男にキスされた。
その前後のことなどほとんど覚えていない。ただ起こったことだけが事実として頭に焼き付いている。
「最悪だ」
無意識にそうつぶやくと、横にいた友人が笑った。「最悪ってなんだよ、友達が出来ないことが、か。それとも彼女?」
返事をするのも面倒だったので、不満そうな表情はそのまま、軽蔑するような目線だけを友人に向けると、彼はやれやれと言わんばかりに肩をすくめた。
別にあんなやつにキスされたからといって、ここまで不機嫌になることもないのではないかとも思う。あんなどうでもいいやつのことなんて、さっさと忘れてしまえばいい。いや、違う。どうでもいいからこそ、腹が立つのだ。
「なんで俺だけ、特別なんだよ」
溜息を吐くと同時に、携帯が振動した。電源をつける。ヤマザキからのメッセージが届いていた。思わず舌打ちがこぼれる。
「やっぱり女だろ」
「なわけねえだろ」
*
続いてしまう
>>125,>>127,>>129,>>152,>>165/元地味男と元王子様のはなし(人を選ぶ話なので迂闊に見ると死にます)