名前を、 【 学園アリス / なつみかん 】
――棗、
目の前の、少女は寂しそうに笑って自分の名前を呼んだ。
蜜柑、と口を動かしたところで少女は、遮るように次の言葉を口にする。
――もう、さよならや。
そう、少女はその瞳に涙を浮かべた。
嘘だと、少女に向かって手を伸ばす。けど、その手は届かず、逆に彼女は遠ざかっていくばかりで。
――蜜柑っ!!
愛しい、少女の名前を叫んだ。
はっ、と目を覚ます。目に映ったのは見慣れてしまった病室。
先ほどの夢が頭の中に焼きついて離れない。汗が、頬をつたった。
荒くなった息を整えて、起き上がると同時に病室のドアが開く。
「っ、棗!」
「ルカ……」
ドアから入ってきたのは、学園入学前からずっと親友だったルカ。
ルカは、起き上がっている棗に驚き、ベットへと駆け寄る。
「目、覚めたんだね」
「ああ」
「棗、起きたのか!」
続いて、騒がしく病室に入ってきたのは目の下に星の印を入れた、翼。
「うるせぇよ、ハゲ」
「ハゲてねぇよ!」
不意に、あの夢が脳裏を掠めた。なんとなく、あれはただの夢ではないんじゃないかと思った。どうしても、そう思ってしまうのはきっと、ここにいるはずの彼女の姿がないから――。
「おい、ルカ。……あいつは? 蜜柑は……?」
純粋な質問だった。
自分の言葉に、顔を強ばらせ、ルカは視線を逸らす。様子がおかしい親友に、嫌な予感を感じた。
ルカ、と名前を呼ぼうとした矢先、「……棗、黙って聞け」と、翼が告げた。
翼から、聞かされたのは今回のことの結末。そして、蜜柑のこと。
彼女は――アリスを無くし、学園から出て行った。ここで過ごした、すべての記憶を消して。
「蜜柑……」
呆然と、呟いた名前に答えてくれるものはいない。
――棗!
もう、あの笑顔を見ることはできないのか。
自分の名前を呼ぶあの声を聞くことはもうできないのだろうか。
「み、かん……」
翼は、悲痛そうに棗を見つめて、ルカは顔を歪めて俯かせている。その目には涙が光っているように見えた。
それから、5年後――。
少しずつ、彼女がもういないということを受け入れて。そして、もう一度会うためにずっと、生き続けようと心に決めて。
そして、その日はやってくる――。
「待ってや! 二人共――――っ!」
あの幼い頃よりも、だいぶ大人びた容姿。けど、あの頃を一切変わらない笑顔を高台の上から見下ろした。
どれだけ、この日を待ちわびたのだろう。やっと、彼女に会えると思うと心が震える。
「蜜柑」
もうすぐ、彼女は自分のもとへ帰ってくる。そのことを、噛み締めながら小さく彼女の言葉を呟いた。
――棗っ!
それに答えるように、遠き記憶の中の彼女が答えた気がした。
あの、自分が好きだった笑みを浮かべて――。
‐‐‐‐‐‐
最初は、学アリのなつみかんで!…といっても、蜜柑でてないし。伽羅の口調迷子だ、笑。
でも、どうしても書きたかったんだ。このスレだって、これが書きたくて立てたもんだし()
学園アリス31巻の、棗が叫ぶシーンで少しだけど、書かれていた過去の絵から妄想を含まらせた結果がこれだ。
…うん、後悔はしてないよ←
追記.翼先輩の口調が、わかんねぇ、笑
目次のようなもの。
今まで書いたのがバラバラだからちょっとまとめてみた。
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【ルーンファクトリー4】
・朝。 / ( ダグ×フレイ )
【ポケモン(アニポケ、ポケスペ混合)】
・お姫様、迎えに来たよ。/ ( サトシ×夢主 )>>9
・タイトル未定(友人へと誕プレ小説) / ( グリーン×ブルー )>>42
【学園アリス】
・名前を、/ ( 棗×蜜柑 ) >>2
【らくだい魔女】
・お姫様と、その騎士 / ( チトセ×フウカ )>>20