
他の人を見るのです?
目の前に
恋人たる私が
いると云うのに
そんなに私より
あの人の方が良いのですか?
あの人の方が
良いと思うのならば
付き合いたいと
思うのならば
今すぐ私など
捨てらっしゃい
汚れた床を拭いた
ボロ雑巾の様に
私など
捨てれば良いよ
そしたら私は生卵の卵殻に
貴方の名前と生年月日を
書いて庭に
埋めてやろうね
ぼんやりとした
この思考の内に
詩でも書こう
今なら聞こえる様な気がする
何が 嗚呼 それは
正体は不明です
ですが音が聞こえます
それは声にも似るのです
亡霊の瞳は
恨みに満ちている
亡霊の恨む相手は
この世に既にいない
この亡霊が取り殺した…
ずっと背に張り憑き
怒りを孕む声色で
決して聞こえない
呪いの歌を歌った
それでも亡霊からは
恨みは消えない
強く…深く…増していく…
今日はお前に
こっぴどくやられたから
お前ん家の庭に
海月を撒いてやったよ
ぷるぷるの感触を
お前の足の裏で
ぶにぶに踏めば良い
ちなみに撒いた海月の名前は
鰹の烏帽子(かつおのえぼし)
お前に呪いをかけた
特に理由はないけれど
なんかお前の顔が
浮かんできて
太陽系の様に
ぐるぐる回るから
こっちまで
目が回ったんだ
だからお前は一日に十回
箪笥の角に足の小指をぶつける
ざまぁみろ
小指を骨折しちまえ
バラバラにしたっていいじゃない
此処はおとぎの國だもの
居眠りしている
おばあさんをたたきおこして
魔法を使わせたら
あっというまに
もとどおりだもの
私でも戻せるけど…
嫌よ 疲れるもん
大丈夫よ大丈夫
貴方は他の子たちといっしょに
部屋の中に
入っていれば良いの
楽しい夢を見た
自分が巨大な
獣や竜になって
世界を壊している夢
その時の私は怒っていた
何が何だか判らなくなって
でもとにかく目に留まる物全てが
自分を苛立たせてしょうがなくて
破壊せずにはいられなかった
瓦礫になる建物
燃える街並み
歿んでいく人間…
それ等を見ていると
気持ちが昂って
もっと壊れろと
暴れ狂いたくなってくる
戦車や戦闘機なんて
目じゃない
払い除ければ
いつの間にか
無くなっているのだから
ふと 可笑しくなる
花瓶を割った
良いじゃないか 別に
お前の命より安いんだから
吐けよ煙突黒煙を
空から青を亡くす為に
ふとお前の事を
思い出した
生きた鶏肉を
解体している時に
飛べない蜻蛉が
階段に這いつくばってた
何故だかそれが
憎らしくなってきて
何処ぞで拾った木の枝で
複眼の部分を突き刺した
ピピコピコ
ピピコピコ 電子音
暗い部屋の中
ゴミだらけの部屋の中
何かを打つ音だけが 響く
社会から拒絶された 自分
世界から隔絶された 部屋
此処なら自分を誰も
非難しない
外からの声は
耳を塞いでいれば良い
昼夜の世界 逆転してる
外では太陽が
出ているらしいけど
自分の世界は月だ
いつまでも夜だ
布一枚がそうしている
周りの三次元は
結婚しているけど
自分はその前に
二次元と結婚している
二次元なら
三次元みたいに
裏切ったりしない
自分の世界は
此処だけで良い
見聞を広める
必要なんて無い
誰かの泣き声が
聞こえたような
気がしたけれど
きっと
気のせいだ
希望を抱いたの
だけど
何も変わらなかったの
悲しさが
増すだけだった
辛さが
増すだけだった
苦しみが
増すだけだった
誰も
判ってくれない
誰も
見てくれない
ここに
いるのに
誰も
気付いてくれない
報われぬ彼の者の為に
其の純潔な心が
世の中の汚れた者達に
蝕まれない様に
私は彼の者の事を
天国へ導こうと思う
(1)
生きている
家族の姿を見ると
どうしても
歿んでいる姿を
思えずには
いられません
ある日の母は
台所に立っています
料理をしているのですが
包丁を持っており
其れをうっかり滑らせて
自分の胸に
突き刺してしまうのです
母は歿にました
ですがこれは
私の想像なので
現実の母は歿んでおらず
料理を続けておりました
(2)
或る日の兄は
今日も今日とて
運動らしい
運動をしておらず
食っちゃしては
部屋の中で
グースカ寝ています
夕食が出来て
私が呼びに行くのですけど
いくら呼んでも
ウンともスンとも
云いやしない
それもそうでしょう
だって兄は
歿んでいたのですから
原因は云わずもがな
兄自身に溜まった
こえこえとした脂肪です
ですがこれも
私の想像上の
出来事なので
誠に残念乍
現実では
歿んでおらず
グースカと
寝ているのです
小さい子 可愛い子
キレイにしようね
髪をとかそうね
私のお膝の上で
服を着せようね
さぁ バンザイして
靴を履かせようね
おろしたての 赤い靴だよ
キレイになったね 小さい子
さあ 頭から順番に
噛み砕いてあげようね
星 星 ぴか ぴか
夜空に あがる
星 星 ぴか ぴか
夜空で ひかる
星 星 ぴか ぴか
宇宙から やってくる
星 星 ぴか ぴか
地上を 滅ぼすよ
貴方のノートが
真黒に染まりますように
貴方の見る景色が
真赤でありますように
貴方の未来が
閉ざされますように
苦痛よ きたれ
悲しみよ きたれ
今こそあの者に試練を
彼の者は幸福に満ち過ぎた
我は彼の者に
不幸を与えねばならぬ
運命は常に寄らず離れず
禍福平等であるこそが定め
だが彼の者の天秤は
幸の方へ傾いている
平等を是とする我としては
看過出来ぬ事
ならば与えよう
今こそ嘆きを
彼の者の最も愛し人へ歿を遣わせ
彼の者の親しき友へも歿を遣わせ
彼の者を
孤独と空虚へ導こう
つのばさみ しょっきりん
紙だって布だって何だって
自慢とうたうつのばさみで
しょっきりんよ
おとなりさん
いつもニコニコ
今日も今日とて
ニコニコしていたよ
おとなりさんの旦那さん
それはもうひどい人
お酒を飲んじゃ
つらく当たる人
それでもおとなりさんは
ニコニコしている
ある日
おとなりさんの旦那さんが
消えたって
おとなりさんは
ニコニコシャベルを持って
話してくれた
私は「彼」を許すまじ
「彼」は此処まで私を
傷付かせておいて
のうのうとしている
あの面に何発位
握りしめたこの拳を叩き込めば
「彼」の顔は
トマトのように
腫れ上がるのだろうか
あの子は いつも ひとり
あの子は いつも ひとり
ゆうがた いつも
ぶらんこで あそんでいる
ゆら ゆら ぎし ぎし
ゆれて ゆれて
赤い そらが ちかい
ふくは よごれて ボロボロで
いつも したを むいていて
なにを いわれても
白い 歯を むきだしに
わらっている
にぎり つぶした
かわいい ちょうちょを 片手に
あの子が あそんでいると
だれかが いなくなる
ひとり ふたり さんにん
四にん ごにん ろくにん
かぞえていたから わかるんだ
だれが 消えたのか
ぼくだけが 覚えていて
みんなは しらない
あの子の 事も
この子の 事も
○○ちゃん こんどは
あの子も いれて 遊ぼうね
あの子 いつも
ぼくたちを みているから
ある日 突然
でっかくなった
両手がでかい
ぷちっという
音が聞こえた
両足がでかい
下で爆発音がして
なんだか少し熱い
怪獣!怪獣!と
ぼくを見て
みんな叫んで逃げていた
にんげんなのに
なんでこうなったのか
自分にも
よくわからないのに
みんな みんな
石をぶつけてくる
でかくなっても
痛いものは 痛いよ
やめてよ みんな
みんな やめてよ
そんなことするなら
ぼくにとっての
小石を 投げるよ
みんなに
ぶつけるよ
泣いたって
怪我したって
しらないから
さふさふと云う
木の葉の音
人が踏む
木の葉の音
さふさふと云う
木の葉の音
木の葉と云う歿骸の
砕かれる音
海の幽霊の
一団となれば
愛し憎き貴方を
足つかぬ深き底へと
誘えるか
歿に体である
我が耳に
蚯蚓が入りて
うねうねよじり
臓府を見る
一つの木に
二人の男と女
一つの木は
新たなる別れと出会いを
見届ける
飲まねばやってられぬ
人に酒の力で
当たらねばやってられぬ
我が勝手なるこの心を
憎しと思う
二日酔いの朝よ
生活(ライフ)に充実せし者よ
爆発四散すれば良いと
青空の下
空想す
今だけはこの空の
太陽よ影れと願う
太陽さえ出ずらねば
深き眠りにつける故
詩が書けぬと
泣き事を云う我を
見えぬ者が
お前は才など無いと
責める声
許しを乞う者の背を
鞭にて更に呵責したくなる
地獄に住まう
獄卒が如く
愛に永遠など無い
誓うなかれ 君よ
それだから君は
そんなにも私に対して
苦しんでいるのだ
母親が子守歌を唄う
中の胎児は首に
へその緒を巻いている
誰かが歿んだ
ニュウスを見てる時
嗚呼なんだ君かと
君が後に立っていた
何ぞを彫っている時
自分の一部を彫ったならば
自分もこの彫刻と同じ様に
美しくあれる気がする
同窓会
出でし者よ皆歿ねと
家の中にて
呪うばかり
夏は柳の下にて
人を驚かしてみたし
なれば幽霊を
師としてみるか
暗闇にて微笑む
寝る君の首を
撫で回して
女をぶつ切りにする
肉屋の吊るされた鶏の様に
生きたまま切る
麻酔なんて使わない
足首を抑えて振り下ろす
ダンッ ダンッ と二回
叫ぶ
切られる度に 血が出る度に
切り落とした足の肉に
靴を履かせて飾る
高いヒールが良く似合うね
太股辺りに包丁を当て
力を込めて切り落とす
完全に切り落とした脚に
鉄串を刺して焼く
焼けていく肉の匂いで
お腹が鳴った
次に耳を
小刀で切り落とす
切り落とした耳に話しかけて
冷蔵庫に保管している
今まで切り落とした女の
耳の瓶詰めに
ポチャン…と入れる
脚がちょうど良く焼けた
鉄串を持って
飢えた肉食獣の如く喰らう
女は虫の息で
自分の脚が
食われているのを見ている
咀嚼音を聴かせてやりたいな
でも君には耳が無いから
聴く事が出来ないね
二つの脚の串焼を
ペロリとたいらげて
ふと…デザアトが
食べたくなる
冷凍庫に
脳味噌と眼球を
入れていたのだった
誰のだったけ…
まぁ良いかそんな事
私は故意にしろ
そうで無いにしろ
踏み潰した
蟻の数なんて
覚えちゃいない
“人間„なのだから
(1)
毒虫でありたいのです
けばけばしい色合いの
派手な毒虫に
毒虫と云っても
種類と云う物があるから
蜂の様な飛ぶ毒虫か
毛虫の様な這う毒虫か
私は人でありながら
何故毒虫になりたいなぞと願うのか
それは法が
関係しているのです
人間は何かを傷付ければ
罪に問われ 裁かれるでしょう
けど虫ともなれば
たとい何かを傷付けても
罪に問われず
裁かれやしません
法は人を裁く物であって
虫なんぞを裁く
馬鹿な物じゃありませんから
(2)
私には
嫌いな者がいるのです
其の者は
容姿に関しては
別段特筆すべき
所は無いのですけど
性格がもう…
…何と云いましょうか
人間と呼ぶには
あまりにも形容し難くて
兎に角嫌なのです
そんな者にも
忌々しい存在があるようで
それが虫なのです
件の者は其れを見付けると
まるで親の仇かと云わんばかりに
靴で液がぶちゅぶちゅと
出るまで踏んづけ
原形が何ぞやと判らなくなるまで
地面に擦り付けるのです
なんと可哀想な虫なのでしょう!
彼の者の視界に入って仕舞った不運故
尊厳無き最期を迎えて仕舞うなんて!
だから私は毒虫となりたい
刺しに刺しまくり
全身と云う全身を
毒で侵しもがき苦しませて
脂汗を吹き出させて
息を絶えさせたいのです
君が僕を
裏切りさえしなければ
こう云う事にはならなかった
だから君は皆に泣かれて
花を手向けられるんだ
石の下の
君の肉体は
時間が経つにつれ
段々腐っていくのだろうね
其処に君の意思はあるのかな
あるのだとしたら
どんな気持ちだい?
あいつがやって来る
地より 来る
祈っても 無駄
逃げても 無駄
あいつは 神など
恐れはしないし
逃げても 何処までも
追いかけてくる
あいつに
目を付けられたら
終わりなんだ
あいつは
何をやっても 歿なない
刃でも 銃でも
あいつは
僕の目の前で 今
口を 開いている
ただ 歩く
ただ ただ 歩く
ただ ただ ただ 歩く
ただ ただ ただ ただ 歩く
ただ ただ ただ ただ ただ 歩く
ただ ただ ただ
ただ ただ ただ 歩く
ただ ただ ただ ただ
ただ ただ ただ 歩く
ただ ただ ただ ただ
ただ ただ ただ ただ 歩く
ただ ただ ただ
ただ ただ ただ
ただ ただ ただ 歩く
歩く 歩く 歩く
歩く 歩く 歩く
歩く 歩く 歩く ただ
歩く 歩く 歩く 歩く
歩く 歩く 歩く 歩く ただ
歩く 歩く 歩く 歩く
歩く 歩く 歩く ただ
歩く 歩く 歩く
歩く 歩く 歩く ただ
歩く 歩く 歩く 歩く 歩く ただ
歩く 歩く 歩く 歩く ただ
歩く 歩く 歩く ただ
歩く 歩く ただ
歩く ただ
ある城の姫の夢
遠き星は
青の歌にて眠る
幽霊鯨は人の住んでいた
瓦礫を背に負いて
汚染された空に
かつての清い希望を胸に抱き
吠え地に落ちる
幽霊鯨の歿骸に群がる者
人間と呼ばれていた者
彼等は鯨の背に
黄金があると信じていて
皮を剥ぎ 臓物を見
滴る血を舐めて
更に狂気となって
脳を掻きむしる
朝日が昇り 姫は目覚める
姫は骨である
求める物は何だったかしら
何も判らないわ
こんなにも自分は物に囲まれて
恵まれていると云うのに
人、人、人
人が 足りない
自分に集まったって
目的は金、金、金
私の物ばかり
私はそれが無ければ
誰も、何も、相手にされない
いっその事、燃やしてしまおうか?
金も、家も、この身体も
そうすれば何も欲しく無くなって
こんな煩わしい心も
消えてくれるかしらん
泣きはするでしょうね 偽りだけど
喜ぶでしょうね 金が舞うのだから
あげるわよ 貴方達に私の金を
争えば良いわ 倫理、道徳を捨てて
欲しいのなら 自分の児だって
*してしまえば良いじゃない
富にまみれたいのでしょう?
其の後に来る孤独に苛まれても
望んだのは
…貴方でしょう?
私の詩で
誰かが不幸に
なれば良い
慎ましき小さな幸せも
私の目に映せば
其は大きな幸せで
嗚呼なんと
妬ましき事でしょう
だから歌うのです
呪いましょう
新しく産まれ
祝福を受けし生命を
摘みましょう
萌芽の美しき草木を
嘆きを聞いて
私は喜び
悦に浸るのです
偽りの幸福でも
皆が求め喜ぶのなら
私は与えねばならぬのです
笑顔を見るのが好きなのです
素敵じゃないですか
何もかも忘れて
不幸の無い世界へ
入り浸る姿と云うのは
幻を見せてあげましょうね
貴方にとっては
幻では無いのでしょうけど
そのくすんだ希望の失った瞳に
光を宿らせてあげましょうね
楽しんでいらしてね
空を翔びたいと願うなら
此処なら叶いますからね
私は不幸なので御座います
私は物に見限られ
者にも見限られました
そんな私に者は
生きろ等と
其の内良い事があるなぞと
とても酷な事を云うのです
それはどれくらい
待てば良い物なのでしょう
一年?十年?否
私の髪が白となり
足腰立たぬ老人となるまで?
そんなのは嫌です
それならば今此処で
歿を選ぶ方が余程
幸で御座いましょうよ
そんな折りに現れた神様
貴方様の噂は
聞いております
何でも不幸に見舞われ
後先無くなり歿を望む人間を
自らが創りし世へ連れて行く…
其処は苦無き
極楽浄土だと
跪いて縋らせて下さい
貴方様の世界へ
行きとう存じます
歩む道よ茨あれ
流す血により花よ咲け
愛でし掌の花の儚さよ
枯れて背かれ捨てられて
摘まれる新たな花の
命の終わりよ始まりよ
(1)
彼/彼女は何故
泣いているのだろう
現実は嫌だと云った
夢を与えて欲しいと云った
だから私は夢を与えた
彼/彼女の望むままに
そうしたら今度は
現実に帰りたいと云った
何故?何故?
あれ程忌避していた現実に
何故帰りたがる?
何故?何故?私を拒む?
何故私の手を振り払う?
嗚呼嫌だ拒まないでくれ
私は誰かに要されていなければ
消えてしまう存在なのだ…
(2)
…お前が拒むなら
永遠なる夢に閉じ込めよう
楽しい夢なんて
与えてはやらん
お前が心の底より
私を求めん限りは
永に目覚めんと思うが良い
嗚呼可哀想に
お前が拒まず
現実に帰るなどと抜かさず
只夢想にて共にあれば
こんな事になぞならなかったのに
不幸
貴方達から見れば
そうなのかもしれない
幸福
我が民の目を見てよ
恐怖なんて無いでしょう?
確かに我が国に
貴方達が自由と呼ぶ様な
物は無いのだろうけど
自由があるから故に
争いは生まれる…
ならば徹底的に
思想に反する者を排し
何も知らない民達には
自由が如何に悪であるかを説き
只一つの思想に隷従する事こそが
どれ程素晴らしくて
善き事なのかを
脳の髄の髄まで洗い尽くして
流し込ませて
見えない首輪を
巻いておけば良い
其の手綱を持つのは我よ
苦しまない程度に引き
若し噛みつくなら
痛みを伴う躾をして
それでも噛むなら
我の愛い民達に
喰い千切らせれば良い
ほれ これで
我の手は何も汚れぬ白き手よ
この国には絶対的な
只一つだけがあれば良い
雑多なのは要らない
否 この国には
そんな物は
もう 存在しないのだ
鏡は私に云いました
「目の前の物をお食べなさい」
そして私は目の前の
パンとリンゴを
食べました
私は鏡に云いました
「食べる物が御座いません」
鏡は私に云いました
「なら草花を食べるのです」
そして私は裏庭の
育てた草花を
食べました
私は鏡に云いました
「食べる物が御座いません」
鏡は私に云いました
「なら虫を食べるのです」
そして私は土の中の
芋虫を千切って
食べました
私は鏡に云いました
「食べる物が御座いません」
鏡は私に云いました
「なら土を食べるのです」
そして私は地面の
土をほってすくって
食べました
私は鏡に云いました
「食べる物が御座いません」
鏡は私に云いました
「なら給士係を食べるのです」
そして私は給士係の
体を刻んで焼いて
食べました
私は鏡に云いました
「食べる物が御座いません」
鏡は私に云いました
「ならこの私を食べるのです」
そして私は鏡の
粉々に砕けた破片を
食べました
私は鏡に云いました
「次は何を食べましょう?」
私は何者なのだろう
人なのか?思い出せない
人が肉塊になるまで
首をはね切り刻み血だまりの中を
歌い乍歩くのが
とても楽しかった
まるで薔薇の花弁を
踏みしめている様で
林檎が好きだ
噛んだらすぐに
眠くなったが
月明かりの夜には
自分の歩く後に
小石を置いた
海を眺めていると
ふと、自分の胸に
短剣を突き立てている
時折、妙な記憶の断片が
私の頭をよぎる
赤い薔薇と
手足の生えた
トランプ達に囲まれ乍
規律を守らぬ者の首をはねる
女の王の姿
火で炙った真っ赤な
鉄の靴を履いて
踊り狂っている女を
男と共に見ている
白い雪の様な姫
機転で魔女を騙し
生きたまま焼いて
魔女の宝で
富を得た幼き兄妹
叶わぬ恋に嘆き
優しさ故に自らを泡に帰す
人の姿の魚の姫
この記憶は
一体誰なのか
判らないから
とりあえず歌おう
花弁の上を
林檎をかじり乍
小石を目印にして
短剣を振り回そう
彼の全てが気に入らなかった
存在そのものが何時でも
私の癪に障った
彼は真面目だ
世間から見れば
誰からも
好かれるであろうの善人だ
だが私はどうしても
彼の事を見ると
殺意を
抱かざる負えなかった
まるで前世に
何かしらの因縁でも
あるかの様に
お前達が土に種を蒔き
萌芽を経てこの地に
生命を満ち溢れさせるならば
この手に持つ刃にて刈り取り
劇毒を流し絶えさせよう
求むるは焦土
星辰無き黒き夜
私の職場と云うのは
仲良くしろ だの
チームワークが大切 だのと
まるで気違い染みた宗教の様に
人との絆とやらを説いてくる
それに盲信する上司や同僚は
さしあたり其の信者だろう
だが私はそうでない
あんな絆の盲信者でない
断固として違う否定する
私は仲良くすると思った他人としか
仲良くはしない人間だ
そんな私を盲信者は
血が通っているのか疑わしい
凍血漢と罵倒するだろう
罵倒するならするが良い
お前達の認識は
間違っちゃいないし
事実だからだ
だがそれの何が悪い?
お前達の何時も説く
絆の一種には
違いあるまいよ
宿り 宿り
液と液
宿り 宿り
母なる者の腹の中
宿り 宿り
動くための手と足と
考えるための脳
宿り 宿り
羊水と
絡まるへその緒
宿り 宿り
光と手術台
宿り 宿り
切り裂く医者のメスと
切り裂かれる母なる者の腹
宿り 宿り
パイの中に
鳥が突っ込んだ
突っ込んだ鳥は
そのまま焼かれて
お客の前に
出されて食われた
おれたちはすてられた
ふるいからすてられた
あたらしいやつがやってきたから
すてられた
ここはがらくたのおやま
みんなこわれているから
だぁれもちかよらない
うごくたんびに
うるさいおとがなる
がらがらがらがら
どんがらどっしゃん
つくられて つかわれた
それがうれしかった
なのになのに
あたらしいやつがやってきて
いらなくなったから
すてられた
まだ うごくのに
まだ やくだつのに
どうして?
悪い夢を見ぬように
その両の目を閉じませう
星明と月光
一つはゆりかご
一つはメリイゴウランド
金糸雀が歌います
耳をかたむけ聞きませう
ほぅらうとうと舟こいで
そのまま朝まで眠りませう
ふたつのボウルの中に押し込みます
父母姉兄押し込みます
父母姉兄大きいので
刻んでバラバラ肉塊に
父と母はハンバーグ
姉と兄はホールケーキ
父母合挽きハンバーグ
フライパンでじゅうじゅうじゅう
兄姉甘いクリーム
ふわふわいちご色
家族が嫌い?いいえちがう
家族が好き?いいえちがう
ただ食事がしたかった
けれども材料が足りなかった
近所のスーパー
みぃんなしまってた
だから家族を
食材にした