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渚side
本郷さんはゆっくりとした足どりで殺せんせーへと近づいていく。
本「初めからこのクラスに転校してくるつもりでやってきて、謎の超生物に怯えているフリをし続けたら騙されると思ってたんだけど、当たったみたいだね」
そう言って、廊下に視線を走らせる。僕らも自然とそちらへ目を向けた。
そこにいたのは、ビッチ先生。
本「イリーナ先輩が先に潜入してくれたおかげで、うまくできたよ」
茅「イリーナ先輩?」
不「ビッチ先生の事を先輩と呼ぶってことは、本郷さんは殺し屋なの?」
本郷さんは何も言わずに、呆然と立ち尽くしている殺せんせーに笑いかけた。
そして、そのまま腰にあるウェストバッグに手をやってファスナーを開く。
中から出てきたのは、折りたたまれた箱のようだった。
前「え⁉」
折りたたまれた箱は、どういう構造をしているのか。それはバッドのような物に組み立てられた。
本「さ、外で殺ろうか」
次の瞬間、窓ガラスの破裂音とともに殺せんせーが外へと吹っ飛ばされた!
殺「にゅやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
皆「殺せんせー⁉」
僕は本郷さんを見た。
すでに彼は窓の外へと出ていた。
本「あはは。まっさかそーんなに飛ぶなんてね。びっくりしちゃったよ」
烏「なんの騒ぎだ!」
烏間先生が慌てた様子で教室へと駆け込んできた。
外の様子を見て、驚いた顔をする。
僕らは慌てて校舎の外へと出た。
ビ「本領発揮ってやつかしらね」
烏「イリーナ、お前は本郷さんの正体を知っていたのか⁉」
ビ「当たり前でしょ。といっても、ここ2年間音沙汰なしで行方不明扱いされていたんだけど。
彼は殺し屋で私の後輩でもあるのよ」
中学生で現役⁉
僕らと同い年で現役だなんて、信じられなかった。
それに、ビッチ先生の後輩だなんて…。
殺せんせーは必死になって本郷さんの攻撃を防いでいた。
本「まだまだ行くよー!」
本郷さんがナイフを振り上げた、そのとき。
ピュッ
皆「え?」
僕らの足元にはいつの間にか、1本のナイフが落ちていた。
おそらく、本郷さんが手にしていた…。
殺「ニュルフフフ、無駄ですねぇ」
本「あ、僕のバット!」
殺「はい、少しお借りしました」
矢「いったい、何が起きたの?」
カ「あー、なるほどね」
カルマくんだけはわかっているようだった。
カ「要するに、殺せんせーは本郷さんの持っているナイフめがけて、あのバットで打ったんだよ。よく
本郷さんの手に当たらなかったね」
殺「ぬるふふふ。うまく調整して打ちましたから」
本「へぇ、お前。そんなことまでできたんだ…」
本郷さんの口調が変わった。
どこか、さっきとまでは違う殺気を帯びて…。
ビ「やっちゃったわね」
ビッチ先生の言葉は不可思議だった。
いったい、何をやったというのだろう。
ビ「普段は制御しているって言ってるのに、どういうつもりかしら? せっかくストッパーの役割を担ってきた私の立場が潰れるじゃない」
本「はんっ。何が立場だ、イリーナ。だいたい、てめぇがあのタコを片付けていれば、俺たちが出ることもなかったってのによ…」
俺?
本郷さんの一人称は「僕」だったはず…。
それに「たち」って。
本「ま、いいや。別に海でなくとも、俺ならいくらでもヤツを殺せる糸口を作れるしな」
次の瞬間、僕の隣を風が走り抜けた。
茅「きゃっ」
渚「茅野!」
本「おい、タコすけ! この女を殺されたくなかったら、今すぐ俺の前に立て!」
殺「‼」
本郷さんはナイフを手にしながら、茅野の首にそのナイフを当てていた…。