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本「ほら、早く来いよ! それともあれか、教師は普通に生徒を見捨てるってのか!?」
本郷さんがさっきまで放っていた殺気とは明らかに違う…。
本当に殺す気なのか!?
カ「本郷さんさー、怒り狂ってる最中悪いんだけど、そのナイフ。人間には通じないよ」
たしかにそうだった。
だって、本郷さんが持っているナイフは明らかに対先生ナイフだったのだから…。
本「はん! なめんなよ、赤羽。別にこんなチンケなナイフでも人を殺せるんだぜ? 例えば…」
渚「やめろっ!」
茅「ぐぐっ」
本郷さんは茅野の喉元に対先生ナイフを押し付けた。
これでは息ができなくなってしまう!
本「ハハッ。やっぱり楽しいなぁ、殺すってさ。海はそこら辺躊躇しまくってるから、めっちゃつまんないんだけどな…」
茅野が苦しそうに足をジタバタさせている。
なんとかして止めないと!
でも、どうやって⁉
そのとき歩き出したのは、ビッチ先生だった。
ビ「堕ちたものね、あなたも」
本「あぁ⁉」
ビ「確かに本郷海はビビり屋だけど、ヤるときはヤるわよ。それに比べて、カイ? あなたは相変わらず、壊すことでしか問題を解決しようとしないのね」
本「ん、だと…」
いったい、その会話にどんな意味が含まれているのか、僕らにはわからなかった。
ただ、事の成り行きを見守るより他はなかった…。
殺「本郷さん、あなたがどのような事情を持っているかは知りませんが、先生は生徒を見捨てたりしません。何故ならー」
触手が真っ直ぐ本郷さんのもとへ、いや茅野のもとへと向かう。
茅「きゃっ」
殺「何故なら、私はそのためにここへ来たのだから」
渚「茅野」
殺せんせーの触手が茅野を助けてくれたんだ。
茅野はゆっくりと地面に下ろされる。
僕はホッとして胸をなでおろした。
本「うるさい、うるさい、黙れ黙れ…。殺さなくちゃいけないんだ。でないと、やがてあいつが来る。あいつが来たら、もう元には戻れない」
あいつ?
本郷さんの様子がおかしい。
ビ「落ち着きなさい、カイ。あなたの役目は終わったわ。しばらくは海に任せて、引っ込んでなさい」
まるでそれが魔法の呪文でもあるかのように、ゆっくりと本郷さんは倒れた…。
☆
おかしな終わり方でごめんなさい。
まだ続きますよ。
本郷さんは気絶したまま、目を覚まさなかった。
大丈夫なのだろうか。
ビ「渚、そんなに心配しなくても、海はすぐに目を覚ますわよ」
ビッチ先生はのんきにバナナを食べていた。
渚「茅野は平気?」
茅「全然大丈夫だよ」
さっきまで、茅野は殺せんせーに手厚く(?)看病されていたんだけど、どうやら大丈夫そうなのでホッとした。
カ「にしても、あの豹変ぶりはなんだったんだろうねぇ。ねぇ、ビッチ先生」
ビ「何よ、カルマ」
カ「先生はさっきさぁ、本郷のことをウミって言ったり、カイって言ったりしてたよね。あれ、どういう意味?」
ビッチ先生はカルマくんの言葉に、どう返事をすればいいのか迷っているようだった。
ビ「一言で言い表すなら、海(うみ)は二重人格者。自分の中にもう1人、男性としての意識であるカイがいるのよ」
片「ちょっと待ってよ、ビッチ先生。男性としての意識って何? 本郷くんは男子なんじゃないの?」
ビ「何言ってーーあ、そっか。あの子、男子として転入してきたのね。どおりで男子の制服なわけだわ」
皆「はぁ⁉」
みんなはひどく驚いたように声をあげた。
茅「って、渚もカルマくんも驚かないんだね…」
中「まさか気づいてたの?」
カ「え、逆に気づかなかったの? てか、渚くんがわかってたとは思わなかった」
渚「え、だって、本郷さん。どう見たって女子じゃないの?」
中「あー、同族だから渚ちゃんはわかったのね」
渚「中村さん、それどういう意味⁉」
本「ううっ…」
本郷さんがうめき声をあげた。
どうやら目を覚ましたみたいだ。
本「あれ、みなさんお揃いで…」
それから視線を泳がせて、茅野に目を止めた瞬間!
本「わわっ、茅野さん! ごめんなさい、先ほどは失礼をいたしました!」
本郷さんはガバリと起き上がると、茅野に向かって土下座をした。
茅「え⁉ えっと、大丈夫だよ…」
本「カイが余計なことをして、ごめんなさい。あいつ、ケンカっぱやいからすぐにああいうことをしちゃうんだ。本当にごめんなさい」
茅「だから大丈夫だってば」
2人はどうやら仲直りできるみたいだ。
僕はホッとした。
茅「えっと、本郷さん? あの、もう気にしてないから…その代わり、下の名前で読んでも構わない?」
本「はぁ、別に構いませんが」
倉「やったぁ、ナイスだよ。カエデちゃん。私も下の名前で呼ぶ! 倉橋陽菜乃、陽菜乃って呼んで! よろしくね、海ちゃん」
倉橋さんに海ちゃんと呼ばれた瞬間、本郷さんはかたまった。
本「えっと、どこまで知って…?」
ビ「あなたが女子だって、私がバラしちゃったわよ。あなたもいつまでも優等生ヅラしてないで、素にもどりなさい」
本「なぁんだ、バラしちゃったんだ…」
本郷さんの雰囲気が、またガラリと変わった。
これが殺し屋なのだと、僕は実感せざるを得なかった。
海「改めまして、こんにちは。本郷海です! 一応女子だけど、仕事上、男装をしています。気安く下の名前で呼んでください!」
本郷海は、そう言って僕らに微笑みかけた。
3年E組は暗殺教室、新たな仲間も増え、始業のベルは明日も鳴る。
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転校生の時間はこれにて終了!
ここからはやや本編と同じ進行で行く予定だから、興味がなかったらスルーしてください❗