「文字館 孤ノ主」
古ぼけた外装に
蔦が張つている
中は蜘蛛の巣ばかり
こんな所に人なんて
住んでいるのか
と里人は頚をかしげる
本当にいるのだ
嘘では無い
外から声がする
喧しい事
この上無いな
目玉の入つた
かんてらと共に
外を見下ろす一人の影
其れこそが
この館の主である
私には
不思議な力があつた
者を物を
文字にす力
だから他に
化物だと
疎まれた
だから私は
人で在り乍
人では無い
以前
迷い込んだ猫は
文字にしてあげたよ
理由は無い
強いてあげると
するならば
私に質問を
したからだ
館の主は
今日も孤である
漂う文字は
今日も意味を成さず
主の為に
第七部
『焼豚』(三匹の子豚)
>>125
『文字館 弧ノ主』
>>142
『御伽語 夜共浦』