>>631
「だったらどうして一人で突っ込んだんです? ここは言いっこなしですよ」
桜空の問いに人懐っこい笑顔で答えた。
彼の性格はよくわかっている。というよりバカ正直すぎて嫌でもわかってしまう。そんな彼がこの状況でとる行動など火を見るより明らかだ。
そして自分は、所属している組織のリーダーが危機に陥って、それを放置できる性分でもない。故にこの行動は必然といえた。
「どのみち奴(やっこ)さんは簡単には逃がしちゃくれねぇんだ。それなら少しでも可能性のある方に賭けましょうや」
「!」
剱鴉はとんでもない反応速度で対応、すかさず水平に一閃、浅葱色に輝く剣圧を飛ばした。
(防ぐのは……多分無理だ!)
ならば跳躍で躱そうと、足裏からコイル式ジャンプ台を形成しようとした瞬間、
「ごわあっ!?」
突如横から襲ってきた衝撃に姿勢を崩す。何かと思い視線を向けると、桜空が自分を突飛ばしたらしい。
「た、大将! これぐらい自分で対処できますって!」
完全に余計なお世話だった。むやみやたらと仲間を助けたがり、結果自身が傷つくのも厭わないのはもはや悪癖といえる。
どうやらありがた迷惑という言葉は、彼には存在しないようだ。
(まあそこが大将の美徳でもあるんだがな)
「お気持ちだけ受けとっときますよ!!」
呆れ気味の苦笑いで感謝を述べ、受け身をとる。
(って、もう次が来んのか!)
あれだけの技を使っておいて、まるでジャブのように連続で放つとは。
「やっぱ、次元が違うなあ」
こめかみに冷や汗が流れるも、反撃は怠らない。
今度は砂利の投げてのショットガンだ。太刀で防ぐにしても、それなりの動きをしなければならない。
>>633
【…伍の太刀「月輪」】
剱鴉は残像すら残らぬ速度で抜刀し、数回刀を振るい再び納刀する。
端から見れば刀を抜いた次の瞬間に再び鞘に戻しているように見えるだろう。
剱鴉が新たに放った斬擊は、先程の"一閃"とほぼ同等の速度でありながら、三日月状の特殊な形状をしており、斬擊そのものが高速で回転することで斬擊の起動が不規則なものとなっている。
避けようにも、斬擊そのものが回転しているため紙一重での回避は困難であり、大きく回避行動を取らなければならない……そんな斬擊が桜空に三つ、中川に二つ放たれてしまっている。
桜空達の勝利条件は剱鴉の後ろにある出入口からアジトの敷地外へ脱出する事なのだが……立ちはだかる壁はあまりにも厚く高い……
桜空「それじゃあもし対処できなかったらどうするつもりだったんだ!?」
(これくらい自分で対処できると言い張る中川に対して、それじゃあもし対処できなかった時はどうするつもりだったのかと問いかける・・・・・
敵の放つ一撃一撃は、人体など容易く切断してしまうほどの恐ろしい威力を誇っており、もしまともに直撃してしまえば即死してもおかしくはない・・・・・)
桜空「くっ・・・・・!」
ゴガガッ・・・・・!
(必死に3つの斬撃を鉄甲で打ち消すものの、段々と桜空の体力も底が見え始めてくる・・・・・
逃げ道はすぐそこにあるのに、立ちはだかる壁があまりにも大きい上に、とても二人がかりでも足元にも及ばないほどに力の差かありすぎる・・・・・
このままでは全滅は免れない、もうこの手しか残っていない・・・・・)
桜空「おい、斬撃女・・・・・次で決めてやるぞ・・・・・」
>>634