初回>>81
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《楽聖は知っている》
1.宮瀬 真歌奈side
学校に着き、教室に入り、辺りを見回す。
時計は7時35分を指していた。やはり、まだ立花さんは来ていない。大抵8時くらいに来ているから。
なら、立花さんが来るまでに手紙の内容を確かめた方が良い。
私は洋方封筒を鞄から取り出すと、それをクシャクシャにならない程度に握り締め、足早に音楽室へ向かった。
教室のドアを開けると、いつも通りがらんとしていた。この時間だけは人がいない。
まだ少し震える手。息を大きく吸い込み、心を落ち着かせる。
「大丈夫、宛名が《不滅の恋人》だからと言って……」
だからと言って……
ダメだ、言葉が見つからない。
この手紙は絶対に見たくない。
でも。見なければ、見なければ……
ふと、顔を上げる。
部屋に置かれているベートーヴェンの肖像画と目があった気がした。
何でこんな時にベートーヴェンと目が合わなくてはいけないのだろう……本当に気味が悪い。
私は深呼吸し、洋方封筒の封を開ける。
ペリペリペリ……
再び深呼吸し、封筒の中をのぞく。
「え……?」
そこには、紙など入っていなかった。
スケジュール変更。
学校ではなく、秀明で伝える。
音羽、久しぶり!
小説?興味ありありだよ!
>>143
<1>大丈夫…
私もあんまり小説書いてないから…
>>144
((( °∀°)ツヅキガキニナル…
>>146-147
ちえ、ありがとう!
>>148
もっちろん♪
入って入って!
>>149
お久でーす!
とは言ったものの、話したことあったっけ?
(失礼だよね…ごめん)
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《楽聖は知っている》
3.立花彩side
私は階段をあがり、カフェテリアの扉を開ける。
いつもの奥のほうの目立たない席に、若武、上杉君、小塚君、黒木君、翼が来ていた。忍は風邪で来ていない。
やっぱり、上の階だと来るの早いなあ……。
「ごめん、遅れた。」
「大丈夫だ。じゃあ、始めるぞ。」
若武は優しく言ったけれど、心底苛立っているのが分かった。腕を組み、右手の人差し指はトントントン、と左腕の二の腕を叩いている。
きっと、まだアプリの方針がきっちり決まっていないことに苛立っているんだ。
私たちは昨日もアプリの制作に集まっていた。でも……来るはずの忍が風邪で急に来れなくなったり、誰かが秀明の火災報知機を間違えて押して避難して時間を取られたり、というアクシデントが起こって全く話が進まなかった。
「……あの。」
後ろから女の子の声がした。振り向いて見ると、浜田の制服を着ている。丸顔で黄みがかかった肌、明るい茶色の目に、明るい茶色のボブの髪。手には白い洋型封筒を握っている。
そう、同じクラスの宮瀬真歌奈さん。
「少し、お時間頂けませんか?」
宮瀬さんは若武のほうを向いて言った。
「ん、いいよ。俺に用?」
若武は宮瀬さんが封筒を持っていることから自分にラブレターを渡しに来たのかと思ったのか、くらっとくるくらい優しい微笑みを浮かべた。
「いいえ、皆さんに少しお話があって。」
「あ、そうなんだ。」
少し若武がしゅんとしたのを見ると、少し笑ってしまいそうだった。
「まあ、どうぞ座って。」
「え、いいの? アプリの話は……」
小塚君が不安そうに言う。
「ああ、今日はいいんだ。どうせ忍も来ないし。」
「だからって簡単に人を招き入れるわけ?」
上杉君が少しカリカリしているのが、声色から分かった。
「あ、お忙しいんだったら大丈夫です……ただ、いつも鮮やかに解いていらっしゃるから貴方たちに相談したかっただけで」
鮮……やか? に解く?
「え……どういうこと?」
私も含む皆が口をそろえて言った。