>>349
僕らが呆れて見守るなか、海は普通にホームインしてしまった。
杉「すげぇな、海!」
海「いや、全然すごくないよ。だってほら、あの……シンドウくんだっけ? 彼、全然心折れないのな。普通ホームランくらわされたら茫然自失になるだろうに」
前「ま、そりゃそうだよな。理事長の洗脳を受けちゃってんだから」
海「僕はもう仕事したよ。あとは君ら次第ってことで」
カ「はーい」
海はきっと、自分が打てるとわかっていたんだ。
彼女の転校初日、バットで殺せんせーを打った。あれほどの力がありながら進藤くんの球を打てないなんてありえないもの。あとは進藤君の球を目でとらえられるほどの動体視力があればの話だ。
ともあれ、守備につこう。
E組守備
渚&杉「な⁉」
バント!
海「杉野、ボーッとすんな! 急いでファーストに投げろ」
杉「え、あ、おう!」
ファーストはアウト。ただ、セカンドランナーは走って3塁に行っている。
海「……どうすんだよ、カルマ。お前、どうせ何か策あんだろ」
カ「さぁね……、まだ監督から指示が……。あ、次のバッターってさ」
でてきた、進藤くん!
進「踏みつぶしてやる、杉野!」
杉「………っ」
殺「カルマくん」
カルマが下を向くと、殺監督がいた。
殺「先ほどの挑発が活きるときがきました」
カ「あぁ、なるほどね。おーい、磯貝。監督からしれー」
磯「?」
海「うっわぁ……、ねぇ、殺せんせー。怪我とかしないの?」
殺「大丈夫ですよ」
カルマくんと磯貝くんは進藤くんの前に立っていた。バッターボックスにいる進藤くんの前に。
カ「さっきそっちがしたときは、審判は何も言わなかった。文句ないよね、りじちょー?」
理事長「構わず振りなさい、進藤くん」
進(まじかよ……)
進藤くんのフルスイング!
僕は怖くなって思わず目をつむった。
けれど……。
渚「⁉」
カルマくんも磯貝君も普通に避けていた。
海「へぇ」
殺「カルマくんと磯貝くんの動体視力はE組でも群を抜いています。進藤くんのスイングを避けるなど、私を捕まえるよりたやすいでしょう」
海「僕も参加したかったなぁ……」
カ「駄目だよ、そんなおっそいスイングじゃ。次はさぁ」
カルマくんはにやりと微笑む。
カ「殺すつもりで振ってごらん?」
進藤くんはこの時点で、理事長の戦略についていけなくなった。
観客もみんなも、野球の形をした異様な試合にのまれていた……。
進「うっわぁぁぁぁぁ‼」
海「あーらら」
ボールがポテンと落ちた。それをカルマくんが受け止め、僕に投げてきた。
僕は慌てて受け取り、それを磯貝くんの指示で3塁の木村くんに投げて、ゲームは終了となった。
杉「ふぅ……」
いよいよ、鷹岡回です。
体育の時間は烏間先生が担当していて、授業内容は主に殺せんせー暗殺のための訓練をしている。
今日はナイフの授業で、烏間先生にナイフを当てられれば良しとされる。
烏(個々の能力を見る限り、みんなそれぞれ形にはなっ……)
烏間は次の瞬間、言いようのないほどの殺気を感じ、無意識に防御態勢をとった。
渚「うわっ‼」
渚は態勢をくずし、地面に思い切り倒れた。
烏「! すまん、強く防ぎすぎた」
渚「平気です」
杉「バッカでー、ちゃんと見てないからだ」
渚「うっ……」
烏(今感じた寒気はなんだ?)
授業終了
海「渚、平気?」
渚「うん。全然大丈夫だよ」
海の言葉に、僕は明るく答えた。
倉「あれ?」
倉橋さんの声に反応して彼女の視線の先を見ると、そこには大きめのバッグを何個か持った大柄な男がいた。
菅「誰だ?」
烏「⁉ 鷹岡」
鷹「よ、烏間」
海「烏間先生の知り合い?」
鷹岡と呼ばれた、その大柄な男性は重そうな荷物を下ろし、人の好さそうな顔で僕らに微笑んだ。
鷹「今日からE組の体育の教師として新しく配属された鷹岡明だ。よろしくな、E組のみんな」
海「配属、ねぇ……」
鷹岡先生は持ってきた荷物を開け始めた。
そこにあったのは……。
中「スウィーツ⁉」
茅「本当だぁっ‼」
海「おいしそう!」
鷹「さ、召し上がってくれ。俺からのプレゼントだ」
磯「いいんですか、こんな高そうなの……」
鷹「あぁ。俺の財布を食うつもりで遠慮なくな」
って、茅野も海ももう食いついている……。
茅「海ちゃん、スウィーツ好きだったんだぁ」
海「もちろん。スウィーツは全部好きだよ。でも、特に好きなのはプリンでしょ、エクレア、ムースケーキ、あとマカロン! あれが一番おいしい。あとはね……」
海はスウィーツとなると、どうやら口が止まらないらしい。
新しい一面を知ったな。