>>824、827
「なっ!?」
後ろに違和感を感じ視線を向けると、剣を持った人間?が振りかぶっていた。
「くっ!」
振り向いて反撃……間に合わない。
(じゃ、これしかねえな!)
直後、霧の分身体は強烈な打撃で吹き飛ばされていた。
鉄山靠(テツザンコウ)
背中で体当たりを繰り出す八極拳の技の一つ。蟲鴉との戦いでも披露した技だ。
「あの時の戦闘は知らされてねえのか? 俺の後ろを取っても無意味だぜ?」
口ではそう言うものの、内心では焦っていた。
(さっきからなんなんだコイツの能力は!? 霧を操るだけじゃねえのかよ!?)
自身を霧に変えて攻撃を無効化。これだけでも十分『ぼくのかんがえたさいきょうののうりょく』といえるが、まあいい。まだ理解できる範疇である。
問題は次だ。霧から衣服だけでなくナイフや槍まで作り出している。一体どういう仕組みなのか。
(霧っていったら小さい水滴じゃねえのかよ!? それが繊維や金属に変わるなんて、ご都合主義もいいとこだぜ!)
まるで合金を無条件無制限に使える自分自身、いやそれでも足りないと思える程に、この能力は脅威だった。
(……まさか、霧を使うってのは偽装で、実際には原子や分子を直接操作してんのか?)
脳裏に、ある恐ろしい可能性がよぎる。この状況で決して考えたくはない、あって欲しくない、そんな可能性。
しかし……もしも、万が一そうだとすれば、これまでの矛盾点が解消されてしまう。
こめかみを嫌な汗が流れる。
「紀ちゃん、あいつの能力、見た目通り霧に限定したものだと思うか?」
「っ!?」
そこまでだった。どうやら桜空が無理矢理自分達を転送させるつもりらしい。
「おい!! 大将っ!!」
霧使いのことで頭が一杯になっていたせいで反応が遅れ、ゲートに飲み込まれてしまう。
「……!……!!」
食ってかかろうとするがその努力も空しく、転送は完了した。
ーーーーーー
【Firstアジト】
「ふざけんな!! 何考えてやがる!!」
怒りの余り壁に拳を叩き付ける。
能力抜きでも、鍛え上げられた筋肉から放たれるそれは非金属製の壁を容易くへこませた。
「くそ! くそ!」
尚も殴打を止めない。
ただただ悔しかった。桜空から実質的に信頼されていないことが、そしてこれから彼が討たれてしまうであろうことが。
ここまで離れていては最早何を生成しても間に合わない。それこそどんな合金であっても。
(せめて、あの樹木使いをもっと早く倒せていれば……)
顔を片手で覆う。
もっといい戦果を残していれば、桜空は自分を強く信頼し、霧使い相手に共闘できていたかもしれない。
(……いや、よそう)
そこまでで思考を止めた。
現実に『たられば』はないのだ。
『かもしれない』は『かもしれない』でしかない。決して確定ではないのだから。
桜空「そいつは面白い、俺が能力の限界でくたばるのが先か、お前にやられるのが先か、それともお前がやられるか、勝負といこうじゃないか・・・・・」
ブォンッ・・・・・!
(桜空はワープゲートを再度出現させると、騎士の振り下ろした剣がワープゲートの先、桜空ではなく別の場所に当たることで桜空は攻撃を回避する・・・・・
「お前も反則レベルの能力だから、俺が能力でどんな回避しても文句はねぇよな?」)
紀「・・・・・桜空の奴、どこまでも私達をコケにするつもりのようですね、ガキが・・・・・」
(結局は能力で自分達を避難させるという結果になった、戦わせるのか待機させるのか、正直ハッキリとさせてもらいたいところではあるが、何より自分達が弱く見られているような気がして納得がいかない・・・・・
「中川、貴方さっき、敵の能力が霧に限定したものかどうかと聞いてきましたね?」)
>>831