少し時間を飛ばさせていただきますね
晃達は。学校が終わったあと、すぐに、晃の自宅へ戻った。無論、麻衣もいる。
「クソッ!完全敗北だ!あの野郎!絶対に許さねえ!独裁を覆したら真っ先にぶん殴るッ!」
晃は、自分がコケにされたこと、筆先に殴られたこと。腹を立てるの比ではない。自分だけならまだしも、麻衣までいじめられたことにキレていた。
「晃くん、落」
「今は黙ってくれッ!」
晃は、パソコンを早速いじりだした。そして、メールを開く。そしてメールアドレスを記入し、そのまま本文を送信。その作業を、二度したあと、晃は現在の状況を、全てまとめ、また二回メールを送信。
「晃くん・・・誰にメールを送ったの?」
「メールアドレスの入手には時間が掛かったが・・以前処刑された人も、皆戻って来れるようにしておいた。そんだけだ」
晃は、学生鞄に入っていた盗聴器を取り出し、二階の窓から投げた。それは跳んだというより落ちて、庭で砕け散った。
「もうこれで十分だ」
一方、処刑されてしまった二人―。
こと、ハッキングの藤野 真凛。もう一人、広報部の天本 千明。二人にメールが届いた。
差出人は、晃である。
本文
俺達は学園を復活するために立ち上がった二人組みだ。お前に協力を求めたい。お前の高いスキルがあればなんとかあの生徒会長に勝てるかもしれない。だから頼む。俺達が生徒会長に勝ったら、お前も登校できるようにするし、処刑制度もなくすし、自由な学校へと変える。だから頼む。
晃、彼は手段をかぎりなく使い、生徒会長へ、勝つ気である。
(>>53 千明への交流ありがとうございます!メールの返事は返させていただく予定ですが、今回は少し定例会議に時間を遡らせていただきます)
(今回も二回投稿となってしまい本当にすみません;問題がありましたらお申し付けください)
「それでは、次の議題ですが……。先日新たに起こった、板橋麻衣と松葉晃の反逆についてですね」
議事堂を思わせるような、厳粛な雰囲気の生徒会室。そこで主に響き渡るのは、進行役の神狩美紀と生徒会長の風花百合香の声。「学園のより良い治安」という目標の元、会長である風花百合香を上座に置いて、生徒会とその役員による定例会議が展開されていた。
「安部野くんのアドバイスを受け、反逆者二人には監視を置いていますが、成果はどうですか? 結城さん」
「うーん、まずまずってとこ? とりあえず、最近できたっていう学園掲示板ね。あれ、反逆者の松葉クンが作ったみたいだよ」
役員たちにどよめきが広がる。彼らの中にも何人か掲示板を利用した者がいたのか、驚きを隠せなかったり、あからさまに嫌そうな感情を浮かべたり、よく見れば若干一名、顔を真っ赤にしている者もいた。
「そうだったのですか。……しかも、掲示板は確かに便利なツールですわね。折角ですから、私達も『利用』させていただきましょうか」
「かいちょーがそう言うと思って、既にご意見板建てておいたよ!」
「まあ! 流石璃々愛ちゃん、気が利くわねえ。ありがとう」
「えへへ、かいちょーもありがとー。……でも、残念ながらいい成果ばかりじゃないんだけどね」
百合香からのべた褒めを受けてへらっと緩む璃々愛の表情。だがそれは間もなくして、開花時期を終えた花のようにしゅんと萎む。
「昨日の夜くらいから、有力そうな言質が取れなくなったんだよね。妙に向こうが発言に気をつけてるっていうか……」
「もしかすると、私達の監視に気付かれている可能性も否定できませんね。ところで、昨日の夜といえば……」
美紀と璃々愛の疑念の目が安部野に向けられる。二人の目線に従って、全役員も彼の方を見た。そんな生徒会室中の集中に臆することなく、安部野はその場に起立する。
「昨日の夜は、僕が松葉さんのご自宅を訪ねていましたね。その時は、僕の見立てでは変わった様子はありませんでしたが」
「ってかさあ、なんで安部野にぃは反逆者の家くんだりまで行ってたわけ?」
「板橋さんと松葉さんに、クラスで配布されたプリントと課題を渡すためですよ。反逆者とはいえ、勉学に励んでいただかねば学園の偏差値にも関わるでしょう」
「そりゃまあ、そうだけどさ……」
晃の襟を掴んだときに安部野が耳打ちしたあの言葉は、流石に璃々愛の盗聴機も拾えていない。しかし既に安部野を黒と見なしている璃々愛には、彼の一挙一動が全て疑わしく思えてならないのだ。
しかし確証のない疑念だけを理由に問い詰めるわけにもいかず、璃々愛の反論材料はそこで尽きてしまった。すると今度は彼女に代わって、今度は美紀が質問を続ける。
(続く)