原作では、蒼黒の楔は、前作の緋色の欠片の幻の大団円エンドの後となっておりますが、個人ルートエンドでは怒鳴るだろうという妄s((ゲフンゲフン、想像の賜物です。
真弘先輩エンドの後だとして、個人的に書きたいシーンを書いてみました。気が向いたら、最初から書くかも…?
---
みんなが寝静まったあと、一人、水車小屋の外に出る。外は相変わらず真っ暗で、それが、貼れることのない闇のように見えてしまう。小屋からだいぶ離れたところで、私は、ナイフを取り出した。これは、護身ように誰もいない民家から拝借したものだ。自分の身を守るために持ってきたこれが、まさか、自分の命を絶つために使われるなど、あの時の私は想像もしていなかっただろう。
(……これでいい)
私は、不意な事故で、鏡の契約者になってしまった。みんなは、まだ方法があるとは言っていた。私も表面上はそれに同意していた。でも、どうしようもないと、内面は思っている。だって、もうこんなギリギリな状態で、私が生きる方法なんて見つかるはずがない。時間の無駄だ。ならば、この世界を救うために私が死ぬしかない。
「おーちゃん」
ぽつりと、呟くようにその名前を呼ぶ。するり、と私の影から白い何かが出てきて、私の体をよじ登り、肩へとやって来る。にー、と私がしようとしていることを知ってるように寂しげに鳴くおーちゃんの額をそっと撫でた。おーちゃんには、辛いだろうけれど、私が死んでしまったあとの遺言替わりになってもらおうと思う。祐一先輩がいるから、きっと、伝わると思う。
「みんなに伝えてくれる?……最後まで、こんな私についてきてくれてありがとうございました。そして、弱い私ですみませんでした、って」
おーちゃんは、悲しげな表情で私を見つめたあと、にっ、と鳴いて私から飛び降りて小屋の方へ駆け出す。そう、それでいいんだよ。おーちゃん。辛い役目を任せてごめんね?
その白い白い後ろ姿が見えなくなったあと、私は、ナイフを首筋に当てた。かたかたとナイフを持つ手が震えるのを、柄をしっかり持って抑える。死ぬって、どんな感じなんだろう。と思う。今まで、死と背中合わせの戦いをしてきたけれど、粗めてそんな事を思うのは、私をみんなが必死に守ってきてくれたからなんだろうか。ふと、みんなの顔が浮かんだ、拓磨、遼、祐一先輩、卓さん、慎司君、美鶴ちゃん、清乃ちゃん、芦屋さん、アリア、フィーア――そして、真弘先輩。
(真弘先輩、ごめんね……)
半年前の頃。生きることを諦めていた先輩に私は、何度も言った。生きることをあきらめないでと、でも、そんな事を言っている私が、今、生きることをやめようとしている。ほんと、笑えちゃうよね。ひっそりと苦笑する。
ここに来て初めて知る。生きることを選ぶのはどんなに苦しくて、辛いことなんだろうと。でも、今の私と同じような状況だった先輩は、最後はその流れに逆らって、生きることを選択したんだ。本当に強い人だと思う。私は、そんな人と今まで一緒にいられて、良かったと思っている。
「さよなら、みんな、真弘先輩……」
押し当てたナイフにぐっと力を入れる。これで、全部終わる――。頬に温かいものが伝うのを感じながら、私は死ぬその瞬間を迎えようとした、でも、その次の瞬間、すごい力で私の手の中からナイフが離れていくのを感じる。何かに、弾き飛ばされた?
ゆっくりと目を開けた先に見えたのは、強い光を宿した瞳。それは、私を睨みつけている。
「さよならじゃ、ねーよ。何やってんだ、お前……」
いつにない低い声が、怒っているのだということを示している。そこには、――真空の刃を手にした、真弘先輩がいた。
▽真弘×珠紀
・膝枕 / ・闇に差し込んだ光 / >>31-32
・君の愛が欲しい / >>33-36
・強くなりたい。その理由 / >>37
・タイトル未定(無印真弘ルートで、蒼黒) / >>38-40
・タイトル未定(転生パロ) / >>27-28 ※未完
---
アンカーってつけすぎはよくないのね…、もうしないわ