>>344
イトナくんは触手持ちだった。最初は殺せんせーを追い詰めていたのだけれど、結局は殺せんせーの勝ちとなった。
何はともあれ、今日は球技大会の話し合いだ。
きっかけは、僕とカルマくんと杉野で帰り道である本校舎を歩いているときだった。
?「あれ、杉野じゃないか」
杉「! 進藤」
野球部の練習場で杉野はかつての仲間と長話をしていた。
僕とカルマくんはそれを見ていた。
部員「にしてもいいよなぁ、杉野は。E組だから毎日遊んでられるだろ。俺ら、勉強も部活もだから大変でさぁ」
‼
僕は顔をしかめた。
E組はあらゆる分野で差別を受けるクラスだ。
部活禁止というのも、その一つだ。
進「やめろ、傷つくだろ。勉強と部活の両立。選ばれた人間でなければしなくていいことなんだからな」
カ「へぇ、すごいね」
カルマくん……。
カ「その言い方じゃあまるで、自分らが選ばれた人間みたいだね」
進「うん、そうだよ。なら、君たちに教えてあげるよ。選ばれた人間とそうでない人間、この年で開いてしまった大きな差ってやつを」
で、現在に至る。
寺「俺ら、さらしもんとか勘弁だわ。お前らでテキトーにやっといてくれや」
寺坂組は教室から去っていった。
球技大会は、男子は野球、女子はバスケなのだけれど、E組はそもそも除外されているため、代わりにエキシビション・マッチにでなければいけない。
三「要するに見世物さ。男子は野球部と女子は女子バスケ部とやらされるんだ」
殺「なるほど。いつもの、ですね」
片「そ」
男子は男子で、女子は女子での作戦会議が開始された……んだけど。
前「で、なんで海がここにいるんだ?」
海「ひどいなぁ。私は一応、この学校では男子って扱いになってるんだけど」
岡「修学旅行のときは男子部屋にいなかったろ」
海「それとこれとは話が別だよ。仮に私が女子の所にいったら人数多くなっちゃうし、男子は少なくなっちゃうよ」
磯「でも、大丈夫なのか。相手は男子だぞ?」
海「平気、平気」
千「それにこの前、倒れただろ」
海「大丈夫だって、もう治ったし。いやぁ、あのときはお騒がせしました。寝不足だったんだ、あはは」
寝不足って……。
僕らは顔を見合わせてあきれるより他なかった。
殺「君たちは変わりつつある。やりたい、勝ちたい。そういう思いが日に日に強くなっている。それもふまえて、殺監督が勝てるアドバイスをあげましょう」
男子「うっわ……」
そして、超生物との地獄の猛特訓が始まったのだった。
球技大会当日
菅「そういや、殺監督どこだ」
渚「あそこだよ」
僕はグラウンドの外野あたりを指さす。
渚「殺せんせー、烏間先生に正体をバラすなって言われてるから遠近法でボールに紛れてるんだ」
カ「やっほー、せんせー」
カルマくんがふざけて声をかけると、殺せんせーは慌てて地面に身を隠した。
僕はベンチに入っている海に声をかけた。彼女はグローブを珍しそうに眺めながら自分の手にあわせるために、握ったり離したりを繰り返していた。
渚「海は平気なの?」
海「うん? 何がさ」
渚「こんな男子だらけの場所で、緊張とかしないのかなぁって」
海「ハハッ、何言ってんのさ渚。僕は男子だよ」
僕は目を白黒させた。
海は僕の耳元に口を寄せてささやいた。
海「一応、私は男子ってことになってるんだ。だから、みんな。なるべくあわせてほしい。一応、私も国家規模とはいえないまでも、それなりに秘密持ってんだからさ」
皆「おっけ」
こうして、試合は始まった。
アニメをリアタイで見て、無性に書きたくなったから書く‼
E組に点が入ってる。
きっとそれだけで、驚きなんだろうな。
前「はんっ、どうよ。こっちはあれ相手に練習してんだぜ」
練習中
殺「殺ピッチャーは時速300キロの球を投げ、殺内野手は鉄壁の守備を敷き、殺キャッチャーはささやき戦術で集中を削ぎます……」
まさか、あんなめちゃくちゃな特訓がこうして実を結ぶんだから不思議だ。
菅「これなら勝てるんじゃねぇの?」
海はバッドを地面にコツコツたたきながら、試合を見ていた。
海「どうかなぁ。あれ、見なよ」
海の指さした方向を見ると、敵側ベンチ。
渚「あ‼」
一方、女子
片「惜しかったね、次リベンジ」
茅「ごめんね、みんな。私のせいで……、なんか女バスのぶるんぶるん揺れる胸を見ていたら怒りと殺意で目の前が真っ赤に染まって……」
岡野「茅野っちのその巨乳に対する憎悪はいったい何なの⁉」
海「あ、女子が来た」
千「どうやら終わったみたいだな」
速「そっちはどう?」
菅「順調だよ。で、今から理事長が向こうの指揮を執るところ」
理事長の采配は半端じゃなかった。
だいぶ常軌を逸していた。
そもそもバントばかりのE組。なんとか進藤くんのボールに食らいつくことができたけど……。
杉「前進守備……」
これじゃあ勝ち目がない!
E組守備
殺「カルマくん」
外野守備をしているカルマの足元に、殺せんせー……殺監督が地面からボコッと現れた。
カ「何、殺監督。踏んでほしいの?」
殺「次の攻撃は君からです。少し君の挑発で揺さぶってみましょうか」
E組攻撃
審判「どうした、早くボックスに入りな……」
カ「ねぇ、りじちょー」
カルマは審判を無視して大声を出す。
カ「守備がこんだけ前の位置で守っていても、審判も観客も誰も注意しないっておかしくね? あぁ、そっか。お前らバカだから、守備位置とか理解してないんだね」
皆「がたがたうるせぇぞ、E組のくせして‼」
カルマはペロッと舌をだしながら、
カ(ダメみたいよ、監督)
殺(それでいいんです。口に出してはっきり言うことが大切なんです)
審判「次、バッター!」
竹「次は誰?」
渚「え、あ、ちょっと海」
海「うん?」
渚「次だよ、バッター」
海「え、嘘。もうそこまで来たの?」
海は慌てて立ち上がった。
渚「海、バット。忘れてるよ」
海「え⁉ あ、本当だ」
皆「ハハッ、これだからE組は」
海はバッターボックスに立つと構えの姿勢をとらず、守備位置をじっと見ていた。
海「ねぇ、いいの? こんなに前にいてさ」
皆「はぁ⁉」
カ「何言ってんだ、海。俺がさっき挑発したのに。渚くんわかる?」
渚「僕に聞かれても……」
進藤から第一投が発射される!
海はそれをじっと見つめて……、
渚「………」
なんてへっぴり腰なんだろうかと、その場にいた全員があきれた。
海は思い切りフルスイングをしたあと、くるりと一回転をして地面に尻餅をついた。
杉「何がしたいんだ、あいつ」
菅「さぁ?」
皆「ハハッ、あいつバカだろ!」
カ「敵側にむっちゃバカにされてんじゃん」
渚「あ、もしかして!」
カ「うん?」
続いて、第二投。
海はにやりと微笑んだ。
バットをそのまま、振って……。
キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
小気味よいいい音。
渚「う、打った!」
海「ほぅら、だから言ったじゃん。あ、守備の皆さん、走っても無駄だよー。だってその球、」
ストンと、落ちた。
場内ではなく、外側に。
海「ホームランだもん」