>>桜空
>>中川
仮面の男
『…どうやら人探しをしているようですね?
もしかしたら…お力になれるかもしれません。』
瓦礫による倒壊の範囲から逃れた二人の背後に何の予兆もなく黒いローブに包まれており、笑顔の仮面を付けた得体の知れない冷たい雰囲気を身に纏った人物が現れる。
ローブによって体格が曖昧なものになってしまっている事や、その声は中性的である上に、仮面を隔てていることから性別も年齢も不明瞭なものとなってしまっている…
怪しげな風貌をしているものの、その声からは何の敵意も悪意も感じられず、優しげにさえ思われる。
桜空「・・・・・アンタが敵じゃないのなら、その言葉、信じるよ」
(この危機的状況の中、そう都合よく自分達の味方の助っ人が現れるのは出来すぎている話だと思ったからか、桜空は少々警戒しながらも、敵じゃないのであればその言葉を信じると返す・・・・・
今はとにかく、早く狼谷と合流してアジトへと戻らなければならないからか、桜空は少しでも今の状況を解決できる可能性があるならば、例え怪しい人物であったとしても頼らざるを得ない・・・・・)
>>611
>>611、612
(ん〜どうしたもんかね)
胸中で焦り始める。
狼谷達の位置が不明な上、唯一の通信手段も役目を果たせない状況ときた。
もはや八方塞がりか。
(……実はそうでもないんだな、これが)
奥の手がないこともない。
そして何故今まで使わなかったか。それはひとえに通信さえ出来れば不要な手段だからだ。しかし現状それが望めないのは明白となったので、消去法でこちらを選ぶことになったというわけだ。
(じゃ、早速取り掛かりますか)
一度深呼吸し、精神統一。
床に片手を添え、
『操作』を始めた。
(よぉ〜し、この建物もちゃんと操作の対象になってるな)
勿論建物の形をどうこうしようだとか、そんな大それたことは出来はしない。
しかし動かすことは叶わずとも、断片的に情報を得ることは出来る。
(この部屋は……なんもねえな。こっちの部屋もハズレか)
どこが『動かせない』部分なのか、どこが『そもそも対象外』の部分なのか、実は『少しだけ動かせる』部分なのかといった、感覚的な結果情報を手探りでかき集め、各部屋の状況を推測していく。
そうすると……
(お!)
今度の部屋は何か違う。
(床や壁の状態がおかしいな)
幾つか、『操作できない部分』が点在している。
(合成樹脂や塗料で挟んでるわけじゃない……こいつは)
傷だ。何らかの要因で壁や床が損傷している。そしてその形状は……
(刃物だな、それも随分切れ味のいい代物だ)
『操作できない部分』はどれも非常に細い直線であり、深いものである。そこから導き出される結論は、鋭利な刃物を持った人物が戦闘行為に及んだというところか。
自らのあずかり知らぬところでの戦闘、これだけで直接向かう価値は十分だ。
「ぃよいしょぉっ!!」
鋼鉄の円錐型ドリルを形成し、件の部屋目掛けて投擲。掘削させる。
これに関してはあっさり上手くいった。直前まで蜈蚣怪獣が暴れ回り、周囲の地形がボロボロになっていたからだ。
「さあ行きますよ大将、一度見るだけでも意義はあるぜ」
「ん? あんた誰? 何、助けてくれんの? ありがたいけど別にいいや、じゃな」
言い終わるや否や、謎の人物に向けて手をヒラヒラさせつつ穴へと入っていった。