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狼谷
『おちおち死んでもいられねぇな。』
これは夢か幻か、黒いボサボサの髪に、不健康そうな肌、特徴的な丸い眼鏡をかけた男……狼谷が桜空の横に現れ、霞鴉に向けて右腕を翳すと同時に巻き起こった突風によって霞鴉の異能の主軸となっていた濃霧が掻き消される。
彼は確かに死亡した筈であり、
この狼谷の姿も桜空にしか見えない幻のようなものなのかもしれない……
霞鴉
「…………ッ!!
サーマル……いや、山風か……!?
だけど……今の状況ならこのナイフ一本で充分……!!」
突如巻き起こった突風によって纏っていた濃霧が掻き消されてしまうものの、満足に動くことの出来ない桜空一人を仕留めるにはナイフ一本で充分であると判断している。
普段の彼女であれば距離を取って様子を伺うなり、再度濃霧を展開する事を選択するのだが、ナイフが突き刺さる事も厭わずに蹴りを繰り出した紀の姿と言うイレギュラー要素を目の当たりにした事で勝ちを急いでしまっていた。
吹き込んだ突風に、霞鴉の選択ミス。
この二つの大きな要因が桜空に味方をする。
桜空「・・・・・!」
(いきなり吹き荒れたこの風は、もういないはずの狼谷の協力か、それとも極限状態が見せた幻か、どちらにしても桜空は今ここでやれという狼谷の言葉を受け取ったような気がした・・・・・)
桜空「させ・・・・・ねぇよ・・・・・!!!!!」
グォンッ!!!!!
(桜空は残りの力を振り絞り、この戦いでは最後になるであろうワープゲートの展開をする・・・・・
転送する際に吹き荒れる強風も一緒にゲートを通しており、霧鴉を包むように通っている為霧を掻き消したまま転送することに成功する・・・・・
ゲートの先がどこに出るかは、桜空しか知らない・・・・・)
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