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氷華
「……?
どうかしたの……?」
以前までの自分であれば落ち着いて穏やかな、人間としての自分でいられる筈の場所にいる中でもこの内面的な変化を感じ続けてしまう……
少しずつ自分が自分でなくなっていくような感覚……
だがそれ以上に、その変化に対する拒絶反応や違和感が自分の中から無くなっている事に焦りを覚えてしまう。
最終的に自分は異能と同じように氷のような心をした存在になってしまうかもしれない……そうなった時……夕渚はどう思うだろうか?……弟が生きていたとしたら……そんな自分を見て何を言うのだろうか……?
だが、自分が止まれば世界は悪と腐敗が蔓延る世界になってしまう。
誰かがやらなければならない。誰かが世界を変えなければならない。
それをするために自分は強い力を持って生まれた。
自分にしか出来ない、自分の生まれてきた意味、存在理由だ。
叶うのならば、身も心も完全に人ならざる者になってしまう前に世界を救いたい……
夕渚「・・・・・氷華、なんか思いつめた顔してる・・・・・」
(そう言うと、両手を下ろして「どうしたの?・・・・・何か、お仕事で嫌なことでもあった・・・・・?」と、氷華の表情の奥底に隠れた氷華自身もよくわからないような感情に、直感的に気がつく・・・・・
こうして毎日毎日病室で過ごしている夕渚には、到底氷華の苦労をわかることはできない・・・・・
そもそも、氷華の立場上、本来ならばこうしてこの場にいることはそもそもないのだ・・・・・
住む世界が違うとはよく言うが、二人の関係は正に友人であると同時にそれに該当する・・・・・)
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