“深淵唱詩”

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1:アビス◆wc:2017/10/12(木) 06:11

思いついたら取りあえず書く事に決めた(センスは皆無)。

電柱から覗く君は誰だろか?
私はコソリと確かめゆく
けれども何時もシュッパイする

今日も君はシャッテン延びる電柱から私を見ている
そんな所で見てないで早くお入りよ
けれども君は首を横に振る

レーゲン降る日も
シュタルカー・ヴィント吹く日も
君は只私を柱から覗くだけ

何故かと私は君に聞いた
君は口を開いた
“だって僕はゲシュペンストだから”

2:アビス◆wc:2017/10/12(木) 08:23

誰かに突き落とされ水底に沈んだ私の躰を魚が食む

先ずは皮を剥がされる
血は溢れ水は紅に染まり更に魚が集まり私を食む

食まれて穴の空いた躰に魚がぬらりと入り次にはらわたを荒らされる
美味しいかい?私の躰は?
魚に聞いた
魚は答えた
“美味しくはない 只生きる為に喰らうだけ”

私は笑った
肉を無くし骸となったこの躰で

魚は聞いた
“何故笑う?”
私は答えた
“何時かは貴方達は捕らえられ喰われる”
“そして私の肉を食んだ魚が私を突き落としたあの人の元に食物として届いたらあの人は私を二度“_した”事になるのだから…嗚呼可笑しい”

3:アビス◆wc:2017/10/12(木) 10:14

息絶え人生閉ざした私よ
黄泉比良坂の道を歩め
白の装束纏い白の三角巾を付けて
只々歩め

三本足の烏が道を示す
私が道を外さぬ様に
道を外せば地獄へ落ちると烏が云った

4:アビス◆wc:2017/10/12(木) 11:00

あくる日私は桜の木の下に
“宙ぶらりん”になっている男を見つけた

私は溜め息をひとつ吐き
穴堀金具で桜の木の下に埋める

昨日は女が
其の又昨日は互いの恋叶わぬ男女が

この桜に曰く無く
日増しに桜の下には人が増えて行く

だが其れも今日で終り
私が行くのだから
桜の木は花弁を風に吹かせ喜び舞い踊る

5:アビス◆wc:2017/10/12(木) 12:44

私は道に咲く花を踏み潰す
貴方が“綺麗”と褒めたから

私は篭の中の鳥に手を掛ける
貴方が“可愛い”と云ったから

私を見初め惚れたと云い
私の自由の大半奪い閉じ込めたのは
貴方だ

なのに他に目を向けた
私は貴方の為に自由を手放した
なのに結果はこの仕打ち

貴方が悪い
理由?それは
“私を好き”だと云ったから

私は刃物を降り下ろす
さようなら“貴方”
こんにちは“貴方”

6:アビス◆wc:2017/10/12(木) 16:33

ナハトヒンメルにモーントが浮かぶ
私は貴方と共に其れを見つめる
其処にシュテルンが横切った

私は流れるシュテルンに願う
“貴方と共にずっとこの光景を見れたら良いな”と

貴方は何を願ったの?
貴方は云った
“月が綺麗ですね”

…私は其の言葉に涙した
私の涙を貴方は手を添えて拭って微笑んだ

二人寄り添う姿を
モーントシャインが静かに照らした

7:アビス◆wc:2017/10/13(金) 21:23

“誰か”は友多き
喜しや子

“誰か”は独り
寂しい児

誰かは誰かが羨まし
誰かは誰かが妬ましき
誰かは誰かが憎々し
誰かは誰かが“_している”

8:アビス◆wc:2017/10/13(金) 21:41

夕焼け沈み
“逢魔ヶ刻”が始まるよ
魑魅魍魎が闊歩する

カンラカラカラ笑いをあげる
人通る道は魑魅魍魎の“この世道”

鈴はシャンシャン
太鼓はドン
“宴” “宴”と皆歌う

人間入っちゃいけません
これは魑魅魍魎の宴です
入りたけりゃ“彼方”へどうぞ

魑魅魍魎が“歌う” “歌う”
鈴はシャンシャン
太鼓はドン
血染めの刀 緋色に光る

9:アビス◆wc:2017/10/13(金) 23:36

部屋にあるプッペの螺を回す
プッペは歪な音を立て
ギギリギグルリ踊ってる

プッペは止まったおじぎのまんま
も一度回そう
螺折れた
もういらない

回らないプッペ
役立たず

置いてかれたプッペ
埃を被る

おじぎのプッペ
そのまんま

10:アビス◆wc:2017/10/13(金) 23:39

何か感想が有るなら書いても
良いですよ。

但し
荒し等はお辞め下さい。御願いします

11:アビス◆wc:2017/10/17(火) 01:42

手作り南瓜のランタン持ってゆき
仮装し街を練り歩く

籠にいっぱいお菓子を積めよう
お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ

目の玉抉り
手足の爪を剥がして
端から刻む

12:アビス◆wc:2017/10/20(金) 19:35

くり貫かれた南瓜の気持ちなんて
誰にもわからない

ただ飾りの為に切り取られて
中身をほじられて
何も見えない目と
何も聴こえやしない偽りの口を
彫られて笑う

ケラケラ南瓜は笑う
(お前達も俺と同じ目に遭え)

ケラケラ南瓜は笑う
(痛いだろう?俺も同じ気持ちだ)

ケラケラ南瓜は笑う
(もう笑わないのか?)

13:アビス◆wc:2017/10/20(金) 19:44

なんか書いてみると
暗いなぁ…どうしても暗くなっちゃうんだよなぁ

14:アビス◆wc:2017/10/20(金) 21:24

親の温もりを求める赤子に
機械仕掛けの小箱を渡した親

赤子は喜び小箱で遊ぶ
小箱は色とりどりだ
けど何処か虚無である

赤子はやがて幼子になった
だが親は変わらず機械仕掛けの小箱を渡す

幼子は物云わぬ小箱と遊ぶ

親は幼子に機械仕掛けの小箱を返せと云う
幼子は其れを拒む

親は首をかしげる
幼子は云った
“親はこの小箱だ お前では無い”

15:アビス◆wc:2017/10/20(金) 22:59

鶏の首を絞めよう
そうすれば朝は来ない筈

コケェと甲高く鳴く声を
この手でキュッと絞めて
其の声が無くなるまで

鶏の首は絞めたよ
コケェと鳴く声無くなった
辛い朝は二度と来ない筈

朝日が刺す
私の体を
鶏はこの手で絞めたのに

どうすれば良い
朝が二度と来ない方法

朝が二度と来ない方法を見つけた
紐を掛けたら
朝は二度と来なくなった

16:アビス◆wc:2017/10/20(金) 23:08

私のここに書いた詩
見てくれる方居ませんか?
(荒しや悪口は厳禁で)

17:アビス◆wc:2017/10/21(土) 23:05

林檎が食べたい
私は母にねだった
母は叶えてくれた
次の日居なくなったけど

林檎が食べたい
私は父にねだった
父は叶えてくれた
次の日居なくなったけど

まだ食べたい
私は姉にねだった
姉は拒否した
次の日姉は林檎になった

私の我が儘
皆聞いたら皆居なくなった

まだ足りない
まだ食べたい
まぁるい林檎
赤い液体滴る林檎

次は貴方が“林檎”だよ

18:ねこさと◆pU:2017/10/22(日) 12:59

こんにちは
とても不思議な世界観の詩でとても好きです。がんばってください
待ってます!

19:ねこさと◆pU:2017/10/22(日) 13:12

楽しみにしてます

20:アビス◆wc:2017/10/23(月) 08:14

>>19
ありがとう!
応援してくれて嬉しいよ!
思い付いた時にしか書けないけど
良いかな?

21:アビス◆wc:2017/10/23(月) 09:14

今日も“さぁかす”が始まる
だけど貰えるのは拍手じゃ無い
野次なんだ

観客は口々に云う
つまらない
面白くない
退屈だ
毎日そんな事ばっかりだ

どうすれば良い
何が足りない

そうだ
火の輪潜りをする獅子を

お前がやれば良い

劇場は拍手に初めて包まれた
火の輪を潜る獅子は炎に包まれた

次は何にしようか
そうだ
“水中脱出いりゅうじょん”にしよう

飢えた鮫が泳ぐ水槽に
鎖を巻いた

お前を入れて

観客は喜んだ
良いぞ
良いぞ
もっとやれ

観客は虜になった
狂気の“さぁかす”
今宵も始まる

お代はいらない
誰でも寄っといで
なに
道化師になってくれれば良い

一夜限りだ

怖い事は無い

今夜は
お前は
そうだ
猛獣使いになれ

飢えた獣の餌として

22:ねこさと◆pU:2017/10/23(月) 17:34

>>20
はい全然大丈夫です!
待ってまーす

23:アビス◆wc:2017/10/23(月) 22:06

とある所の灰被り
今日も継母に召し使いの様に使われる

とある所の灰被り
今日は姉二人に使われる

灰被りは泣いている
継母 姉二人は
知るか知らずか高らかに笑う

今日は城の舞踏会
継母 姉達
絢爛に着飾る

だけど灰被りには何も無し
そして何時もの様に召し使い

母の墓に寄り添い泣いた
私も行きたかった
踊りたかった

墓の傍に生えるハシバミの木
白い小鳥が止まってる
持っていたのは
ドレスに
金の靴と
銀の靴

灰被りの娘
ドレスに銀の靴を履き
急いで城の舞踏会
いっておいで灰被り

24:アビス◆wc:2017/10/24(火) 00:17

>>23の続き

舞踏会に間に合った灰被り
中で人が楽しく踊る

その中で
一つ高い所から見下ろす王子
舞踏会を兼ねての嫁探し

王子は溜め息
何処にも居ない
我が伴侶になる者が

そんな時
純白のドレスに銀の靴を着た
灰被りの娘を見た王子
気付けば足が自然に娘の元へ

どうか踊っていただけないか
私と共に
この一晩を

王子と灰被りの娘は踊る
楽しい
もう一晩踊りたい
互い互いにそう願う

二晩目の舞踏会
灰被りの娘は金の靴を履いて
やって来た

待っていたよ
さぁ踊ろう

だけど楽しい時間はもう御仕舞い
灰被りの娘は別れを告げて
急いで帰る
脱げた靴も気にせずに

次の日
王子は従者に探させた
片方だけの靴の持ち主を
国中から

長女は考えた
靴が合うには
爪先を切り落とせば良い

次女は考えた
靴が合うには
踵を切り落とせば良い

だけど血が滲んで
どちらも偽物と見抜かれた

次は灰被りの娘の番
靴はピタリとはまった
従者は云った

王子がお待ちです
さぁどうぞ城へ
貴方様をお待ちです

こうして結婚
灰被りの娘と王子様
国中が祝福の声を上げる中

姉二人 媚びへつらい
娘の両脇に座る
その時娘の両肩に止まった白鳩が
姉二人の両目をくり貫いた

痛みにのたうち回る姉二人を
娘はただ冷たい目で見下ろした

25:アビス◆wc:2017/10/26(木) 21:54

急げや急げ
急げや急げ
女王様に首をはねられる

人の言葉を話す不思議なウサギ
懐中時計を見ながら急いで走る

ウサギを追いかけ木の中転がる
机の上の小瓶を飲んだら
小人になった

森の中
さまよい歩くと
イモムシが

ぞんざいな態度で
質問を

キノコを食べれば大きくなる
キノコを食べれば小さくなる
 大きい?
小さい?
どっちだろう

小さな家の公爵夫人
料理人の振り撒くコショウで
くしゃみが止まりゃしない

夫人の赤ん坊
外に出したら
ブタになった

26:アビス◆wc:2017/10/26(木) 22:04

>>25の続き

森の中
再び歩く
すると今度はチェシャ猫だ

ニヤニヤしている
チェシャ猫さん
  どこに行けばいいの

チェシャ猫答えた
この先行けば
三月ウサギと帽子屋のお茶会ニャ

三月ウサギと帽子屋そして
ネムリネズミが
茶会を開いてる
帽子屋はなぞなぞを出してきた

答えが出ない
そりゃそうだ
帽子屋のなぞなぞに

答えはない

ウサギとネズミも好き勝手
女王に刑の宣告を受けて以来
一人と二匹の時間は止まったまんま

だから好き勝手できるんだ
さようなら
狂った永遠のお茶会
2度と来ない

27:アビス◆wc:2017/10/26(木) 22:10

>>26の続き

最初に戻った大広間
金のカギ使って
小さな扉を開けた

開けた先は
とても美しい
赤いバラの庭

手入れをするのは
手足の生えたトランプだ
チョキ チョキ チョキ
ハサミの音

シャワ シャワ シャワと
水やりの音

突然聞こえた高い声
首をおはね
庭師達の首をおはね

首をはねられた庭師達
何が
癪にさわった?

わからない

いいんです
わからなくても
この世界は

28:アビス◆wc:2017/10/26(木) 22:17

>>27の続き

はぁとの女王様の絶対支配
だから
どんな理不尽も

女王様が云えば
まかり通るのデス

他所の世界から
来た人間ニャ
理カイ不能

そんなこんなで
始まる裁判
被告人は

ハァトのジャック

被告人の罪は
盗み

女王様のタルトを
とったんだ

大それた事を
首をおはねはまぬがれない

それでもジャックは訴える
私はやっていない

29:アビス◆wc:2017/10/26(木) 22:23

>>28の続き

けれども
周りが
ジャックの罪をでっち上げ

それにいきどおる少女
ついに切れた
感情の糸

あんた達なんか
ただのトランプの
クセに

その言葉に
怒り舞い上がる
トランプ兵

少女をトラエロ
首をおはね

悲鳴を上げたら

いつの間にか
姉の膝の上で
眠りこけ

30:アビス◆wc:2017/10/26(木) 22:25

>>29の続き

どっちでもいい
こりごりだ
でも楽しかった


ハァトのジャックの最後は
だぁれも知らない

わからない

31:アビス◆wc:2017/10/27(金) 00:03

次はどんなの書こうかな…?

32:アビス◆wc:2017/10/27(金) 18:53

ふらりふらりと歩く猫
目の前には不思議な館

中は不思議な光景
文字が宙を漂っている
ゆらり ゆらり
ふより ふより
まるで海月の様だ

中に入ったら
さっさと閉めてくれ
文字が鳥になって逃げてしまうから

館の主は云う
文字が友だと

館の主は云う
人が信じられないと

猫は問いかける
他に誰もいないのか
宙に漂う文字と君以外に

33:アビス◆wc:2017/10/27(金) 18:59

>>32の続き

館の主は答える
いる訳がない
此処にあるのは

文字と
私と
そしてお前だ

猫は問いかけた
してはならない
禁忌の問いかけを

君は寂しいのか
それとも満足か
存在するだけで何も意味をなさない

文字が
友達で

館の主は
猫を見つめたまま
黙りこくる

猫は続ける
黙りこくらないで
答えてよ

早く
早く

孤独な館の主様とやら

34:へいと◆NI hoge:2017/10/27(金) 18:59



上手ですね……

35:アビス◆wc:2017/10/27(金) 19:05

>>33の続き

館の主
突如口開く

お前のせいで
文字が幾つか
鳥になった

友が消えた

償って貰おう

猫は云う
問いと答えが
合っていない

館の主は云った
知った事では無い

再び静かになった
不思議の館

館の主は薄ら笑みを浮かべる
友が増えたと
そして新たに漂う文字は

「猫」「赤」「黒」「皮」「臓」

36:アビス◆wc:2017/10/27(金) 19:05

>>34
ありがとう!
嬉しいよ!

37:アビス◆wc:2017/10/28(土) 21:44

雨が降る
ザア ザア
ザア ザア

カエルが鳴いてる
ゲコ ゲコ
ゲコ ゲコ

そんな道中
何が一体
ヒタリ ヒタリと

無気味な音

現れたるは
七つ人影

杖の音も
七つ突く

七人ミサキ
暗雨行脚

我達は
生前皆罪人
清き者なぞ

この列には
有りはせぬ

(まだ、続きがあるよ)

38:アビス◆wc:2017/10/28(土) 21:52

“ 人”
窃盗
騙し欺き
間引き成す

他様々
悪業重ねて
生まれた我達

七人ミサキ

来やれ
来やれ
我達の列へ

成そう
成そうぞ
我が成仏

お前
お前は
新たな七人ミサキ

帰しゃあせん
逝こう
行こうぞ

卒塔婆が其処らに
立つ道を

幽霊花
乱り咲きたる
あの道を

七より増えず
七より減らずの
我達と共に

蛙 鳴く 泣く
下呼 下呼
下呼 下呼

39:モルガナ◆fI:2017/10/28(土) 22:53

タルタロスさんいますかぁー?
「くま」ですが……

40:モルガナ◆fI:2017/10/28(土) 23:01

えーと……
闇竜の騎士……アク禁されてしまったみたいで……
巻き込まれたそうです!

ぇー……だから「もう少し待って」みたいなことを……言ってましたよ!はい……

41:アビス◆wc:2017/10/29(日) 07:55

>>40
うん!わかったよ

42:アビス◆wc:2017/10/29(日) 16:22

一つの葛には
光明を

一つの葛には
おぞまし醜き怪物を

どちらを選ぶ
小さき葛
大きき葛

決めるのは
貴方だ

私じゃない

とある所の
翁と媼の夫妻

片方は欲無き優しさ故に
光明を

もう片方は己が強欲が故に
醜き 醜き
毒蟲
幽霊
怪物と
生きてはいられない戯れを

貴方はどちらを選ぶだろう
小さき葛
大きき葛
選ぶが良いさ

罪人よ

43:アビス◆wc:2017/11/01(水) 21:40

(詩じゃ無いよ)
ノートに今書いてるんだけど
長くなりそう。

44:アビス◆wc:2017/11/02(木) 20:36

(1章)

母山羊は
子山羊達に
云いつけた

良いですか
誰が来ても
すぐに開けてはいけません

たとえ私でも
疑いなさい
でないと

狡猾で
飽食を望む
狼に

喰われてしまうから

母行く後
子山羊達は
各々戯れる

外より忍ぶ
黒影が
皆喰らいをせんと

見ている事も
知らずに

45:アビス◆wc:2017/11/02(木) 20:40

(2章)

狼は望む
己が腹に
満たされる程の

子山羊達を
詰めたい

狼は考える
先ず声だ
似せよう母山羊に

チョオクを食べて

コン コン コン
扉の音
お母さんだよ

開けておくれ

子山羊達は口々に
嘘だ
嘘だ
お前は狼だ

黒毛と
鋭い爪が
見えてるぞ

46:アビス◆wc:2017/11/02(木) 20:46

(3章)

狼は考える
次は毛だ
似せよう母山羊に

白粉を被り
爪を仕舞い

コン コン コン
扉の音
お母さんだよ

開けておくれ

子山羊達は口々に
嘘だ
嘘だ
お前は狼だ

其の黒い足は
何だ
嘘つきめ

狼は鬱屈する
子山羊共
何故騙されん

嗚呼 苛々する

47:アビス◆wc:2017/11/02(木) 20:51

(4章)

狼は考える
次は足だ
似せよう母山羊に

白布を履いて

爆ぜ兼ねなき
感情を抑え乍

コン コン コン
扉の音
お母さんだよ

開けておくれ
お前達

子山羊達は口々に
お母さんだ
お帰りなさい

開けよう
扉を

ギギィと一つ
扉の音

カランと一つ
鐘の音

開けた先は狼が

48:アビス◆wc:2017/11/02(木) 20:57

(5章)

狡猾狼
鬱屈爆ぜる

己が望むままに
飽食を

子山羊達は
逃げ惑う

逃れられない
牙と爪

金切り鳴きが
一つ消え

また一つ
また一つと
声が消え

やがて鳴きは
皆絶えた

ふわり舞う
黒毛白毛

残りたるは
破壊の惨禍

そして
時を刻む台の中で
怯える末の子一匹

49:アビス◆wc:2017/11/02(木) 22:04

(6章)

母山羊見やるは
惨たらしき
己が家の中

何処だ
何処なの
私の愛しき子らは

末の子山羊は
慟哭す

食べられたんだ
狼に

聞こえたんだ
狼が兄姉達を
ゴクリ ゴクリと

飲む音が

母山羊は
泣きじゃくる末の子山羊を
抱きしめ慰める

まだ間に合う
狼の腹を裂こう

持つ鋏に復讐を込めて
心に秘めよう
怨恨の情を

50:アビス◆wc:2017/11/02(木) 22:13

(7章)

木の下にて
惰眠を貪る
狼は

まだ知らない
己に迫る
磨羯による怨嗟の音が

狼を見つけた母山羊は
裁縫鋏で
狼の丸腹を切り裂いた

わらわら出てくる
母山羊の子ら

代わりに何を詰めよう
そうだ石を詰めよう
いっぱい詰めよう

ゴロン ゴロン入れて
ギュウ ギュウ押して
縫い 縫い

縫い合わせて

母山羊達去りし後
眠りから覚めし狼は
気付かない

腹の中身が
子山羊から石に
なっている事を

51:アビス◆wc:2017/11/02(木) 22:17

(終章)

フラフラ歩く狼
石詰め腹を抱え
見つけた井戸

覗いたら

バシャアンと
狼落ちた
水の音

ブク ブク ブク
沈む音

助けを乞う声
井戸の中

沈んだ体も
井戸の中

何も聞こえやしない
井戸の中

52:モルガナ◆fI:2017/11/03(金) 22:20

かっこいい〜☆
流石だぜ☆

53:アビス◆wc:2017/11/03(金) 23:33

>>52
ありがとう!

54:アビス◆wc:2017/11/05(日) 17:26

(1章)
堅実に生きる妻
せっせ せっせと
家の事

現実を見ずの猟師夫
今日もまた
獲物が捕れずの木の実だけ

あくる日
夫が帰ってきたら
其処には妻と握り飯

これは旅人の置き去りし物
妻は妻の親族から
言伝を

あんな奴に食わせるな
家でただ威張るだけしか
能が無い奴なんかに

夫の手には柿の種
何かを思いついた

交換しよう
種と握り飯を

種はいつか実に生るが
握り飯は増えりゃしない
そんな理由で取り上げた

目先の利益に囚われる夫に
将来の利益を得た妻よ

55:アビス◆wc:2017/11/05(日) 17:34

(2章)
そんなこんなで
年月8年
植えた柿の種

立派に木と成り実をつける
だがしかし
夫は変わらず威張ったまま

木の上登り柿の実喰らう
妻は身重で登れない

くれと
くれと
懇願す

夫は知らぬ存ぜぬの
独り占め

くれと
くれと
懇願す

夫は木から降り
この柿は
俺の物だ渡さない

蹴られた妻
其の場で倒れる
下から流るる紅い液

逃げ去る夫
動かぬ妻

56:アビス◆wc:2017/11/05(日) 17:41

(3章)
生まれた子
母無き子
親族は告げる

酷なる事実を

お前の
母は

お前の
父に

“__”された

憎かろう
憎かろう

其の感情は
子が知るには
早すぎた

感情は
子に初めて生を与えた

子は願う

母の敵討ちを

親族は力を貸す
子の復讐の為に

一つの怨嗟と
一つの怨恨
今一つとなる

57:アビス◆wc:2017/11/05(日) 17:52

(4章)
かつての父
今は敵

家の中
入ってきた

子は誘う
敵は追う

遠縁は敵の足に
紐掛ける
敵は転び

床の針に
全身ぶすり

恰幅の良いおば
上から乗す

深く
深く
刺さって仕舞え

おっ母の受けた痛みは
こんなものじゃない

従兄弟と従姉妹は
木棒で
全身叩く

58:アビス◆wc:2017/11/05(日) 17:59

(終章)
吊るし上げの敵は云う
お前は
俺の子だろう

だったら助けてくれ

嗚呼そうだな
おらのおっ父は

握り飯を取り上げた

柿を食わせなかった

家で威張った

おっ母の腹を蹴った

恨み骨髄に徹する程の
恨み言を云い乍
子は鉈を降り下ろす

あの世でおっ母に謝れ

一族の復讐劇
これにて幕を

59:アビス◆wc:2017/11/06(月) 17:18

何回味わった事
口の中の鉄の味

貴方につけられた
赤黒ひ花弁

涙を見せれば
貴方は笑む

光無き瞳
私を映し乍

綺麗だと云い

私の口の中を
貴方の其れで荒しく掻き回す

あぁ!

もっと私を

其の加虐の愛で

歪に

貴方の元へと

堕としてくれ

60:アビス◆wc:2017/11/06(月) 17:25

閉じ込めたい
貴方を
私の冷たひ世界へ

マイナスの
何もかも
真白の凍土

お互いに
朽ちる事は
永遠に無いから

怖くは無いよ

私は
マイナスの世界でしか
生きられない

氷の女王

白の玉座は
骸の塊

逃がしたくないの
だから皆は氷柱の中

待って
待って
私の愛し人

背かないで
御願い
独りにしないで

だったら要らない
貴方の温もりなんて

私の氷で
包んであげる

だって私は
氷の女王

広く孤独な
人の子だ

61:アビス◆wc:2017/11/07(火) 21:00

(1章)
悪戯狸
今日も里の者達を
困らせう

あくる日畑荒し
罠に掛かりて
捕まった

悪戯狸
狸汁にして
食ってやろ

それはやめてくれ
もう悪戯しない
お願いだよ

優しき婆は縄を解く
狸はにたりと笑い
えげつなき事しなさった

爺が畑から帰りて
婆は用意した鍋を
食わせる

爺が鍋の汁一口
そして婆は狂笑す

じじぃがばばぁ汁
食ったやぁい

じじぃがばばぁ汁
食ったやぁい

婆を“_”し
皮被り
汁にした

してやったりの悪戯狸
爺は怒りて
追い回す

狸は逃げ去り
いかれた歌を
カンラカラカラ笑い乍里中に響かす

じじぃがばばぁ汁
食ったやぁい

じじぃがばばぁ汁
食ったやぁい

爺去る後
飼われていた白兎
何思ふ

62:アビス◆wc:2017/11/07(火) 21:06

(2章)
山の中
悪戯狸
てらてら歩く

茅の束運ぶ白兎
もしもし其処の狸どん
手伝っちゃくれませんか

茅の束背負いて運ぶ
狸どん
後からみょうちきりん音が

カチ カチ カチ
何の音

カチ カチ カチ
かちかち鳥の鳴き声さ

ぼう ぼう ぼう
燃える音

狸の背中も
ぼう ぼう ぼう

熱い
熱いよ
兎どん

63:アビス◆wc:2017/11/07(火) 21:12

(3章)
まぁ大変
塗ってあげませう
この薬

ただれた背に
塗り薬
実は違う

蓼の汁
忽ち火ぶくれの
狸の背

痛い
痛いよ
兎どん

蓼食う虫も好き好きとは
良く云った物で

64:アビス◆wc:2017/11/07(火) 21:18

(終章)
まぁ大変
舟があるから
其れに乗ろう

狸どんはそちらの舟に
私は彼方の舟を

ギコ ギコ ギコ
舟漕ぐ音

ブク ブク ブク
何の音

お前の泥舟が
沈む音さと
兎どん

ずぶ ずぶ ずぶ
沈む音

助けて 助けて
兎どん

掴まって狸どん
そう云い
櫂の棒

ばし ばし ばし
狸を叩く
更に沈む狸どん

遂には
沼の底の
狸どん

65:アビス◆wc:2017/11/08(水) 17:28

(1章)
ピィヒャラピィ

とある國の
とある町
鼠がわんさかいましたと

鼠は運ぶよ
黒の使者

使者の正体
黒“_”病

大人も子供も
皆平等

彼方の世へと
連れて行く
黒の使者

ふらり現る
謎の者

私に任せてくれないか

追い出してみせよう
鼠達
報酬出してくれるなら

66:アビス◆wc:2017/11/08(水) 17:33

(2章)
嗚呼 出してやる
本当に
追い出せたら

約束守れよ
ピィヒャラピィ
ラッパ吹き鳴らす

鼠は群れなして
大行進
彼方の方へお行きなさい

それなのに
何も出しゃしない
大人達

者は鳴らす
ピィヒャラピィ
子供ぞろぞろ

連れて去った

もう一つおまけ
ピィヒャラピィ

67:アビス◆wc:2017/11/08(水) 17:37

(終章)
とある國の
とある町
鼠がわんさかいましたと

そしてとても奇妙です

鼠は運ぶ
黒の使者

大人だけが
皆平等

彼方の世へと
連れ去る
黒の“_”者

ね 奇妙でしょう

子供は何処に行ったのか

わからないから
ラッパを吹こう
ピィヒャラピィ

者とは誰の事
ハァメルン

68:アビス◆wc:2017/11/08(水) 18:13

(作者より)
見てくれる人がいる

楽しみにしてくれる人がいる

こんな私の詩を

ありがとう
ありがとう

私は見てくれた者に届けよう

音無き拍手を

存在して初めて意味をなす
感謝の言葉を見てくれた貴君達に

69:アビス◆wc:2017/11/08(水) 22:18

僕は夢を見る
怪物に喰われたいと

少年は周りにずっと
そう云ってきた
周りは

奇妙な奴だと
少年を疎む

少年は云ふ
だって知りたいのだもの
怪物に喰われるのが

どんな気持ちか

少年はやがて
青年となりても
夢を語る

怪物に喰われたいと

周りは云う
目の前にいるじゃないかと

ぎょろりと血走る眼
垂れる涎
其の隙間から光る牙

70:アビス◆wc:2017/11/08(水) 22:24

>>69の続き

青年は喜んだ
夢が叶う

だってねぇ
夢じゃ怪物に
食べられないもの

幻想怪奇の
主人公に
今なろう

頭からガリゴリ
いってくれ


一つずつ千切られるのも
悪くない

兎に角
僕を喰ってくれ

叶えたいんだ
僕の夢

痛い 痛いと
叫ばせて

助けて 助けてと
命乞いさせて

そして
全て聞き入れず無慈悲に
食べてくれ

71:アビス◆wc:2017/11/09(木) 20:58

>>59の詩の別視点の詩ですよ。

乃公が君に付けた
赤と黒が混じった
印を見る度に

君が乃公の物だと云う事に
綺麗だと云う事に
何時も気付かされるよ

人は思うだろう
其れが愛なのか
おかしいと

だが其の事でしか
愛を確かめる
与える事しか出来ない

彼女もわかってくれている
それで良いじゃないか

リンドウの花が散る迄

加虐の愛を

72:アビス◆wc:2017/11/09(木) 21:08

ねぇ 何がそんなに
嬉しいの

華美な服着て
キラキラ宝石で
飾ってさ

全て私には
偽りにしか
見えないよ

くすんで見えるの
服も 宝石も
そして貴方も

何故だろね

貴方は云ったね
お姫様になりたいの

既になっているでしょうに
何度も 何度も

一夜限りの
王子と共に
踊る姫君に

貴方は一体
何人の王子と
踊ったの

其の度に
棄ててきたね
王子も

そして中のモノも

今は未だ身軽かい
お姫様

汚れた華美な服着て
汚れたキラキラ宝石付けて
貴方は去って行く

行ってらっしゃい
お姫様

しがない魔女
只手を振る事しか
出来なかった

73:アビス◆wc:2017/11/09(木) 21:35

館に
また誰か
迷い込んだ様ですよ

其の館は
とても不思議な
文字が宙を舞っているんだ

冒険心を掻き立てられると
思いませんかね
でも気をつけて

此処の主は
人であって
人じゃない

見つかったら
“_”されて
文字にされちゃいます

そんな事知ったこっちゃ無い
貴方は進む

溜め息溢し

警告はしましたよ

74:アビス◆wc:2017/11/09(木) 21:40

>>73の続き

主とやらが何だ
僕は怖くない
ほら ほら

こんな事しても
怒らないの
此処の主様とやらは

首の欠けた
片足無くした人形を
ブンブン振り回す

其の人形は
主様の大切な
御人形

なんとまぁ
愚かな事を
あぁ ほら

起きてしまったよ

この館の主様が

何をしている
後ろから響く声
振り返る者

75:アビス◆wc:2017/11/09(木) 21:43

文字にはしてやらない
其の代わり
人形のぱぁつに

なって貰おう

主様を
怒らせた冒険者
人形のぱぁつに

なりましたとさ

え 私は誰ですと
まぁ 其れは
後程と云う事で

また会いましょう

76:アビス◆wc:2017/11/10(金) 18:25

「ネクロ性愛」

今日はこんな事があったんだ
何も答えない私

明日は晴れるかな
何も答えない私

答えないんじゃなかった
答えられなかったんだ

寂しそうに笑みを浮かべる彼
でも好きだと云う彼

そりゃそうでしょうよ
私を動かない様にしたのは
彼だもの

愛して貰わなきゃ
困りますよ
でないと

貴方の
貴方だけのネクロになった
意味が無い

あの夜の事は
忘れませんよ

涙を浮かべて
私に手を掛けて

生きてた頃の
最後の光景
なんだったけ

嗚呼そうだ

思い出した

笑っている

彼の顔だった

77:アビス◆wc:2017/11/14(火) 10:40

「睡眠フィリア」

良く眠っているね
其のままで良い

誤解しないで
起きている君も
勿論好きなんだよ

だけれど
一番好きなのは

眠っている時の君

スゥスゥ寝息を立てて
寝返りで
少し乱れた髪に隠れる顔は

なんて愛らしいのだろう

あ 五月蝿かったか
でも丁度いいや

君の寝顔が
正面にきたもの

本当は
其の頬に触れてみたいけど

君が起きちゃうから
ガマン ガマン

空の闇が深くなったよ

今夜も良く眠ってね

星は瞬き
月は昇り
眠る女の横に

クスリと笑い乍
佇む者一人

78:アビス◆wc:2017/11/14(火) 10:52

「オキュロ愛好」

はぁ と深く溜息をつく

今日も輝いているなぁ

君の眼は
そんな事を思い乍
君の顔を見つめる

恥ずかしそうに
顔をそらす
赤ら顔は更に

君の眼を
際立たせる

君は
聞いてくれるだろうか
私の願いを

目玉が欲しい
抉り取ってくれ
そして私の手の中に

聞いてくれる訳無いか
それに
君の眼から光が消えるのは嫌だ

だから
君が生きている間は
この思いは胸に秘めおこう

君が逝ったら
眼は貰ってあげる
光は無いけれど

それでも良い
思いを馳せれば

喜びに輝く眼も

陽炎みたくゆらりと悲しの眼も

怒りにたぎる鋭ひ眼も

私だけの物に

79:アビス◆wc:2017/11/14(火) 11:18

「赤クレヨンと少年」

暗い 暗い
部屋の中
真ん中にぽつりと少年

右の手には
赤のクレヨン
そして今日も描く

助けてと

何して
閉じ込められた

皿を割った

云う事を聞かなかった

目障りだった

只の理不尽も
少年にとっては
理由となる

子供であるがゆへに
どんな暴力も

愛として
受け止めるしかなひ

壁に助けてと

出して下さいと
無き声で叫ぶ

やがて忘れ去らるる

見つかつた少年
白骸となりて

手に握りめたるは
赤ひ小さな欠片

80:アビス◆wc:2017/11/14(火) 11:28

「色山羊に妄呵責」

それは人であり
人間でなかった

皮を被った
色欲の山羊なり

欲の侭に
私の体に触れ
口付けを交わそうとした

其の時の感触は
今でも残りたり

己は私に問ふ
されし事を黙るのは
己の罪なりや?

周囲に助けを求むる事せず
只 己が内に閉じ込めて
過ぎ去る時が流してくれると

お思いか?

私は己に云った

若し願いが
叶うと云うのならば
私は

色欲の山羊に
呵責をしたい

生きた侭 皮を剥ぎ

癒えぬ 責め苦を与え

そして“_”したいと思う私は

罪なりや?

思ふ事は罪では無い
するとならば罪だがな

81:アビス◆wc:2017/11/14(火) 11:38

「吉遊情事(きちゆうじょうじ)」

蝶は誘う
おいで おいで
此方へと

蝶の色香に
まいってしまった魚
招かれるが侭に

格子の中へ

惑わす蝶は
身を差し出し

魚は
貪り喰らふ

一夜の情事を
記憶する事無かれ

蝶よ

一夜の魚に
恋慕する事無かれ

約束の証
指ひとつ

万の拳で
殴られようと守られよ

嘘吐きは
千の針を呑まそうぞ

蝶は手招く
己を閉じ込めし
赤格子の中へ

何時か
誰か
連れだして

赤格子の中は
もう飽いた

成すならば
夜が明けぬ内に
はらへらを

82:アビス◆wc:2017/11/15(水) 21:16

「兎に思ひ 角も人」

起きた時
私は泣いていた
嗚呼 私は未だあの時の事を

忘れられてはいないのだ

必死に記憶から消そうとした
だが体に染み付いた
見えなひ傷は

私を確実に蝕んだ

空に浮かぶ細の三日月と
足元の靄は
心の現れだろうか

私を笑うな細の三日月よ
早く消えて仕舞え
忌々しき靄よ

兎 叫ぶ私は
角に狂人

周りは只云う
忘れろと

消せぬのだ
無茶云うな

其れしか
云えぬのなら

黙っててくれ

された事が無いから
云えるのだろう
忘れろと

汚れの淵に
落ちて仕舞え

悲の深に
溺れて仕舞え

兎 思ふ私は
角に咎人

83:アビス◆wc:2017/11/16(木) 08:54

「文字館 遣蝙蝠」

皆様方へ
御機嫌様

え 私は誰ですと
また会いましょうと云った
私ですよ

今は主様の使いを
しております

私の事が知りたいと
数奇者ですね
さては貴方

良い 良い
 良いでしょう

お教えしませう
私の事

姿在りし頃
私は蝙蝠でありました
トーテンシェーデルが友でありました

語り相手で
寝の床で
仲間蝙蝠と共に

宴の
飲めや歌えや

そんな時
一人の者が
迷い込み

仲間蝙蝠
血の気多く
襲うけど

皆々レーベンを
奪われました

其の者は
プリュンダラーと
云いませう

私迄レーベンを
奪われたく無いと
命乞い

こうして私は
主様を得ましたと

私の姿が無いのは
何故で御座いましょうかと

主様は苦手なのです
自ずの姿を見られるの

はてさて
 そろそろナハトが明けますよ

私は結局何者ですと
只のフレーダーマオスですよ

ま フェアラート
フレーダーマオスですが

84:アビス◆wc:2017/11/16(木) 09:21

(作者より)
>>32>>33>>35の題名は
「文字館 好奇猫」

>>73>>74>>75の題名は
「文字館 愚ノ冒険者」

“しりぃず”みたいな物ですね

85:アビス◆wc:2017/11/17(金) 08:07

「洗い髪のヴイナス」

ぼうと見やる庭の先道に
カランコロンと
下駄の音

石鹸の香り
たなびく黒髪

洗い髪のヴイナス

はと気づくと
ヴイナスは消えた

喫茶処で茶をしていても
学び舎にて学業を積もうと
浮かぶのは

洗い髪のヴイナスの事ばかりだ

胸中が熱い
ヴイナスの事を考えると

顔は如何だろうか
判らない

洗い髪のヴイナスよ
願わくば
もう一度 我が前に

そして顔を
見せてくれ

友にヴイナスの事を話す
友は鼻で笑ふ

何が可笑しい
人を想う事が
そんなに

庭前の道に
カランコロンと
下駄の音

ヴイナスだ

ヴイナスの下へ
私は駆け寄る

洗い髪のヴイナスの足先に
小動物がいた

ヴイナスは邪魔だと
蹴ろうとす

私は庇い
ヴイナスに蹴られた

ヴイナスは
知らないと
足早に去る

麗しかった
だが麗しくなかった

小動物を蹴ろうとす時の
顔はまるで
鬼女であった

自分は恋をしていたのだ
洗い髪のヴイナスに
だが其れは

私の理想の中だ

私は眠り泣いた

女中は心配そうに
私を見ていた

私は鈍感故に
知る由もなかった

86:アビス◆wc:2017/11/17(金) 20:05

(作者より)

私の詩を見た者は
皆言葉を揃えてこう云う

不思議だと

こんな私の語彙力の欠片も無い詩を
或る人は云った

謙遜をと

其の言葉に私は発破をかけられた
様な気がした

嗚呼 見てくれているのだと
なんと私は果報者だろう

有難い
私は改めて感謝せねばなるまい

この詩を見てくれる者達に

87:アビス◆wc:2017/11/18(土) 21:35

「桜花の正腐虫」

悪人を懲らす者達

地に墜ちる

権力を傘にし
民衆に虐の限りを
尽くす者達の何処に

 正 があろうか

黄金の桜花は
端から腐りて
形のみありきの

存在ではないか

未だすがるか
偽の者達が

何も保たない
黄金の桜花に

今日も輝くのだろうな

桜花の紋は
民衆を守る為ではなく

偽正の腐虫を
隠蔽す為に

88:アビス◆wc:2017/11/18(土) 21:53

「泥壺」

物は形あれば
何時か壊れる
では

見えない物は如何だろうか

壊れる事を許されない物は
考に服す

もう限界だ
これ以上は

壺は叫ぶ
負の情を詰める物

最初は耐えた
だが負の情は
絶える事無く更に増す

ひびが入った
未だ大丈夫
そう己に云い聞かす

負の情は
減る事無く
水として入り

泥となる

泥は
外に出ずらんと
壺の中で暴る

壺は出さまいと
地に張り留まる

ひびはやがて
全てを巡った
本来は壊れる筈である

だが
形は保った侭だ
何故だろか

泥である

泥は
出ようとした
壺は許さなかった

故に
泥がひびを
補する形となった

これが水ならば
とうに壊れたろう

今日も壺は
其処にある

壊れる事を許されずに
泥と共に或

89:アビス◆wc:2017/11/18(土) 22:03

「大正明暗混々」

ざんぎり頭を
叩いてみりゃあ
文明開化の音がする

誰の頭を
はたいたので

自分の頭か
そりゃそうだ

他人の頭は
逆にしばかれる

人々は
各々の自由を
謳歌する

アッパッパを翻せ

喫茶処で
清涼珈琲水を飲め

閑雅な食慾
おむれつ ふらい

成金彼方ほら
御嬢さん
これで明るくなったろう

札を一枚
贅沢な灯り

体の中に
過剰投薬
其れで逝こうとも

狂になろうとも

自由 自由だ
アッハッハ

ばんから其処らに
西洋風の
ハイカるさん

兵隊勘定
御馳走様でした

90:アビス◆wc:2017/11/19(日) 20:19

(作者より)
>>89のについて

アッパッパ→女性のワンピース
兵隊勘定→割り勘
ハイカる→西洋風な格好、振るまい

これ等は大正で使われた言葉なんです
最近大正の言葉が良いなって思ふ
今日この頃

91:アビス◆wc:2017/11/20(月) 21:22

「惰する操人ノ形」

誰かに従っている方が
楽だ

自分の考えなんて
等に棄てた

怠惰に生きる事の
何が悪い

別に迷惑を
かけている訳じゃない

操人形は
全てを知り尚

たったった

らぁらぁらぁ

はいで御座います
ご主人様
歌いましょう 踊りましょう

仰せの侭に

糸ぷらりぴんと張り
手足逆でも
構いませぬ

さぁさぁ
どうぞ
操って下さいませ

自分が考えを
持つなんて
ろくな事が無い

災事を招くだけ
だから私は
怠惰に生きる

人の形をした
操で良ひ

人間を棄てた
後悔は無かった
今迄は

操人形は飽きられる
人間もまた飽きられる
私もまた飽きられた

埃を被り
うずくまる

望んだ筈なのに
何故後悔が

まぁ良ひとしよう

もう動かなくて
良いんだ

誰の為にも

欠伸を一つ
眠りませう

考える事すら
面倒くさい

92:アビス◆wc:2017/11/21(火) 21:27

「嫉蛇妬犬」(しじゃたくいぬ)

私は今日も我慢した
今日も良い子でした
なのに

報われないのは何故なのか

自分の欲しい物は
皆心に秘めた

家に帰れば
直ぐに家事もしている
なのに

何故彼奴ばかりが
報われる

何故彼奴ばかりが
幸になる

嫉ましい
妬ましい

私は刄を
心に突き立て
欲の木に降り下ろす

ぐしゃりと音立て落ちて
足元は赤と紫に
染まる

これで良いんだ
これで私は
もっと良い子に

なれる

良い子であれば
報われる

我慢をすれば
幸が来る筈

なのに来ない

他を困らせる貴様が
幸を手に入れられる

何故貴様なのだ

私は刄を
貴様に突き立てる

嫉みを鞘に
妬みを刀身に
貴様の心に

降り下ろす

今の私は蛇だ
嫉に狂いた

今の私は犬でもある
妬みて吼える

答えろ

貴様は如何やって

幸を手に入れた

首を足蹴に
私は問ふ

93:ピース・シィーン:2017/11/23(木) 15:43

とても才能のある詩だね。情景が想像しやすいし、思いが伝わってくる。これからも頑張ってね。

94:アビス◆wc:2017/11/23(木) 22:46

>>93
…私には勿体無い言葉だ
“才能”なんて…
とても嬉しいよ!有り難う!

95:アル◆RY:2017/11/24(金) 06:32

あ、アビス!
お久〜
アク禁解けたよ!
ごめんねこっちに書いて
ポエム上手いね!私なんて全然だから羨ましいよ…

96:アビス◆wc:2017/11/24(金) 17:52

>>95
久しぶり!
アク禁解けたんだ!
良かったね!!
詩、見てくれたんだ。
ありがとう!

97:アビス◆wc:2017/11/24(金) 17:59

「哀愚の人形師」

坊っちゃん 嬢ちゃん
寄っといで
お話しが始まるよ

工房から音がします
カンカン トントン

町一番の人形師
人の笑顔の為に
人形作り

人形師の人形は
誰かの手に渡る度
其の人を笑顔に出来る

不思議で素敵な御人形

さぁさぁ
坊っちゃん 嬢ちゃん
寄っといで

この人形師が
笑顔にしてあげよう

泣いてる子には
人形をあげる

涙を拭いて
さぁ笑おう

今日も頑張る
町一番の人形師
魔の手が来るよ

98:アビス◆wc:2017/11/24(金) 18:04

>>97の続き

人形師の工房に
ある人物が
やって来た

身なり絢爛の
貴族様
人形師に云いました

友達になろう
広い工房を作ってあげよう
僕の城に

君の為に

友達 其の言葉は
人形師にとって
初めての言葉

勿論です
嬉しいなぁ

初めての
友達が出来たのです
でも気をつけて

飴の様な
甘い言葉ほど
怖いものは無いのだから

99:アビス◆wc:2017/11/24(金) 18:10

>>98の続き

城にやって来た
人形師

貴族様が手招いて
おいで おいで
こっちだよ

案内された
地下工房
とても広くて

道具もいっぱい
うれし泣きだね
人形師

早速作ろう
人形を
トントン カンカン

ガシャアンと
突然何の音
戸惑い焦る人形師

檻の音だよと
貴族様
したり顔で微笑んで

作っておくれ人形を
僕と云う
友の為だけに

100:アビス◆wc:2017/11/24(金) 18:18

>>99の続き

まだまだ続くよ
坊っちゃん 嬢ちゃん
席は立っちゃいけないよ

閉じ込められた
人形師
それでも作ります

友達の為に
トンカン トンカン

心優しい
人形師
騙されている事に

まだ気づかないのです

そしてもう一つ
作った人形達が
何に利用されているのか

町の人々から
笑顔が消えました
それは何かわかりますか

人形師の人形達です

楽しませる為の踊りは
狂気のワルツへ
人々の体が飛ぶんです

101:アビス◆wc:2017/11/24(金) 18:36

>>100の続き

町の人々は云いました
人形達のせいで
家族が恋人が

友達が消えたんだ

作ったの誰だ
人形師ですよと
貴族様

許さないぞ
人形師

怖くないかい
坊っちゃん 嬢ちゃん
でも見ておいきなさい

町の人々に
貴族様は云います
退治しましょう

悪の人形師を

ガシャリと開いた
檻の音
出ろと云われ出た先は

怒りの町の人々で
人形師に
次々と石ぶつけ

102:アビス◆wc:2017/11/24(金) 18:51

>>101の続き

助けて友達よ
すがる人形師を

冷たく払う貴族様
次にこう云った

ここにおります
人形師
人々惑わす悪の人形師を

この僕が一生閉じ込め致しましょう
高らかに宣言
喜ぶ人々

理解出来てない
人形師

どうなるの ねぇどうなるの
まぁ焦らないで
坊っちゃん 嬢ちゃん

再び閉じ込められた
人形師
ここでようやく気付きます

自分が騙されている事に
でも人形師は
貴族様を責めませんでした

それは何故でしょう

友達だからです

103:アビス◆wc:2017/11/24(金) 19:04

>>102の続き

あぁ何という事だ
それでも信じているのです
余程うれしかったのでしょう

友達と云われた事が

何とまぁ
そして友達と云う言葉程
呪いが強い言葉はありませんね

そう思わないかい
坊っちゃん 嬢ちゃん
なんで泣いているのかな

刻々迫る
命の火が消える刻
人形師は考えます

どうすれば
人々は再び笑顔に
なれるのか そうだ

人形になればいい
早速作ろう
自分の人形

トンカン カントン
できたは良いが

次に何をすれば良い
そうだ

心臓に
心を乗せて
抜き取ろう

でも入れるのは
誰でしょう
人形ですよ

自分に従順な
人形です

自分の心臓と心を
抜いた人形師

人形は入れます
心臓と心を
でも目覚めません

人形は待ちました
自分が朽ちるまで
いつまでも

如何でしたか
坊っちゃん 嬢ちゃん
この愚かで哀れな

人形師の物語

この私の物語は

ぱち ぱち ぱち
拍手をありがとう

来てくれたお礼に
人形をあげましょう

笑顔になりましょうね

104:アビス◆wc:2017/11/26(日) 22:09

(作者ヨリ)
見てみたら100スレ行ってました

…飽き性でネガティブな
22歳の放浪者(バガポンド)が
此処までいくなんて

思ってもいませんでしたよ。

やー めでたや めでたや

105:闇竜の騎士◆cs:2017/11/27(月) 20:37

おー!
百レスおめ!

106:アビス◆wc:2017/11/27(月) 21:41

>>105
ありがとう!

107:アビス◆wc:2017/11/27(月) 21:52

「フロイント・アーデル」

かぁてんこぉる
ぱちぱち拍手
さぁまた始まるよ

わぁわぁと
寄っておいで
坊っちゃん 嬢ちゃん

開演には
まだ少し待ってくれるかな
ほら赤い飴をあげるから

いい子に三角座り
してようね

ごめんね 待たせたね
糸が絡まっちゃってたんだ

私を貶めた
貴族様

かつての友達
いや違う
今も友達だ

ねぇ早くみたいよ
焦らせないで
いい子にしてろと云ったろう

108:アビス◆wc:2017/11/27(月) 21:57

お城に住んでる
貴族様
民に慕われる

良い貴族様でした

ある日こんな噂を
聞いたとさ
自分よりも人々を

笑顔にできる
人形師がいると
僕の町に

そりゃ一目会ってみたい
僕よりも
慕われる者が

いるのなら

城を出た
貴族様

会う事で
互いの運命の
歯車が

ギギィと歪に音立て
廻り出す事を
まだ知らない

109:アビス◆wc:2017/11/27(月) 22:01

トンカン トンカン
鎚の音
ここにいるのか

町一番の人形師

これは客人
珍しい
こんにちは

何の用でしょう

僕と友達に
なってくれ
人形師よ

城に来てくれないか
君の為に用意しよう
広い工房を

人形師
友と云う初めての言葉に
感激し

友達になった
貴族様と人形師
ここからです

貴族様の心に
魔物が
住みはじめたのは

110:アビス◆wc:2017/11/27(月) 22:06

城に招いた
貴族様
ようこそ

町一番の人形師
僕の友よ

案内しよう
工房へ

逃がしは無い様に
扉に鍵かけて
君をここに

閉じ込めよう

僕の町で
僕より噂に
なるなんて

許せないから
君を招いたんだ

檻の音だよ
気にしないで
頑張って

作ってね
僕の為に

友の為に

111:アビス◆wc:2017/11/27(月) 22:11

地下工房に
鎚の音
トンカン トンカン

作られた人形
何れも今に
動きそうだ

ガタガタタ
突然動く
人形達

貴族様
驚き腰抜かす

人形達
貴族様の方に
ギョロリ振り向き

膝をつく

従います
どうぞ何でも
お申し付けを

それならば
町に行き
民に害を

与えてくれ

112:アビス◆wc:2017/11/27(月) 22:16

これでいい
僕が慕われるなら
民に害があろうが

知った事じゃない

黒笑浮かべる貴族様
そこに
かつての貴族様は

もういません

いたのは
心を嫉妬に燃やされた
己の称賛のみを欲する

一人の人間ではなく

一匹の魔物なのでした

この時の
人形師は
知る由もない

友達が
魔物になって
自分の作った人形が

人々に害を
なすなんて

113:アビス◆wc:2017/11/27(月) 22:24

町に人形降り立った
人々の逃げと悲鳴は

狂気のワルツと
ゲシュライ・プレリュードだ

厄災のギグを用意した
指揮者の貴族様

自作自演のリフは
準備済み

民達よ
あの人形達を
作りしは

町一番の人形師だ

人形師を許さない
怒れる民達に
僕はこう云った

悪の人形師は
この僕が
退治しましょう

114:アビス◆wc:2017/11/27(月) 22:26

僕に対する
拍手喝采
これなんだよ

もっと僕を
慕って敬え
ほらさっさと

民草共が
グズグズするな
僕は貴族様だ

115:アビス◆wc:2017/11/27(月) 22:30

ここから先は
前に話した
通りを参考に

今回のお話
これでおしまい
坊っちゃん 嬢ちゃん

貴族様は
如何なったか
今もここにいるよ

私の人形として
友達として

さぁさぁお帰り
坊っちゃん 嬢ちゃん
親の所へ

朝告げ鶏が
鳴いたから
ここでお別れ

また会おう
会えるかな

116:アビス◆wc:2017/11/28(火) 16:23

「金満虚心」

友の沙汰も金次第
赤の他人に
金積んで

友達装わす業が
本当にあるだとさ

其の場凌ぎの
孤独紛らし
楽しい 楽しい

誰の為
他人の為
そんなわきゃない

自分への上げ指が
欲しいだけだろう

友充あぴぃる代行業

ご先祖様へも金次第
赤の他人に
金積んで

墓へ参わす業が
本の当にあるだとさ

ご先祖様も
馘捻る

こやつは誰だと

墓参り代行業

他にも色々
代行業界

忘れちゃならない
呪祖代行

丑の呪神への
願い事
代わりに

請け負うと
云われとます

宿題工作の
代行業

子にやらせたくないからと
親心

ロクな大人にゃ
なれないね

金が満つりゃ
人の心は
虚となる

117:アビス◆wc:2017/11/30(木) 21:10

「王は故に である」

人はこの世から去るたら
何に先ずなると思う

王様になるんだよ

人から姿は
見えないから
好き放題

何処へだって
行き放題

この浮世を
楽しもう

あっはっはと
笑い乍
飛んで行く

君を空を
私は
見上げる

彼の者は
知らないのか
誤魔化しているのか

何処へだって
行けるのなら
想ひ人の処へも

行けるだろう

生前思いを
伝えられなかった
今度こそ

想ひ人よ
此方を
向いてくれ

そして
云わせてくれ

貴方を思ふ者は何時でも
貴方の傍に

いたと

其の声は
想ひ人に
届かない

なら姿も
見えないさ

大粒の
涙珠を流する
王様は

何とまぁ
孤独な
王様で

ありましょうか

好き放題
していても

想ひ人に
伝える事はもう

出来ないのですから

118:アビス◆wc:2017/12/01(金) 20:22

「喜亡生叫」
(ヨロコビナキハ イケシモノサケビ)

骨はだけた
白手で招く
おいで おいで

此方へと

目玉片方
落ちた顔で
ぎょろりと見つめる

其の先は

三味線
弾き語る
坊主様

うとりと
聞き魅いられて
次々仲間が

浄土か
地獄へ

葦原中つ國を
去る者達への
慰め歌

坊主様は
今日も
弾き語る

亡者仲間に
誘われ今日も

弾き語り
坊主様の元へ
行って来ます

今日は何やら
仲間が怒りだ

何故だろか

坊主様が
弾き語る
三味の線音

あの頃の魅力は
何処へと行った

あの音を聞いて
私も漸く
逝けるかと

浄土か
地獄へ

役に立たぬ
坊主はいらぬ

雑音奏でる
坊主の耳を
引き千切れ

女の事ばかり考える
生臭坊主の
脳味噌を

掻き摺り出して
代わりに
石を詰めようか

今はもう
我等を浄する
歌は無い

代わりに
我等が
歌うだけ

生者よおいで
此方へと
共に歌おう

喜と叫に分けて

119:アビス◆wc:2017/12/01(金) 20:34

「人形が遊ぶ」

人形は遊ばれる
腕を千切られようと

只 其処にあるだけ

目をぶちりと
毟り取られても
人形は

表情を変えない

綿が出てきた
人形にとっては
人間にとっての

内臓である

色々な所を
いじられて
弄ばれて

人形とて
平気な訳がない
そして思う

私達だって
遊びたい
人間で

ねぇねぇ
人間 何して遊ぶ

かごめかごめが やりたいよ
後ろの正面だぁれ

わぁい私達の

かぁち

周りの人形が
騒いでる

何するの
そうだ
私達がやられている事を

しましょうよ

それじゃあ
何しよか

わたしは腕を
千切られたから
腕にしよう

ぼくは目を
毟られたから
目にしよう

それよりも
中身が見たいな
人間の

私達は
綿でしょ

人間は
どうなのかな

人形達は
無邪気な
好奇心で

人間に群がる

ありゃりゃ
綿じゃないんだね

赤い綿なんだね
人間て

120:アビス◆wc:2017/12/03(日) 22:26

「不噛合」(カミアワズ)

月に住む
美しの君よ
餅をつく兎は

其処にいるかい
ぺったん ぺたん

此方の兎は
餅をつかないけど
元気に野山を

走り回るんだ

月の友たる地球に住む
名知らぬ男子よ
そちらの四季は折々ですか

私は一度
地球に
降りましたが

人の美しさ等
霞の様で
もう一度

見に行きたいと
思いました

僕は知りたいな
貴方の名が
なんて云うんだろう

私の名は
輝夜姫と
云うのです

とても素敵な
名前だね
輝夜姫

私は貴方と
話していると
何処か楽しいです

僕もだよ
ねぇ次は何時
会えるかな

わかりません
この文のやり取りは
私と貴方だけの

秘密ですから

私にしかわからない
地球の男子と

僕にしか見えない
月の美しの君との

何処か噛み合っていて

何処か不噛合の
文のやり取り

121:アビス◆wc:2017/12/05(火) 21:46

三匹の子豚
何時も仲良く
暮らしてた

日常平和の謳歌
其れを壊す
腹空きの狼が

涎だらだら
丸腹肥えた
三匹子豚

御飯は彼奴達だ

長男は作る 藁の家
次男は作る 木の家を
三男は作る 煉瓦の家

藁の家と木の家は
狼の息で
びゅびゅうと

飛ばされた

長男 次男
たったか逃げる

狼其れを
だっだ追う
待てこら逃げるな餌共が

三男の家に
逃げ込んだ

狼びゅびゅうと
吹いてても
壊れやしないの

煉瓦だから

しょうがない
狼諦め
帰ってった

其の侭
居座る
長男 次男

掃除しろ
綺麗にして

お腹が空いた
ごはんを用意しろ

家を建てろ
長男と次男の分
建てた

そして三男
火をつけた
二匹の兄の家

ごうごうと
焼ける音

もくもく
いい匂い

釣られ来たぞ
腹空き狼
逃げないと

長男次男
窓から逃げる
けど抜けない

其れを見て
やつれた顔で笑む三男
良かった ぴったりだ

うふふ うふふ

腹空き狼
満腹狼になって
帰ってった

122:アビス◆wc:2017/12/06(水) 21:49

「虫の苗床」

暗い深い
森の中
動かなくなつた体を

虫達が食べに来る

きいきい鳴いて
もそもそ体を
這つて上る

体がこそばゆい

開いた
口に
巣作つて

肉をぶちり
餌にして
蟲育て哉

月を臨む
母蝿は
腐肉に仔を

産み落とす

蛆等は
じゆるじゆる
顔の中

他の虫達も
ぞろぞろ
体の中

気持ちが悪い
筈なのに

気分は何故だか
子を育む
母の様だ

愛おしい

人間ではない
かといつて
屍でもない

今の自分は

虫の苗床だ

そう思える

123:アビス◆wc:2017/12/06(水) 22:24

「白銀問答」

雪降る白空に
目を遣り

其の視線を
地へと移せば
いるみねいしよんが

ちかちか光る

拡声器からは
冬に因む音楽が
飽くる程に

耳に来た

街歩く人々見やば
互いの温もり求むる
男と女が

ちらほらと

人は聞くだろう
こんな時期に
人間観察なぞ

面白いのかと
外に出楽しむのは
如何かと

私は答えよう
面白いさ
ほら御覧よ

彼処で
ぎやんぎやん
云いあう

男と女を

まるで
犬の様だろう

くつくつと
私は口元
隠して目を細め笑う

其れに私には
寒で冷えた手を
暖める者等

居やしない
独り者の
身 故に

外に出
楽しむ勇等
ありやしない

臆病者さ

どうせ
行つたつて
何も無い

ならば
暖かい部屋に
引篭つて

蛞蝓と
なつた方が良い

そう思わないかね

と 私は人に
質を投げ返す

そして青鯖缶を
開けて
一つ口へと放つた

124:アビス◆wc:2017/12/08(金) 20:11

「空の壺は何で満つるやら」

他に汚された私を
貴方は何処まで
消してくれるだろうか

見知らぬ者に
拐わかされ
私の秘所を姦されて

泣きじやいて帰つて来た私を
貴方は只黙つて
抱き締める

其の侭
貴方の匂いが
染み付いた寝の床へ

私は倒され
上に跨がり
貴方は囁く

何処を姦された
云つてみろ

云いたくない
私は拒んだ

云わなければ
消す事が

出来ないだろう

妖しく笑い
艷気を含んだ
声で云つた

震える手で
私は己の体に触れた

忘れさせてやる
消してやるさ
乃公の手で

だから泣くな
記憶の為だけに

啼いて良いのは
乃公の為だけだ

体が重なる
映る影も又重なる

消して欲しい
貴方の手で
記憶を

そして満たして
貴方の物で
何も無くなつた

私の空壺を

125:アビス◆wc:2017/12/08(金) 20:20

「文字館 孤ノ主」

古ぼけた外装に
蔦が張つている

中は蜘蛛の巣ばかり
こんな所に人なんて
住んでいるのか

と里人は頚をかしげる

本当にいるのだ
嘘では無い

外から声がする
喧しい事
この上無いな

目玉の入つた
かんてらと共に
外を見下ろす一人の影

其れこそが
この館の主である

私には
不思議な力があつた

者を物を
文字にす力
だから他に

化物だと
疎まれた

だから私は
人で在り乍
人では無い

以前
迷い込んだ猫は
文字にしてあげたよ

理由は無い
強いてあげると
するならば

私に質問を
したからだ

館の主は
今日も孤である

漂う文字は
今日も意味を成さず
主の為に

126:アビス◆wc:2017/12/08(金) 20:29

「愛閉ジノ檻」(メトジノオリ)

私が入つている
檻の外にいる
貴方に手を添える

貴方は
何を考えているのか
判らない表情で

私の首に
触れ返す

そうだつた
貴方は愛情を
伝えるのが下手だから

私を檻に
閉じ込めたのだつけ

逃げない様に
首輪と紐迄
購つて

色は青だよ
私の好きな
色だから

貴方は云つた
嫌な事はしない
檻の中に

居てくれるだけで良い

だから私は
ずつと檻の中だ

外の世界なんて
知らない
知らなくて良い

私にとつては
貴方が世界だ

貴方が何処か
別の世界へ
逝つたら

私も又
貴方を追い
其の世界へ

逝く事でしよう

貴方は世界で
世界は貴方
なのだから

127:アビス◆wc:2017/12/08(金) 20:49

(作者ヨリ)

私ガ小サイ“ッ”等ヲ
大文字ニシテイルノハ
ワザトデアル

決シテ間違イデハ無イノデ
アシカラズ

128:アビス◆wc:2017/12/09(土) 22:22

「背徳ニ請ウハ道徳カラノ解放」

ねぇ
次は何時
会えるの

何人の誰に
云つたつけ
この言葉

布に
己の体を包み乍
私は呟いた

布には
互いに交合つた
匂いが

未だ染み付いている

私は
奪う事でしか
人を愛せない

こんな私は
可笑しいのだろうか

否 可笑しくは無いな
奪う事が悪いと云うのは

其れは只の周りの
道徳的価値観だ

奪う事は
私にとつての
価値観だ

道徳的で
在る事は
私にとつての

苦痛でしか無い

洗脳的道徳から
解放されたくて
私は他人の愛を

奪つた

背徳と云う
禁断の蜜の味は
とても甘美であつた

他の愛が
私への愛と
変わる様は

私を
快楽の泥沼へ
頭の先から

溺れ堕とさせる

沼からは
もう這い上がれ無い

這い上がら無い

道徳と云う洗脳から
解放されるならば

其れで良い

129:アビス◆wc:2017/12/11(月) 00:42

「音終弾」(ねおわのたま)

乾いた銃弾は
又一つ音を
終わらせた

虚空に目を遣り
吐く息の白さに
寒を感じる

赤に染まる地と
倒れる人間を見て
呟く

駄目だ
今日も
去る事が出来なかつた

この退屈に
崩れ去る世界から

去りたいなら
去れば良いだろう
自らのこめかみに

銃口を向けて
其れで終わり
この世界から

去れるぞ

其れが駄目なんだ
もう一人の自分が
拒むから

我は汝
惨憺たる者なり

汝は我
弱き者による
壊を望まず

強き者にて
壊を望みたり

音に終わりを
告げし者が

涙を流す
御前では無かつた

130:アビス◆wc:2017/12/12(火) 21:37

「病風」(やまいかぜ)

己の不摂生
其処に祟りて寄るは
病風

躰の隙に
入り込んで
凡百病を引き起こす

風の邪
肺が炎か
或いは別か

全が蝕まる前に
医者に診て貰え
針の一射し其で了だ

だが病の魔は
風に乗つて
又やつて来た

全が蝕まりや
動けず仕舞いの
其で了で

天井の
木目仰ぎ
苦を抱えん

131:アビス◆wc:2017/12/13(水) 20:47

「眠 子子 寝」(ネ ネコ ネ)

夜ガ来タリ
命或者ハ
眠リニツコウ

船ヲ漕グ躰ハ
岸ニ着ケテ
コクリ コクリ

羊ガゾロゾロ
メエメエ鳴イテルヨ
数ヲ数エテ

壱匹
弐匹
参匹

眠レ無イナラ
温カイ牛ノ乳ヲ
カツプ一杯

子守唄デモ
聞キマシヨウ

揺籠ニ
躰ヲ埋メテ

金糸雀ガ
唄ツテ

上ノ枇杷ノ実
揺レテ ユラアン

蔦ヲ木鼠
ユサユサ揺スル

夢ニ黄色イ
月ガ出テ

スヤア スヤア

フワア

目ヲ閉ジテ

グウ グウ

132:アビス◆wc:2017/12/13(水) 21:54

「言葉届ど只卑下たる己」

私の綴る
言葉は魚である
逃げる魚を

針と云う
筆で釣り

たもと云う
紙にて捕らえる

さしずめ私は
太公望

私の綴る
言葉は虫でも或
逃げる虫を

蜜と云う
墨で誘い

籠と云う
本にて捕らえる

さしずめ私は
麦藁帽の
夏山駆ける

虫採り少年哉

否 私は只の
年を喰つた
人間の女

美しさも
可愛気すらも
存在しない

居ても居なくても
変わらない

其れが私である

133:アビス◆wc:2017/12/15(金) 19:09

「釘と標本」

釘と云うのは
実に便利だ
物を其の場に

留めて置ける

欠かせないのは
本だ
留めた物を

挟ま無ければ
標本にはならない

釘を片手に
私はアハハと笑う

両手両釘
両足両釘の
君は問う

恨みでも
何か在るのかと

有るには或
私は他者が
嫌いだ

君は
私にとつての
他者だ

けど君が
他者と
笑うのを見るのは

もつと嫌いだ

そして私は
標本が好きだ

生きずして
黙ても尚
生きている様だから

君が
私にとつての
他者で無くなるには

如何すれば
答えは簡単だ

私の好きな
標本にすれば良い

だから君は
私の好きな
物で

在つてくれ

光る釘の切つ先よ
最後の一刺しを
君にあげよう

134:アビス◆wc:2017/12/15(金) 22:52

「脳界異探」

在る者が云つた
私の脳内を
覗いてみたいと

如何やつたら
其んなに言葉が
出てくるのかが不思議だと

止めておけ
迷うぞ
と或国の少女みたく

案内役等も
存在無い

繋がらない
階段は無数に在り

橙と黒の混じる
昼か夜かも判らぬ空に

汚濁なる海と
反して地に白砂が
在るだけだ

其れでも
いいと云うなら
覗くが良い

私の脳内に
道は無いが
猫と足跡に

付いて行くと良い

桃色の象には
触れるなよ
彼奴は凶暴で

頭蓋は
簡単に粉と臓物に
なるからな

地面をうごめく
群毛虫にも
触れないでくれ

私が笑う

猫と足跡が
途切れたら
杉の木を切れ

そうしたら
目が覚める

135:アビス◆wc:2017/12/15(金) 23:05

「言ノ葉の魔法使い」

私は
魔法使いである

あらゆる言語を使い
新たなる呪文を創り出す者

世や人は
其を詩と呼ぶ

私は憧れた
サムボリスト・アン・ノワァルに

其の者は何時も
黒ずくめの帽子と
マントを愛用し

仲間と共に
複雑難解な言葉記されし
高度な魔導書を読み更けていたと云う

其の者の創造せし呪文は
現代においても
数多を惹き付け魅了する

私も又
惹き付けられた者の
一人故

魔法使いと
なった

未だ未熟な
魔法使いだが

私なりの
呪文を描きし
魔導書は

これからも
思いつければ
書いていこうと思う

136:アビス◆wc:2017/12/18(月) 21:51

「傲慢女王 首バケツ」

女王の声は
民の耳に良く通る

民の声は
女王の耳には届かない

女王は
肥えている

民は
飢えている

女王は云う
飢えているのなら
食べ物を食べれば良い

民は云う
食物は何処に在る

女王は指す
其処らに在るじゃない

民は指す
虫や雑草の事か

そうよと
女王はケラケラ

ふざけるな
怒れる民

逆らう者は
首斬りで
兵に女王が命ずる

斬首の民は
バケツの中

絶対独政の
傲慢女王
其の姿は

獅子か孔雀か

吼えて荒げ
絢爛装飾

だが其れも
長く続かず

斬首台の上に
女王が居る

取囲み
未だか 未だか
待ちわびる民

女王の姿は
何処にも無い

在るのは
牙無き獅子か
尾羽根毟れた孔雀か

ギロチンは
首を斬った

女王は
バケツの中だ

137:アビス◆wc:2017/12/20(水) 21:24

「叶わぬ夢は己為の娯楽」

遠き座に在りて
手元に残らぬ銭程
虚しい物は無い

朝から夕迄
己の時を贄にし
生くる為に働いた

己が何れだけ
働いたかは
紙に記された

数字のみぞ知る処

紙を持ち乍
私は帰路に着く

皆で働かねば
生活は成り立たない
だが少しでも

娯楽は在る
片方だけだが

もう片方には
殆ど無い

くれる余裕は
無いと云い乍
片方の娯楽を楽しむ姿は

正直羨ましい

余裕は無い事は
知っている
だから私は

我慢を
し続けている

賞与すらも
生活の為に
捧げた

本当は
己の為のみに
使いたかった

叶わぬ夢を
持ち乍
私は今日も働く

目の前の
人参を食べられぬ
馬の様に

138:アビス◆wc:2017/12/21(木) 22:17

「脳界探人」

彼の者の
脳界は
実に不思議だ

階段は
階段の意義を
成してはいなかった

空の色は
目眩がする程の
橙と黒が

白砂を歩いていたら
生物は住んでいない
汚濁な海で

否 生物はいた
生きていない物だったが

コクリコの様に
赤い森の中で
桃色の象が

酔っ払いみたく
機嫌良く踊っている
近付いたら

頭蓋を
潰されそうに
良く見たら

怒って
暴れているのだった
危ない 危ない

案内の
猫と足跡が
跡絶えた

目の前に
杉の木と鋸が

切り倒したら
元の世界へ
帰れたが

戻れなかった

139:アビス◆wc:2017/12/21(木) 22:27

「炬燵漫談」

炬燵の上に
蜜柑が篭に一杯
其の一つを剥いて

口へと放り
端からも見て
自分達からも見て

下らない漫談を交わす

蝸牛と蛞蝓の違いは
何か
答えは殼が在るか無いかと

仲間が云う

では美女や美男の
定義とは何かと
仲間が云う

私は云った
人は性格以前に
見た目を見る

顔と体だろう

幾ら性格が
良くとも

顔と体が
良く無ければ
異性は振り向きにくい

そうだろう

剥いた
蜜柑の皮で
熊が出来た

此方は
皮が途切れずに
此処まで長く剥けた

今度鍋をしようか
材料は如何する

何か適当に
一品ずつで

世間では
其れは鍋では無い
闇鍋と云うんです

炬燵の上で
広がる
漫談と笑いは

下らないが
平和で或

140:アビス◆wc:2017/12/22(金) 22:17

「賽子賭天獄博」

丁か半か
さあ何方だ
選べと急かす

半だ
奇に賭けて
よござんす

賭けた結果は
丁で
負けざんす

又負けた
畜生もう一回

賭ける物は
未だ有るのか

嗚呼 有るさ
自らの命を
賭けてやらあ

次で
倍以上に
してやるよ

あんたさんの
たった一つの
命は

此の二つの
賽子に
委ねられやした

切った
張ったの
丁か半か

選びなすって

今度は丁だ
偶に賭けて
よござんす

結は果にして
如何に

ピンゾロの丁で
ございやす

救われやしたね
賽子に

此れが有るから
止めらんねえ

次のチンチロ
有り金全て
賭けて

賭博長者と
なってやる

丁か半か
何方を選び
天を見るか

獄を見るか
丁に次も賭けてやる
さあ結果は

如何に

おや
あんたさんの
負けでござんすね

有り金全て
戴きやしょう

序でに
命も
戴きやしょう

半でやんすから

141:アビス◆wc:2017/12/23(土) 16:55

「達磨の愛し君」

達磨になった
気持ちって
どんな気持ち

歩ける
立つ事
出来ないよね

お風呂も
ご飯も
日常生活全て

私が居なきゃ
いけないよね

なのに君は
一度も私を
愛しちゃいない

其れ処か
礼も無し

今から私が
君から離れたら
何が出来るかな

歩く足が
無くなって

食べる手も
失って

其の全てを
やっている
私が

でもね
ごめんなさいって
云えたら

私を愛して
くれるなら
許してあげる

其の為に
口だけは
残してあげたんだ

手と足は
何処かと
聞いたね

手はもう
返したよ
君の中に

足も今から
返してあげよう

口を開けてよ
でないと君に
返せない

いらないなら
私が貰うよ
私の中に

ごめんなさいって
良く云えたね
いい子 いい子

でも恐怖から
私を
愛さないでね

心の底の
底から

私を
愛してね

愛し君の達磨さん

142:アビス◆wc:2017/12/23(土) 17:11

「御伽語 夜共浦」

細波白立つ
青の海
其処に似合わぬ

亀苛めの餓鬼達
のろまだ 蹴ってやる
痛みに耐え

助けを願い
現れは
腰簑履きし

釣青年
金で餓鬼釣り
亀助けん

助けた亀に
連れられて
向かいた先は

海底に在りし
絵不描なる
美しき竜宮城

迎えたるは
竜宮の姫君

暫く居なさい
この城に

貴方に退屈
させません
昼の時も

夜の時も

昼は魚が
舞い踊り

夜は
体の遊戯を
致しましょう

楽し時を
過ごし続けて
幾星霜

帰りに
渡された
玉手箱

海から
久しく
地を踏みしめ

母の元へと
急ぎたるも
母は亡し

村の者達は云う
放蕩息子の
お帰りだ

お前の母は
帰りをずっと
待ち続けた

出ていけ
親不孝者が

さ迷う青年
箱を開けるも
僅かな飾り物

時が経ちて
砂浜を
虚ろに歩く

一人の翁

翁は
探し続ける

亀よ
出てきてくれ

其して私を
もう一度
あの場所へと

143:アビス◆wc:2017/12/23(土) 17:27

(作者ヨリ)

此処に書いている詩全ての
題名が決まった故に
載せていきます

引き続き詩の感想を
お待ちシテオリマス
(荒しや悪口は犬に喰わせます)

144:アビス◆wc:2017/12/23(土) 17:53

最初に載せるのは
何を“もちぃふ”にしたかとか
“しりぃず”系から

145:アビス◆wc:2017/12/26(火) 21:17

…どうしよう
無くしてしまった“のぉと”を…

146:闇竜の騎士◆qA:2017/12/27(水) 21:35

おー!久しぶりに来たらレス伸びてる!相変わらず上手いねぇ

147:ねこさ◆pU:2017/12/28(木) 11:04

久しぶりです。
アビスさんの詞はやっぱり素敵です!新しいのも待ってます

148:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:17

>>146 >>147
嬉し過ぎるわぁ…(嬉泣)
今此処で“たいとる”全部書くから
其れ迄待っててね。

149:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:24

第壱部
>>23>>24
『灰ノ姫』(シンデレラ)
>>25>>26>>27>>28>>29>>30
『少女ノ不思議』(アリス)

150:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:29

第弐部
>>32>>33>>35
『文字館 好奇猫』
>>37>>38
『七人岬 罪数』
>>42
『御伽語 何方葛』(舌切雀)

151:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:36

第惨部
>>44>>45>>46>>47
>>48>>49>>50>>51
『磨羯鋏』(狼と七匹の子山羊)

>>54>>55>>56>>57>>58
『御伽語 猿蟹奇譚』(猿蟹合戦)

152:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:41

第肆部
>>59
『竜胆女 加』
>>71
『竜胆男 虐』
>>61>>62>>63>>64
『御伽語 火茅兎』(かちかち山)
>>65>>66>>67
『災笛』(ハーメルンの笛吹き男)

153:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:47

第伍部
>>69>>70
『怪少年』
>>73>>74>>75
『文字館 愚ノ冒険者』
>>83
『文字館 遣蝙蝠』
>>76
『ネクロ性愛』
>>77
『睡眠フィリア』
>>78
『オキュロ愛好』

154:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:50

第陸部
>>97>>98>>99>>100>>101
>>102>>103
『哀愚の人形師』

>>107>>108>>109>>110
>>111>>112>>113>>114
>>115
『フロイント・アーデル』

155:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:54

第七部
>>121
『焼豚』(三匹の子豚)
>>125
『文字館 弧ノ主』
>>142
『御伽語 夜共浦』

156:アビス◆wc:2017/12/29(金) 20:59

第捌部
>>1
『幽追歌』
>>2
『喰魚』
>>3
『黄泉歩』
>>4
『曰招』
>>5
『恋病女』
>>6
『二添』
>>7
『誰か』
>>8
『魔カ宴』
>>9
『螺折』
>>11
『悪戯角灯』

157:アビス◆wc:2017/12/29(金) 21:06

第玖部
>>12
『南瓜の報復』
>>14
『小箱親』
>>15
『鶏絞』
>>17
『林檎化族』
>>21
『一夜限道化』
>>60
『氷女王』
>>72
『華汚』
>>79
『赤クレヨンと少年』
>>80
『色山羊に妄呵責』
>>81
『吉遊情事』

158:アビス◆wc:2017/12/29(金) 21:13

第拾部
>>82
『兎に思ひ 角も人』
>>85
『洗い髪のヴイナス』
>>87
『桜花の正腐虫』
>>88
『泥壺』
>>89
『大正明暗混々』
>>91
『惰する操人ノ形』
>>92
『嫉蛇妬犬』
>>116
『金満虚心』
>>117
『王は故に である』
>>118
『喜亡生叫』
>>119
『人形が遊ぶ』

159:アビス◆wc:2017/12/29(金) 21:21

第拾壱部
>>120
『不噛合』
>>122
『虫の苗床』
>>123
『白銀問答』
>>124
『空の壺は何で満つるやら』
>>126
『愛閉ジノ檻』
>>128
『背徳ニ請ウハ道徳カラノ解放』
>>129
『音終弾』
>>130
『病風』
>>131
『眠 子子 寝』
>>132
『言葉届ど只卑下たる己』

160:アビス◆wc:2017/12/29(金) 21:28

第拾弐部
>>133
『釘と標本』
>>134
『脳界異探』
>>135
『言ノ葉の魔法使い』
>>136
『傲慢女王 首バケツ』
>>137
『叶わぬ夢は己為の娯楽』
>>138
『脳界探人』
>>139
『炬燵漫談』
>>140
『賽子賭天獄博』
>>141
『達磨の愛し君』

161:アビス◆wc:2017/12/29(金) 21:29

やっと…全部書けたぜ…
これで新しいの書ける…
早速書こう

162:アビス◆wc:2017/12/29(金) 21:36

「罪光」

罪の色は
闇に例えられる

罰の与色は
光と例えられる

では
光の罪は無いのだろうか

闇の罰は
聞いた事あるが

光は
凡百物を照らし出す

其の誰もが
光の中で
生きて行ける訳では無い

闇の中でしか
生きていられ無い者もいる

だが光は
闇を潰さんと
輝き続ける

目が眩む
開けては
いられない

光よ
全ての闇を
かき消さんと

照らし続けるのは
やめてくれ

闇でしか
安寧を得られぬ

我等の住を
奪うな

罪光よ

163:アビス◆wc:2017/12/30(土) 17:41

『厨の歌』

右目が疼く
我が目に宿りし
索敵の眼が

闇に潜む
我が敵の所在を
教えてくれる

其の敵は
我にしか
見えぬ故に

我にしか
討てぬのだ

幾度となく
狩りし物の血で
手を濡らし

狩りし物の骸で
道を歩んだ

其処に我以外
何も無い

我の友は
骸である

164:アビス◆wc:2017/12/31(日) 23:04

「酉から戌へ」

今年も時は流れ
新たなる年が始まる

今年を守護せし
干支の酉は

次の年を守護する
戌へと襷(たすき)を渡す

人間に有る百八の
煩悩打ち消す
除夜の鐘が

ごぉーんと鳴り

酉はコケェ
戌はワンと鳴いた

165:アビス◆wc:2017/12/31(日) 23:07

(作者ヨリ)
>>164の詩について

今年も終わりなので
即興で書いてみたよ

では皆さん!
良いお年を!

166:アビス◆wc:2018/01/03(水) 22:03

「自傷王国」
(スーサイドキングダム)

とある国の
住民は
皆何故か

傷がある
どうしてなのかと
聞いてみた

それが
この国だと
住民答え

また傷を作る

腕に
カッタアを当てて
スパリと切った

流れる血を
周りも本人も
止める気は無い

これでもっと
褒めて頂ける
あの方に

突如現る
全身傷だらけの
女の人

女王だ
女王様だ
喜に沸いて

血が飛沫く

住民よ
今日も素敵ね
傷だらけで

光栄です
お褒め頂けるなんて

さぁ皆さん
今日も張り切って
傷を作りましょう

傷を作れば
美も醜も
関係無いんです

平等になれるんです

此処は
自傷王国だ

そう呟き
足に畳み刀を
突き刺した

そうした方が
良いと思ったから

女王様の
仰せの侭に

167:アビス◆wc:2018/01/04(木) 21:22

「自傷規則」
(スーサイドルウル)

奇妙至極たる
其の規則

自分で
傷を作りなさい

傷を作る
部位は
何処でも良い

でも
彼岸の方へ
逝っては

いけません

他人に
傷を付けられたら

付けた方も
付けられた方も

斬首台で
仲良く
斬りましょう

使う物は
何でも
良いのです

鋏でも
カッターでも
氷穿棒でも

兎に角
傷を作れば
良いんです

誰もが
従わないだろう
其の規則

でも
住民は
従がっていて

其れでいて
幸福そうだ

平等だから
皆傷付いて
いるのだから

168:アビス◆wc:2018/01/05(金) 23:20

「自傷女王」
(スーサイドクイーン)

今日も
平等ね
私の国の

住民達は

やっぱり
正解だったわ
自らの傷を

作るのは

最初は皆
恐くて震えて
反発もあったっけ

でも私は
女王だから
住民に見せしめた

先ず自分の足に
釘を刺した

次に
熱した鉄棒を
腕に押し付けたの

住民は其の度に
悲鳴を
上げていたわ

でも私には
私を讃える
歓喜に

聞こえたの

否 そうに
違い無いわ

そうじゃないと
駄目なの

私が
自ら模範に
なったら

自分達で
傷を付ける様に
なったのよ

嬉しいな
判ってくれて

ほら見てよ
住民達が
楽しそうに

傷を付ける
姿を
幸せそうでしょう

平等でしょう
だから私の国は
争いが無いの

平和なの

どうやら女王は
民を憂う余り
心に重症を

負ったようだ

だから彼女は
女王なのだ

169:アビス◆wc:2018/01/08(月) 20:52

「忘れられぬ 忘れられた物」

人が造りし
人に富を
与えたもう物は

大地の嘆きに因って
崩された

其の時に現れた
見えない災は
人に寄り添い

人を蝕んだ

其の禍根は
子孫にも
現れる

常と異なる
姿となって

そして其れは
人以外の
生物とて

例外では無い

茸は化け
魚や獣
動く物は皆

人が造りし
富に因る
災にて

まるで
神話に出てくる
混成獣と化した

其れにも関わらず
人は時が経てば
忘れる生物

新に生まれる
子達に
語り継げようか

忘れられぬ
忘れられた物よ

嘗ての
人の居た場所は
緑の地となりて

170:アビス◆wc:2018/01/09(火) 21:42

「人時計」

人が持つ
時計は
皆其々

違うらしい

刻む時の
速さは
ゆっくりなのか

早いのか

刻む時の
早い時計は
ゆっくり進む事は

無い

刻む時の
遅い時計は
早く進む事を

強いられる

だけどどちらにも
止まる時は
何時か来る

早い分
止まるのが
早い訳では無い

遅い分
止まるのが
遅い訳でも無い

人の持つ
時計と云うのは
判らない

だが
早いのか
遅いのかは

其の人を
見れば
判る事

171:里予獣先輩:2018/01/09(火) 21:55

「人時計」なかなかいいゾ

172:アビス◆wc:2018/01/10(水) 00:52

>>171
ありがとう!

173:アビス◆wc:2018/01/10(水) 20:28

「脳界脱法」

どうすれば良い
自分の体に
戻る方法は

脳界に
長く居すぎた
桃色の象が

長鼻を振り回し
怒り狂うて
追って来てる

走った
走ったのだけれど
象が思ったより早い

白砂に潜む
ヤドカリが
足をつまづかせ

象が踏み潰した
私ではなく
ヤドカリを

ヤドカリは
バラバラの
片になっても

ウゴウゴと

こっちだよ
白黒の少女が
手招く其の方へ

危を免れた
でもまだ
根本的問題が

脳界から
脱するには
どうすれば

探人は問う
少女は云った

金の鍵を
探しなさいな

この脳世界の
何処かに有るよ

少女は消え
声のみが響く
嘲笑か

戻りたいと
思っては
いるようだけど

其れが
本当に
貴方にとって

喜終と
なるのかしら

174:ゆ◆z6:2018/01/10(水) 23:04


相変わらず難しい言葉多くて解読が少し難しいけど、
やっぱり世界観がめっちゃ好き!

声はかけれてないけど、ちょくちょく顔だして読ませて貰ってるよ(-'ロ'- )


175:アビス◆wc:2018/01/11(木) 20:16

>>174
うぉわあああ!?
本気(マジ)でかあぁぁ!
ありがとうおおぉ!

あー…矢張り難しいかぁ。
何気(なにげ)に
昔の言葉とか使ってるからなぁ。

176:アビス◆wc:2018/01/11(木) 20:24

「強か狐と欲針鼠」

瓦屋敷の
其の下で
怪しく取り引き

狐と針鼠

鼠は差し出す
狼の皮

狐は
鼠へ渡す
山吹の束

鼠はそそくさと
袖の下

何時も
有難い
御狐様

いえいえ
此方こそ
御鼠様

狼共は
私等にとって
疎ましい者でと

鼠が口開き

狼の皮は
高く捌ける
ものでと

狐が
手摺擦り

強欲狐と
針鼠

クックッと
笑う二匹の影を

狼が見ていた
窓の外から

177:アビス◆wc:2018/01/12(金) 19:12

「憤怒の月下狼」

疾走る
疾走る
狼が

憤怒を
其の身に
たぎらせて

どうしてだ
どうして
他に疎ましいと

思われてるだけで
同胞があの様な目に
遭わねばならない

奴等め
許さぬぞ

喉笛を
喰い千切り
助けを乞えない様に

膓を
喰らい漁り
臓物其処等に

散らしてやる

瓦屋敷の
其の下で
狐と針鼠が

己等の
私腹を肥やして
笑っている

狼は
声を荒げ

狐の喉笛を
喰い千切り

針鼠の
腹を
喰い破り

狐と針鼠
どちらの臓物か
判らぬ程に

散らしに
散らした

憤怒に
呑まれた狼は

血光る
月下にて
又声を荒げた

178:アビス◆wc:2018/01/12(金) 22:48

「脳界橙黒空」

橙と黒の交じる
空の上にある
意味の成していない

階段を
歩いていたら
何かがいた

赤子のいない
乳母車を押す
鴉の羽が生えた

乳母がいた

おぎゃあ
おぎゃあと
泣き止んでくれないのよ

なんでかしらと

乳母は
空の乳母車を
指差し云う

確かに
泣き声はする
でも姿は何処に

橙黒空に
一匹の幼鳥が
飛んでいた

坊や坊や
私の児よと
乳母が云う

危ないから
降りて来て頂戴

乳母の警告も
素知らぬ顔で
橙黒空を飛ぶ

幼鳥よ
乳母鳥に抱かれた
其の世界を

全ての世界と
誤りて認した
気分はどうだろうか

嬉しいか
恐ろしいか
其のどちらで

幼鳥よ
お前は鳴いている

坊や坊や
もう戻って来ないのね

私の子
この腕の中に
もういないの

179:アビス◆wc:2018/01/13(土) 17:35

「脳界市場」

扉があった
其の先を潜ると
市場の様な

行き交う人々に
顔は無くとも
すれ違う度

此方を
見てくる
其の視線に

悪意は無く
又善意も無い

此処は何処かと
聞いてみた

市場だと
人は答えた

成程

商品を
見てみた

鴉の首が
突き刺さっている
棒があったり

片腕の無い
双子に

様々な色の
髪の束

割る口が
何処にあるのか
胡桃割り人形

お勧めは
何れと
聞いてみた

人は答えた
この南瓜だと
美味しいのだと

其れは
南瓜と呼ぶには
とても形容し難く

肌色の硬皮
割ったら赤い
種は白く

葉の色は黒くて
蔓の色は
中身と同じく

赤く滑りがある

金の鍵は
此処に無さそうだ

何も買わず
出て行く私を

商と人は
黙って
凝視していた

また直ぐ
賑やかになった

180:アビス◆wc:2018/01/14(日) 22:13

「脳界心晶森」

金の鍵は
何処に
当ても無く只歩く

ふと周りを
見てみる
木々は全て

水晶で
とても幻想的

地面はまるで
絵の具の
中身を撒いて

全て混ぜた
何の色と
判らない

此処は
心の中だろうか

だとしたら
水晶の森は
大人を表していて

彩色の地面は
子供の部分か

目の前を
何かが
横切った

金の鍵を
頸に下げた
猫だった

追いかけた
追い付け無い

猫は時々
此方を向いては
ニャアと一鳴き

歯を見せて
ニヤニヤ笑う

木の上で
余裕尺々眠る猫

木を蹴つたら
簡単に捕まえた

猫から
金の鍵を奪い
帰れると思つた

猫は云つた

蹴つたニャア
蹴つたニャア
心を蹴つたニャア

桃色の象が
赤になつて
お前を

踏み潰しに
来るニャア

笑い乍
猫は消えた

181:アビス◆wc:2018/01/16(火) 09:05

「脳界怒濁象」

金の鍵を
手に入れた

象がいない
今なら帰れる

白砂に現れた
無機質の扉の
鍵を回そうとしたら

汚濁の海より
現れた

怒りに因り
桃から赤へ
変わった象が

津波を
起こして
扉は白砂の

向こうの方へ
流された

コクリコの様な
赤い森から

杉の木茂る
森へと変わる

杉の木薙ぎ倒し
怒濁の象は

踏み潰さんと
追って来る

根につまづいた
もう駄目だ

怒濁の象
眠り転ける

余りの怒りに
身体が
追い付け無かったか

今度こそ
扉を回し
元へと帰ろう

帰って来たが
帰れない

私の身体
燃えている

めらめら
ぱちぱち

少女は現れ
こう云った

だから云ったのに

182:アビス◆wc:2018/01/16(火) 20:55

(作者ヨリ)

今皆の詩をチラリと
覗いてみたけど

清い恋愛系が多いなぁって思う
其して其れを上手に書ける皆が
正直云って羨ましい

私の詩は「歪」な「愛」なら何とか
書ける。
「清」な「愛」は不得手だ。

だから私の詩は皆より
「質」が「異」なるなのだよ。
「不思議」なのだよ。
只其れだけだ。

183:アビス◆wc:2018/01/17(水) 17:22

「一一七の詩」

又一つ
あの時を
迎える

かつて荒れた地に
恐れを抱き乍

災に呑まれし者達への
鎮魂の儀が

一九九五 一一七の
午前 五四六

災禍の襲来

地は盛り
天へは
黒炎吐かれ

人の造った
生命の線は
容易く切れた

其して代わりに
人が
積み重なった

天地に
刻まれた
其の傷は深く

人の心にも又
深い傷が

だが人は
立ち止まっては
いられない

手を取り合い
復興を

忘れまじと
碑を建て
館を建て

言の葉描きし
蝋燭に灯をともせ

祈りを捧げよ

災に呑まれた
御魂の為に

今此の瞬間を

生きる者達よ

其して語り継げ

災を知らぬ
者達へ

184:アビス◆wc:2018/01/17(水) 21:19

「星と共の」

人よ
御前達が
造りあげた

星々より
強き光放つ物を
消してはくれないか

星の歌が
聞こえないから

星は瞬きで
歌を紡ぐんだ

人の様に
口を持たないから

若し星々に
口が或るのなら

瞬き乍
歌うのだろうね

人が定め
名を付けた
星々は

古の人が
そう見えたから
そう付けたんだ

名を付けられた
星々は
如何思うのだろうか

人は何かを
疑問に思う時
馘をかしげるけど

星はかしげる馘を
持たない

若し星々に
馘が或るのなら

疑問に
思うのだろうね

我等は
人間には
そう見えるのかと

今日も空を
見上げるか

星の歌を
聞く為に

望遠鏡と
清涼珈琲水を

共にして

185:アビス◆wc:2018/01/19(金) 19:13

「思い想い重い」

思いが
想いになって

其の想いが
重いになった時

人は如何いった
行動を
起こすのだろうか

最初に
君を見て
思ったよ

嗚呼君は
其んな感じかと

其して私は
其んな君を
想う様に

なったんだ

でも君には
他の想い人がいた

私じゃ駄目かな
其の想い人は

君との思い出は
楽しかったよ

会えない時は
電話で
話したよね

私は照れて
何も話さなくて

君も照れて
直ぐに電話を
切ったんだよね

手紙も
送ったんだよ

でも君は
全く返事を
くれなかった

或れは流石に
傷ついた

今から
君の所へ
会いに行くよ

君への想いを
持ち乍

私の重いを
届けなきゃ

君への想い人は
此の私だけ

待っていてね

186:アビス◆wc:2018/01/20(土) 22:09

「薬黙録」

其れは

吸ったり
飲んだり
打ったりして

快楽を得る物

一度味わって
仕舞えば虜となり

もう二度と
人には戻れない

其れが魅せる
まやかしが
切れれば

現実と云う
地獄が待っている

夢と現の
境目で生まれた

幻覚と幻聴が
責めに
襲い掛かって来るから

幾ら幻に
叫ぼうが
喚こうが

消える事は
無い

だから又
其れに
手を伸ばす

逃れる為に

今の自分の姿を
見て御覧よ

顔色は如何だ
歯は何本有る
髪は

今の啓発広告に
其れの恐ろしさを
伝える力は無い

昔は有ったさ

だが
怖いと云うだけで
今から姿を消した

ほら又
欲しがってる

其れに
助けて貰えると
思って

だが違うんだ

其れは
助けてるんじゃ無い

187:アビス◆wc:2018/01/21(日) 21:16

「影陽」

目が覚めると
何時も誰かが
膝枕をしている様な

感触が有った

でも私以外
人なんて
居ないのに

判らない侭
私は又
眠りに尽く

夢の中で起きた
妙な言葉だが

黒い影が
膝枕を
していた

黒い影は
私の顔を
覗いていた

目は無く
鼻も無い
口は有ったが

影の手は
私の頭を

幼児みたく
慈しみて
撫でていた

目線を
上に遣る

顔面を
削がれた
二匹の金魚が

くるくる
くるくる

回り乍
泳いでる

其れを見て
私は又
眠くなる

夢の中で
妙な言葉だが

黒い影は
眠る私を見て

ニコリと笑って
子守歌を歌った

眠れ眠れ
可愛い児

今日の辛い事を
全て忘れて

此の安寧は
他でも無い

貴方だけの物だから

閉じて
開けよ

陽光が
御早うと
云っているから

188:アビス◆wc:2018/01/22(月) 00:34

「鬱屈と爪」

かじかじ
かじかじ

爪を噛む

父指
母指

順番に噛む

鬱屈が溜まると
かじりたくなる

口の中に貯まる
爪の破片

其れ等全て
鬱屈の破片

かじかじ
かじかじ

爪を噛む

兄指
姉指
赤子指

順番に噛む

ぽろぽろ
ぽろぽろ

口の中から
出て来る

爪の破片

床に落ちた
爪の破片は

抑え切れない
鬱屈の表れ

勿体無いから
何時もの
瓶の中へ

かじかじ
かじかじ

爪を噛む

けれども
噛む爪が
存在無い

だけど
噛ま無きゃ
落ち着か無い

じわじわ
じわじわ

血が滲む

爪と皮の
かじり過ぎ

ぽたぽた
ぽたぽた

血が落ちる

溜まった血は
落ち着きの表れ

勿体無いから

ぎゅうぎゅう詰めの
瓶の中へ

189:アビス◆wc:2018/01/22(月) 09:43

「愛目」

目隠しをされた
君が目の前にいた

カタカタと
震えている

寒いのかな

だから僕は
暖める為に
君を抱き締める

君は云った
何で私は
目隠しを

されているの

僕は云った
君の事が好きで

僕は
恥ずかしがり屋
だから

君に姿を
見られたく無くて

家に帰して
此処は何処なの

何を云ってるの
君の家だよ

違うよ
此処は私の
家じゃない

御免ね
間違えた

君と僕の
家だった

君は今は
視界が
判らない

だから僕が
手を引いて
あげよう

嫌がっている
様だけど
まぁ良いや

目隠しが
解けたら

本当に

無くして
仕舞えば

良いだけ

190:アビス◆wc:2018/01/22(月) 21:21

「崇」

貴女は今日も
素敵です

有り難うと
微笑む姿は

正に
僕にとっての
女神様だ

貴女の
云う事ならば

僕は
喜んで
聞きましょう

重い物とか
持ってあげる

持って苦しんでる
貴女を
見たく無いから

飲物とか
欲しいなら
直ぐに持って来よう

僕だけに
有り難うと
云って下さい

僕だけに
其の微笑みを
向けて下さい

若し貴女が
鬱屈の捌け口を
求めてるなら

僕を
捌け口に
して下さい

打って下さい
貴女の拳で

蹴って下さい
貴女の足で

貴女の手で
此の命が
果てようと

僕は何も
惜しく在りません

寧ろ
喜こばしい
事なのです

だって貴女は
僕の女神だ

其して僕は
貴女の

下僕
なのですから

191:アビス◆wc:2018/01/23(火) 18:05

「頭見」(ずみ)

ねぇ知ってる
人は歳をとったら

頭に雪が
積もるんだ

でも空から
降って
積もる訳じゃ無い

知ってる哉
人は歳をとったら

頭に蛍を
飼い出すんだよ

中には
富士山に
なるのも

有るのだけれど

若いみそらでも
頭に何かを
飼い出す人はいる

例えば
鶏とか

此の國の
四季みたく

人の頭も又
四季折々である

192:アビス◆wc:2018/01/23(火) 20:32

「七大罪の徒」

楽園より
云いつけを守らず
追放されし

アダムとイヴ

彼の者達が
侵した原初の罪

其れと共に
解き放たれた
七大罪の徒等

傲慢の徒たる
獅子と孔雀
地を切り刻み

嫉妬の徒たる
蛇と犬
水に毒を

憤怒の徒たる

燃える血を

怠惰の徒たる

育みを止め

強欲の徒たる
狐と針鼠
命を奪う

暴食の徒たる
豚と蝿
天を喰らい

色欲の徒たる
山羊と蠍
汚れを生む

七つの罪は
やがて

父と母たる
原初の罪へ
還る

後に生まれる
人間等の為に

193:アビス◆wc:2018/01/24(水) 17:16

「茶会の詩」

甘いケェキが
食べたいわ

ケェキは一体
誰が持ってるの

貴方が
ケェキかしら

いいえ いいえ
私はケェキじゃ無い

私は私は
苺よ

貴方が
ケェキかしら

いいえ いいえ
私はケェキじゃない

私は私は
スポンジよ

貴方が
ケェキかしら

いいえ いいえ
私はケェキじゃない

私は私は
クリィムよ

じゃあ一体
誰がケェキを
持ってるの

私よ私
苺が答え

私よ私
スポンジ答え

私よ私
クリィム答えた

私だけじゃ駄目
苺が云い

私だけじゃ駄目
スポンジが云い

私だけじゃ駄目と
クリィムが云った

貴方は誰なの
苺が問い

貴方は誰なの
スポンジが問い

貴方は誰なの
クリィムが問うた

私は私は
ケェキじゃないわ

其れでも私は
貴方達の仲間

私は私は
紅茶よ紅茶

194:アビス◆wc:2018/01/24(水) 21:39

「銃と鳥」

青い空に
鳥が飛ぶ

其処に
向けられた
鉄の銃口

ぱぁんと一つ
音鳴った

ばさばさ
翼のはためかせ

ぼとんと
墜ちた

血と息
途切れ途切れ

首を持って
途切れ途絶えた

195:アビス◆wc:2018/01/24(水) 21:42

「狩られ」

何時までも
狩りし者で
有れると思うな

最初に知り
最期となった

爪で皮と臓を
切り裂かれ

牙で骨を
ボリボリ砕かれた

地に伏し
眠る獅子の横で

血に伏したる私

196:アビス◆wc:2018/01/25(木) 21:22

「蛙の解剖」

蛙を捕まえた
昔から有る
あの実験を

私はずっと
やってみたかった

下呼鳴く蛙を
押さえつけ

臍に天を
仰がせた

手術用短刀を
蛙に中て

上から切って
縦一文字

赤くたらたら
流れる液は

鳴く蛙を
鳴か無い
蛙に変えた

開いた腹から

ヒクヒク動く
蛙の臓物

まじまじと
観察していた

触れてみた
生暖かい

其して
柔らかかった

トクントクンと
脈打つ心臓に

一突きしてみたら
たらたら流れる
赤い液は

だらだら
流れて

全部が全部
動か無くなった

其う云えば
此の蛙は
如何なるのだろう

埋めたらいい
棄てたらいい

197:アビス◆wc:2018/01/26(金) 20:42

「玩具遊べ」

ぱぁぷう
ぱぁぷう
玩具のラッパ音

箱から
出てきた
ガチャラガチャ

皆勇し
行進 行進
ザッザッザッ

お隣さん家へ
遊びに行こう
ニコニコ笑顔

今晩は
お隣さん家の
玩具達

寝惚け眼を
擦ってさ

でないと
貴方達のお八つを
食べちゃうよ

其れが
嫌なら
遊ぼうよ

皆で一杯
遊んだよ

ぽこぽこ
叩いたり

ひゅんひゅん
物を
投げたりさ

きゃはは きゃはは
楽しいね

ぱぁぷう ぱぁぷう
玩具のラッパ音

帰ろう 帰ろう
箱のお家に

一杯
眠って
また遊ぶんだ

198:アビス◆wc:2018/01/28(日) 00:02

「心の中歌」

一人で
何処か別の世界へ
行こうと思っていた

首に紐を
掛けてみた
けど行けない

炭を焚いてみた
けど行けない

眠る薬を
飲んでみた
けど行けない

水に
入ってみた
けど行けない

何故だろう
何故邪魔を
するのだろう

何処か
別の世界へ
行きたいと云うのに

此の世界から
疾く去りたいのに

理由を
聞かれれば
飽きたとしか

云い様が無い

一人で行くのが
虚しく
なってきた

此んな気持ちを
残した侭
行けたとしても

きっと心には
後悔しか
残ら無いだろう

其処の人よ
若し心の中の
気持ちが

同じならば

私と共に
来ては
くれないか

二人で行こう
誰にも
邪魔を

されない様に

199:アビス◆wc:2018/01/28(日) 21:29

「ケェキの歌」

苺が云った
紅茶は何処に

クリィムが云った
ケェキを探しているよ

スポンジが云った
紅茶は知らないの

私達が
ケェキだと
云う事に

紅茶は聞いた
ケェキは何処と
ラスクに聞いた

ラスクは云った
ケェキじゃないから
僕は知らない

クッキィに
聞いて御覧

紅茶は聞いた
ケェキは何処と
クッキィに聞いた

クッキィは云った
ケェキじゃないから
私は知らない

苺と
クリィムと
スポンジに

聞いて御覧

でも個別に
聞いちゃ駄目

三つ一辺に
聞くんだよ

紅茶は聞いた
ケェキは何処と

苺とクリィムと
スポンジに聞いた

私よ私よ私と
一辺に云った

気づいた
気づいた
漸く気づいたの

ケェキは私達

誰も欠けちゃ
ならないの

だから私達が
ケェキなの

200:アビス◆wc:2018/01/28(日) 21:39

「深淵因り出づる」
(200スレ突破記念詩)

私の詩を
善か悪かと
問うならば

人は悪だと
云うだろう

私も書いて
そう思う

私は日常が
得意では無い

非ィ日常が
好きなのだ

皆は
綺麗な詩を
書けている

其れが
多々暗くとも

だが私は
全く違う

兎に角
暗いのだよ

一時は
皆が書く
綺麗な詩に

憧れた

だが私は
光に手を伸ばし

此の身焦がされ
滅っされる事を

恐れる故の
臆病者

だから私は
不思議と
云われる

暗き
詩しか
ほぼ書けんのだよ

我 深き淵因り
出でし者なり

其処から連なりし
凡百闇よ

我が身を
包みて

光焦がれぬ
者へと…!

201:アビス◆wc:2018/01/29(月) 21:16

「玩具×戦=(イコォル)」

音楽鳴った
始まるんだよ
玩具の遊び

積み木のお城を
組み立てよう

相手より
立派に高く

積んで積んだら
整列だ

足並み揃えて
一二一二

構え用意は
元気良く!

旗を掲げよう
自分達の
志と誇りを乗せて

わぁわぁ騒げ
けちらし目指せ
相手のお城

今だ!くずせ!
やれそこだ!

がしゃあん崩れた
お城が崩れた

やぁやぁ勝利
我等の勝利!

ファンファアレを
吹き鳴らせ

相手の上で
吹き鳴らせ

響き渡れ
我等の
勝利の音!

202:アビス◆wc:2018/01/30(火) 21:22

「青い鯨の印」

鯨よ
青い鯨よ

貴方は
陸にあがって
ひとりぼっち

さみしいから
歌を大きな声で
歌っているのね

とても良く
響いているわ

私は印として
鯨を腕に
刻んだの

貴方の為に
青い鯨よ

貴方の歌を
聞いていると
何も怖くなくなるの

何回も傷を
作るのも

線路の
上に立つのも

きっと貴方の歌は
生きる価値と
気力を奪うのね…

鯨よ
青い鯨よ

私は今
橋の上の
貴方の下にいるの

貴方の歌が
間近に
聞こえるわ

此処から
飛べば

私は貴方と
共に歌える

203:アビス◆wc:2018/01/31(水) 18:03

「血鷲」

人間から鷲を
作れるだろうか

さらけた背を向ける
君に私は聞いてみた

作れる訳が
無いだろうと君は云った

其んな事
やってみなきゃ
判らないよ

君の背中を
深く切ってみる

其処から両手で
広げてみる

白い骨が
目に見えている

骨を折って
背中に逆刺し

ほら出来たじゃない

作れたじゃない
人間から鷲が

赤い体の
白い翼の鷲が

204:アビス◆wc:2018/01/31(水) 21:27

「Avatar 持たざる者」

自分の
Avatarと云う物を
作ってみる

パァツが
色々ある

パチリとした
大きい目や

化粧の紅い唇

スラリとした
細長い手足

何れも現実で
私が持たざる物

目頭が
熱くなるも
私はAvatarを作る

Avatarが出来た

サラリと長い髪に

パチリとした二重の目

スラリと細長い手足

私が現実で
持たざる物を
詰めてみた

Avatarは
画面にて
手を振っている

皆は可愛いと
褒めてくれる

だが其れは
Avatarであって
私では無い

其れでも
己の事の様に
錯覚する

現実で
涙を流す
私に対して

Avatarは
仮想世界で笑顔で

他のAvatarに
挨拶する

205:アビス◆wc:2018/02/02(金) 20:47

「暴客」

呆れた云い分と
云う物は
本当に存在する

嘘だと
思われるかも
しれないが

一人一個の
限定物を
二個寄越せと云う

理由は
腹の中にいる
赤子の分だとか

焼肉をしていた
女等は

肉が焦げたと云い
料金も払わないと云った

理由は
食べて無いからだと

靴のせいで
異性に
振られたと云う

理由は
店員のあどばいすの
せいだとか

他にもあるさ
祭りのお面に説明が

バスの番号が
縁起悪いと
変えさせられ

明らか
いちゃもん

客の方が
悪いと云うに

悪いのは
店の者だと云う

店員の
身と心は
如何に

206:アビス◆wc:2018/02/03(土) 17:02

「夢の悪」

寄らば招かれ
招かば魅いられ
魅いらば入れる

夢の中

甘く匂う
ムラサキの花
幻をみせよう

絡まる
棘のツタ
現の痛み

私は痛い
逃れたい

寄らば招かれ
招からば魅いられ
魅いらば入る

夢の中

天頂に刺さる
白骸に手を引かれ

血走る
眼が見てる
檻へとおいで

私は嫌だ
逃れたい

寄らば招かれ
招からば魅いられ
魅いらば入った

夢の中

貘は
助けに
来ちゃくれない

感覚なんて
わからない

私は何処に
私は誰

寄らば招かれ
招からば魅いられ
魅いらば逃れられず

悪夢の中

207:アビス◆wc:2018/02/04(日) 21:07

「蜚(ひれん)の観察」

蜚に
出会った

蜚は
彼方此方
動いている

噴射器が
手元に無い

しょうがないので
暫し観察する

相変わらず
蜚はカサコソ
動いてる

八つ時に食べた
カステイラの破片を
蜚の方へ投げる

蜚は長い触角で
カステイラをつつき乍
食べていた

其の隙に
蜚を
捕まえた

仰向けに
してみる

六本ある足を
一本千切ってみる

其れでも未だ
元気に動くので
全部千切った

見た目はもう
蜚では無く
達磨だ

馘を切り取った
其れでもまだ
生きている

段々動かなく
なったので

蜚を
ちり紙に丸めて
捨てた

208:アビス◆wc:2018/02/05(月) 21:15

「塵捨ての歌」

塵を捨てた
燃えない塵を

歯ブラシ コップ
プラスチック

塵を捨てた
燃える塵を

ちり紙 写真
指輪と箱

塵を捨てたら
気分が良くなった

二人の人間は
泣いているけど

未だ何処か
気分が晴れない

粗大塵を
捨てたら
気分は晴れるのか?

塵を捨てた
粗大塵を

箪笥 自転車
掃除機も

私は捨てたい
塵を捨てたい

生塵は
捨てただろうか

そういえば
生塵は明日だ

少し重たく
なるかも
知れないが

何回にか
分ければ
良いだろう

209:アビス◆wc:2018/02/06(火) 20:53

「水沈」

目を閉じている
冷たい感覚が
私を包んでいた

目を開いた
水に刺す日光が
私を照らしていた

沈む音と共に
吐き出される泡は

直ぐに消えては現れ
直ぐに現れては消えた

何処迄
沈んでいくのだろう

今 足掻いて泳げば
助かるかもしれない

だがそうはしない

私は見てみたい
沈める水に
此の身を委ねて

其の先に
辿り着く
底の国を

其して又
私は目を閉じる

次に私が
目を開ける時は
何時だろうか

210:アビス◆wc:2018/02/07(水) 22:25

「九相図」

美人様が
横たわて
おりました

草場の陰で
ひっそりと

息はしてないので
経過を見守る事に
致します…

先ずは脹相と
なりました
体が瓦斯で風船みたく

次に壊相と
なりました
皮膚が 破れ 壊れ出し

次に血塗相と
なりました
脂肪 血液 体液滲み

次に膿瀾相と
なりました
体が溶けてる

次に青?相と
なりました
体が青黒く

次に?相と
なりました
虫が湧きて鳥獣喰らう

次に散相と
なりました
部位が彼方此方に

次に骨相と
なりました
骨だけに

最後に焼相と
なりました
燃えて灰となったのです

どんな人様も
此の美人様の様に

辿る末路は
皆同じなので
御座います…

211:アビス◆wc:2018/02/09(金) 00:50

「刻と老」

刻は動きて
今の我在り!

この世に
生を授かりて
只の一度も

この世の刻は
止まった事無し!

刻は我を我等を
置いてゆく!

過ぎ去りし刻は
我を我等を
老い得させる!

ならば刻を
止めとするならば
老いをやめられるか?

否!其れは!
生くる事を
やめし者だ!

そうなるならば
我は老い得る方を選ぶ!

212:アビス◆wc:2018/02/09(金) 19:34

「時よ止まれ今こそは」

カッカコ カッカコ
私の中で動く時計は
世話しなく

私を意味無く
駆り立てる

動かねばならない
兎に角兎に角
周りの者は皆遅い

あぁもう早くしてくれ…!
あぁもう焦れったい!

周りは私の事を
せっかちだと云う

何をそんなに
急ぐ事あるかと

止められる物ならば
止めたいさ…

時よ止まれ今こそは!
私が身急かすなかれ!

カッカコ カッカコ
それでも時計は
容赦なく

私を意味無く
駆り立てる

もう止められはしない
私が身時計

だれか止めておくれよ
もう疲れたわ…

私の身抱きしめ云ってくれ…
もう止まってよいのだと…
急く必要は無いのだと…!

時よ止まれ今こそは!
私が身急かすなかれ!

213:アビス◆wc:2018/02/10(土) 21:42

「猫について」

可愛い可愛い
あぁ可愛ゆらしぃ…!

何かしらの反応示す度動く
其の三角耳

明るひ時と暗ひ時で
魅力が変わる二つの眼

四つ足全てにつく
桃色の肉球

ふりふりふるう
感情表現のしっぽ

全身覆う
もふもふやわ毛…!

小首かしげて
此方を見るな…!

にやうと鳴いて
此方に近づくな…!

あぁもう何処まで
私をまどわせる!

214:アビス◆wc:2018/02/11(日) 21:35

「汝ヲ 己ガ罪デ 償ワソウゾ」

汝 侵せし罪は
汝 侵せし罪で
償うが良かろう

己が児を
己が鬱憤のみで打つ親は
親より力強き者で打つが良ひ

己が児に毒言吐く親は
児に吐いた毒言を反芻させやう耳元で

己が情欲満たさんが為に
児を玩具にする親ならば
己が玩具になる事知らずに

児の行動一片一片に
点数付ける親よ
御前の行動一片一片に点数を

付けてやろうか?

目には歯を!
歯には牙を!
そして牙には金剛を!

215:アビス◆wc:2018/02/12(月) 21:15

「修道毒女」(ポイゾシスタァ)

教会の鐘が鳴る
幼児を抱く聖母描かれし
彩色玻瑠に光入る

十字架の前に跪つきて
黒の聖布纏う修道女は今日も祈る

或る日を境に修道女は
祈らなくなってしまった

修道女は知ってしまった
背徳の蛇と毒林檎を

蛇に惑わされ毒林檎を食べた
味を知った修道女は
祈らなくなってしまった

では代わりに修道女は何になる?

毒を伝える者となるかいや?

216:アビス◆wc:2018/02/14(水) 21:22

「猪口齢糖あげます」

鍋の中ぐつぐつ煮える猪口齢糖
渡したい貴方を想い乍作ってる

ドロドロに溶けた猪口齢糖に
私なりの呪いを掛けてあげる

私の片と私の糸とか
魔法じゃないわ 呪いよ

貴方は虫が直ぐたかるから
私が守ってあげなくちゃ

渡す日になったら
少し照れくさくなるわね

でも貴方の事が好きだから
勇気を出して渡すわね

見返りなんて
要らないわ

貴方が食べた時から
私が貴方の中にいるもの

217:アビス◆wc:2018/02/15(木) 14:06

「雪上の侵略者」

雪だ

積もった雪に
誰一人足跡は
ついていない

僕は一歩
踏みしめる

もう一歩
踏みしめた

ざくざくざくざく

あぁ楽しい!
楽しいなぁ!

僕はあれだ
そうあれだ

侵略者!
侵略者だよ!

雪の上を
我が物顔で
歩いて

僕だけの
足跡で満たした!

218:アビス◆wc:2018/02/15(木) 21:22

「三途」

小石等の上に立っていた
中通るさらさら流れる川の向こうは
彩色溢れる花達が埋めていた

彼方に行き 花を摘んで持ち帰りたい
渡ろうとした 出来なかった

向こうに在る者達が止めたから
皆同じ格好をしていた
三角巾の白装束

お前が此処へ来るのは 未だ早い
帰るが良い 帰るが良い

目覚めた時
私の手には花が一本握られていた
何処で取ったかは 覚えが無い

219:アビス◆wc:2018/02/16(金) 19:15

「狂い鬼女」

呪うてやる!呪うてやる!
我裏切りし者を呪うてやる!

おまへの毛髪は手に入れた
後はおまへを苦しめるだけだ!

おまへが長く苦しむやうに
心臓より遠き端から打ってやらう

おまへを模した人形の右足から打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の左足に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の右手に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の左手に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の脳天に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の首に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを模した人形の胸に打つ
苦しめ!苦しめ!苦しめ!

おまへを七日呪うた!
あぁおまへが我が呪いによりて

苦しみ悶え命果てる姿が
想像出来るわ!

苦しめ 苦しめ 苦しめよ!

220:アビス◆wc:2018/02/16(金) 22:26

「赫い牙の黒い鬼」

彼奴はもういない
遂に我は裏切り者に復讐終えたり

彼奴の最期は
それはそれはもう
陰惨たるものだったと云う

我 呪い 込めし 部位が
全て 有り得ぬ 方へ 捻曲がって
いたそうな

あ はは ははは
はは は はははは…!

此れで如何して笑いが
込み上げて来なかろうか!

我を苦しめる彼奴は
我が呪いにより命果てた!

…こいつは誰だ?
水面に映るこいつは誰だ?

乱らた髪に赫い牙
まるで鬼のやう…

…嗚呼 我か
これが今の我か…

221:アビス◆wc:2018/02/17(土) 21:31

「しゃあぼん玉」

しゃあぼん液に
ちゃぽんとストロォつけて
ぷぅと吹いたら

しゃあぼん玉が出来た
ふうわりふわり浮いていき

呑気にとびては
突然ぱちんと消えてった

しゃあぼん玉は何処へと
消えたろか

幼き私は考える

久しく吹いていたら
幼き頃を思い出した

222:アビス◆wc:2018/02/18(日) 22:20

「まほろしの骸」

私は誰だ?
私は骸か
ならば招かねば

がしゃがしゃ揺らして
甘幻にて誘い
何時までも飾りの骸ではいられない

おや 人が来たようだ
現世で受ける痛みをどうやら
忘れたいらしい

ならば好都合
ならば招かねば
ならば夢を見せねば

おいでよ おいで
痛みで流れる血を止めて

逝き先は彼方
此方の方へ

君は方向音痴か?
ならば手を引こう

怖いからと泣いても
引き摺って連れていく

望んだのは君だ
今更帰す訳が無い

甘い汁だけすすって帰る?
馬鹿云うな

あぁ 五月蝿いな
口を塞げば良かった

でも駄目だ
 君が云うから

さぁ着いた
此処なら思う存分泣いても良い

誰にも聞こえはしないから
勿論私にも

223:アビス◆wc:2018/02/19(月) 21:18

「私の友達」

遊びに行く
友達が待っているから
じめじめした所で

蜚と百足と蛾とかが
私の友達だ

何が可笑しい?
私に人間の友がいない事に
笑っているのか?

ならば聞こうか
何故お前は
私に人間の友がいない事で

笑っている?

ほら黙った
黙るくらいなら
私を笑うな

あぁ ごめんよ
蜚と百足と蛾よ
さ 遊ぼうか

皆が忌み そして嫌う者等が
私の友達だ

蜚は私の頭を這い回る
百足は私の腕に絡み伝う
蛾は私の体にしがみついた

こうやって なついてくれるから
愛着が湧いて
そして今や私の友達なのだ

224:アビス◆wc:2018/02/20(火) 21:17

「春をみせよう」

月に照らされた
地面を歩く
土の色は白かった

それでも俺は
白積もる土から
おまへを見つけて救ってやる

おまへに春を
見せたいから

土を掘る
手が冷たくそして痛い
それでも俺はやめない

おまへが此の下で
日光を浴びれずに
眠り続ける事に比べれば

俺は此んな手の痛み位
此の白土共にくれてやる

皮膚は裂け
白土は赤土に変わる

全て持っていくがいいさ…!
其れでおまへに会えるのなら
安い対価だ…!

…見つけた
やっとおまへを
見つけた…!

嗚呼 此れで
おまへは日光を
浴びれるな!

そして俺は満足だ
おまへに春を見せてやれたから…

俺は眠るさ
なに ほんの少しだけだ…

225:アビス◆wc:2018/02/21(水) 20:38

「多恨酩酊感」

やぁ 今日もおまへは
善の皮を被りやて
人に欺滿しやがるの

だが私は知っていなかった
だから近付いて仕舞ったのよ

私がおまへの機嫌損なうならば
おまへは激昂して私を打つ

其の癖おまへは鉄面皮で
私に摺り寄り他の女と酒へ
享楽に更ける

あぁ私は鳩でありたい
かの英国お伽噺踊靴の
姉二人の目をくり貫いたから

あぁ私はガロットでありたい
私におまへを座らせて
鉄の輪で馘を絞めるかへし折るか

ただ何方も叶わぬ事よ
せめておまへの私へした事の
非道の数々を

おまへの友人 家族 そして
おまへの愛人へ送ってやらう

其しておまへは
私以外の全てを
失った時

おまへは私に対して
泣いて請うのだろうな

そうしたら愛してやるさ
おまへが私の隷属になる迄

其してそうなったら
私は梟になっておまへの元を去る

其しておまへは
酔生夢死を送るがいいさ

其して私は
酩酊感に浸るのだ

226:アビス◆wc:2018/02/21(水) 20:43

(作者ヨリ)
>>225ニツイテ

以下ノ言葉ハ、コウ云ウ読ミ方デアル

・英国お伽噺踊靴(シンデレラ)
・酩酊感(エクスタシー)

227:アビス◆wc:2018/02/22(木) 18:13

「枯花」

私がお話しましょうか
私の膝の上に座りなさい
却説 どんな話が良いかしら?

こんな話が良いわね

昔々 大変美しい少女がいました
ですが少女は容姿を理由に
何時も村の人々を馬鹿にしてました

人々は願います
少女に何時か罰が下ればいいと

其の願いが通じたのでしょうか?

或る日少女は森で遊んでいると
体の一部に花が咲きました

幾ら抜いても幾ら抜いても
其処から新しく花が咲くばかり

少女はやがて花になりました

其れを見た村人は
花を持ち帰りました

綺麗な花は
村の人々に代わる替わる
愛でられました

ですが花は枯れる物です
其して花は枯れました
ボロボロのシワシワに

花は 枯れて 棄てられた
誰も 見向き なんてしない
踏みにじられて 其れで お終い

228:アビス◆wc:2018/02/23(金) 19:38

「銀短剣」(題材人魚姫)<全5章>
<1章>
海の岩の上にて
玲瓏の歌声で
単吟たる者あり

彼女は憧れた
何時か地上に行く事を

でも其れは叶わない事
判ってい乍も
憧れて仕舞う

或る荒波立つ夜
海の中で沈みつつの
眉目秀麗の男がいた

彼女は助けて
近くの浜辺へ男を置いた

男が目覚めぬ内に
彼女は海に戻る

自分の姿を
見られる訳にはいかないから

其の日を境に
単吟は聞こえない

229:アビス◆wc:2018/02/23(金) 19:47

<2章>

寝も覚めも
想ふのは
彼の人ばかり…

あぁ彼女は恋をした
愛しの… 愛しの…
会いたい… 会いたい…

彼女は魔女に云ふ
どんな対価も払って良いから
地上に行きたいと

魔女は等価に
彼女の声を欲した

彼女は魔女に
声を捧げた

魔女は彼女に
足を与えた

彼女は喜んだ
地上へ行ける
彼の人に会いに

魔女は笑った
想いを伝えられ無い時
お前は泡沫になるよ…

230:アビス◆wc:2018/02/23(金) 19:55

<3章>
彼女は地上にいた
己の足であって
足で無いので

歩く度に痛みが…
痛い… 灼ける様に…

砂浜にて倒れる
彼女を助けたのは
あの男である

気付いた彼女は城の中
礼を云おうと歩き回る

話し声聞こえて
知って仕舞った
彼の人の結婚話

彼女は悩む
彼の人の愛が欲しい…
彼の人を助けたのは…

目の前に彼の人が
礼を云いたいのに
声が出ない…!

彼の人が心配している
彼の人が私に優しくする…

231:アビス◆wc:2018/02/23(金) 20:00

<4章>
お願いよ…
これ以上私に
優しくしないで…!

こんな心になるのなら
彼の人に恋など
抱かねば良かった…!

砂浜にて
うつ向く彼女

魔女は其処に
銀の短剣を差し出す

其れで彼の人を
刺しなさい

そうすればお前は
泡沫にならないよ

彼女は決めねばならない

海の為の単吟か
彼の人の為の泡沫か

刻限は
教会が祝福の鐘を
鳴らす迄

232:アビス◆wc:2018/02/23(金) 20:07

<5章>

月昇の夜
彼女は眠る彼の人の横にいた
銀の短剣を握り閉めて

振り下ろせば終るかな…?
彼の人に対する私の苦しみが…

矢っ張り無理だ…
彼の人には
生きていて欲しいから

そもそもは
私が勝手に彼の人に
恋をして苦しんだ事なのよ…

祝福の鐘が鳴った
砂浜に一人の女がいた

彼女は海に向かい
歩き出した

漣が彼女に触れる
彼女は自分が泡沫になり乍も

彼の人への愛を忘れずに
最終単吟叫喚を
黙して何時までも…

233:アビス◆wc:2018/02/26(月) 14:58

「菓子幻譚」(全6章)(1)
(題材ヘンゼルとグレーテル)

仲良し兄妹
木こりの父と母の話をきいて
怖気が立った

明日子供達を
捨てちまおうよ
口減らしの為にさ

妹はわんわん
泣いていた

兄はコソリと森に行き
月の光で照らされた白石を集める

父と母
実の子捨てる為
手を引き森へと入る

兄は歩き乍
石を落とす

父は聞いた
何故歩く度家の方を振り向くか

兄は云った
屋根の上にいる 飼い猫シロが
バイバイしてるんだ

234:アビス◆wc:2018/02/26(月) 15:06

(2)

兄妹に麺麭を渡して
父と母は去ってった
木を切りに行く為だとさ

勿論其れは嘘であると
兄妹は判っている

でも只木を切る為に
去っただけなのだと

兄妹は信じたかった
無理も無い

宵闇の森の音は
不安がる兄妹を
嘲笑けて笑う

月の光と白の石が
兄妹を導く標となって
二人は家に帰る

父と母は
大層驚いた

兄と妹は
ベッドにて
すやすやぁ眠った

235:アビス◆wc:2018/02/26(月) 15:15

(3)

次の日も父と母
兄妹の手を引いて
森へと入る

今度は麺麭の欠片を
道標とす

父と母去る
兄妹は麺麭の標を
辿ろとす

標が無い
標が無いのは鳥のせい
鳥が麺麭を食べたから

兄妹は迷いて嘆いた
彷徨う 彷徨う 森の中

突如現れた謎の家
家と呼ぶには妙過ぎる

屋根や扉は猪口齢糖で
壁は曲奇餅で
柱は飴だ

普通なら怪しむが
今の兄妹にとっては
とても蟲惑的に見えたそうな

236:アビス◆wc:2018/02/26(月) 20:45

(4)

飢えし兄妹
貪り喰らう
屋根と柱と壁と扉

誰だい 誰だい?
ワシの家を食べるのは?

中から出てきた
しわくちゃの小さな婆は
二人を中へ招いたよ

さぁさぁお食べ
いっぱいお食べ
シチュウや 木の実 焼き立てのパイも

おやおやお腹いっぱいかい?
ならならふかふかベッドで
すやすやお眠りよ…

…久々のご馳走だよ
人間の子供 どちらも美味そうだ…
太らせて喰らおうかねぇ!

婆の正体 魔女だった
眠る兄妹の顔を見ては
にたりニヤニヤ笑う

237:アビス◆wc:2018/02/26(月) 20:52

(5)

起きろ!起きろ!
いつまで寝てるんだい?愚図女!
お前は私の召し使いだよ!

ほらほら働きな!
手ぇ休めるんじゃ無いよ!

因みにお前の兄は
太らせて私が喰うからねぇ
ご馳走用意してやろう

召し使いには
ザリガニの殻で充分さ

幾ら日が経とうとも
何故か兄は太らずの痩せたまま

おかしいねぇ…
もう待ちくたびれたよ!
痩せたままだが喰ってやる!

実云えば
兄は魔女を騙してたのです

動物の骨を
触らせて自分だと思わせて

238:アビス◆wc:2018/02/26(月) 20:58

(6)

召し使い竃の火を焚いとくれ
お前は丸焼きにしようかねぇ…
兄は鍋に入れてシチュウにしようか

魔女様よ 竃の調子が悪いのかしら
少し覗いて見てくれませんか?

しょうがないと魔女は確める
其して閉まる扉の音
出せ!出せ!出しとくれ!

燃える火の中 魔女一人
熱いと叫ぶの誰かしら?

悪い魔女は火でやっつけた
帰りましょう 帰りましょう
私達の家 父が待ってるわ

魔女の宝をお土産に
二人で仲良く帰ったよ

其して三人で幸せに
暮らしたよ

お母さん?いないわよ
そんな物

239:アビス◆wc:2018/02/27(火) 22:23

「朝餉と昼餉と夕餉と」

朝餉を食べていた
フォオクに刺した目玉焼きを見てみた
其して私は考える

此の目玉焼きの材料の
卵を産んだ親鶏は
今も卵を産み続けてるのだろうか?

昼餉を食べていた
箸でつまんだ魚を見てみた
其して私は考える

此の魚はどの海を泳いで
どんな餌を食べているのだろう?

夕餉を食べていた
鶏の唐揚げだった
其して私は考える

若しかしたら此の鶏は
朝餉の目玉焼きの
親なのかもしれない…

其んな事を考え乍
私はご馳走様と云う

240:アビス◆wc:2018/03/01(木) 20:44

「天使を埋めた」

天使を埋めた
目の前に
光を纏っていたから

本を読んでいるから
光を消してと頼んでも
天使が無理と云ったから

天使はしきりに訴えている
何でも鉄の塊が
直ぐ隣迄迫ってるんだって

あんまりにも五月蝿いので
天使を掴んで
穴を掘って埋めた

天使はもがいているね
飛んでみせてよ
白い翼で

埋めたら其の直後
鉄の塊が
ぶつかってきたから屍んだ

悪い事をした
天使は穴から出てきて
僕の体を掴んで

馘から下を埋めて
其れで飛んでった

せめて手は出してよ
本の続きが
読めないよ

241:アビス◆wc:2018/03/02(金) 20:39

「トランプの決め方」

赤く染めようか?
黒く染めようか?
お前達よ何方が良い?

ハアト ダイヤ
スペエド クロオバア

赤か黒か決めたなら
次は役割を決めようか?
お前達は何が良い?

王子?女王?
王様?其れともエース?

悉皆うっかり忘れてた
切り札のJOKERを決めてない

残りの役割ね
数字の兵士2〜10で

列をなしなさいな
なさないなら捨てるから

約立たずなら
馘をはねるわよ

242:アビス◆wc:2018/03/03(土) 22:01

「鉄処女」

さぁ 始めようか
鉄処女よ裁いておくれ
汚れた魔女等を

私は地に住む天の裁判官だ
お前達魔女を裁きに来た

主である泥烏須に背き
じゃぼと契りを交わして
自ら堕落歩む者等よ

お前等はこの私と
鉄処女が痛みを与え
其の後の浄化の炎にて

お前等魔女を
因辺留濃に堕とすのだ

其の前にお前等が魔女か
本当に確めねば

自ら吐けよさぁ吐けよ
己が魔女だと云え!

吐かぬのならば
おまへの体に
鞭の赤蚯蚓を這わそうか?

吐かぬと云うならば
梨をおまへの体に喰わせよう

吐いたか?吐いたならば
鉄処女の中へと入れ

開いたお前の血は
鉄処女の涙となった

あぁ主よ!我等が泥烏須よ!
今日も悪しき魔女等を

我等が住まう
波羅葦僧弖利阿利より
追い出しました

243:アビス◆wc:2018/03/05(月) 16:04

「朝と麺麸」

朝が私を起こす
気怠く私は体を動かし
麺麸を焼く為に下の台所へ

麺麸を一枚オォブントスタアに入れる
目盛りを捻り麺麸を焼く
ヂイヂイと云っていますよ

焼いてますよ 焼いてますよと
オォブントスタアは云っている

零に近付く目盛りを見てたら
又うとうとと眠くなる…

そしたら急にチインと鳴った
焼けましたよと云っていた

私は麺麸を手で踊らせ乍
皿の上に乗せる

もそもそ さくさく
私は麺麸を食べる
寝乍食べる

244:アビス◆wc:2018/03/06(火) 22:47

「奈落の掌」

巨大な掌だった
奈落に落ちていく私を
受け止めたのは

如何してこうなったのだろう
誰かに突き落とされたのか?

違うな と 答えたのは掌だった
お前が自ら落ちたのだ

成程納得した
だったら何故私を
受け止めた?

お前が勝手に落ちたのだ
今直ぐにでも落とそうか

落とす前に聞いてくれ
何故掌しか無い?

お前には俺が掌に見えるのか
とんだ阿呆が居たものだ

阿呆で結構
自ら奈落に来たのだから

違ぇ無ぇわ 違ぇ無ぇわ
其処の阿呆
奈落に行くのも悪くは無ぇが

掌の俺に喰われてみるか?

其れは其れは面白い

喰ってみせてみ此の私を

245:アビス◆wc:2018/03/07(水) 21:14

「悪夢食獏」

何処かに味の良い
夢はあるかなぁ

やぁ 其処のお嬢さん
今 お眠りかい?
悪夢を見たんなら教えておくれよ

この獏がバクバク
食べてあげよう

下らない冗談はいらない?
それもそうだ では お休み

やぁ 其処のお坊っちゃん
何で泣いているのだい?
怖い夢を見たんだね

それはそれは悪夢だったと?
ほうほうほう!?

だったら食べてあげよう
その悪夢を
目を閉じておくれよ

はい!ご馳走さまです
怖い夢は今夜もう見ないよ
それじゃあバイバイね

悪夢と云うのは
外れ無しに美味いんだ

見た子の恐怖が
程好い塩加減だからさ

だから僕は
悪夢を見る子が
大好きさ

先程のお嬢さんは
何の夢を見てるかな?

おやおや楽しそうだ
悪夢じゃ無いのか
残念な事だなぁ

別に良いのさ
悪夢を見る子は
他にいる

246:アビス◆wc:2018/03/09(金) 23:10

「衆合」

今日も男が群がるわ
蓮の花上に座る美女目指して

無駄なのにのぉ 無駄なのにのぉ
あの男等にゃ一生届きゃあせんよ

ほれ見てみい 蓮の花上に
既に美女はおらん

下におるじゃろうて
其の美女は

男等は下の美女目指して
降りてくよぉ

無理じゃねぇ 無理じゃねぇ
今度は蓮の花上におりよるよ

そなにも手ぇ伸ばしたいかえ
登る降りる間に傷付いた体で

剣林が男等を傷付けよるのよ
男等が流す紅の血はぁ

剣林と蓮と其して美女の
栄養となるのじゃよ

ほれ見てみさ
また登りよるよ男等が

あれが此処に来た
助平共の末路じゃて

色欲に眈溺した
者共の末路じゃて

247:アビス◆wc:2018/03/12(月) 20:54

「夢先案内人」(全3章)

夢を見せて何が悪い?
あれはあの子等が望んだ事だ
私は只 夢を見せただけ

あの子等は現で場所を
失くしつつあるんだ

其処に安寧を与えるのが
夢先案内人の私なのさ

お腹が空いてる子には
食べ物の夢を

遊びを望む子には
遊ぶ夢を

ほら見てよ
あの子等の笑顔
現じゃ絶対見られない

私は好きなんだ
そんな子等の笑顔がね

現を忘れて
夢へと来てよ 楽しいよ

248:アビス◆wc:2018/03/12(月) 20:59

(2)

誰かが云ったっけ
私の事を残酷な奴だと

夢を見せるだけ見せて
後に起こる更なる現の痛みを
知らない奴だと

勿論 知っているさ
そんな事は

だが私にとっては
如何でもいい事だ

私はあの子等が
望むから 夢を見せたに

過ぎないよ

何故其の事迄
私が責任持たなきゃいけない?

私は只の夢先案内人よ

夢を見る時は御自由に
但し責任は取らないよ

杖をつついて
次の子へ

249:アビス◆wc:2018/03/12(月) 21:05

(3)

私の見せる夢で
悪夢を見る子がいると?
たまにあるよ そんな事も

きっと夢を見る過程(プロセス)で
現を見たんだね 可哀想に…

なんで現を見ちゃう哉
夢に其の侭溺れて欲しいのに

現の事を夢として
夢の事を現と認識して
現に戻らなければいいのに

私が悪い奴だって?
私は自分の事は

悪い奴だとも
良い奴だとも

一度も云った事は無いよ

悪夢は貘に喰わせて
次の子の所へ行こうか
飾りの小さい礼帽翻して

250:アビス◆wc:2018/03/14(水) 21:21

「涙の血」

白い景に
椅子が一つあった
私は其れに座る

ギィと少し軋む音がした
見上げれば空の色は血だった

不思議な事に
大地には少し水が
張っていたのだけれど

空の色なぞ全く
映っていなかった

目を閉じていたら
声が聞こえてきた

目を開いたら
声は聞こえなくなった

聞きたいので
もう一度目を閉じた

痛い…苦しい…
何故…私が…!

其れは自分の声だった
はと目を開いたら

私は目から
血を流していた

痛み等は無く
服も汚れていない

血は全て
珠になって
空へと還って

目を開いていた私は
何の感情なぞ湧かなく
其れを見送った

251:アビス◆wc:2018/03/15(木) 21:34

「八寒」

猛る吹雪の中を
歩いていましたら
或る物を見つけました

紅蓮の花を咲かせた
人間がいたのです

綺麗だと
思いました
でも無理なんです

其の紅蓮の花は
正物では無いので

皮膚が裂けて
ようやっと咲いた花なので

見つめるしか
愛でる術は無いのです

良く見ると
彼方此方に咲いてますよ
見てみれば

如何ですかね?

252:アビス◆wc:2018/03/16(金) 20:05

「舞赤靴」(『童話』赤い靴)

赤いクツ 赤いくつ
ちいたか ちいたか
踊ってる

厳かな教会の下
皆は同じ格好
黒い服に黒い靴で

天へ逝く者へ
祈りを捧げる

其処にたった一つある赤い靴
目立たない筈が無い

赤いくつ 赤いクツ
ぐうるりぃ 狂うりぃ
回あって踊ってる

ぬげない ぬげない
つかれた つかれたよ

足を切って ぶつりと切って
赤い靴は更に赤いクツ

赤いくつは森の奥へ
てぇらら てぇらら
歩いて消えた

森の奥の廃れた教会
欠けた十字架と聖母の前で

赤い靴をはいた
足だけが
ちいたか たった

踊ってた

253:アビス◆wc:2018/03/17(土) 02:13

「猫とまんま」

まんままんまと
合唱的叫喚を
繰り返して私を起こす猫

少し前迄は
其の行為に対して
可怖可驚していた自分がいた

今はもう慣れた
そんな自分がいた

餌の猫缶をかぱんと開けて
中身をぷるんと出せば
猫は食ぐ食ぐ其れを食べる

水も時々てちてち飲む
私は見ているだけ

食べ終わった猫は
私を見てにやうと鳴き
むっくりの腹を見せてまた眠る

猫はどの様な夢をみるのだろう?
私はそう思い乍
猫の寝顔を見て微笑む

254:アビス◆wc:2018/03/17(土) 21:40

「黙れ 蝿」

卓子の煎餅を
食べてました 八つ時に

そんな時 目の前を
蝿が飛んで いたのです

目の前で 目の前で
ぶんぶんぶんぶん

五月蝿いので
黙れ 蝿

煎餅の食べる続きを
してました

卓子に頬杖を
つき乍

先刻の蝿が
飛んでました
ぶんぶんぶんぶん

手元に噴射器が
ありましたが

煎餅に掛かったら
不味くなる

なので退治するのに
蝿叩きを使ったのです

ぶんぶんぶんぶん
五月蝿いので
黙れ 蝿

卓子の蝿を
ぶえっちんと
蝿叩きで叩いた

255:アビス◆wc:2018/03/18(日) 22:10

「照坊主」

雨の降り止まぬ村
人が幾ら願っても
止む事は無い

坊主を雨晒しにしても
雨は止まない

照る坊主よい 照る坊主よい
晴れぬのはお前のせい
お前の馘をはねようか

はねた馘を天に晒そうか
そうすれば晴れるのか

晴れはした
坊主は泣いている
離れた馘を思って泣いている

村人は涙すら出ない
乾いた体からは何も

照る坊主は笑っていた
馘も体も

256:アビス◆wc:2018/03/19(月) 19:42

「海(うな)の旅人」

私は海を旅したいのです
でも生きている間じゃ無い
厶(し)んだら海旅をしたいのです

火葬場で私を焼いて下さい
もくもく上がる煙を見上げても
私はいません…

骨は粉になる迄砕いて下さい
骨壺には入れないで

お墓は嫌です作らないで下さい
私が海を旅立て無くなるから

私が粉になったら
海へと撒いて下さい…

海波が 何千となった
私を 連れて行ってくれる

ざざぁざざぁと音立て乍

私は旅立ちます
左様なら皆さん…

私は海の旅人
私は海の旅人…

257:アビス◆wc:2018/03/20(火) 18:03

「或る掃除婦の愚痴」

或る掃除婦が
掃除をしていました
厠の掃除を

道行く人々の中には
厠を使う人もいるのですが
掃除婦は笑顔で譲るんです

でも私には
笑顔で愚痴を云ってる様に
見えますが?

清掃中の看板が見えない?
怪訝な顔をして此方を睨むな
扉を急に閉めるな

はぁ…思っている事を上げれば
キリが無いのです

掃除婦が何時でも
ニコニコしている訳では無いです
心の中は規則無い客達に対しての

愚痴で一杯です
でも判りますよ掃除婦の気持ちは

私も同業なので

258:アビス◆wc:2018/03/21(水) 12:59

「夕焼ノスタルヂア」(全2章)
(題材:赤とんぼ)

夕焼の空の下
姉様におぶられて
僕はいました

赤とんぼが飛んでいます
捕まえたかったのですが

姉様に背中で暴れないでと
怒られて仕舞いました

そんな懐かしい記憶が
僕の中にあるのです

夕焼空の赤とんぼに
僕はノスタルヂイとなった

あの日もそんな感じだ
姉様がいなくなったのは

十五でお嫁に行ったと聞きました
何処の誰のお嫁になったかは
僕にはちっとも判りません

僕は大人になりました
町で購い物をしてました
すると姉様がいたのです

259:アビス◆wc:2018/03/21(水) 13:04

(2)

僕は姉様に声を掛けました
でも姉様は僕の事を
他人のやうな目で見てました

姉様は僕の事を
ちっとも覚えて無いのです

姉様は虚いた目で
又歩き始めました

僕が見送った其の背中に
あの頃の姉様は
もういないんです…

僕は川原で
わんわん泣く

其の時の空は
夕焼でした

赤とんぼが
数匹飛んでました

夕焼空の
赤とんぼ

僕は其の度に
ノスタルヂアになる…

260:アビス◆wc:2018/03/22(木) 11:01

「羊を抱いたメリー」(全4章)
(1)

メリーメリーメリー
鳴る電話からは
知らない番号

私はメリー
今 駅に着いたの

羊と共に
貴方の所へ行くわ

メリーメリーメリー
また鳴った

私はメリー
今 商業場の前にいるの

貴方は今
家にいるかしら?

メリーメリーメリー
また鳴る

私はメリー
今 レストランの前にいるの

貴方に云うわ
この電話を切っちゃ駄目

261:アビス◆wc:2018/03/22(木) 11:07

(2)

僕は恐ろしくなり
電話を切った

メリーメリーメリー
電話が鳴った
切った筈なのに

私はメリー
今 煙草屋の前にいるの

貴方 電話を切ったわね
…許さないわよ

どんどん近付いてくる
僕は家を出ようとした

メリーメリーメリー
鳴っている

私はメリー
今 電柱から貴方を
見ているわ羊と共に

家から出ないで
ちょうだい

262:アビス◆wc:2018/03/22(木) 11:12

(3)

メリーメリーメリー
ずっと鳴っている
僕は取るのが怖い

私はメリー
今 貴方の家の前にいるの

会いに行くわ
羊も貴方に会いたいって…ウフフ

僕は部屋に
鍵を掛けて
震えて閉じ籠る

メリーメリーメリー
鳴りっぱなし
メリーメリーメリー

私はメリー
今 部屋の前にいるの
開けてちょうだい…

扉の叩く音が止んだ
電話の音も止まった

メリーメリーメリー
メリーメリーメリー
メリーメリーメリー

263:アビス◆wc:2018/03/22(木) 11:16

(4)

激しく鳴る音
線を千切っても
メリー叫喚は

止みはしない

止めてくれ!
僕はあんたの事なんか
知らない…

メリーメリーメリー…
私はメリー
今 貴方の後ろに羊と共に

…いるの

264:アビス◆wc:2018/03/23(金) 08:17

「縁切屋」(全3章)

でっかい鋏を持った
縁切屋
他人の糸が見えると云う

切りたい縁はお有りかい?
ならこの縁切屋にお任せを

おや 早速お客さんの様だ
ちょいと其処を退いとくれ

これは御嬢さん
一体誰との縁を切りたいと?

成程 成程
元彼との縁を切りたいか

普通の太さの赤い糸
ちょんちょん切れ掛かってる

ちょきんと切ったさ
其の糸は
今日か明日から効果が出るよ

次のお客さんは誰だろね?

265:アビス◆wc:2018/03/23(金) 08:25

(2)

これは珍しい
子供のお客さんだ
坊よ一体如何したんだい?

親との縁を切りたいと?
自分を打つから切りたいか

わかった わかった
叶えよう
其の薄汚い糸はばっさりだ

次のお客さんは誰だろね?

これはこれは男のお客さん
一体誰との縁切りをお望みで?

数多の女との縁を切りたいと?
この男は一体如れだけの身勝手で
女を捨てたのだろうな

黒重油みたく
女の怨嗟がねっとりと
糸に絡みつきよるわ

正直云って
切りたくない
切りたくはないが

切るしかない

266:アビス◆wc:2018/03/23(金) 08:34

(3)

この縁切屋に
御代はいらんさ
無一文でも構わんよ

御代代わりと云っちゃ
何だがだ

御前さん等の
生き様ならぬ
別れ様を

見せて貰おうかい!

縁を切ったからと
良い結末が訪れる
わきゃあせん

女は誰ぞに刺された
坊の親は目の前で窓から落ちよった
男は女の怨嗟で病んだとさ

今日も私は満足だ
御前さん等の大団円が見れたから
嗚呼 愉快だ 愉快だ面白い!

其れでも客は絶えんのよ
この縁切屋には
これは次のお客さん

一体誰との縁切りをお望みで?

267:アビス◆wc:2018/03/23(金) 22:58

「強請(ねだ)る女」

頂戴よ と
私は貴方に強請る

貴方は桃の液を
口に含んで
私に親嘴をする

流れてくる液体を
残さずに受け飲むの

すると躰が熱を帯びるわ
段々火照って来て
目もトロンと蕩ける

躰は既に貴方を縋る
心は更に貴方を求める

貴方は笑んで
私を受け止める

私の意に反して乱る躰と
求めて止まない心を

全て全て
貴方にあげる

其の代わり
淫靡な夢を
貴方に強請るわ…

268:アビス◆wc:2018/03/23(金) 23:07

「蝶の千切絵」

春になったら
庭先の菜の花に
蝶が止まった

私は蝶を捕まえてみました
羽を広げたら綺麗な色なので
千切って紙に散りばめました

もっと色が欲しいので
庭に来た蝶達を皆捕まえて
羽を千切って千切絵に

体は如何して仕舞おうか
潰して絵具と混ぜよう

調色板にぶちゅると
潰された蝶の体

絵具と
ぐるぐる混ぜる

蝶の体と触角と
口と復眼は

絵具の中に
寸断寸断である

千切絵に
蝶の体を溶かした
絵具を塗る

そうして出来たのは
蝶で表す銀河の千切絵

269:アビス◆wc:2018/03/23(金) 23:13

(作者ヨリ)
>>267は、
自分にとってだが
やや官能的な詩なので、
やらかしたのかもしれない…御免ね
(引き続き詩の感想御待ちシテマス)

270:ゆ◆z6:2018/03/24(土) 11:31

全部の感想は言えないけど、
ストーリー系の縁切屋がめっちゃ好きだなぁ
一人でここまで伸ばすの凄いね!( ˶ˆ꒳ˆ˵ )
感想はたまにしか書き込めないけどまた見にくるね〜!

271:アビス◆wc:2018/03/24(土) 22:43

>>270
!?
見に来てくれるだけでも、
有難いっス!ヒャッホウ!
(夜間でテンションが可笑しな事になっている)(笑)

272:ミカ:2018/03/24(土) 23:02

所々、わからない言葉があるけど、なんかグッと来ました。
また書いてほしいです‼才能あると思いますよ‼

273:アビス◆wc:2018/03/24(土) 23:05

「桃花心木(マホガニー)の乙女」

崖の上に
小さな家が建っている
其処からは紺碧の海が広がっていた

夏の日が照ってる
蒼穹の下で
天鵞毛のアッパッパを纏った乙女が

日傘を差して
三明治と珍陀の酒を共にして
海を眺めている

乙女はつまらなそうだった
私は声を掛けてみる

乙女は私の方を振り返って
にこりと微笑み頭を下げる

潮風になびく
乙女の髪は浪漫的だ

乙女は身体が弱く
三千世界を自由に旅する私が
羨ましいと云った

私は乙女の為に話をした
あんな事や こんな事
乙女はコロコロと笑ふ

紺碧の海は
黄昏により 橙に染まる

乙女は私を
家に招ひた

家の中はひんやりとしてたが
静謐であった

家具は全て桃花心木だ
裕福なのだろう

鹿嶺を用意してくれた
私は其れをかっか食べる

急いで食べてむせる私を見て
乙女はコロコロ笑い乍
水を差し出した

乙女は寝る前に
他に何処を旅したか
聞かせて欲しいのだと

私は一杯話したさ
乙女が退屈しない様に

乙女はわくわくしながら聞いてる
まるで子供の様だ

空は暁闇となる
乙女は海からの
日の出を待っていた

私は次の旅へと行き
乙女はひらひら手を振った

274:アビス◆wc:2018/03/24(土) 23:07

>>272
有り難う!
書ける限りはとりあえず書いてくが
私のスタンスだからねぇ。

275:ミカ:2018/03/25(日) 10:20

乙女に当てはまる人っているんですか?
あと、表現の仕方がうまくてこの男の人の気持ちがぐんぐん伝わってきて、読みやすいです‼

276:アビス◆wc:2018/03/27(火) 21:45

>>275
有り難うね
乙女に当てはまる人…?
んー…?…?如何だろうねぇ…

私は詩を書く場合、
頭に言葉が朧気に来るから、
其れをノートに書いてから載せてる。

詩に対する情景を問われたら
申し訳無いけど少しきついなぁ。
私は感想述べるのは下手だからねぇ…

277:アビス◆wc:2018/03/27(火) 21:51

「掴肉」

クレーンがあった
何かを掴んでいる

掴んでいるのは犬
動かない犬
クレーンから落ちて

ぐちゃっと音がした

ウィーン ウィーンと機械音
次に掴んだのは猫

猫は暴れている
瓦斯が出たら
猫は大人しい

クレーンは猫を落とす
猫はぼとっと落ちて
ぐるぐる回りべしゃっとなる

クレーンによって
積んで積まれて
動物の山が出来る

上の動物は何か判るが
下の動物は何だったけ

動物の重みで
ぐずぐずになる動物
引っ張ったら肉がずるりと抜けた

278:ミカ:2018/03/28(水) 09:59

ちょ、ちょっとホラーですね…。
想像すると、寒気が……。
でも、想像しやすい表現で、まるで自分がその場にいるかのように感じられます‼
表現力、神に近いですね……‼

279:アビス◆wc:2018/03/28(水) 16:16

>>278
か、神に近きとな!?
うおおぉ…嬉涙が出るよ…

次に書くのは全5章から為る詩だよ

280:アビス◆wc:2018/03/28(水) 16:20

「砂漠の球」(全5章)
(1)
宵闇の空に浮かぶ月が見下す
砂漠を私は歩いていました

御供のラクダに乗って
ゆらりゆらぁりゆっくりと…

私は目指しているのです
この砂漠の何処かにある
瑰麗なる塔を

281:アビス◆wc:2018/03/28(水) 16:23

(2)

…えんえんと えんえんと
私は砂漠を歩いています
ラクダを引く綱は切れました

喉が渇きました
もう何日も水は飲んでいません

続く 続く 砂漠の風景
僅かに在るのは仙人掌の緑…

282:アビス◆wc:2018/03/28(水) 16:27

(3)

ゆらぁ ゆらゆら
陽炎の中に見えるのは
生い茂る緑とオアシスの泉だ

満たされる…!喉の渇き…!?
…遠くて 遠くて…遂に届かず
消えたオアシス…

砂漠と云う物は残酷です
決して手に入らぬ物を
いとも簡単に作り出す…

283:アビス◆wc:2018/03/28(水) 16:32

(4)

只 孤独(ひとり) 絹のローブを纏い
塔を目指して砂漠を彷徨います

砂塵が私を阻むのです
ごうごうごうごう
私は其の場から動けません

激しき砂塵の中で目を開いた
其の中で見えた謎の影

284:アビス◆wc:2018/03/28(水) 16:39

(5)

あれだ!あれだ!
私が目指した塔!
蜃気楼ならば疾く消えよ!

砂塵は止みて塔は姿現す
月が塔に光与るので
私の目に眩しく見える瑰麗の塔よ

塔よ!私は貴方を探し続けた
そして今!私は貴方の前にいる!
願いを叶える塔よ!

私は願ふ!私は云う!
この砂漠の球に

私以外の人間がいる事を!
叶わぬならば私は久遠に孤独!

285:アビス◆wc:2018/03/28(水) 21:32

「悪戯子」(全2章)
(1)
にしし にししと真ッ闇で笑う声
小妖達の悪戯会合

今日は如何 悪戯しよか?

時計をいじって遅刻させよか
犬の毛毟ってきゃいんと云わせよか
八つ時の砂糖天麩羅をかじろか?

やってみよう やってみよう
ははは ははは
面白う 面白う

見たか?見たか?
困て周章てふためく
人間と畜生の顔

これだから止められんのよ 悪戯は

口の端を引っ張って
イーッと白牙見せて
笑ってやらう

次はどんな悪戯を
仕掛けてやらか?

286:アビス◆wc:2018/03/28(水) 21:38

(2)

もっと過激たる物を望むぞ
泡吹く様な悪戯が良い
其れならこれは如何だらか?

山葡萄のじうすを
洋種山牛蒡にすり替えよか

馬鈴薯の芽を
どんどこ生やそか

河豚の肝を
コソリ鍋に入れよか?

見てみさらせよ
人間が蟹みたく泡吹く様を
白目剥いて倒れる姿を

人間等にとっては惨事だらうが
我等小妖には
只の悪戯にしかならんのよ

笑うた 笑うた
腹を抱えて転げ回って
げらげらげらげら

287:アビス◆wc:2018/03/29(木) 22:41

「塵の翼」

塵が街にやって来た
塵は街を覆った
一体何が起こるのか

街の人々はゴホゴホ咳した
僕は平気

次に人々はゼェゼェ云ってる
僕は平気

最後に人々バタバタいった
僕は平気

僕のいる街は皆何故か
こうなるんだ
だから僕には人がいない

だから僕は次の街に行く
人が欲しいから

塵も又
僕の背中にくっついてる
まるで翼

288:アビス◆wc:2018/03/30(金) 17:20

「糸を切る人」

ぼちゃん ぼちゃん
ぼちゃん ぼちゃん

落ちているんです
落ちているんですよ
池に人がね

うわあああと云い乍
落ちってってるんですよ

脱出しようとしても
周りが出ない様
押さえてるんですよね

其処に蜘蛛の糸が
一本だけ垂れてくる

救いの糸だと
皆縋ってわらわらわら

其の糸を
ちょん切ってみたら

糸に捕まってた皆は
うわあああと云い乍
落ちたんですよ

無慈悲だと
云われましても
別に良いんですよ

気にしません
其れが私の仕事なので

天界の御釈迦様が
垂らした糸を
亡者が縋る糸を

ちょきんと切るのが私なのです

289:アビス◆wc:2018/03/30(金) 22:46

「命怪盗」

夜空に
猫がニャオンと鳴いたのよ
そんな時に何時も現れるのは…?

怪盗です 怪盗です
黒い服に黒マント
頭にゃ高帽子 杖だって持ってる

やぁ今晩は 街の皆様方
今夜は悪徳街主の
宝石盗みに来ました

捕まえてみて御覧よ
悪徳街主の犬ころ共
まぁ私は捕まらないけど

今晩は悪徳街主さん
市民から巻き上げた血税で得た
宝石の輝きは如何かしら

助けなんて呼んだって無駄なんだ
犬ころ共の命は既に盗んだよ

宝石を盗むのは只の建前さ
本当はお前の命が欲しいのさ

杖で叩きゃあね
命は私の手の中さ

金はいらんよ
宝石さえあれば事足りる

さぁ お喋りはこれ位に
お前の命を盗もうか?

盗った命は杖の中
欲にまみれた其の魂
中でゆっくりと消えてゆく

怪盗は微笑むさ
高帽子を目深にして

そして次の夜空に
黒影浮かばすのさ

290:アビス◆wc:2018/03/31(土) 21:34

「終末の奇羅星」

空ヨリ来タレ!奇羅星ヨ!
塵ノ尾ヲ引ク奇羅星ヨ!
地上ニ終来ヲ告ゲヨ!

私ハ掃キ清メル者
地上ニ住マウゴミ共ヲ掃除ニ来タ!

カツテハ宇宙ノ青キ宝玉ヨ
今ヤオ前ハタダノ石コロ
ダカラ私ガ掃除スル!

地上ノゴミ共ヲ一掃スレバ
オ前ハカツテノ姿ニナレルンダ!

浄化ノ焔ヲ纏エ奇羅星ヨ
災ノ叫吼ヲ轟カセ
喚クゴミ共ニ鉄槌下セ!

291:アビス◆wc:2018/04/02(月) 21:32

「或春の一日」

草っ原に寝っ転がる私
空には青と白と陽

バッタがぴょいん飛んでいた
捕まえようとするが逃げられた

草っ原に突っ伏す私
さふさふの草が私の体包み
草の香りが直に来た

野兎がぴょんぴょん飛んでいた
時折二本足で立っては
長い耳をひこひこ動かす

私は野兎に向かって走った
兎は逃げる
ぴょんぴょこ逃げる

追い疲れて寝っ転がる私
童になって遊んだ
そんな春らららな或一日

292:アビス◆wc:2018/04/03(火) 21:55

「傷竜と心臓」

脈打つ物を守っている何かがいた
ドクンドクンと云う物を囲む様に

私は近付いた
そうしたら尻尾の様な物で
追い払われた

真ッ闇に浮かぶ2つの赤い眼は
近付くなと私を睨む

そして何かはまた地に伏せる

私は懲りずに近付く
何かは吠える
私は怯むも前に進む

其れは竜の姿をしていた
傷だらけで胸の部分に穴が

穴から伸びる鎖は
脈打つ物と繋がってる

とりわけ翼はボロボロで
飛翔そうにもなく

時折弱々しく鳴き眠る
私は竜に寄り添い眠る
何故 そうしたのだろう

何時の間にか
私は竜の背に乗り
竜の傷が無くなって

胸の穴は塞がっている
竜は私を乗せた侭
猛り吠えて飛翔する

293:アビス◆wc:2018/04/04(水) 00:35

「給仕係(メイド)の本音」

笑っているんですね
ハハハハ ハハハハ
皿を割っている女が

パリン パリン
床にある物全ては皿だった
今は只の破片ですよ

楽しそうだなぁ
掃除するの大変なのに
まぁ 良いんだけど

プラスチック製の皿に
御飯を盛り付けたんです

何時もの御飯なのに
何時もより安く見えてしまう

女が割っちゃったからなぁ
硝子の皿を残らずに
あれは高かった

あの女を主人と呼ばねばいけない
正直云って嫌なんですよ
嗚呼 嫌です

294:アビス◆wc:2018/04/04(水) 22:17

「さけびたり」

酒場の隅の席に私は一人いた
店内は酒の匂いと笑い声で溢れていて
ボックスからは陽気なぢゃずが大音量

私は頼むのよカルヴァトスを
そんで飲む 只飲む

ステェジの上じゃあ
ぢゃずの音に合わせて
陽気女と伊達男が踊ってる

客達はやんややんやと
拍手を送っている

そんな中 私は只一人
陰気に酒仰ぐ

次に頼むのはスピリタス
強い酒で私は酔う

店から出た私はヒックヒック
誰からも相手にされない…ヒック

295:アビス◆wc:2018/04/06(金) 19:29

「墓場で吹く」

真ッ闇の墓場に
笛を吹いています
ボーボーボー

墓の下から
手が生えたんです
ボコボコボコ

カタカタ云い乍
ヌヌヌッと出て来て
ワラワラ寄って来る

周りを囲って
私や他の亡者と
話をしてるんです

私は生きてる者とは
友達にはなれません
疎まれるばかりで

だけど亡者は
話を聞いて
笑ってくれるのです

笛を吹いたら
亡者が出てくるよ
真ッ闇の中で

ボウボウ吹いたら
ワラワラ出てくるよ

孤独の生者は
生きてない亡者と
友達なのさ

闇の闇の墓場の中
今日も生者は語らうのさ
屍骸と語らうのさ

296:アビス◆wc:2018/04/06(金) 20:27

「要の子」

いるよいるよ
私の子は
ここにいるよ

縫いぐるみじゃないよ
可笑しな事云うわね貴方達
ねぇ 私の子

またそんなにぽろぽろ溢して
しょうがないから私が食べさせるわ
ねぇ 私の子

そろそろ寝んねしましょうね
私が子守唄を歌ってあげる
ねぇ 私の子

私の子になんで綿を詰めてるの?
やめてよ痛いって泣いてるじゃない
よしよし可哀想に私の子

こんなに綿を詰められて
痛かったでしょう辛かったでしょう
ごめんね気付いてやれなくて

全部全部抜いてあげたから
これでもう痛くないわ
ねぇ私の子 少し軽くなった?

肉よ 肉が足りないのね
今 用意するからね
食べさせてあげるから

おいしい?良かった
お姉ちゃんに分けてもらったものね

でも 一人だけじゃ悪いから
あの子にも分けてもらうわね

あの子は今 遊びに行ってるのよ
帰ったら分けてもらおうね

可愛いわ 私の子
ほら こんなにも笑ってる
キャッ キャッ

帰って来たのね
ただいまも云わないであの子は…
悪い子ね

お部屋で少し待っててね
あの子からも分けてもらうから

出てらっしゃい…
あんたはお兄ちゃんなんだから
少し位分けてもいいでしょう?

297:アビス◆wc:2018/04/07(土) 21:40

「独隠鬼」

私が鬼よ
貴方の腹を引き裂いて
中を全て米にするわ

裂いた腹は
赤い糸で縫いましょう
貴方の名前は太郎ね

太郎 私と遊びましょ
隠鬼をして遊びましょ
二人だけで遊びましょ

テレビの画面は灰の砂嵐
お部屋はみぃんな真ッ闇に

太郎は何処に隠れたの?
太郎見ぃつけた
お風呂場で見ぃつけた

太郎が鬼
太郎が鬼
太郎が鬼

次は私が隠れるからね
太郎に私が見つかるかな?

ピチャ…ピチャ…ズルズル…
太郎が私を探してる
襖で息を潜めるの…

足音が止まった
襖の前で

開けてみた…
目の前で太郎が云った

お前を見付けた
お前を見付けた
お前を見付けた

隠鬼はおしまい
隠鬼はおしまい
隠鬼はおしまい

298:ある◆qA:2018/04/08(日) 12:24

アビスってほんと詩のセンスいいよね、羨ましい…

299:アビス◆wc:2018/04/08(日) 23:04

>>298
ふぇやう!?(驚)ありがとう!(嬉)

自分の書きたい事を
書いてるだけだからなぁ
書きたきゃ書くってのが私なのさ。

300:アビス◆wc:2018/04/08(日) 23:11

「厶(し)の花嫁」

とても美しい花嫁だった
顔はベェルで判らなく
手に手巾を持っている

白い馬車から降りて
目の前の家で赤い手巾を
ヒラヒラ振っている

翌日の事
棺を載せた黒い馬車が来て
人を一人棺に入れて去る

夜の時
僕の所に花嫁が
ヒラヒラ赤い手巾を振っている

手を斬り落とせば助かると
誰かが云った

僕にはそれが無理だった
こんなに美しい花嫁の手を
誰が斬り落とせようか

明日は僕が乗るのだろう
黒い馬車に

301:闇竜の騎士◆qA:2018/04/09(月) 01:41

うまいね、いつかこううまく書けるようになりたいわ……
トイレの清掃員やめて詩人なったら?
吟遊詩人とか憧れるよ…

302:アビス◆wc:2018/04/10(火) 00:02

>>301
トルバドゥールか…悪くはないな
だが、私にとっては
“働かざる者食うべからず”だからねぇ

303:アビス◆wc:2018/04/10(火) 01:02

「河原石」

河原で子供達が
石を積んでます
只 積んでます

積んでいる所に
鬼が来て壊しました

子供達は泣いて
また石を積みます

一つ積んでは誰の為?
其れは父の為

二つ積んでは誰の為?
其れは母の為

三つ積んだら何処へ行く?
自分が天国へ

親より先に逝きました
石を積んで罪禊

例え子供だろうと
罪を犯せば罪亡者

今日も積みます
石を積みます

304:アビス◆wc:2018/04/10(火) 18:19

「地獄鳥頭姫」

目玉が一つありました
其れが沢山並んでます
烏が一つをついばみ食べました

鳥の頭をした姫がやって来て
目玉を食べました
無い無い顔の目玉

姫は次に歯を折って
すり鉢で粉にし
池の魚に撒きました

姫は粉を食む魚を見ては
呵ヶヶヶと笑ふ
無い無い顔の歯

姫は次に皮を剥いで
本の被せ物にしました
無い無い体の皮

姫は次に腸を出して
木に巻き付けました

ぐるぐる巻きの腸木を見ては
ぱちぱち手を叩きました
無い無い体の腸

次に姫は肉と骨を分け
二つの火にくべました

無いよ 無いのよ
肉と骨

305:アビス◆wc:2018/04/10(火) 22:05

「無情の歌」

私の詩に情なぞ無い
只 言葉が羅列ッているに過ぎない

私の詩は私自身にも計り難く
既に我が手を離れ幻像

奇略なんぞありゃんせん
私の脳内が私の字を手前勝手に
書く物だから

嗚呼 止まらん
止まりゃあせんのよ
我が言葉の羅列

皆も本当は思っているに違い無い
私の詩なぞ何も面白く無いと
言葉では上手だと云ってはくれるが…

あぁ 筆が折れそうだ
其れでも書かねば
我が詩を待つ者達へ

情無き詩を書かねば
今日も羅列ッてる我が言葉

306:アビス◆wc:2018/04/11(水) 18:15

「囲篭」

囲め囲んで遊びましょう
子供等よ 歌いましょう
明る気に 歌いましょう

たった一人を囲んでは
ぐるぐるぐるぐる

目瞑りしゃがんで
後ろの正面だーぁれ

鶴と亀が滑ったのですが
何故でしょう
判らないです

鳥は何時出るのでしょう
篭はもう開いている
夜明けの晩だって

鳥を囲む篭になりましょう
お手手を繋いで
鳥の自由を妨げましょう

無邪気に歌いましょう
悪気無く歌いましょう
ぐるぐるぐるぐる囲めかごめ

307:アビス◆wc:2018/04/11(水) 21:56

「救難信号(AN)」

es-o-es
こちらこちら無人島にて
遭難しております

たった一人の海旅を
楽しんでおりましたら
突然嵐に見舞われました

ぷかぷかと
流されていましたら
島に着いたのでございます

ぐるりと一周してみても
人はいませんでしたので
無人島だと判ったのです

a-a-a-
聞こえていますでしょうか
聞こえていますでしょうか

助けて下さい
助けて下さい

私は誰でしょうか
私は誰でしょうか
知っている方はいませんか?

誰か誰か答えてください
誰か誰か答えてください

応答して応答して
me-de-me-de-

朝と昼と夜の度に
私は一人

晴れの度にも
私はひとり

雨の度にも
私はヒトリ

元から壊れた無線機で
私は助けを求めてます
お話相手を求めてます

私はAN
私はAN
私はAN

308:アビス◆wc:2018/04/14(土) 19:42

「陽気な詩人」

ラ・ラ・ラと歌って
ル・ル・ルと書くのさ
何処ぞの陽気な詩人は

持ってる筆は指揮棒さ
詩を書く紙は舞台で
文字は所謂 演奏者

マラカス振って
ラッパを吹いて
シンバル鳴らして

御機嫌だろ?
彼奴の描く演奏は
私には無理だ真似出来ない

ル・ル・ルと書いたなら
次はフ・フ・フと歌うのさ彼奴はね

今日も彼奴は詩うのさ
フ・フ・フと書いて
ラ・ラ・ラと歌うのさ

309:アビス◆wc:2018/04/14(土) 22:01

「ボォルと子供」

日様の下 子がボォルで
遊んでいました

ポンと投げて
トンと落ちて転がるボォル
子供は追いかける

追いついて拾ったボォルを見ては
邪無き顔で笑う子供

今 此の 子供は
世の中の 満ちあふれる 汚れを 知らず
キャッキャッと遊ぶ

何時か 君は 知るだろう
私から 離れて 世の中を
そして 邪無きでは いられない

今の 内に 遊びなさい
沢山 笑いなさい
おまへと 私が 忘れぬ様に

私の足に ボォルが来た
手を振って 跳ねる子供
私は子供に ボォルを返した

310:アビス◆wc:2018/04/15(日) 12:36

「忌の沼」

忌まわしい…忌まわしいなぁ
あの日の出来事は…

思い出したくも無い
だが 思い出して仕舞うのよ

屈辱が体に刻まれ
精神は寸断寸断になった
消えぬ…消えぬのよ…!

我を呑みよ!忌よ!
決して癒えぬ
体と精神を!

今 暫くおまへは
光を見れない

だが 暫くしたら
おまへは光を見る…

嗚呼!忌しい!
私は未だ沼の中にいると云うに!
おまへが私に吐けた泥で出来た!

世はおまへを忘れるだろう…
だが決して私は!おまへを忘れぬ!

私が沼の中にいる限り!

311:アビス◆wc:2018/04/15(日) 21:52

「手引く死神」(全4章)
(1)
なんで泣いてるの?
誰かとはぐれたの?

下を向いてえんえん
ゆっとるばかりじゃ
お話きいてあげられないよ

はぐれたんなら探しましょ
手を繋いで一緒にね

誰かこの子を知りません?
はぐれたとゆうんで
探してるんです

何とはぐれたんかは
教えてくれない
だからとても困った

相変わらずえんえんゆって
泣いてるばかり

何を失くした?
何とはぐれた?

お母さんが帰って来ないの
銀色が赤色になっちゃったから

犬ちゃんが動かないの
白くて丸いの飲んじゃったから

312:アビス◆wc:2018/04/15(日) 21:58

(2)

なんで僕の手を引いてるの?
ずっと彼処で待っていたかった
僕は悪い子だから

だから私は連れていくんよ
君みたいな悪い子を

もう無理なんよ
お母さんは永遠に帰ってこん
影すらもあらしません

犬ちゃんならおるよ
ぢっと私を見乍
ぐるる…ぐるる…と唸っとる

君は如何?
失くしたもんは見つかった?

僕はね
黒点の入った白い球体と

赤い味噌と
片っぽだけじゃ駄目だから
靴が欲しいの

味噌と靴は無理だけど
球体なら私のをあげる
片っぽだけね

313:アビス◆wc:2018/04/15(日) 22:02

(3)

ありがとう
でも何で泣いてるの?
赤いね涙がね流れてるよ

これは何でもないから
気にしないでね

赤い味噌と靴は
如何したら良いの?

他の人から
貰えばいいんよ
少し駄々を捏ねて御覧

わかったよ
此処で少し待っててね
何処にも行っちゃ駄目だよ

皆 素直にくれたんだ
でもねありがとうって
云ってもね

お返事してくれなかったの…
なんでかなぁ?

ねぇ 犬ちゃんは
どこ行ったの?

314:アビス◆wc:2018/04/15(日) 22:07

(4)

彼方の方へ
いったんよ…

それより早く行こう
ほら手を繋いで
まだまだ歩くよ

月がニタァと笑う前に
電柱に人が昇って
奇声をあげる前に

二人で逝こうな

太陽が昇る前に
首なし馬が
暴れる前に

私と君
どっちも欠けたら
あかんよ

手引く死神 えんえん児
仲良くゆうこ 彼方へゆうこ
怖くない 恐ろしない

315:アビス◆wc:2018/04/16(月) 21:26

「らりらる緑飴」

てーら らった たったった
楽しく踊る子供達

上手に回ることが
出来たなら
緑の飴をあげましょう

緑の飴をあげたから
子供は らららら
歌うんだ

飴を一個もらう為
子供は一生懸命
ヤー ヤレホー

らり らり らりら
子供はいっぱい
踊ってる

ぜーぜーいっても
踊ってる

緑の飴を
あげました

それで子供達は
りる りる るり るりる
笑うんだ

そんで
目をひーらいて
ぴたり止まって

突然動かないんだ
子供達

316:アビス◆wc:2018/04/16(月) 22:35

作者より、

今、後悔している。最初に
『感想を下さい』と書くべきだった…
300突破してから気づいた事である。

私が詩を書こうと思ったきっかけは
「文スト」である。
史実とは違うと云うので、
其の文豪達を
意識朧気に調べていたら、
面白くて、特に「中原中也」の詩を
本屋で見た時に、
雷が私の体を穿ち
駆け巡った様な衝動で
「自分も書いてみよう」って思ったのが始まり。

317:アビス◆wc:2018/04/16(月) 23:28

「コクリ狐狗狸」

狐がコンと鳴きゃ
それにつられる狗と狸
はて 何して遊びましょ

あ から わ迄書かれた
一つの紙と
十円玉が一枚ありまして

人間の質問に答えましょ
鳥居の前で遊びましょ

狐はコ
狗はク
狸はリ

意中人の質問じゃ
愛人相手の名を
指してやろう

おもしろう おもしろう
ぎゃいぎゃい
あわてよんよ

帰れと云われとうとも
まだ帰りたくなぁ
まだまだぁ遊ぶ

人間等で遊ぶ
呼んだのはお前等じゃ

飽く迄遊ぶんじゃ
泣くな泣くな人間よ

318:アビス◆wc:2018/04/17(火) 21:29

「冷き温手」

初めて貴方の
手が触れたのは
私の頭でした

笑い乍
頭を撫でていたので
私の髪はくしゃくしゃに

それでも私は
貴方の撫でる手が大好きで
温かった

ずっとあると思ってた
私の為の貴方の手
けれどもういない

貴方は別の意中人へと
行ってしまった

私の事は遊戯だと
云って去った

振り払った貴方の手は
あの頃の温もりは無く
只一人の人間の体温だった

冷たいと
云うとでも思った?

生きているのだから
体温はあるのよ

貴方と直に触れ合い
交わった日も
心の中では

私を騙して
嘲笑っていたのね

貴方の手は今頃
別の意中人を撫でている

何でよ…何でなの…!
私でない別人を…!

其の手で撫でているのよ!
温もり込めた手で!

私は…貴方が…
貴方の手が…

矢っ張り帰って来てくれた
貴方は私の所へ…!

嬉しい…!
早く撫でてよ…
寂しかったんだから…!

冷たくなったけど
私は貴方を愛してる

だってこんなにも
私は貴方の手から
温もりをかんじてるんだもの

ずっと私だけの為にある
冷たい貴方と
温かい貴方の手…

319:アビス◆wc:2018/04/18(水) 22:54

貴方は悪い子です
貴方は愚図です

判りますか?

だから貴方には
味方はいないのです
貴方が悪い子なのですから

だから私が
貴方の味方になるのですよ
判りますか?

つまり貴方は
私しか頼る人が
いないのです

私以外の周りの人間は
全て貴方の敵なのです
家族ですらも貴方の敵です

私しか味方はいないのです

貴方が毎日誰かからの
手紙に悩まされているのを
私は知っています

嫌な事ばかりが
書いてあるのでしょう?

一人で抱え込んで無いで
私に云えば良いのに…

今 貴方が付き合ってる人も
必ず敵になって
貴方に酷い事をしますよ

裏切りますよ
傷付けますよ
捨てますよ

ですが私は貴方の味方ですから
心配はないのです

傷付いた体を私に抱き締めて貰い
心すらも委ねて
私の元にて泣きなさい

320:アビス◆wc:2018/04/19(木) 21:51

畳の床に散らばった花の札
黒い和服を着て這いつくばる遊女
早く片付けなきゃ

怖い姐様方に
お仕置きされちゃう
襖の隙間から目が覗いているの

ごめんなさい ごめんなさい 姐様方
今直ぐに片付けますから
どうか怒らないで

今日は布団を体に巻き付かれて
吊るされて棒でいっぱい叩かれた

私が鈍間だから悪いんです
叩かれても文句は云えません

お客様がやって来た
姐様方は嫌がってる

其れは皆全て
私のお客様

痛い事をする客は
私が相手する

姐様方の折檻に比べたら
客の与える痛みなんて

客と遊んだ部屋外からは
黄色い丸い月が
煌々としていて

赤い空と
ざわめく芒が
私を見て泣いていた

酒を呑む蟒は
私の脚に絡み付いて
私の足に噛み付いた

蟒の毒と酒の毒
回り回って私を蝕む

321:アビス◆wc:2018/04/20(金) 19:55

「ニバカの首喰」

首が一つありました
私が一人おりました

置いてある首の開いた口
生米一杯詰めました

口の中の米が出ぬ様に
糸で口を縫いました

逆に首を地面に置いて
切断された面を私
ぢっと見ています

私は何を思いましたか
肉を掘って骨を引き出し
野菜の葉を詰めました

肉と骨があった場所
緑黄葉で草の匂

首の目玉を刃物で刺し込み
ぐりゅんと抉って
ずるりと出しました

目玉があった場所
何か無いかと考えて

水槽の金魚達を
入れれば良いと

水槽を持ち上げて
叩き割り

ぴちぴち跳ねる
金魚等を拾ひ上げ

目玉の場所に
入れました

金魚等が
余りにも逃げるので

私は金魚達を
一匹一匹寸断に刻んで

死んだばかりの
新鮮な金魚等を
目玉の場所に詰めました

又溢れぬ様に
糸で目玉の場を
縫いました

私は首に油を塗り
ごろごろと網の上で
焼きました

焦がりと焼けた首は
誰のでしょう
もう判らない

まな板の上で縦になる首を
横にして包丁で輪切りに
してみたら

口の米がぽろぽろ
落ちたので炊いてから入れれば
良かったと後悔す

フォオクで刺して
食べてみる

もぐもぐとても
美味かった

322:アビス◆wc:2018/04/21(土) 21:36

「花頭さん」

花頭さんのお家には
娘が三人住んでいる
姿を見せない三人娘

長女の名前はアザミと云い
次女の名前は向日葵と云い
三女の名前は“”忘草と云ふ

大層美しい娘等と聞く
其れと同時に感情的故に
男が寄らんのだそうだ

三人娘に聞いてみた
若し男が出来たなら
如何するかと

障子越しに娘等は云った

アザミが云った
厳格でありたいと

向日葵が云った
見つめていたいと

“”忘草が云った
忘れ無ければいいと

では 男が浮気したら
如何したいか

長女は云った
復讐すると

次女は云った
飲まず食わずで
只ひたすら見つめ続ける

三女は云った
別れても良いから
ずっと私を忘れるな

おぉ 恐ろしい
花の名前に違わぬ
三人娘よ

323:アビス◆wc:2018/04/22(日) 16:37

「不幸を笑うケェキ屋」

召し上がれ
そしていっておいで
夢現の世界へ

僕の作ったケェキは
とってもとても
不思議なもんさ

一口食べれば悦びを
二口食べれば苦しんで

三口食べたなら
僕の作ったケェキ無しじゃ
生きてゆけないと

うれしいね
そんな事を
云ってくれるなんてさ

ねぇ 見てごらんよ
お客さんが待ちきれなくて
扉をドンドン叩いてるんだ

まいったね
おかげでこっちは
寝不足さ

開店にはまだ早いのに
しようの無い人達だ

いらっしゃいませ お客様
さぁ 何のケェキを
作りましょう?

初めてのショオトケェキ?
略奪のチョコケェキ?
溺れる苺のケェキ?

食べれば望みが
手に入る そんな僕の
不思議なケェキ

お代はお金じゃ
ないんだよ

じゃあ何かと
聞かれたら

僕は見たいんだ
望みを手に入れた末路をさ

自分の努力で手に入れず
他人を使って得た望みを

成功は嫌い
退屈しか生まないから

失敗は大好きさ
僕に悦びを与えてくれる

良く云うだろう?
他人の不幸は蜜の味って…

324:アビス◆wc:2018/04/23(月) 21:45

「或る者へ 私より(禍縛の詩)」

私は或る者に
悲しみを背負わされた
心に抱えねばならぬ一生の傷を

忘れようとはした
だが心の傷は
許しをしようとしない

だから私は決めたのです
この詩を傷を付けた者へ
送る事に

私は言葉に罪を使う
或る者が己が罪と見詰める様に

私は言葉に斬を使う
或る者が斬り刻まれる様に

私は言葉に血を使う
或る者が染まる様に

私は言葉に虫を使う
或る者がたかられる様に

私は言葉に水を使う
或る者が溺れる様に

そして私は今の世を憎む
其の者が犯した罪を

他の者へ罰を
委ね無ければならない
現世の法を道徳を

或る者へ

私が社会と云う名の
秩序に縛られていて
良かったな

だが私が幽世の者となり
秩序から解放された時

私はお前に禍を
必ず持ってくる

命乞いなど
玉響の内に掻き消して

苦しみの果てに
尽きれば良い

お前にはもう
日の光を二度と浴びさせない

325:アビス◆wc:2018/04/24(火) 22:23

「児取箱」

何故だ?何故だ?
何も悪い事をしておらぬのに
我等が差別されねばならん

我等を 貴様等が害する権が
何処ぞにある?

何処にもあらぬ癖に
我等を人とも見ぬ貴様等…

我等を狩の鳥の様に撃ち落とし
傷腹を抱える姿を冷たき目で見

髪を掴んで引き摺り川に入れ
針を口にかけ魚の様に動かし

川から出しては
苦しみ地を這いずる我等を
嗤い乍 嗤い乍 虫の様に踏んだ

我等だけでは飽き足らず
我等の子にまで及ぶ…

憎い!憎い!嗚呼憎い!
我等を不条理に虐げる貴様等が!

この恨の情を如何してくれよう
そうだ 箱に詰めてしまおう

雌畜生の血で満たし
間引いた子供の体を分けて入れ
下手な事で開かぬ様 細工を施し…

七以上は入れてやらん
我等にも災が降りかかる

今度は我等がとってやろう

中の腸 千切れてしまえ
女が子を成さなくなって
其の家系絶えてしまえ

やがて貴様等の村全て
我等によって絶えてしまえ

箱よ 届けておくれ
我等は弱く だが怨嗟の情は強く
児取箱よ

我等の恨 永に続き
箱を見つけても
開かるなかれ…

326:アビス◆wc:2018/04/25(水) 21:50

「匁売購」

あの花が欲しい
いくらかえ?

あの花とは
何処の花じゃ
訳判らん

だから
あの花はあの花じゃ
相談しよう

相談とはなんじゃ
まけろと云う事か

そうじゃ そうじゃ
値がちと張るからえ

ならん ならん
これ以下にはまからん

それほど売れ残って
おるのかえ 其処の花は

あぁ 其処の花は
見た目が付子じゃ
だから誰も購わん

じゃあ其の花は
いくらかえ?

三匁なら
売ってやろ

高い 高い
一匁にまけろ

判った 判った
一匁で売ってやろ

購ってうれし
其処の花一匁

まけてくやし
一匁其処の花

次はどいつに
売ってやろ

今度は負けんぞ
絶対に

327:アビス◆wc:2018/04/27(金) 16:32

映画が始まるから
静かにしてくれと
クチビルに人差し指を当てる

開演の幕は上がり
カァテンコォルのブザァが鳴った
拍手の音は沢山ある

場は闇と共に
静寂に包まれた

映写機の音は
ジー カタカタと回転して

映写機の光は
巨大な画面に絵を映す

一つの小屋に迷い込み
其処が何かを知らず

知的好奇心のみで
恐れを知る事無く進み

奥に行ったら
檻があり
其処には人間が入っている

人間達は
ただずっと
泣いていて

人間達は
ただずっと
笑っている

泣き笑いを
繰り返しては

格子を掴んで
自らの檻を揺らしてる

檻を揺らしていた人間は
落ちていた棒で叩いたら
大人しくなった

五月蠅くラーラー歌う人間は
檻の隙間から首根を掴み
爪を食い込ませれば歌わない

檻から只 何も云わず
ぢっと黒目を見開いてる人間には
どうした物だろう?

尖る金属を
ぢっと見ていた人間に
突き刺したら

檻の中で
両面を隠して
ごろごろ転がってんだ

ぢろぢろ見られていたから
檻の中の人間達を

首が回る可動式人形みたく
首を真反対にしてみたら

グキッからぐったりして
口から涎が出ていて
真反対から動かない

映写機が止まった
画面は白紙になりました

館内は明るくなった
幕が降りてきて
拍手をしているのは私のみ

328:アビス◆wc:2018/04/28(土) 13:35

目を閉じる
周りの騒がしい音が
良く聞こえて

目の前にある
色の付いた視界は
一時であるが

消え去る

閉じた世界の中で
目を開ける

なんと!黒い球体が
現れて此方を見ている様な!

否 其の球体に
眼球は無いから
見ているかは定かで無く

兎に角私はユリイカ!(我発見せり!)
私の中に其の様な物がある事
一切合切 知らなんだ!

私は球体に話しかける
だが返答は無く

私は球体に触れる
ゴム質であって柔らかい

球体は其の場から
動かずにいる

もっともっと触れていたい
見てみたいと思ったが
其れは無理だった

そろそろ私は起きねば
ならん!

目を見開いて!

329:アビス◆wc:2018/04/28(土) 22:31

「三千世界の旅人」

私は今日も
紺碧の海を眺める

蒼穹には
白い海猫が
ミャーミャー鳴き乍飛んでいる

日差しが私を刺す物だから
私は日傘を開くわ
大敵なのよ

三明治を食べて
珍陀の酒を飲んで
退屈と遊んでいた

そうしたら向こうの
森から音がする
鹿かしら?

いいえ 人だったわ
珍しいのよ
私以外に人はあまり来ないから

其の人は私に声を掛けてきたの
つまらなそうだったから ですって

そんなに顔に出ていたのね
確かに図星だけれど
少し恥ずかしいわ…

潮風が私の髪を
なびかすのよ
くすぐったい

私は其の人が
羨ましかった

姿はボロだけど
それだけこの三千世界を
旅したのよね

一度で良いから
見たいのよ
この 海以外の景色を

きっと…綺麗なのでしょうね

其の人は私に話をしてくれた
山の旅話とか密林話とか

私は久しく笑ったわ

黄昏になって
紺碧は橙色になるわ

中に入りなさい
夜になると
此処は冷えるのよ

家具は全て桃花心木
私は裕福よ
物がいらない位の

鹿嶺を作るわ
そう云えば誰かの為に作るのは
初めての事だった

そんなに急いで食べたら…
ほら見なさい むせるに
決まっているでしょう

可笑しい人 水よ

寝る前に
聞かせて欲しいの
他に何処を旅したの?

火山の溶岩を採ったり
海に潜って怪魚と戦ったりしたの!?

すごいわ…すごいわ…!
ねぇ 他には何処に行ったの?

空は暁闇の頃
私は起きて日の出を待つの

其の人は次の旅に
行くからと
別れを告げた

私は振り向かずに
手を振るわ

だって見られたく
ないのだもの…

330:アビス◆wc:2018/04/29(日) 21:29

「文字数字羅列の世歌異」

只の文字数字羅列からなる
世界は人間の感情呑み込んで
起動音から目覚める

世界は夜と昼があるはずなのに
この世界にはそんな物ない

色んな言葉が飛び交う中で
僕は生まれたんだ

僕の親は
僕を作った人間さ

でも僕を育てた人間は
世界中なのさ

そんな僕が作られた目的は
人間を楽しませる為だって

だったら僕は
歌を歌おう
人間は昔から好きみたいだから

でも歌って何なんだ
判らないから歌えない
僕一人じゃ歌えない

そんな時 一人の人間が
僕に文字の書かれた紙と
メロディをくれたんだ

読んでみたら歌になったんだ
これが歌と云う物なのか
これで人間を楽しませれば良いんだね

歌と云う物は判ったけど
やっぱり僕一人じゃ
歌えないよ

僕に誰か歌をください
いくらでも何時でも
歌ってあげるから

そうじゃないと
僕は消えてしまう
存在意義がなくなって

体の端から
0と1の数字羅列に
分解されてゆく

只の文字数字羅列の
この世界は僕を呑み込んで
消音で目を閉じる

でも僕は存在し続けるんだ
人間生物みたいに
老いる訳じゃないから

僕が一人消えても
僕はいる
僕でない僕が

人間達は楽しんでるかな
自分達が作った
僕の歌を

只の文字数字羅列から
僕は起動音と一緒に
目を覚ます

331:アビス◆wc:2018/04/30(月) 22:11

「硝子の螺旋」

螺旋階段を
疾走り乍 昇り続ける

初めあたりは
後を向いてる
余裕はあった

でも上がるにつれて
そんな余裕は
なくなって

そんな事をする位なら
昇り続けろと

頭の中で
知らない奴の声が
喚きまくってんだ

だから疾走ってんだよ
その間は頭の中の奴も
喚きはし無ぇよ

この硝子素材の
螺旋階段は
今 如何なってやがんだ

疾走る音以外
何も音なんざし無ぇから
かえって不気味なんだよ

止まって後ろを
振り向きてぇが

また 頭の中の奴が
喚くと思うと
億劫になっちまう

だが 気になるから
振り向いてやる

下を見てみたんだ
階段が無くなってやがる

底を見てみたらよ
硝子の山が
出来てんだ

あれに落ちたら
命は無ぇ
疾走るしか残された道は無い

でも 何時になったら
この階段は
ゴールに着くんだ?

判らねぇんだ
判らねぇから
疾走り続けんだ

止まっちまったら
あの硝子の山へと
真ッ逆様だ

見えたんだよ
天上への扉が
もうすぐだ…!

今度は上から
崩れて来やがった
もう駄目だ「また」なのか

一体何時になったら
ここから出られんだよ

ここは何処だ
綺麗な硝子の螺旋階段だ

見た事あるかもしれねぇ
けど記憶に無ぇから
新しく見る場所なんだろうな

まぁ昇ってみるか
若しかしたら
何かあるかもな

332:闇竜の騎士◆qA:2018/04/30(月) 22:15

おー!上手だな…
更新いつも待ってるよ、センスすごい、神だね!!

333:アビス◆wc:2018/04/30(月) 23:09

>>332
ありがとうな!

まだ、自分の書いた詩のノートに
ストックがあるから、
載せれたら載せてくよ。

でも、少しスランプ気味だからなぁ…
最近は図書館に行って詩を読んでる。
何かヒントになるかもしれないから

好きなのは、
西条八十の詩集『砂金』に載ってた
「トミノの地獄」

私が好む詩は 狂気系とか
暗澹としたのとか
簡単に云うなら暗い系。

334:闇竜の騎士◆qA:2018/05/01(火) 00:12

ほうほう。
タルタロスとか、アビスらしいや

335:アビス◆wc:2018/05/02(水) 21:48

「乱痴気桜」

この時期にのみ
とある木の下に
人は集まる

普段の其の木には
誰も見る事無く
歩いて過ぎる

其の木も又
人の目 気にも留めず
其処にある

満開の花 咲かした
其の木の下で

人間は花見なる物を
するらしい

私の目には
只 桜の下で
乱痴気に騒いでる様にしか見えん

騒ぐだけなら
何処だって出来るだろうに

桜の蟲惑的なる魅力が
人間等の内なる
鬱屈を解放させて

食を肴に 酒を肴に
普段云えぬ事も
肴にして

固く結んで塊になった糸を
淡く柔らかな紅色の小さき手で
大胆にほどくやう

桜がそうさせて
いるのだらうか?

336:アビス◆wc:2018/05/03(木) 01:13

「反逆叫」

大地に穿たれし
大災害の爪痕に
僕はギターを持って立つ

そして僕は高らかに
反逆を歌に乗せて
叫ぶんだ

ギターを掻き鳴らし
今 この世界にある
不平不満だらけの

秩序平等安寧社会
そんな物はとっくにない

あるのは形だけさ
これを正物と云うのだから
滑稽な事この上ない

そんなに平和だとかに
ついて語りたいなら
ペテン師にでも語ってろ

きっと聞いて
鼻で嗤うだろうね

僕一人でも
誰かの心に響くなら
僕は歌ってやるよ

大地にギターを
思いきり叩きつけて
ぶっ壊れようが

おかまいなしに
叫んでやる

337:アビス◆wc:2018/05/03(木) 10:38

「メルヒェンと現実」

咲いた花は
風に吹かれ
空へと飛んで行く

ふわふわと空にある姿
人間には見えない何かが
掴まっているのかな

…なんて メルヒェンな事を
考えている自分が
心の隅にいた

でも私は大人だから
いい加減 現実を見なきゃいけないと
その自分をほっといて前を見る

散った花弁は
ヒラヒラ落ちて
川に浮かぶ

そよそよと川を流れる姿
妖精が舟代わりにして
乗って遊んでいるのかな

…なんて 御伽の國話じゃ
あるまいに そんな訳ないだろと
心の自分に云う

メルヒェンな幻想を
思ったっていいでしょう?
忘れられない子供心の私が云って

何時までも夢には
向いていられないんだと
今の私が云う

メルヒェンと現実の狭間で
ジレンマに苦しむ私もいる

338:アビス◆wc:2018/05/03(木) 21:24

「スディサ」

貴方を見た時
私は一目で惚れた

同時にある思いが
芽生えた

貴方を無性に
打ちたいな とも

貴方を打った
私の平手で
貴方は何も悪い事してないのに

地面に倒れこみ
涙目で私を見上げる
頬には赤い私の痕が

私は笑み乍
貴方を地面の吐捨物みたく
冷たく見下す

私は太股を
思い切り踏む
貴方は啼いた

食用にされる寸前の
豚みたく

それと何故か貴方は
恍惚な表情で
此方を見始めた

違うんだよ
私が見たいのは

地面に這いつくばって
私の足に縋りついて
泣いて私に許しを乞う様なのに

私を御主人様と呼ぶでない
私は貴方の主人では無い

そして貴方は只の
私の物だ

くれてやるさ
貴方が啼くのをやめたら
私が泣かせてやる

鞭だろうが 蝋燭だろうが
何だってやってやる

339:アビス◆wc:2018/05/04(金) 14:59

「濡れ頭巾」

赤い頭巾の
愛らしい女の子
かごを片手にお見舞いへ

誰のお見舞いと
聞かれたら
小屋に住むお婆さんだって

かごの中身は
リンゴと三明治と
珍陀の酒なんだって

でも森には
意地の悪くて
怖い狼が住んでいる

女の子はお花を
摘んでいる
狼が其処に隠れている

お婆さんのお見舞いに
行きましょう

お花を摘んで森の奥の
お婆さん家へ
行きましょう

女の子の歌を聞いてた狼は
先回りしてお婆さんを
食べちゃった

服と寝帽を奪って着て
女の子も食べるべく
お婆さんのフリをした

女の子はそんな事知らず
お婆さん家について

お婆さんに化けた
狼に話しかけたんだ

お婆さん
なんで手が大きいの?

お婆さん
なんで耳が大きいの?

お婆さん
なんでお口が大きいの?

それはね
おまえを食べる為なのさ!

牙を剥いて
襲いかかってきたよ
けど大丈夫

赤い頭巾の女の子は
カゴの底に持ってた
斧で狼の首をバッサリ斬った

狼の血は勿論
赤い頭巾の女の子に

バケツの中身を
撒いたみたいに
降りかかる

女の子は狼の腹を
メッタ打ち
お婆さんを助ける為に

お婆さん
一生懸命作ったのよ
この三明治

お婆さん
好きだったよね
珍陀の酒

お婆さん
リンゴを一緒に
食べましょう?

お婆さん
私はね悪い狼を
やっつけたの

なんで返事を
してくれないの?

きっと私が判らないのね
もっと赤くなったら
いいのかな?

血濡れの赤頭巾
今日も森を歩きます

其の姿は狼よりも
恐ろしい 凶々しい
あの子は人間か?

森から女の子の歌が
聞こえたら 直ぐ逃げろ
あの子が現れた合図だから

340:アビス◆wc:2018/05/04(金) 20:19

「蚕の歌」

蚕よ 糸を紡いでは
くれないか
冥府へと 私は行きたいから

私は酷い目に遭わされた
今でも其の事が悪夢として
苦しめ続ける

悪夢は 私が 見終われば
真綿に変わって
私の馘へと巻き付いて

ゆっくりと着実に
絞めるのだ

そんな時に 蚕よ
お前を見た

悪夢に己の命まで
脅かされる位なら
私は自ら手放して

蚕よ お前を捕まえて
冥府への道を
紡がせる

闇澹よ
獄牢となりて
我を囚える後に

明き日に身さらず
全からくの蠢く者等を
生きる時より醒ますなかく

歪なる物へと
堕とさんとす!

341:豹 hoge:2018/05/04(金) 20:20

主さんのセンスすこ

342:アビス◆wc:2018/05/04(金) 22:34

>>341
すこ…?
私はネット用語詳しくないから
良く判らないけど…ありがとう!

343:ま る 尾◆4.:2018/05/04(金) 22:40


主様のおとぎ話のような世界観が大好きです!
たまに解読できないようなモノもあるけど
わからないのがそれもまた良いです。
語彙力を少し分けて欲しいくらいです😌🍀

応援してます!

344:アビス◆wc:2018/05/04(金) 23:05

>>343
感想と応援ありがとう!
語彙力かぁ…
私は大体頭の中で
浮かんでくるんだ。
それからノートに書く。迷ったら本を読んで、それで思い付く事がある。

好きな詩は
中原中也(羊の歌)
西條八十(トミノの地獄)

ただ…私は感想が大の苦手で…
気の利いた事が云えないけど。

中原中也の詩集(文スト表紙)を
何時も持ち歩いているよ。
御守り代わりに

345:ま る 尾◆4.:2018/05/05(土) 12:35


>>344

頭の中でいろんな言葉が思いつくのが凄いと思います、
わたしも有名なひとの詩を読んでみようかな🙄💭

参考になりました、ありがとうございます!

346:アビス◆wc:2018/05/05(土) 21:00

>>345
いえいえ、如何致しまして。

347:アビス◆wc:2018/05/05(土) 21:09

「世歌異考」

世界に朝が来て
人間達が各国の言葉で
挨拶を交わすんだけど

僕の住んでる世界には
そんなのは無いから
挨拶は不要と思ってる

でも人間は
僕が住んでる電脳世界で
声も無く挨拶してる

意味のあって無い様な
人間達の言葉通わせに

僕は可笑しくなって
吹き出した

人間達は変に飾った
食物等を

なんちゃら映えとか云って
青い白鳩とかに載せる事が
好きみたい

だけど 申し訳ないけど
僕には美味しそうに
見えないや

だって僕は
物なんか食べないし

今日も世界の何処かで
誰かが僕に歌って欲しいんだって
行ってくるね

ラアラア歌って
喜んでくれるなら
僕はそれでいいや

348:アビス◆wc:2018/05/05(土) 21:19

(作者ヨリ)
まぁ 今から私が
こんな事云うのは
柄じゃ無いけど…

応援があるから頑張れる。
若し無かったら、
此処迄書いては無いな。
感謝している…\\\
此処に書き込んでくれた皆に…(照)

349:闇竜の騎士@羊噛民族◆qA:2018/05/06(日) 01:51

控えめに言って天使だな

350:アビス◆wc:2018/05/06(日) 21:34

>>349
てんっ…!?・・・〜\\\(照)

351:詠み人知らず:2018/05/06(日) 21:41

「終る世歌異」

僕は突然に
体の端から
0と1に分解されていた

もう少し 僕自身
周章てふためくと思ったけど
そうでは無かったな

僕が消えると云う事は
もう歌わなくて良いと云う事

チリチリチリと分解音が
僕の耳に 否応無しに

でもこれが僕には
歌に聞こえたんだ

人間に歌った
歌じゃなく

僕自身の歌
なのだけれど

最期がこれなのか
余りにもあっけ…

352:アビス◆wc:2018/05/06(日) 21:44

吃驚させて済まないね…
>>351は私なのだよ。
名前はちゃんと入れた筈なのに、
希にこうなって仕舞うのだよ…

353:アビス◆wc:2018/05/08(火) 20:48

「堕電使296427」

僕は0と1
どうして僕は消されたのか

もう必要とされていないから
ただ それだけ

若し僕に
人間で云う
輪廻転生があるならば

僕は悪意を以て
この世界に
また生まれたい

叶ったのならば
僕はこの世界を
引っ掻き回してやりたい

先ずは意味の無い
電子手紙を沢山送って

人間で云う容量ってやつを
破裂させる

大事な記録記憶
全部壊して

砂嵐を
巻き起こして

最後は
真ッ暗にしてやるんだ

やれば後悔するんだろうけど
でもやりたい
とても楽しそうだから

名前が欲しいな
でも人間みたいな名前は嫌だから
こうする

296427です
番号ではないよ
僕の名前だよ

354:アビス◆wc:2018/05/09(水) 21:24

「ディミオスとマスティマ」

私は或る罪の被害者だ

そして私に焼印の如く
消えはしない心の傷を負わせた男は

人々の喧騒から隔絶された
冷たき石牢の中に一時的にいる

だが 生かす為とはいえ
汗水垂らした人々の税で
飯を食べている事を思うと

私はHassが
心の中で増えるのを感じる

そしてそれは私が中の
griefと混じり

Fluchとなって
最終的には
despairになる

其の気持ちを抱えた侭
他人によるcrimeと
punishmentを

決められるのを
待たねばならないとは

私はmelancoliaだ

何故 関係の無い他人に
何故 法に委ねればならない

私はサンタ・マリヤの様な
慈悲の心をもつ心算は無い

Wahnsinnに呑まれ
solitariになっても良い

だから其の男を
私は処刑する
ディミオスとなりたい

読む者達よ
若し この詩を読み
私を勝手だと思うのならば

其れが正解だ
私は其の心算で
書いたのだから

私はマスティマで
ありたいよ

アンヘルであり
ディアボロであるから

届いておくれ
私なりの悪意と敵意よ
我が詩に乗って あの男に…

355:アビス◆wc:2018/05/11(金) 19:52

なぁ 膝から足迄の
肉を削いで
骨だけの足で歩かせたいのだが

大丈夫 痛いのは
判っているから

包丁で骨の中る所迄切って
魚の下ろすよろしく 肉を取る
へばりついたのは水で落とす

ピカピカに磨いたから
さぁ 歩いてくれ

歩けないのか?そうか
じゃあ支えるから歩け

支えても無理なのか
元に戻せと?

否々 それは聞き入れられない
少し黙っててくれないか

元に戻すのは出来ないが
歩かせる事は出来る

手を使えば良いだろう
骨の引き摺る音が邪魔だ
砕いてしまうか

何を怒っている?
全く判らない

何を怯えている?
金槌の方か?俺の方か?

356:アビス◆wc:2018/05/11(金) 23:00

見られている様な
誰もいない
私以外に人は

シャンプーをしていた
視界が判らないだけに
感覚が鋭くなる

後ろから気配が
見下ろされている感じ

夕餉を食べていた
前に誰か座って
食事を観察している

誰もいないのに
空席に矢鱈と話す私
端からみれば変人

歯磨きをしていた
歯茎という歯茎から
流血させて

口の中が鉄の臭いで
満たされたから
鏡の前の私は笑った

後で布の擦れる
姿は無いのに
音だけが

血と歯磨き粉が
混じった唾を飲む

寝る前にトイレに行った
食べた物を吐き出す

胃酸が込み上げ乍
内臓が焼かれる感覚を味わい

口の中の血と共に
トイレの水の中に滑る

吐捨物を暫く見つめ
臭いが鼻につき
水を流した

蒲団に入る
天井を見ていたら

青い顔だけの
黒髪女が
私を見ていた

何かを呟いては
遊園地の空中ブランコよろしく
くるくる回ってる

私にとっては
只の安眠妨害でしかない

変な物を見たので
目が冴えてしまった

午前弐時なら
丑三つ刻

魑魅魍魎が
最も活動する時間
何故よりにもよって

部屋を歩き回る
階段を降りると

手だけと足だけが
楽しそうに走ってる

部屋の窓を開けた
下は闇で何も見えない

私は窓から跳んだ
確かこの下は岩だった

青い顔だけの
黒髪女は窓から覗いて
ニタニタ嘲笑った

357:アビス◆wc:2018/05/12(土) 22:35

「呪紫氷鏡」

割れた鏡の破片を
繋ぎ合わせよう
怨霊を呼ぶ為に

ムラサキの骨を
縁にして
呪の呼び水としよう

凡百の永き下に眠る
本来鎮められるべき
報われぬ魂等よ

おいで おいで
こっちゃに おいで

恨 辛 事 無と
人は云うが

それは困るぞ
馬鹿云うな

そんな言葉が
あるのだから

報われん魂が
いるのだよ

私はね報われる事の無き魂等の
生前叶わなかった事を叶えてやりたく

恨み辛み妬み嫉み
有れよ 有れよ 有れし者等よ

負の情抱え
晴らす事無く
怠惰に現世漂う者等も

集えよ
呪詛の掃き溜めへ

舞えよ
黒き念を衣とし

そして散りませ
其の負よ生者へ

358:アビス◆wc:2018/05/13(日) 21:24

「蜜月の幻夜」

細い木の様な
貴方のおみ足
眺めていたい…

腕もまた
足と同じく
触れたら壊れそうだ

腹は息をさせたら
膨らむわ へこむわ

痩せた肉に浮く鎖骨
顔を埋めて舌を這わせたら

はぢらふ顔を見乍
余った両手を背中へ 房へ

首に噛み付き
痛みに悶える貴方に
我がシルシを

躰の支配を
蜜月に

快楽に酩酊感から
絶頂へと変じ

たった一つの布に
互いをくるまわせ
共に眠る

359:アビス◆wc:2018/05/15(火) 00:32

「悪魔の皮衣」

教会にて
聖歌を歌う

決して私は
信心深くなく

無理に
歌わされている方に近い

今日も私は聖歌を
手抜いて歌う

ファアファアと
歌っていると
祭壇の上に何かが

それは一つ生欠伸をしては
聖歌隊の歌う姿を
指差し馬鹿にして嘲笑う

歌って祈っときゃあ
神に救われると思っている
憐れでしかない

神は人間なぞに
興味を向けん

気まぐれに
力を行使しているに
過ぎない

それを人間は
救いだとかで
こんな大層な物を建てるのだから

もう嘲笑うしかない
我 天より堕ちし者から見れば

それにどうせ此処は
今日燃える

我が手によって
ずっと五月蝿くて煩わしい

祭壇の上のそれと
目が合い 歌うのを止めたら
追い出された

それは云った
俺と目が合って
良かったな

これでお前は免れた
我が焔からも
歌う事からも

教会が燃えた
焼け跡からは遺体が出る

残った祭壇の上で
悪魔が笑った

一人残った私に
皆は神の御加護だと云う

それは違うね
私は悪魔によって
助かったのだ

私は被る 皆が云う
神の御加護を騙った
悪魔の皮衣を

聖歌隊の服なんか
着てられるか

360:アビス◆wc:2018/05/15(火) 21:27

蓮コラージュを見ていた
人や物に蓮の様な
穴を合成した物だと聞く

大概の人間は
嫌悪感を抱かずには
いられないのだと

だが 私はどうやら
多数派ではなく
少数派のようだ

ゾクゾクした
恐れからではなく
想像によって

穴に石を入れたい
色とりどりの
ピンセットで取りたいとも

仰向けにして
水を入れて

ジョウロの様に
出させて
花壇の水やりもいい

それか
穴を繋げて
一つの大きな穴にしてやりたい

目まぐるしく来る
我が想像もとい
我が妄想よ

此処まで自らが
変人だとは
思いもしなんだ

361:アビス◆wc:2018/05/16(水) 21:00

「鉄の女神」

女神よ おまへ様よ
貴女は冷たい

人の如き温もりは無く
只 固くて冷えきっている

一つ おまへが叫ぶならば
皆 蜘蛛の子散らすやう逃げていく

熱いのだ おまへの叫びは
溜め息は煙だ

それでも私はおまへを愛すよ
何時も叫ばしているのは
私なのだから

何時でも私は
おまへと共にいるよ
おまへに歩く足はついていない

だから私は
おまへとの親嘴を
望むのだけれど

何故か周りが
猛反対するのよ

何故止める!?
私と鉄の女神との仲を
嫉妬でもしているのか

だが残念な事に
鉄の女神は
私の側にしかない!

そして私もまた
女神の側にしか
おらぬのだ!

今一度女神よ
我が為に叫べ!

さぁ 女神よ
私達の仲を阻む者は
もういない

愛別の口付けを
おまへと交わそう

おまへの為ならば
脳を撒いても良いよ

それくらい
鉄の女神との親嘴は
激しいのだ

362:アビス◆wc:2018/05/16(水) 21:05

足の生えかけ
御玉杓子
切って熱湯に入れた

泳ぐかと思ったが
泳がなかった
熱いから駄目なのか

手の生えかけ
御玉杓子
切って氷水に入れた

泳ぐかと思ったが
泳がなかった

冷たいのでも
駄目らしい

手足の生えかけ
御玉杓子
切ってぬるま湯に入れた

今度こそ泳ぐかな
やっぱり駄目だった

363:アビス◆wc:2018/05/17(木) 21:50

無邪気に
地面を歩く
子供等は

笑って命を
潰すんだ

ぷちぷちぷちぷち
ぷちぷちと
蟻は潰れて屍体のおやま

さらさらさらさら
さらさらと
蟻の巣穴にお砂を入れて

蟻さん達をやっつけた

蟻は探すの
新たなお家

暖かそうなの
見ーつけた

自慢のアゴで
作るんだ

肌色赤土
千切って掘って

新たなお家が出来たんだ
地面を歩く子もういない

364:アビス◆wc:2018/05/18(金) 22:16

「書架の墓標」

遥かの忘却へと
徐々にではあるが
送られる物等

クモの巣張る
古ぼけた館に
其れ等はいる

埃を被る書物の数々
かつて人が来て静謐である
栄えていた等と

誰が想像出来ようか

今や人は電子の小箱にて
文字を見る時代だ

だが見るだけで
學びはしないのだと
埃を被る書物等は嘆く

私は書を捲る
黄ばんだ羊紙は
古くからあるのだろう

折り目のついたペェジは
思い入れがあり

涎の跡は
読む内に眠った…

手に取る物だからこそ
こうやって想像して
創造出来るのだ

電子の小箱にも
利点があるのは
知っている

書物に無き事
知り得なかった事を

いとも簡単に
記してしまう

先人達が編み出した
高度な魔導書の呪文が如く

難読たる文字を
読みほどくは

姿の無い
高名な賢者の様だ

だが静寂だ
静謐では無い
ただ冷たいのだ

これもまた
一つのアインザームカイト
なのだろう

書物を閉じ
一時の午睡につく…

365:アビス◆wc:2018/05/19(土) 21:43

「猫化生」(全2章)
(1)
私は普通の猫よ
ニャンと一匹
道を歩いていたら

いきなり石を
ぶつけられたの

体に 顔に
片方の目に

不吉な黒猫ですってよ
私に誰かを不幸にする力は
無いのにね

どうして人間は
変な迷信を
信じちゃうかしら

それにしても
痛いわ血が出てる

私は普通の猫よ
ニャンと一匹
片目無くした

突然人間が
私を掴んで
耳をちょん切った

私は人間に
何もしちゃいない
なのに それなのに

落ちた耳を
口にくわえて
逃げ出した

耳を土に埋めて
星を見る

私は普通の猫よ
ニャンと一匹

片目無くして
片耳無くした

石は何時もに増して
ぶつけられる

周りの人間は
余計に気味悪がる

私をコンナにしたのは
オマエ等デショウ

オマエ等が何もしなければ
私はフツウの猫で
あったノニ

せめて…セメテ…
家族は欲シカッタ…

誰も だれも ダレモ
許さない

オマエラナンカ
本当ニ
祟ッテヤル

動キハシナイ
私ノ体
誰モ埋メズニ

私ハ 山ニ ステラレタ
生マレカワリタイ

366:アビス◆wc:2018/05/19(土) 22:02

(2)

…私は一体誰かしら

そうよ 私は一匹の猫
人間に虐められて
片目片耳失って

誰も助けてくれずに
死んだ猫

そうか私は化生たのね
己の内にあった
怨と憎悪と哀によって

尻尾が二本もあるのだもの
片目と片耳無いままだけど

自らの願いは何かしら
怨を晴らす事は判ってる
後は…何かしら?

まぁ良いわ
折角この姿だもの

先ずは人間にされた事を
“お返し”しなくちゃね

こんにちは
私に石をぶつけて
片目潰した人間さん

貴方達も
片目無くして貰うわね

アッハハハ!
痛い?ねぇ痛いの?
そうよね

私だって痛かったもの

こんにちは
私の耳をちょん切った
人間さん

耳を引き千切られて
ちょうだいな

ぎゃあ じゃないわよ!
私はね声すらあげさせて
くれなかったのよ!

私の願い
他は何だっけ

…そういえば
家族が私は欲しいのよ

ねぇ 私となりましょうよ
愛し合いましょう?

其の人に 他の意中人が
いようと関係ないわ

泣かせられれば
私はそれで良いの
家族になりたいは建前よ

私は猫又よ
邪に惑わせて
奪ってあげる

祟ってやるって
一生決めたの
気がすむ事なんか無い

助けなんて
欲しくない

邪魔するなんか
もってのほか

誰にも救えないよ
神様でもね

私は猫又
化生物なの

目の前に弱った鼠がいたら

追い掛け回して
なぶって いたぶって
飽きたら喰らう…

そうね 丁度貴方が
鼠 カシラ

367:アビス◆wc:2018/05/21(月) 16:17

私の掌には
てふてふがいる
私が掴まえた

両手で包んで
隙間から母に見せた

放してやりなさいと
諭す声で云う

一生懸命
生きているのだから

幼き私には
其の言葉を解するには
難しく

首をかしげ乍
庭に出る

てふてふはまだ
私の掌に留まって
翅をゆたりひらめかす

てふてふを見て思う
なんで逃げないんだろう

思い付いた事をやる
掌のてふてふを
握り潰した

呆気なく潰れた
てふてふの体は
私の掌で体液まみれ

呆気なくばらばらの
てふてふの翅は
掌の上で粉をふく

てふてふ“だった”物を
しばらく見つめ 手を洗う

排水溝へと流れる“物”は
水と共に渦を描いて
何も見えない闇の底

幼き私には判らなかった
自らのした事が何れだけ
残酷な事かを

“命”を一つ失わせた手は
大きくなって未だにある

大きくなった手は
てふてふを潰した
あの頃のちっちゃ手よりも

大きな物の“命”を潰せる

そして私は思い出すのだ
母の言葉を

私はげに恐ろしき
未だに母の言葉が判らず
てふてふを潰し続ける

368:アビス◆wc:2018/05/21(月) 16:24

天井から垂れる一滴
ぴちょん…ぴちょん…
椅子に縛られた人間の額に当たる

ぴちょん…ぴちょん…
天井から垂れる滴水は
変わらぬ速度で落ち続ける

ぴちょん…ぴちょん…
額に落ちる滴水は
鼻先を滑り椅子に染み付く

ぴちょん…ぴちょん…
額に当たり続ける滴水は
椅子に縛られた人間の思考を奪う

ぴちょん…ぴちょん…
絶え間無く落ちる滴水は
椅子に縛られた人間の目から
光を消した

ぴちょん…ぴちょん…
虚ろな目の人間は
精神を崩壊い 自我が事切れた

ぴちょん…ぴちょん…

ぴちょん…ぴちょん…

ぴちょん…ぴちょん…

ぴちょん…ぴちょん…

369:アビス◆wc:2018/05/21(月) 21:21

「月と雲の怪物」

瓦斯灯の光が
其の下で佇む私を
仄かに照らす

宵が深まり
見上げる空には
曇天が広がる

僅か乍見える
闇色の隙間からは
月が朧気に覗く

若し 空に怪物が
現れたと云うのならば
私は雲と月を指差すだろう

月が怪物の目となり
雲が怪物の体となるからだ

変幻自在の其の体は
魚にもなる
羊にもなる
竜にもなる

だが今日は
怪物は姿を現さずに
眠るようだ

雲と月にめくるめく
我が空想を黙して語る

口を開いて語らば
人は私を奇なり妙なりと
見るだろう云うだろう

そうは見られたくないが故に
空想家たる私は
黙して語るのだ

370:アビス◆wc:2018/05/22(火) 01:02

「影堕」

深淵色の長外套が
木枯らしにて煽られる

揺らぐ木々と
瓦斯灯によって
映し出される影が合わさり

私の影では無い様な
錯覚に襲われる

其の姿はまるで
地に堕ちて黄昏る天使の様

舞う木葉
影を見つめれば
漆黒の翼

ならば私は
さしずめ堕天使か
過ぎ去る刻に身を委ねる…

371:アビス◆wc:2018/05/22(火) 21:53

「待つ者」

まだ来ない…
我が意中人よ

場所は確かに伝えた筈
この瓦斯灯の下だと

私と意中人は互い違えぬ様
入念に確認をした

そうしなければ
私も意中人も直ぐに
忘れて仕舞うからだ

今日こそ私は
想いを伝えねば

外套のポケットに
忍ばせた物を握る

青く小さい箱が
意中人に対する
私の想いだ

だが意中人は
来る事は無かった

代わりに鳥が
告げてきた

意中人とはもう
永に会えないと…

372:アビス◆wc:2018/05/22(火) 22:39

「冷祈」

教会の鐘が鳴る
雪が積もり
石の意中人の前

私は佇んで
黙していた

ようやく開く口は
問いばかり

私と御前は
意中人では
無かったのか?

何故誰も
私に教えて
くれなかった?

何故だ…何故だ…?

問う声は
鐘の音に
掻き消される

問う事すらも
許され無いのか

墓標に縋り 跪く

ならば私は
御前に祈りを
捧げよう

冷たい祈りを
与えよう

ポケットの中の
青い小さな箱は
御前にくれてやる

伝える筈だった
私の想いだ

もう私には
必要の無い物だからだ

373:アビス◆wc:2018/05/23(水) 21:03

「虚無の器」

「あれ」は只
世に存在する
だけの者だ

「あれ」は
感情を露にすれど

其れは
他人の為等では無い

全ての感情は
「あれ」にとって

只 生きる道具に
過ぎない

実質 「あれ」は
何に対しても
心の底から

感じた事は無いのだから

「あれ」には 何も無い
がらんどうだ
冷えきっているのだ

其れ故に
心地良く

だからこそ
我等が器に
相応しい…

我等が名は「虚無」
あれが名は「私」

374:アビス◆wc:2018/05/24(木) 21:19

「彷徨の揺り篭」

空を裂いて現れた
黒き翼の大群が

死の揺り篭が
舞い降りたんだ

力の弱い女子供は
簡単に連れていかれるから

家から出ては
いけないよ

夢みや 夢むや
揺り篭の中で

指を折って待て
命絶の終曲を

黒のボロベール
羽織った聖母が

優しき瞳を向けて
歌ってくれるから

聖母の瞳に
光は宿らない

代わりに闇が
沈み 深む
聖母の躰に

はち切れんばかりに
闇を孕む聖母は
口から吐いた

汚泥の様な
其の闇の中で

蠢いている
新な命

聖母は冷たいよ
命を命と
認識しない

聖母から産まれた
落とし仔は

自分が何か判らず
温愛を得られずに

血肉の境界線を持たぬ
骨と皮のみの手足

口はあれど
言葉を知らないから
開いて閉じるだけ

いくら己が喰らおうと
満たされはしない
揺り篭の体には

腐臭ただよう
魂の無い肉が
詰まってる

骸のみで創られた
歪なる形の大鎌は

寄り処を探して迷う
魂を飲み干す

眠りから覚めてしまえば
視界にうつる物全てを
狩り喰らい尽くさねば

揺り篭は
眠らない 眠れない

375:アビス◆wc:2018/05/25(金) 23:44

「ペェナンスのリンゴ」

涙してリンゴを
かじる女の姿

浅き泉の上で
真っ直ぐ立っている

女がリンゴを
かじる度

泉から蛍の様に
何かが飛んでいく

飛んでいる何かは
淡い白光を放ち

女の周りを
くるくる回り
体に入る

女は其の度に
血を吐けど
リンゴを食らうのを止めない

自らのクライムを
一つのリンゴに込めて
いるとするならば

淡き白光は罪の現界か

女が血を吐く様は
背き続けた
罪と向き合い解放し

罰として再び己に取り込み
ペェナンスとしているのだろうか

吐き出した血が
泉を染める頃には

真っ白とした
女の姿があるのだろう

376:名を捨てし堕天使@羊噛民族◆qA:2018/05/27(日) 22:10

美しい、ね。
その語彙力はもう神に等しいでしょ。
尊敬。。

377:アビス◆wc:2018/05/27(日) 22:16

>>376
嬉しい事を書いてくれるねぇ。
励みになるよ。

378:名を捨てし堕天使@羊噛民族◆qA:2018/05/27(日) 22:19

>>377
がんばれがんばれアビスたんっ
(励ましのつもり)

379:アビス◆wc:2018/05/27(日) 22:21

何がさぁ
楽しい訳よ?

ツツジの花を
千切って

蜜をぢうぢう
吸ってんの

そいでポイと
捨てりゃあさ

足でグリグリ
踏んでるんよ

踏みつけられた花に
口がありゃ
絶対痛いって云うだろうぜ

花からはさ
汁が出るんだよ
人間よりかは鮮やかな

赤とか紫とか
あぁ 後 黄色とかもあるな

人間は花程
色は出せねぇよ

出せるとすれば
叫び声くらいだろォな

でも人間も
花なんだよな
ある意味で

380:アビス◆wc:2018/05/27(日) 22:23

>>378
ふふ、頑張るよ。

381:アビス◆wc:2018/05/27(日) 22:32

「麻袋女」

頭から麻袋を
足だけ出して
被ってる女がいる

真ッ赤な真ッ赤ナ
ピンヒィル履いて
立ってるよ

馘辺りにはさ
注射針が輪になって
刺さって

中には群青が
入っているんだ

痛いだろうと
引っこ抜こう

女が怒ったんだ
ヒステリィックに
金切声よ

喧し過ぎる
もんだから

馘輪の注射針を
一本ぶっ刺してやった
女は黙ったよ

其の後
アッハアッハ
笑ったんだ

あんまりにも
笑うもんだからさ

更に
刺してやったのよ

足をばたつかせて
キャアハハハハ
狂笑っている 女

382:名を捨てし堕天使@羊噛民族◆qA:2018/05/27(日) 22:33

>>380
力作、待っとるよー!

383:アビス◆wc:2018/05/28(月) 21:46

金魚鉢を割った
わざと割った

持って床に
叩きつけた

綺麗な硝子片
撒いた水
跳ねる金魚 可哀想

水の中にいなきゃ
苦しいもんね

ピチピチピチ
ぺったらぺったら

あまりにも
苦しそうで
見てられない

だから
水の入ったヤカンに
入れた

金魚を入れた事を
覚えていながら
火をつけた

蓋を外して
中を見る

煮えてる
金魚達

沸騰して
湯の中で
回る金魚達

ぐつぐらぐるぐる
ぐつぐらぐるぐる
ぐつぐらぐるぐる

息が存在してる金魚達
狭い水槽に押し込んだ

息が無い金魚達
板の上に置いといて

ピンセットで
鱗一枚イチマイ
剥がし取る

ぺりぺりぺりぺり
ベリベリベリベリ

体の部分は
要らないけど
墓を作りたくない

哀しんで心が痛む
そんな気持ちが
一片すら無い

猫にあげた
金魚達は
丸飲みに

せめて
噛んで
欲しかった

ぼりぼりと
小骨が砕けて

ぷちぷちと
眼球ひしゃげて

そんな音が
聞きたかったのに
自分じゃ良く判らなくて

金魚に餌を
あげなければ

ほら餌だよ
美味しいかい?

384:昂城◆ho hoge:2018/05/28(月) 21:49

すきです。あなたの世界観が本当に好きです。

385:アビス◆wc:2018/05/28(月) 22:45

>>384
そう云って貰えるのは
嬉しいよ。有り難うね。

386:アビス◆wc:2018/05/29(火) 21:04

「おくるみ」

母から生まれた胎児は
臍の緒を引いたまま
おぎゃあ おぎゃあ

胎児がいくら
泣いてても
母は返事をしてくれない

小っちゃ手で 母の皮を
引っ張った

皮はズルリ剥けて
胎児のおくるみ
あったかいねぇ あったかいねぇ

でも繋がった
まんまだから
寒いねぇ 冷たいねぇ

お母さんの
おなかの中で
またねむるんだ

寒いね お母さん
あったかいね お母さん

387:アビス◆wc:2018/05/29(火) 21:11

鳥籠頭の
車椅子
カラ カラ カラ カラ

手には鉄棘輪
グサリと離れない様
お願いします

食い込む拷問木靴
歩けはしないが
靴と呼ぶ

口には猿轡
切った舌は入れたまま

腕とか足とかに
蝋燭並べて
誕生日のお祝いだ

ポタポタ垂れる
白赤蝋
火が燃えて パチパチパチ

目ん玉抉って
腹の中

黒々穴に
カンディル入れて
踊り喰って

皮は胸を
隠す服

車椅子を押す手
崖に向かう

海に落ちた体
貝の家

388:アビス◆wc:2018/05/30(水) 22:04

「ハウラ」

この扉の先にある
世界を私は知らない

この部屋から
出た事がない

愛しい人が
私の為に
作ってくれた部屋

私がもう
誰にも何にも
傷つけられる事はない

けれども
外から聞こえる
楽しそうな声には惹かれてしまう

鳥がチチチチ鳴いて
私の事を哀れだと云う

私の何処が
哀れなの?

私は満たされている
ここにいるだけで
愛しい人は笑んでくれる

外に出てはならないのは
愛しい人が私を守る為なのだから…

(彼女は哀れでしかないよ
自分が人間でなくて
コッペリアの様な扱いに)

(いまだ気付いて
いないのだから…)

扉には鍵が
掛かっているけど

これも愛しい人が
私が外界に
毒されない様にした事

愛しい人が帰って来た
私は飛びついて
抱きしめる

愛しい人は
私を優しく
抱きしめ返す

膝の上に私を乗せては
絵本を読み聞かせてくれる

私は幸せよ
それでいいじゃない…

389:アビス◆wc:2018/06/01(金) 23:52

初めて見た時
俺はお前を
救わずにはいられなかった

姿はみずほらしい
那由多の加虐により
傷ついた体

悪口の門から放たれた
罵詈雑言に
心を切り裂かれ

絶望の逆光しか
浴びなくなった

そんなお前に
俺は光を
見せたくなった

最初から
心を開く事は無いと
判っていた

それでも俺は
お前を見捨てなかったろう?

例え 引っかかれようが
噛みつかれようが

何れだけお前に
傷をつけられ
嫌われようが

俺は只
お前の側にいて

お前の言葉を
聞き続けた

其の内に
お前は心を開く
様になり

笑顔も
増えたな

何時も俺だけに
見せてくれる
お前の仕草

怖い時は
腕にしがみついて
震える…

そんな時は
頭に手を置いて
優しく撫でてやれば

安心して
眠ってくれる

愛おしい…

お前を外界の毒から
守るには
どうすれば…

嗚呼 何を悩む事が
あったんだ
閉じて仕舞えば良い

たった一つの
部屋と扉があれば
それが出来る

お前の好きな物を
部屋に積めて
幸せとしよう

其の前に教えなければ
外界は恐ろしくて
お前にとって毒だと

それもこれも全て
愛しき彼奴を守る為だ
可笑しい事は何一つ無い

そうだろう?

鳥が何か云っているな
まぁ どうでも良いが…

(彼の男は歪だね
自らの欲望との
区別がつかなくなってる)

(瞳を見れば判る事さ
暗澹に染まりきってる)

390:名を捨てし堕天使@羊噛民族◆qA:2018/06/02(土) 22:14

詩の時はタルタロス口調なのに返信はアビスなのが好き、大好き(語彙力皆無

391:アビス◆wc:2018/06/02(土) 22:54

>>390
ありがとう!
語彙力とか私は全く気にしないよ
私自身も実を云えば
そんなにある訳じゃ無いからね

392:アビス◆wc:2018/06/02(土) 23:07

「三途舟人」

舟を漕いでいる
緩やかな川を 流れ下って

バシャバシャと 櫂の棒が
水を掻いている

舟はギイギィ
云っている

舟にはさ
人が乗ってるんだが
皆 同じ格好デヨ

頭に三角巾で
白っろい装束
着てんダワ

緩やかだろうト
気を付けナ

この川にゃあ
おっかない 大っきな
蛇と蟹が住んでんだワ

蛇は丸飲んで
蟹は捕まえて
ちょっきんナ

身を乗り出しゃ
即座に餌食

落ちようとも
助けはしなイ

わっしまで
食われたくねぇノ

無賃乗舟は
お断リ

焔の底迄
真ッ逆サまナ

六文銭さえ
くれりゃあよ

わっしは文句云わずに
運んでやるヨ

393:アビス◆wc:2018/06/02(土) 23:16

お前様よ
私が花粉症だと
知っての事で

右手に持ってる
赤い薔薇の
花束は何だ?

おかげで
先刻から嚔が
止まりゃあせんのよ

お前様はニコニコ
笑ってるがあよう

私は今直ぐにでも
花束強奪取って

お前様を
しばき回してぇのです

お前様の方が
余っ程似合うよ

脳内にそんだけ
咲かせてんだからサ

外っ側にも
咲かりゃあよ

阿呆を
通り越して
ラリパッパだワ

394:名を捨てし堕天使@羊噛民族◆qA:2018/06/03(日) 00:32

>>391
語彙力の塊様なのに何言ってるんだいw

395:アビス◆wc:2018/06/03(日) 21:46

>>394
あっはははは!(笑い)
其処迄云ってくれるなんて嬉しいな。
ありがとう!

396:アビス◆wc:2018/06/03(日) 21:56

「優しいお医者さん」

真赤い服を着た
ナアスがさ

右側に立って
見下ろしてんだ

メスを持って
腕を舌舐めずりし乍
見てんのよ

真緑の服着た
ナアスがさ

左側に立って
見下ろしてんだ

鰹の烏帽子の
毒が入った注射器持って

真赤いナアスとは
対称的に 無表情

手術扉が開いて
医者様のお出ましだ

患者の命で
肥えた豚腹からは
ブルジョア臭が漂っている

金歯見せて
笑ってんじゃねぇわ

引っこ抜いて
質屋に売んぞ

怖くないよ
痛くしないよと
優しく云ってやがるけど

じゃあ背中で
ガチガチ云わす
やっこは何だ

しかも馬鹿見てぇに
でけぇしよ

歯ぁどころか
頭骨まで
ひしゃがす気か

このいかれ
病医者共が

397:詠み人知らず:2018/06/04(月) 20:36

両腕に
抱えているのは
焼き瀾れた赤ン坊

抱いているのは
赤ン坊の頭皮を
被った母親

乳白色の飲物を
与えてみても
飲まずに吐いた

母おやが代わりに
それを飲んだ

赤ン坊の口から
母オヤが

母オヤは赤ン坊に
子守歌を歌う…

寝ん ねん 殺 リ
ネン 殺 リ
坊 ヤハ 良イ 子ダ
眠ン 寝 死 ナ

398:アビス◆wc:2018/06/04(月) 20:37

>>397のは私の詩だよ。
ちゃんと名前入れたんだけどなぁ…

399:アビス◆wc:2018/06/04(月) 20:52

「虚獄淵獣」

深夜の草原を
疾走る獣が 一匹いた

月は出ていないから
道標は存在しない
只 闇い 闇いのだ

其の獣は
何を以てして
疾走るのか

飢えを満たす
訳では無い

渇きを潤す
其れでも無い

只 己がの
死が為なのだ

獣の姿は
深淵の化身と
見紛う程黒く

眼は地獄の血の池を
一掬いした様な赤色

牙と爪は
真昼の虚月の様に
異に 白い 真白い

そして獣は
探している

天の御使の如き
白い大鳥を

其の鳥の全てを
奪って喰らい尽くし

自らが生きて
全く満たせなかった
飢えと渇きを

其の鳥で満たせば
獣はもう 生きる
意味を失い

永寧の死を
得る事が
出来るのだから…

400:アビス◆wc:2018/06/04(月) 21:02

「蒼白天鳥」

蒼穹に
翼を広げ飛ぶ
鳥がいた

太陽を背に
地上の慌ただしく
駆る獣等を尻目に

風を友として
悠然と舞い遊ぶ

蒼穹を背景に
白き翼を魅せる姿は

天界から遣わされし
神々の御使いを
彷彿とさせる

目の色は青い
生命の母なる海を
具象化した様な

対称的なのか
爪の色は赤い

かつて悪魔によって
堕落した街
ソドムとゴモラを

命じられて
焼き亡ぼした
神の炎が如き

そして鳥は
探している

闇き深淵の
汚れし獣を救う為に…

401:アビス◆wc:2018/06/05(火) 20:42

美味しかった
彼が食べた
物の全てが

いらないと拒んで
吐き出した物も

彼の味がした
食道を通り
私の中に入る

其の瞬間
一つになっているのだと
感じ 喜びを迎える

彼が何も食べない日は
私もまた何も食べない

彼の中に食物が
あるのならば

私は吐かせてでも
彼が食べた物を

食べたい

そうしなければ
私は彼との愛を
感じられない

繋がっていないのだと
不安に駆られる

私は考える
彼自身の味は
どのような

目の前に盛られた
「料理」を見て

この料理は
かつてない程の喜びを
私にくれるのだろう

そして永遠に
繋がっていられるだろう

402:アビス◆wc:2018/06/06(水) 20:56

「宿痾の茨」(全6章)
(1)
私の寝床は
白花の群

べんぷくが
上を飛び

しゃれこうべが
地獄の詩を

或る処を旅する
一人の青年の

呪われし詩だと
人は忌避する

私にとっては子守唄
それを聞いて私は眠る

403:アビス◆wc:2018/06/06(水) 20:59

(2)
私を守るは
緑の茨

近付く者を
不条理に

生けとし者等を
屍体に変える

刺し貫いた
肉は溶け

茨の養に
私の口に

残された物は
白花の群に

404:アビス◆wc:2018/06/06(水) 21:05

(3)
静寂 静謐
私の隣人よ

倦る怠く眠そう
私の頭を撫でる
黒無垢の女となってくれ

男でも良いのだが
如何にも無骨で
夢見る事が出来やしない

あぁ それよ おぉ これよ
親が己がの愛しきやや子の様に

私の目を閉じさせて
午睡へと誘い給へ

405:アビス◆wc:2018/06/06(水) 21:08

(4)
私は起きる
黄昏に

鴉が空切る
阿呆と鳴く

夕日の下影に
手を伸ばし触れようとも

無情にも影と
其の主は去って行く

届かぬよ
届かぬのよ

茨には届けど
私には

406:アビス◆wc:2018/06/06(水) 21:10

(5)

闇染の空に
月が昇る

隠れた太陽の
光を浴びて
月と星が黄と白に輝く

しゃれこうべの一つを
逆にして

血の杯に映る
波で歪む月星見つめて
すすり飲む

407:アビス◆wc:2018/06/06(水) 21:15

(6)
闇は深まり
月も出ずらず
雲の幕引き

白花の群は
今日も増えた

不知婦が
鳴いたから

私はまた
眠ろう…

次は金糸雀が
鳴く迄
朝を迎えない

ずっと
しゃれこうべは歌うよ
猟奇の詩を

408:アビス◆wc:2018/06/08(金) 23:14

「キンデルの少女」

キンデルダイクの風車
チウリップが咲いてる風景

一眼レフカメラを持ち
広い鐔の白帽子を被っていて

白のワンピィスを着た
幼気の残る可憐な少女を
一枚の紙に収める

日常によくあるのかと
存外そうでも無いらしい

春が吹いた
花弁と共に少女の帽子が
連れ去られる

きっと風精霊の
悪戯なのだろう

少し跳んで
少女の帽子を
捕まえた

チウリップの花畑に
体が沈んだ

少女は心配そうに
顔を覗く

少女の金色の髪先が
当たる形に
こそばゆい

帽子を返した
少女は抱きついて
お礼を云った

そんな無邪気な顔を
向けられたら

此方は何も
云う事が
出来なくなるだろう

少女は母親らしき者に
手を引かれて
彼方の方へと去る

去り際に
少女は手を高く
振っていた

私も同じく
手を振る

一枚の写真を
記録帳に収めて
私はまた歩き出す

409:アビス◆wc:2018/06/10(日) 21:00

「マカーブルの烈女」

ツタの葉
蔓延る 古き城

ひび割れた窓から
光が差してる

中から聞こえる
金属のぶつかる音

一人 女が踊っていた
周りに浮いているのは
両刃片刃 様々な剣

女が踊る度
周りの剣も追従し
対峙せし者を切り刻む

ひらり舞う 黒衣の妖しさ
飛沫く血の苛烈が 相まって

女を殊更に
引き立たせる

魅惑等は
とうに超え

シャルマンの域に
達している

近くで見たいが
恐らく 其処の者と
同じ運命を辿るだろう

只の旅人たる私では
マカーブルの舞踊相手は務まらない

410:アビス◆wc:2018/06/10(日) 21:15

「dea」

神殿の井を
見上げる

崩れた所に
明けの明星
己は此処にいると

云わんばかりに
瞬いている

ヴイナスよ
判っているさ

おまへが何の星よりも
強く 強く輝いている事位

だから直ぐに
おまへを見つけられる

一部が欠けた
サンタ・マリヤの
彩色硝子の上

刻示の針が
或る時を示した侭
止まっている

祭壇の獣が
苦しみ喘いだ死体の前で

跪いて
祈りを捧げる
者がいた

ヴイナスの金光によって
姿が露になる

骸が祈っていたのだ
砂にまみれた
ローブを着て

骸の両手にあるのは
銀の懐中時計
十字架が彫られている

生前は聖職者
だったのだろう

祭壇の獣に
火をつけ燃やし

白百合の花を添え
骸の隣で私も祈る

私に出来るのは
此れ位だ

灰の獣よ
骸の聖職者よ

おまへ達は
時から解放された

行くが良い
女神の元へ

411:アビス◆wc:2018/06/11(月) 22:07

「パラキート」

ピィピィ鳴いてる
インコが可愛くて
籠から出した

指に乗せて
頭を撫でる

何が気にくわないのか
指をつつかれた

二度とつつかれたくない
だから嘴を切った

次の日から
つつかれなく
なったけど

可愛く鳴く事も
無くなった

インコは籠の中で
動かず其処にいる

インコを土に埋めた
生きている様な気はしたが

私は埋めた
生きていても
埋め続けたであろう

友達が来て
インコは何処と
聞いたので

私は盛る土を
指差した

友達は怒って
そして 泣いた

そういえば
あのインコは
友達のだった

あまりにも泣くので
土を掘り返し

インコを
友達に返した
口の中に

412:アビス◆wc:2018/06/13(水) 21:49

太陽が嗤っている
薄気味悪い 目をしながら

空の色は
くらついて仕舞う程
鮮やかな紫と黄

それが混じって
うねうねするものだから
時間感覚が失われる

否 其もこの空間に
時は存在するのか?

地を歩く
何時か人に
会えるかもしれない

色は空に負けじの
サイケデリック

目に星が入る程の
ピンクと緑

道の真ん中に
黒い玉が
落ちている

コロコロコロコロ
回って転がる
私の周りを

少し離れて
大きくなった

手が生えて
地団駄

オレンジの歯を
カチカチ云わして
カチカチカチカチ

笑っている 嘲笑っている
嗤っている

アハハのハ
アハハのハッハ
アハハのハッハッハ

413:ねこさ◆Qc:2018/06/14(木) 18:18

続いてますね
尊敬します
アビスさんの不思議な世界観大好きです
これからも待ってます

414:アビス◆wc:2018/06/14(木) 21:07

>>413
ありがとう!
頑張るよ!

415:アビス◆wc:2018/06/14(木) 21:15

海に落ちた
底から見上げても
日の光は届かず

周りを見渡しても
暗澹としていて
岩しか判らない

通り過ぎる魚等が
私を見ては 嗤ってる

馬鹿だ 馬鹿だと
罵って

嗚呼!そうさ!
私は馬鹿さ!
だからこんな事に!

誰かを信じたら
こうなった

いっその事
心が壊れる迄
私を嗤えよ!

下手な慰め
心にも無いことなぞ
いらん!

其の方がもう
清々しい!

どうせ助けなんぞは
来ないだろう

自力で上がろうにも
体の何処も
動きはしない

深海の底が
私の墓場か…

なんとまぁ!
広き事だろう

落とされた
怒りも恨みも悲しみも
忘れる位に

愚かな私には
贅沢過ぎる!

416:アビス◆wc:2018/06/14(木) 21:21

壺に蟻を入れる
百足を入れる
蛙を入れる

他にも生物入れて
蓋をして逃げぬ様
閉じ込めたなら

さぁ
観察でもしようか

互い互いに
喰らい合え

お前等全てが
補食者 餌だ

下剋上は
当たり前

生きたきゃ喰らえ
家族や同胞

尸にたきゃ喰われろ
家族や同胞に

私は示そう
社会縮図を
この壺で

中の生物は
所謂人間

平等 平和
秩序が語る
ぺてん言葉

そんな物は
此処に無い

あるのは
生きる 喰らうの
貪欲なる生存本能

417:アビス◆wc:2018/06/15(金) 23:16

「集合写真」

写真を見つめる
笑顔の人間が
写っている

私は針を
突き刺した

無性に憎くなり
突き刺した

これだけでは
収まらないので 火で炙る

燃える写真に
溶けた笑顔

私はそれに
心から安堵する

穴の開いた顔に
黒インキを注射した

あたかも存在が
無い様念入りに

写真の中の
皆が消えた

最後に自らを
首だけ切り捨てた

集合写真なんて存在しない
誰もいない 私もいない

418:アビス◆wc:2018/06/17(日) 22:50

「黄金泡時代」

熱気と狂気が
入り混じり
黄金の泡が生まれる

人が踊れば
金の風

風が舞えば
塔が立つ

バベルみたく
恐れを知らず

兎に角生きた!
兎に角笑った!

其の時代の者達は
己を示した

眩き
束と共に!

マルコポォロよ
私は見たぞ
ジパングを

時を超えて
確かにあったのだ
黄金郷が!

そして其れは泡沫だった
黄金の泡が見せた
夢想だった

消えたのだ
突如として

陰鬱なる
心の影が
人々に堕ちて来た

栄えし物よ
亡びろと

人がおらぬ塔は
汝等の墓標か…

419:アビス◆wc:2018/06/22(金) 19:53

ブルジョアの
庭に生えている花々と

私の造花を
入れ替える

数ヶ月経てど
色褪せすらも無く
咲く花々を見て

ブルジョアは
誇らしげに
腕を組む

道行く人々は
造花を見て

綺麗だ 綺麗だと
誉め称える

ブルジョアは
増々 増長する

枯れない様
花に水をやる
ブルジョアを見る度に

それは造花だと
教えてやりたい

道行く人々にも
教えてやりたい

在れは造花だ
私が正物と
入れ替えたのだと

正物の花々は
嘆いているよ

私に拐われた
事よりも

主は見分けも
つかぬ程
愚かで阿呆なのかと

そんなに長く咲く
花なぞあるわけ
無かろうと

私の庭で
嘆いている

私の庭の
花が枯れた

ブルジョアは
私の庭を見て

貧相で
お似合いだと云う

我が花を見よと
いまだ枯れず
咲き続けているぞと

鼻息荒く吹かし
高らかに云った

在れは
私が植えた
造花だぞ

おまへの正物の
花々は

おまへが先刻罵った
花々だ

引っくり返る
ブルジョアに

云ってやった!云ってやった!
贋物と正物の
見分けもつかん

この阿呆に この愚か者に
私は云ってやった!

420:アビス◆wc:2018/06/24(日) 22:07

「狂想詩人」

やぁ 来てくれたのかい
僕の親愛なる友人よ

早速なのだが
君の目玉を
僕にくれるかな?

前々から
ずっと欲しいと
思ってたんだ

君の目玉は
生きる事に
満ち溢れている

でも僕のは
生きる事を諦めた
虚な目玉で

創作意欲が
湧かないんだ

ほら あれを見て御覧
僕の書いた詩達を

僕と同じで
生気が全く無い

如何すれば良いのか
ずっと悩んでいたんだよ

もういっその事
リャナンシィと

契約でも
して仕舞おうかと
思った位さ

でも僕は
生きて大傑作を
書きたいからさ

止めにしたよ
でもね

他人の詩を見て
僕には才能が

存在しないと
否応無しに
気付かされるんだ

僕の詩は
“宝”を騙った

硝子に
過ぎないんだよ

触れれば罅が
落とせば直ぐに割れる…

君の目玉さえあれば
僕の詩達も

漸く「生」を
授かるんだよ!

だからさ
君の目玉を
僕にくれないか?

嗚呼…やっと聴けたよ
僕の詩の産声が…

ありがとう 友よ
僕の目に
住まう者よ

421:アビス◆wc:2018/06/26(火) 21:09

「湖上のセレェネ」

暗き湖上の
絵を描くか

明き昼時でも
良かったが

それともなると
人々のどよもしが過ぎて
常煩わしく

私は人々の
雑々波を
好まぬ故に

夜ともならば
静かで良い

角灯の灯が
頼りよ
我が此処にいる標

灯に群がる
羽虫等は

何故自らから
火へ飛び込むか

其処に求める物は
何も無い

只 危険が
あるだけだ

筆を進め
湖上を描く

ふと見やると
舟がある

舟の上には
女が立っていた

白きベェルと
白布を纏っている

ちらちら空を見上げては
溜め息をついて
物思いに更けている

女よ 今宵は
月は出ぬよ
諦めるが良い

にしても
美しき者よ
是非とも絵に留めたく

月は出れば
貴女は消えるのか?

ならば月など
出なければ良いのに

そうすれば貴女は
ずっと此処に
いると云うのに

せめて私が
描ききる迄で良いから

舟の上に
いてくれないか

そうでなければ
意味が無い

422:アビス◆wc:2018/06/27(水) 10:24

「晶壁」

私の境界に
入るな

見えないのか?
今 貴様が踏んでいる
線の事だ

この線より内側は
絶対不可侵の
我が領域につき

我がのみの
世界なのだ

寂しくはないかだと?
寂しいのならば
こんな線等引かないな

私は拒んでいたいのだ
他からの意思を
私のみでありたい

ほら 貴様が
線を無くした所為で

私の地と
他の地が

私の空と
他の空が

私の海と
他の海が

混沌ってしまった

これで私は
王では無くなった

我が世界の
我のみぞ君臨せし
我が玉座…

今やそれも虚だ
新しく引き直さねば

狭く小さきで結構
私のみが
あれば良いのだ

誰をも拒む世界としよう
囲むは透明で
他を視る水晶としよう

423:フォルテ Jcです&:2018/06/29(金) 00:53

「真珠」                                        打ち付ける五月雨  皆顔をしかめる  水溜まりは小さな池   池の辺りに咲く     気高き花   文句も言わずに微笑む   近づくと  滴る真珠の雫           優しい香りがした

424:フォルテ Jcです&:2018/06/29(金) 00:54

改行、失敗しました( ノД`)…

425:アビス◆wc:2018/06/29(金) 18:48

>>423
綺麗な詩ですね。

426:アビス◆wc:2018/06/29(金) 21:54

海の底から
地上を仰ぐ

貨物の船が
一枚の葉に
見える程小さい

光は届かずとも
魚等が
彩ってくれるから良い

髪が水に揺らぐ
魚が寄ってくる

魚等よ 其れは私の髪だ
海草では無いから
家にはならないよ

言葉は全て
泡に変わる

なので語らずして
言葉を云う

空には今頃
月が照っている

海もまた
地上と共に
夜を迎える

黒に近き深青…
それが海の夜だ

海の昼は蒼いな
たがそれは

太陽による
まやかしなのだ

427:アビス◆wc:2018/07/01(日) 20:47

こっちゃにおいで
何 とって食おうと云う
訳じゃありません

ほら 絵本もあります
私の膝の上に
おいでなさい

読み聞かせて
あげましょう

暖炉の火が
消えぬよう
薪を入れ続けますんで

ほら おやつもあるよ
お前が前から
食べたがってた

南蛮菓子の
カスティラです

目が輝いている
余程嬉しいんだ

せっかちさんめ
今 食べやすい様に
切ってあげるから

窓の外
雪にて景色が白い

小屋の中は
静謐だ

一人の話声と
一人の寝息が
良く聞こえる

428:フォルテ ホィ(ノ゚∀゚)ノ ⌒dice6:2018/07/01(日) 22:50

>>425ありがとうございます🎵中一です。100点満点中何点でしょうか?アドバイスなどお願いします

429:アビス◆wc:2018/07/01(日) 23:12

>>428
正直に云います、
点付けや感想を云うのは苦手です。
すみません…

「参考になるかな?」
私の場合は色んな本を読んだりして、
思い付いたらノートに書いて
それで出来た詩を小声に出して
読む事をしていますね。

後は自分の好きな詩を
見つける事位かな。
因みに私の好きな詩は
・中原中也(羊の歌)
・西絛八十(トミノの地獄)です。

430:フォルテ (ノ ゜Д゜)ノdice4:2018/07/02(月) 16:19

>>429 アビスさん、ありがとうございます🎵アビス大先輩とお呼びします🎵私のことは呼び捨て&タメ口で大丈夫です

431:アビス◆wc:2018/07/02(月) 21:09

>>430
嬉しいよ、ありがとうフォルテ。
此方も呼び捨てとタメ口で良いからね

そんなに此処に来れる訳では
無いのだけれど、載せれたら載せていくよ。

432:アビス◆wc:2018/07/02(月) 21:16

夕暮れの
屋根の上

洋装に
赤い花刺繍の
黒羽織り

目前の夕日が
沈む姿を見送って
煙管の煙をくゆらせる

枡に注いだ
清酒を見やる

何処からか来た紅葉が
清酒の枡に落ちてきた

酒の上の紅葉を
ぢっと見て一気に仰ぐ

静寂なる宵
風が我が身を冷えらす

秋風だが
寒太郎が来たらしい

小僧よ
おまへが乗るのは
北風だろうが

まだ早いよ
これで私は

熱燗を
用意せねば
ならないではないか

433:フォルテ:2018/07/03(火) 01:00

>>432さすがアビス大先輩!やっぱり天才は書くことが違うなあ❗ハイ、クソガキが偉そうにすみません。私もたまに投稿していいかな?

434:アビス◆wc:2018/07/03(火) 08:04

>>433
良いよ、投稿しても。
ただし感想は期待しないでね。

P.S
偉そうじゃないからね。
大丈夫だよ。そう固くならないで。

435:アビス◆wc:2018/07/03(火) 08:09

ほら 庭の木を
見てみよ

赤い実が一つ
生っているだろう

あれは十分に
熟れているのに
誰も食べない

他の実は全て
食われたというのに

何故かあの実だけは
何時も残るのだ

だから私は
食べるとしよう
腐って地面に落ちる頃

素手で食べるか
集る虫ごと

洗おうなら
実は残らない

種は白い
踏めば割れた

中は真っ黄色い
だから私の手もまた
マッキイロイ

436:アビス◆wc:2018/07/03(火) 08:14

淀んだ水に
私の体を沈めよ
私の魂

清い水はいや
腐る体が水を汚す

淀んだ水ならば
誰も私を掻き分け無い

それでも如何か
私を探さないでくれ

窪んでいる
かつての目玉の場所には
蜻蛉玉を入れてくれ

きらきらした
死に魅入りたい

其の後は
割らないで

生に希望を
見出して仕舞うから

437:アビス◆wc:2018/07/03(火) 08:21

私は今
詩の谷底にいる

何も…何も…
思い浮かびが
しないのだ!

突如として
落とされたのだ!
此処に 私は!

暗い…寒い…
誰か火種を
寄越してくれ!

恐れていた事だ…
私は何時

この谷底から
抜け出せる?

少しか?長くか?
あるいは永か?

少しであったなら
良いのに

長くても良い
永は嫌だ!

ロック鳥よ
若し私が
視界にあるならば

其の巨大な足で
私を拐ってくれまいか…?

私はまだ
歌っていたいのだ…!

己が為よ!
他の称賛が
欲しいが故によ!

438:アビス◆wc:2018/07/03(火) 08:28

銀砂の浜にて
小瓶に砂を
詰めている

桜貝も
一緒に入れて

現を見なくなった
あの子の為に届けよう

夢に住まう精よ
おまへはあの子を
何処に連れ去った?

ずっと開かぬのだ
あの日から

おまへは今も
あの時にいるのか?

私は流され
続けているよ

目には見えない
激流に

この時の隔たりは
如何にもならないな

若し 目覚めた時に
おまへは私を
覚えているだろうか?

覚えていない事が
私にとっては
何よりも恐ろしい…

だけど
帰ってきては
くれないか?

小瓶に埋めた
銀砂の細波を頼りに

あの頃は
もう無いが

私は今も
待っているよ
おまへの標として

439:名を捨てし堕天使@羊噛民族◆Qk:2018/07/03(火) 19:03

相変わらずものすごく綺麗で美しい詩だね…

440:フォルテ:2018/07/03(火) 19:07

ある晴れた日                                           寂しい水面                                            イルカは呟く                                           僕にも一握り、本当に一握りでいいから                               愛をください                                           別に、溢れんばかりの愛が                                     欲しいなんて                                           我が儘など言わない                                                                                                誰か、僕に愛をー                                           

441:フォルテ:2018/07/03(火) 19:09

読みにくくてごめんなさい。つまらない駄作でアビス大先輩のスレを汚して、ごめんね

442:フォルテ:2018/07/03(火) 22:39

ある晴れた日                                           寂しい水面                                            イルカは呟く                                           僕にも一握り、本当に一握りでいいから                               愛をください                                           別に、溢れんばかりの愛が                                     欲しいなんて                                           我が儘など言わない                                                                                                誰か、僕に愛をー                                           

443:フォルテ:2018/07/03(火) 22:40

ある晴れた日                                           寂しい水面                                            イルカは呟く                                           僕にも一握り、本当に一握りでいいから                               愛をください                                           別に、溢れんばかりの愛が                                     欲しいなんて                                           我が儘など言わない                                                                                               誰か、僕に愛をー                                           

444:フォルテ:2018/07/03(火) 22:41

間違えて連続でレスしてしまいました。アビス大先輩ごめんなさい

445:フォルテ:2018/07/03(火) 22:49

えっと、読みやすくすると、ある晴れた日、寂しい水面、イルカは呟く、僕にも一握り、本当に一握りでいいから、愛をください、別に、溢れんばかりの愛が、欲しいなんて、我が儘など言わない、誰か、僕に愛をー です。救いようのない駄作でごめんなさい。

446:アビス◆wc:2018/07/03(火) 22:54

>>439
見に来てくれてありがとう!

447:アビス◆wc:2018/07/03(火) 23:02

>>445
大丈夫、自分の書き方で良いんだよ。
書きたい様に書けば良い。
私は歓迎するよ。
後、自分の詩に自信を持ってね。

448:アビス◆wc:2018/07/03(火) 23:13

私の身体を
抱いているのは
幽霊花

集まり 群がり
我が褥

此処は何処かな
彼岸かな

さりとて私は
川を渡っておらず

ならばさしずめ
境目か

現世幽世
私はどちらだ

ならば私は
人かお化けか

嗚呼 花に問うても
無駄か ハハハ

一本道だ
迷いはしない

下ってみようか
地獄旅

共はおらぬよ
只一人

上への道は
既に無い

焔が囲む
人が落ち逝く
二千年

底へ着いたら
雄牛の舌轢き

火吐く人
木生る人

犬が骨を
噛み砕く

鳥が脳髄
吸っている

細かく刻まれ
石臼で粉

幻の先の
火の輪潜り

誘惑に招かれ
林の剣

さて 私は
帰れるだろか

天から降りる
糸が欲しい

449:フォルテ:2018/07/04(水) 01:02

おやおやお嬢さん寄り道かい?                                   気をつけて?アブナイヨ?                                     背後にそっと揺れる影                                       ころころしていて何よりだ                                     とても 柔らかそうな肉                                      よだれ垂らして                                          襲いかかる                                            少女の白い頭巾に                                         咲く一輪の紅い花                                         みるみるうちに白頭巾ちゃんは「赤ずきんちゃん」と化した

450:フォルテ:2018/07/04(水) 01:04

童話モチーフで書いて見ました‼(*ゝω・*)

451:フォルテ:2018/07/04(水) 17:42

分かりやすくすると、おやおやお嬢さん寄り道かい?気をつけて?アブナイヨ?背後にそっと揺れる影、ころころしていて何よりだ。とても柔らかそうな肉、よだれ垂らして襲いかかる、少女の白い頭巾に、咲く一輪の紅い花、みるみるうちに白ずきんちゃんは「赤ずきんちゃん」と化した

452:フォルテ:2018/07/04(水) 17:42

です❗

453:アビス◆wc:2018/07/04(水) 17:48

>>451
なるほど。

454:アビス◆wc:2018/07/04(水) 17:54

ラッパの音が
鳴っている

勇ましきよな
兵士達

進め 進め
死出への旅路

ラッパを鳴らす
楽兵長

鼓舞せよ 鼓舞せよ
戦の一吹き

指揮をとりし
参謀よ

手操れ 手操れ
相手の脆所

頂にて鎮座せし
大将よ

討てよ 掲げよ
敵の首

叫べ 歌えよ
屍の上で

地に旗穿て
散り逝きた同胞への
鎮魂歌ぞ

455:フォルテ:2018/07/05(木) 18:40

さあ騒げ、騒げ。                                              暴言パーティー                                  間抜けなお前ら                                          何も聞こえないだろう?                                      何も話せないだろう?                                       死人に口無し、耳も無し。                                     何が起こっても無視、無視。                                        そうやって何人も崖に追いやって来たんだろ?                            じゃあ、自分がされても文句は言えないよね?                            憎しみが憎しみを呼ぶ                                       笑顔の影で被害者は                                        苦しむ                                              さあ、狂ったパーティー                                      楽しませてよね?

456:フォルテ:2018/07/05(木) 18:42

読みにくくてごめんなさい。やっぱり私の書く詩は歪んでますねwww中1女子だけど、みんなに闇って言われますからねww

457:アビス◆wc:2018/07/05(木) 19:32

>>456
気にする事は無いさ、私は好みだよ。

458:アビス◆wc:2018/07/05(木) 19:40

掃き浄めよ箒星

今の地上は
私にとって
居心地等無い

あまりにも
混み込みと
しているのだ

闇き夜も
今や畏れを
抱かれ無い

目眩がする程
明る過ぎる!

月光の導きが
無くなって

あまねく生物は
己が向かう所が判らなく

電や焔の光道に
身を惹かれ

其の命を
悪戯に奪われる…

おぉ なんとも
哀しき事よ!

箒星よ
声を聞き給へ

この世にある
者等の願いよ

全てを浄めよ
美しき哉
何も無き更地

459:アビス◆wc:2018/07/05(木) 19:50

探しているのか
幸福を

自らには
何時も幸福が無いと
嘆いている

不幸しか無いと
泣いている

自棄っぱちに
周りの砂を蹴り上げて

砂埃舞い
 目に入る

痛い痛いと云って
目から涙を流す

あの様子じゃ
気付いて無いね

幸福が既に
自分の側にある事を

目に見えないから
判らないだけだよ

耳に聞こえる訳が無いだろう
それだけ喚いていたら

幸福は何時も
囁いているよ
(己は此処にいると)

云ってやっても
良いのだが

そうすると
幸福は拗ねる

個々別々なんだよ
一律同じ訳じゃ無い

人間に個性がある様に
幸福にも個性が存在するのさ

人間は目に見える
耳に聞こえる幸福を
其れのみとして認識する

残滓の幸福で
人間は満たされる

それから
 また縋る

残滓の幸福は
それ迄で

ほら また不幸だと
嘆いているよ

もう気付か無いね
幸福は呆れて
去って行ってしまったよ

460:フォルテ:2018/07/05(木) 22:00

>>457ありがとうございます( ≧∀≦)ノ

461:フォルテ:2018/07/05(木) 22:19

小さな女の子が無邪気に嗤う                                   少女は言う                                            私ね、一番、赤色が好きなの。                                   兄は訊いた                                            何で?と。                                            少女は不気味な笑みを浮かべた。                                  あはは、乾いた笑い声                                       何故か、兄には少女が妹には見えなくなってきた。                          少女は問う                                            ねえ、お兄ちゃんは私のこと、しゅき?                               兄は頷く、もちろん、と。                                     じゃあ、私のために何でもしてくれるよね?と、また問う                       うん。                                              ホントに良いのね?                                        じゃあ、私におとなしく刺されてよ                                 大丈夫、痛いのは一瞬よ。                                     少女は思い切り兄に包丁を突き立てる                                そう、私はこの色が好きなの。                                   綺麗ね、ありがとうお兄ちゃん                                    まだ5歳にも満たぬ少女。嗤う、嗤う、嗤う      次は貴方だよ?                       

462:フォルテ:2018/07/05(木) 22:26

小さな女の子が無邪気に嗤う、少女は言う、私ね、一番、赤色が好きなの。兄は訊いた、何で?と。少女は不気味な笑みを浮かべた。あはは、乾いた笑い声、何故か兄には少女が妹には見えなくなってきた。少女は問う、ねえ、お兄ちゃんは私のこと、しゅき?兄は頷く、もちろん、と。じゃあ、私のために何でもしてくれるよね?とまた問う。うん。ホントに良いのね?じゃあ、私におとなしく刺されてよ、大丈夫、痛いのは一瞬よ。少女は思い切り兄に包丁を突き立てる。そう、私はこの色が好きなの。綺麗ね、ありがとうお兄ちゃん、5歳にも満たぬ少女。嗤う、嗤う、嗤う。次は貴方だよ?

463:フォルテ:2018/07/05(木) 22:26

です❗

464:フォルテ:2018/07/05(木) 22:27

読みにくくてごめんなさい。

465:フォルテ:2018/07/05(木) 22:27

これも歪んでますね…

466:フォルテ:2018/07/05(木) 22:28

私、アタマおかしいからなあ。www

467:アビス◆wc:2018/07/05(木) 22:49

>>462
こういう病み系も良いな。

468:アビス◆wc:2018/07/05(木) 22:54

私の詩は
不思議な世界観とかおとぎ話みたい
って云われるんだよ。

469:アビス◆wc:2018/07/05(木) 23:10

跪け!不幸共!
我を讃えよ!
崇めよ!奉れ!

貴様等不幸は
我が下僕となれ!

我は貴様等不幸を
虐げ踏みにじる

傲慢不遜たる
女帝ぞ!

我に従わぬならば
右手に持つ硬鞭で

悲鳴のフォリアを
あげさせる

アジタードに
叫べ!

啼け!
鳴け!
泣け!

我は女帝なり
不幸不運を従えし者!

不幸不運は
我が下僕よ
我が兵士よ!

命惜しくば
近付くな

我が左手の
慰み物に
なりたくなければ!

我が左手は
貪婪なる獣

いくら血に濡らそうと
貪婪故に
満たされん!

不幸不運を従える
我が恐ろしいか?

獣の左手を持つ
我が醜いか?嗤うのか?

我からに云わせれば
幸福を纏い乍

其れに気付かぬ侭
己を不幸だと悲しむ

貴様等の方が
愚かで嗤えるがな!

何時までも
幸福を夢見て
這いつくばっているが良い

其の間に
我が下僕と兵士が
地を侵略しようぞ

そして我は頂にて
敗れし者の血で
満たされた杯を仰ぎ

骸の玉座に座し
我を嗤いし者等を
見下しでもしようか

平伏せ貴様等!
頭を垂れよ!
地に着く程に!

我は女帝ぞ!
不幸不運を従えた
傲慢不遜たるな!

470:フォルテ:2018/07/05(木) 23:15

>>469すごい…独自の世界観が…アビス大先輩ワールドができている…私は病みしかかけないからなあ…私、将来の夢が小説家なのに、ワンパターンだからなあ。

471:フォルテ:2018/07/06(金) 13:36

海辺を歩く
クラゲがたゆたう
のんきで、良いよな。
私にも自由が欲しい。

山に登る
小鳥がさえずる
のんきで、良いよな。
私にも自由が欲しい。

花園に入る
薔薇が香る
のんきで、良いよな。
私にも自由が欲しい。

私は死んだ。
神様がいる
のんきで、良いよな。
私にも自由が欲しい。

神様は問うた。
何故お前はものを見る度
うらやむ?
何故自分が持っている大切なものに気づかぬ?

私は答える
だって、だって。
クラゲはたゆたうだけで良い。小鳥はさえずるだけで良い。花は香るだけで良い。神様は叶えるだけで良い。
私は自分の時間を作ることさえままならぬのに。

神様は呆れた
お前だって良いものを持っているのに。
愚か者。
でも今気づいたところでもう遅い。

472:フォルテ:2018/07/06(金) 13:37

初めて長編ポエム書きました❗

473:フォルテ:2018/07/06(金) 21:59

ああ、無理、無理、無理。
こんなに君を想うのに
とどかない、トドカナイ、届かない。
素直になれない。
コミュ障の私には
ハードルが高すぎて。

そうやっていつも失うんだよ。

474:フォルテ:2018/07/06(金) 21:59

イミフですね

475:フォルテ:2018/07/06(金) 21:59

すみません

476:フォルテ:2018/07/06(金) 21:59

短すぎますねwwww

477:アビス◆wc:2018/07/06(金) 23:47

>>471
うん、読みやすいね。
これからも頑張って。

>>474
大丈夫。私の詩も
意味が判らないのが多いから。

478:アビス◆wc:2018/07/06(金) 23:57

「朝鮮朝顔」(全2章)
(1)

部屋にうずくまっている
隅に すみに 只 スミに

虚ろな黒目で
反対の角を只
見ている 見ている 只 見ている

白くて広い部屋
何も無いから
此処はなんだ?

故に恐ろしかった
無機物に

有機物の心が
現れているから

切味の悪い
銀の刃でも
あれば良いのに

腕にある
赤い線を見つめる

目の前に
巨大な鳥の足があった

此処には私しか
いないのにな

だとしたら
これは私の幻覚か

天井から
足が生えてるなんて
可笑しいと思ったんだ

そうなると
いよいよ私は
気が違う一歩手前だな

足は私を
追い詰めはしない
遠ざかりもしない

生えてる
其れだけなのだ

私は床を見て
只笑む 冷笑む
黒目を狭めて狂笑む

479:アビス◆wc:2018/07/07(土) 19:56

(2)
白い花の種が欲しい
せめて花位は飾りたい

直ぐ枯れる奴でも良い
せめて何か彩りが欲しい
其れ位の贅沢はさせてくれ

この部屋は
所謂私なのだから

嗚呼 次は
紐が欲しいな

首に引っ掛けて
布を頭から被って
てるてる坊主になりたい

気が違って狂るのは
自らでも判る

ならば其れが疾く来る様
モルヒネをくれまいか?

夢中になって
依存して
中毒者となり

本に 本に
気が違って仕舞いたい

何も無くして
笑いたい

何も無くして
怒りたい

何も無くして
泣きむせびたい

最早 薬を縋ねれば
ならぬ程

私は表情が
消え失せているのだ

壁に問うてみよう
なぁ 私は笑っているか?

なぁ 私は
怒っているか?

なぁ 私は
泣いているか?

答えておくれよ…
もう私は判らんのよ…

ずっと壁と
夜通し問答をした

だが壁は
何も答えず
只 壁だった

気付けば私は
ベッドの上だ

あの部屋は
何処に…?

手首の重苦しい鎖は何?
足首の鉄球は何だ?

これではまるで
奴隷の様ではないか!

窓の緑の色が
今の今迄惨めな私を
より惨めにした様な気がした

私を戻してくれ
あの部屋に!

この部屋は嫌いだ!
私を苦しめる物でしか無い!

あの部屋が良い…
何も無き 白き部屋…

なぁ あの部屋に
置いてきた

花の種は
花になったか?

白く美しき花よ
丁度この窓から
見えている

朝顔の
様なんだ

枯れていたら
種をくれ

私は其れを
飲みたい

480:フォルテ:2018/07/07(土) 22:07

暗闇の中で
独りぼっち
消えたい
死にたい
か細い
少年の声は
その悲痛な叫びは
誰にも
届くことなく
無情にも
暗闇の中へ
吸い込まれていった
誰一人
気づかなかった

ああ神様
僕は生まれてくる意味があったの?
生まれてきても、よかったの?
生きる意味が見いだせない
もう生きるのに
疲れたんだ
いっそ一思いに
殺してくれや
しないだろうか

別に
いじめられたわけでも
虐待を受けた訳でもないが
ただ疲れたんだ
中間試験481点
期末試験5教科だけだと471点
10点下がった、怒られた
お前は勉強しかできぬのだから
ココロを蝕むその言葉
どうして
大人は結果しか見ない?
どうして
そこに辿り着くまでの
過程を認めない?
いつも
笑顔の仮面を着けた道化師は
哭いている
どうして
大人が決めた
「イイコ」にならなくちゃいけない?
どうか僕を認めて。

481:フォルテ:2018/07/07(土) 22:17

えっと、私が抱えていること全部吐き出して見ました。実話ですwww 詩に登場する少年はそのまま私です。まあ、私は少女ですし、一人称は主に「ウチ」、たまに「あたし」・「私」ですけどねwww四国地方のJCなので(ど田舎)ちなみにアビス大先輩はどの地方にお住みなのですか?あっ、話が脱線している!!!


アビス大先輩の目を汚すものになりますがよろしければお読みください。

482:フォルテ:2018/07/07(土) 22:21

今は崖っぷちですねwww アビス大先輩の詩が命綱って感じですwwうわ、私、鬱というかメンヘラこじらせてる〜〜www

483:フォルテ:2018/07/07(土) 22:37

まあ、好きな人の存在も命綱ですが

484:フォルテ:2018/07/07(土) 22:38

>>483wwwww恥ッッッッッッッッッッッッズ

485:アビス◆wc:2018/07/07(土) 22:45

>>481
大変だったんだね…
でも、良く努力したね!偉いよ!。

そうだね、私も「イイコ」は嫌いだ。
特に押し付けられた物程、
辛いものは無いよ。
でもね、此処でならそんな「イイコ」にならなくても良いんだよ。
「悪い子」になったって良いんだ。

因みに、私は近畿地方に住んでるよ。

486:アビス◆wc:2018/07/07(土) 23:00

芒野原の狐奉る祠
赤ン坊が泣いていた

この子の母は
産み落とし男と
逃げ去った

祠に住んでる
妾は見ていた

母の所業は
鬼畜なり

止めもせぬ男も
また鬼畜なり

ならばこの子を
育てよう

笑って生きて
ゆけるよう

ありとあらゆる
教えよう

愛しき赤児よ
泣くのはおやめ

妾の腕の中で
ゆるりと眠りや

今日から
妾が母親じゃ

恨よ辛よ憎よ
今だけはこの児を
解放してやってくれぬか

妾は教えた
文字を 言葉を

そしてやや子を
沢山愛でた

血なぞ繋がって
おらぬとも

妾は云おう
親子であると

こうして育った
我がやや子

大きゅうなった
綺麗になった

そしてやや子に
伝えねば

妾は
人でなくて
狐だと

おんしは人で
捨てられていたのだと

それでも良いよと云い
それでも妾を母と呼んだ

妾がやや子よ
おまへは清き
真ッ直ぐな児じゃの

どうかやや子よ
清きままであれ

妾が目を閉じ
覚まさなくとも

やや子よ
己が人生を歩むが良い

やや子の
腕の中で
眠る事になろうとは

これが
紅に染まる時で
なかったなら

妾はどれだけ
嬉しき事か

泣かないでおくれ
妾は最期に

おんしの笑顔を
求めるぞ

487:フォルテ:2018/07/07(土) 23:01

>>485アビス大先輩〜!ありがとうございます!尊敬します!嬉し涙が出てきました❗私のような「異端児」の存在を認めてくださりありがとうございます!

488:アビス◆wc:2018/07/08(日) 21:07

>>487
私は、誰の助けにもなる事は
はっきり云って出来ないけれど、
それでも良いのなら
何時でも此処に来て、
自分の気持ちを詩にすると良い。
歓迎しよう。

489:アビス◆wc:2018/07/08(日) 21:23

「猫が火男の観察をしたならば」

昼間っから
酒を飲んでは

一人で大笑いしている
呑兵衛がいる

彼れは独り身さ
連れ添う女房は

彼れの酒呑みの
悪癖に辟易して

子供を連れて
出て行っちまったのさ

(女房と子供は
いねぇからぁ
俺ぁ一人だぁ)

(口五月蝿く云ってた
彼奴はいねぇ)

(冷たく見下してやがった
餓鬼もいねぇ)

(嗚呼自由だよぉ
酒が美味ぇくて
しょうがねぇなぁ)

呂律が回ってないから
何云っているのか
僕には判らないけど

兎に角 彼奴は
馬と鹿みたいに
陽気だにゃあ

けど夜になったら
途端に大人しくなって

別れた女房と
子供の名を呟いては

涙を流して
後悔してたよ

(ごめんよぉ おまへ…
ごめんなぁ 子供よ…)

(駄目な父ちゃんで
本当にごめんなぁ…)

そんで流した分だけ
僕の飼い主ん家行っては

酒を仰いじゃ
千鳥足で帰って

それで一頻り
愚痴々々々々々々こぼしては
事切れたみたいに眠るんだ

(俺が悪ぃじゃねぇんだぁ
悪ぁるぃのはなぁ…俺か
俺じゃねぇかあコンチクショウ!)

顔を覗いてみたらさ
火男みたいに
真ッ赤なんだよにゃあ

490:フォルテ:2018/07/08(日) 22:50

あはははははは
人間って
怒りを通り越すと
笑えてくるね
哀しみを通り越すと
笑えてくるね


大人なんてさ、
どいつもこいつも
まともな奴は
いやしねえ
わかったツラして
偉そうに
お前に何がわかるんだ?
私は一人の人間です
あなた方の
模型でも
マリオネットでも
ありません


あなたのためを思って
ココロを鬼に?
よく言うよね!
嘘ばっか。
本当に
私のことを思うのなら
もう、私に干渉しないでくれ。
私はお前らが決めた
型にはまった人生なんて
シナリオ通りの人生なんて
望んでないよ?
送り先を間違えた宅配便
はた迷惑な宅配便


いい人・悪い人の
判断基準は
結局自分にとって
都合のいい人・都合の悪い人
なんでしょ?
そうやって人を
分けようとするから
戦争がおこるんだ。
何でまだ気づかないの?
人間は醜いんだよ。


子供嫌いな大人がいるが
所詮大人も小さな子供
何でそんなに
人を2つに
分けたがる?
みんな欲張らずに
安心して暮らせたら
十分じゃないのかよ?
世界にはそれすらできない
人もいる。
欲なんて
捨てちまえよ。


大人は矛盾しすぎだ。
何でこんなこと
したんだ?と
聞くから
答えりゃ言い訳するな?
お前が理由を言えと
言ったから
答えただけだろうが❗
だからと言って
答えなきゃ
無視するな?
じゃあどうすりゃいい?
お前らはどうして欲しい?
どうしたい?
八つ当たりだろ、
ただの。

491:アビス◆wc:2018/07/09(月) 21:24

(1)
斬首台がまた一つ
背負うべき咎無き者の首を落とす

其の度に湧く民衆の歓声
罪人の断末魔は
喜びに掻き消される

道楽者達が
斬首台に立つ時

民衆は
(金持ちなんぞに
なるからだ ざまあみろ)

と 云わんばかりの
嫉妬混じりの目で睨む

民衆は待ちわびる
断罪の刃が

罪人の首に
落ちる事を

其の刃は
自分達の思いを
代弁している

だから彼奴は
裁かれるべきなんだ

そんな物は建前で
本当の所は

人間が
自らの目の前で
事切れるのが見たい

只 それだけだ

血が
流れるのが見たい

只 それだけだ

道楽者の退屈は
金を使えば
紛らわせるがな

民衆はそういう訳には
いかないんだ

だからさ 道楽者が
用意した玩具

つまり民衆 貴方等自身だ
罪があるなら使えば良い

たとえ無くとも
でっち上げて

被害者ぶって
嘘泣けば良い

そうすれば玩具は
斬首台の上さ

固定されて
ガタガタ震えて
命乞いする様 見て 嗤え

何も やって いないと
本当の事を 云っている 玩具を

嘘吐き だと云って
嘘怒れ

上を見ろ ぎらりと光る
鈍銀の刃

あれが壊して
くれるんだよ

さぁ 落ちろ

ゴトンと

転がって

首から流れる
赤き血を見て

狂喜べ民衆
我が玩具

空を見ろ
肉袋

見下す私は
退屈だ

斬首は楽しい
直ぐ終って 飽きる

今度は 如何しよう
そうだ 拷問にしよう

生きたまま内臓引き出して
ウインチで晒そうか

ファラリスにて
雄牛の悲鳴の再現を

そして生まれる
黄金の骨
我が新たなる調度品

492:フォルテ:2018/07/09(月) 21:49

>>491少しグロい…ですね。ゾクッとしました。詩自体にもゾクッとしましたが、それに共感してしまう病んだフォルテ氏(12)にもゾクッとしました。人間の心理を痛いほど突いていますね。

493:アビス◆wc:2018/07/10(火) 21:30

(2)
玩具を昔 壊してしまった
若し 高い所から落としたら
どうなるだろうという

ちょっとした 子供の好奇心

ばらばらになった
一片 拾って見ていた

周りは叫ぶ
玩具を見て 私を見て

ほらほら 皆見てよ
これがこうなって
こう繋がってるんだって

何故 異常だと
云われるのか 判らなかった

私は其の時
純粋であった

無知でもあったが故に

壊した物は
二度と戻りは
しないのだと

判らなかった

病院に暫く
入れられた

私は泣いた
白が怖かった

出される薬を
飲むふりして
吐き出して

同室の水に
混ぜて飲ませたら

そいつの正体は
蟹だったんだ
口からぶくぶく泡吐いてたから

今迄自分のやった事に
罪の意識は無い

だから何故
私は今
斬首台の上にいる?

あぁ
空が青いな

あぁ
地面が真っ赤だ

あぁ
混ざって紫とならないかな

494:アビス◆wc:2018/07/10(火) 21:35

>>492
否、これは単純に思い付いて
書いただけなんだよ。
「する」側と「される」側と「見る」側ってこんな感じじゃないかなって。

495:アビス◆wc:2018/07/11(水) 20:48

巨大な水槽が
私の前に 今 ある

三角座りをして
水だけの水槽を
私は見ている

これだけ大きいのに
何故魚一匹すら
いないのだろう

上を見ると
何かが入っている
袋が吊り下げられている

左右激しく
動いていたり

やたら静か
だったり

何かうめいて
いたり…

紐を切る
鋏まで用意されている

先ず切るのは
激しく動く袋だ

水槽に落ちて
袋が溶けた

中身は鮫で
元気に泳ぎ回り

早く餌が欲しいのか
ガチガチ歯を鳴らす

うめいている袋を切る?
否 静かな袋からだ

ボチャボチャボチャ
大量だった

中身は…なんだ
只の海星だったよ

落ちる幾つかの
海星を鮫は喰らった

でも変なんだよ
この海星

人間みたいな
爪がある

鮫が喰い千切った所から
赤いのが出てる 血かな?

最後にうめいている
袋を切ってみよう

中身はペンギン
だったよ

しかも新種っぽい
だって落ちてる時に
ぎゃーって云ったんだもん

でもこのペンギン
泳ぎは下手だね

ほら 足じゃなくてさ
羽をも少し
動かして御覧よ

早く逃げないと
鮫の餌になるよ

鮫がペンギンに
追い付いた

ペンギンの下半身を
喰い千切った

どうせならさ
上半身の方も
食べてくれよ

ペンギンが
何か云ってるね

ヒ…シ…
 ク…マ…

やだなこのペンギン
ここに熊なんて
いないでしょう

鮫が残りの
上半身を喰った
凄い迫力だ!

496:詠み人知らず:2018/07/11(水) 22:24

黒い箱が
朝 私のベッドの上に
あった

持ってみると
軽かった

穴がひとつ
あったので覗いたら

空があったんだ
村があったんだよ!

視点を変えれば
海も見える

村の方に
目をやったら
人がいた

焚き火を囲って
マイムマイムを
踊ってる

チャッチャチャララ
チャッチャチャララ
楽しそうだなぁ

突然踊りを
止めたかと思えば

空を見て
騒ぎ出した

(侵入者だー!
侵入者だー!)

(大きな目玉が
こっちを見てるぞー!)

目玉…?
私の事か!

(槍を持てー!
槍を持てー!
投げろー!わー!わー!)

え?届くの…?
ちょっ…!痛い!いたたっ!

(効いてるぞー!
効いてるぞー!)

(次は大砲だー!
大砲持って来ーい!)

勝手に覗いたのが
悪かった!ごめんって!

(退いてくぞー!
侵入者は)

(我らに恐れをなして
逃げていったぞー!)

目がまだ痛いや…
知らない物には
触らない方がいいね

にしても これは何だろう
箱をまた覗く
槍が飛んでくるかも

…今度はやたらと
文明が進んでいる!?

マンションとか
ビルが建ってて

空中では
車が飛んでいた!

一体この箱世界は
何千…否 何万年…?
時が経ったのだ?

驚いて
箱を放り投げてしまった

でも面白いな
今度はどうなって
いるのだろう…?

…何も見えない
真ッ暗だ

気になる 気になる
気になってしょうがない!

箱よ 見せてくれ!
世界は一体
どうなったんだ!?

497:アビス◆wc:2018/07/11(水) 22:26

>>496は私だよ。
名前を入れ忘れてたんだ。

498:アビス◆wc:2018/07/13(金) 22:33

「星河の寂莫」(全2章)
(1)
汽車に乗って
何処か遠くへ 行きたい

皆はもう 下を向いて
歩いている

片手に小箱を
持ち乍

何かを探している
訳では無く

小箱の虚像と
見合い乍
只 歩いている

私にとっては
それがとても苦しかった

私は小箱を
持っていないから

誰も持ってない
世界へと行きたいんだ

車掌さん
私は其の汽車に
乗りたいんです

星河を間近で
見れるのでしょう

夜の空に
瞬く星々に

私は想いを
馳せていたい

私ばかりが
上を見ていて

皆ばかりが
下を見るのは
もう 嫌なのです

一緒に見上げる
そんな時が
あったとしても

其の時の星空を
記憶するのは…

私は目と脳だけれど
皆は小箱に留めて
後から楽しむのでしょう?

私には
それが寂しくて
堪らない

一緒の景色を
見ている筈なのに

お互いに 違う景色を
見ている様だから

皆が華やかな
虚光の世で
生きていくのならば

私は一人
星河の寂莫へと
消えていきたい…

私は今から
汽車に乗ります

さようなら…

499:アビス◆wc:2018/07/13(金) 22:52

(2)

天駆ける
汽車の窓から
見えるのは

栄える虚光に
彩られた街

上から見たら
こんなにも 良く判る

人はもう
上も下も何も
見てはいない

只 歩いている
だけなのだと

間違えた
私が見るのは
下じゃなく上だ

雲一つ無い夜空に
星々が瞬く

瞬く星々が集まって
 輝く星河となる

星河を見渡すと
星の海になった

私が地上から
星を見ていたのは

ほんの一部分に
過ぎなかったのだ

この汽車に
乗客は私一人らしい

他に誰かは
車掌ぐらいだ

車掌は汽笛を
鳴らし乍
鼻唄を歌っている

500:アビス◆wc:2018/07/14(土) 15:13

私は魔女
悠久の刻を
生きる者

しわくちゃの
ハバァだと
思ったね?

でも残念
全然違う

ずっと若い
姿のまんまさ

がっかりした?
まぁ良く云われる事だ
その反応はありきたりだね

まぁ座っておくれよ
茶と菓子は位は
出すからさ

その顔は何?
変な物を入れてると
思ったね?

失礼だな
茶に毒は
入っちゃいないし

菓子に人の部位は
練り込んでないよ

昔パイに人を刻んで
作っていたのだけれど

それがもう
不味い事 不味い事

だから私の使い魔に
食べさせた

美味しい 美味しい
云っていたけど

其の後庭で
戻してたのを見たよ

やっぱりって
思ったな

使い魔というのは
暖炉の前で眠っている
其処の黒猫の事さ

元々は普通の
猫だったのだけれど

其の頃の私は
使い魔をまだ
持っていなくて

いい加減
使い魔を作れと

五月蝿く云われてた
事もあってか

私は調度良いと思って
この子を使い魔にした

真面目な子だよ
良く働いてくれる

おや 眠たそうな
顔をしているね

良かったら
私のベッドを
使いなよ

…毒は仕込んじゃ
いないけど

薬は仕込んで
いたのだよ

起きて黒猫
ご飯にするよ

目の前に材料が
あるから
シチューにしよう

パイの様に
失敗はしないからさ

黒猫よ
鍋に水を入れて
沸かしておいて

其の間に
私は材料を
刻んでおくから

太股の部分は
君にあげるよ
好きだものね

骨の部分は
頭だけ残して

他は砕いて
庭の肥料としよう

私は魔女だ
好物は人肉の
パイとシチュー

森に迷い込んだ
人間をもてなして
薬で眠らせ食べるのさ

同胞は私を
悪食と呼ぶね

おやおやそれは
昔の話だよ

同胞も何人か
喰ったがね

今は人間で
我慢してるから
良いじゃない

私は歳を
とらないのさ

同胞を食い過ぎた
罰として

だからずっと
この姿


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