――珠紀は屋上で続く階段をゆっくりと登っていた。
今は放課後。ほとんどの生徒が部活に励んでいる時間だ。だが、珠紀は今日この学校へ転校してきたばかりなため、部活はない。かといって、そのまま帰ってしまうのも惜しい気もした。
新しい学校に慣れるためにも、少し構内を歩いてみようという考えのもと、先程まで音楽室やら調理室やらいろんなところを歩き回っていた。そろそろ帰ろうと思った、その時、ふと屋上へ続く階段を見つけたのだ。そして、導かれるようにして珠紀が屋上への階段を上り始めたのだ。
登り続けて、ようやく鉄の扉を見つける。
片手で押してもびくともしない。ならばと両手で押すと、古い扉特有の鈍い音を立てながらその重たい扉は開いた。
その時、一陣の風が珠紀を襲った。さほど強いものではない、しかし急だったためか、咄嗟に珠紀は顔を守るように両腕をかざす。
暫くして、風が腕を打ち付ける感じがしなくなったのを確認し、珠紀は両腕を下ろす。そしていつの間にか、つぶっていた目を開ける。そして、その瞳は直ぐに大きく見開かれた。
珠紀の目の前に人がいたのだ。柵の上に両腕をおいて、そして顔をグラウンドの方へ向けている。
向けられた背中に、珠紀の胸はざわついた。動機が荒い。そして、心がひどく締め付けられた。
(何、これ……)
珠紀は、訳がわからなかった。ここに来たのは初めてで、そして目の前の人を見たのも初めてだ。しかし、その後ろ姿が懐かしいと感じる。
口が勝手に開いて、言葉を発する。しかし、ひどい乾きのせいか声が出ない。もう一度、と声を発し用としたとき、その人は振り返った。
▽真弘×珠紀
・膝枕 / ・闇に差し込んだ光 / >>31-32
・君の愛が欲しい / >>33-36
・強くなりたい。その理由 / >>37
・タイトル未定(無印真弘ルートで、蒼黒) / >>38-40
・タイトル未定(転生パロ) / >>27-28 ※未完
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アンカーってつけすぎはよくないのね…、もうしないわ