君の愛が欲しい 【 緋色の欠片 / 真弘×珠紀 】
「先輩、あの――」
「お、おう、珠紀。悪いな、ちょっと今から用事が……ってことで、じゃーな!」
ひらりと手を挙げて、颯爽と去っていくその後ろ姿を見て、私は密かに握りこぶしを作った。
――鬼斬丸が壊れて、1ヶ月ほどたった。あの頃のことが嘘のように季封村には平和が訪れている……んだけど、最近真弘先輩の態度がよそよそしくなったと思うのは私だけだろうか?
近づけば逃げる、話しかければ逃げる。もちろん、あっちから近づいて来るなんてもっての他。
(私たち、恋人じゃなかったっけ……?)
私たちが互いの思いを通わせたのは、ほかの人とは違う特殊な状況の中。氏ぬか、生きるか、そんな命の駆け引きがある戦いの中で、私たちは好きだといい、そしてキスをした。はっきりとはわからないけど、先輩は私のことを「俺の女」と言ってくれたことから、つまり、そういう関係だと思っていいはずなんだけど……。
(……やっぱり、私の思い違いなのかな)
吊り橋効果、というものがある。不安や恐怖を強く感じている時に出会った人に対し、恋愛感情を持ちやすくなることらしい。もし、そうなのだとしたら――。
一度溢れ出した不安は止まらなかった。でも、やっぱり先輩が浮かべてくれたあの表情はきっと嘘には見えなかったから、私はそんなくだらない考えを振り切るようにして頭を振る。
(そうやって簡単にネガティブなるのが私の悪いところ! 不安なら聞いてみればいいじゃない)
ぱちん、と勢いよく頬を叩いて、さてどうやって先輩を捕まえようかと、いつの間にか止まっていた足を動かして、廊下を進んでいった。
▽真弘×珠紀
・膝枕 / ・闇に差し込んだ光 / >>31-32
・君の愛が欲しい / >>33-36
・強くなりたい。その理由 / >>37
・タイトル未定(無印真弘ルートで、蒼黒) / >>38-40
・タイトル未定(転生パロ) / >>27-28 ※未完
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アンカーってつけすぎはよくないのね…、もうしないわ