>>358
中「いるいる、自分が作ったフィールドだと調子に乗るやつ……」
海「典型的なバカだな」
茅「こらこら」
僕らが呆れる中で、倉橋さんは持ち前の笑顔で殺せんせーに言った。
倉「そんな固いこと言わないでよ、殺せんせー。水かけちゃえ」
ばしゃっ
殺「きゃん!」
え……。
何、今の悲鳴は。
ぐらぐら
カルマくんが何かに感づいたのか、殺せんせーの座っている脚立の足をつかんでぐらぐらとゆすった。
殺「ちょ、カルマくん! やめてください」
もしかして、殺せんせー。
殺「いえいえ、別に水に浸かると触手がふやけるとかそんなんないしぃ。泳ぎたくないから泳がないだけだしぃ」
三「ビート板持ってるからてっきり泳ぐ気まんまんなのかと」
殺「これはビート板ではありません。麩菓子です」
三「おやつかよ!」
泳げないんだ!
これはもしかしたら、今までで一番使える手かもしれないぞ。
倉「海ちゃん、どこ行くの?」
海「ちょっと用事があるんだ。ごめん、みんな。先に帰ってて」
中「?」
裏庭
そこには寺坂と村松がいた。
寺「成績が上がって良かっただぁ⁉」
村「なんでも、あいつのやった『模試直前ヌルヌル強化講習』を受けたらさ……いてっ」
寺「成績めあてで日和やがって!」
寺坂は村松を思い切り突き飛ばし、校舎に戻っていった。
教室
茅「あ、海ちゃんおかえり」
海「ただいま……って、何やってんの、殺せんせー」
海が教室へ戻ってくると、そこにはヘルメットをかぶった殺せんせーがいた。ちなみに今、彼は木材で作られたバイクらしきものに乗っていた。
吉「まじかよ、殺せんせー。すげぇじゃん」
海「吉田がみんなの輪に加わってるなんて、珍しいな」
吉「いや、俺けっこうバイク好きでさ。こういうの見ると、興奮しちゃうんだよ」
殺「ヌルフフフ。何せ、私はかっこいいうえに、漢字の『漢』と書いて『おとこ』と読む、漢の中の漢の殺せんせー。このくらいのものを作るのはたやすいことです。それにしてもこのバイク、本物はとっても速いそうで。一度乗ってみたいですねぇ」
吉「バカが。そのバイク持って乗った方が速いだろ」
皆「あはは」
そこへ寺坂がやってきた。バイクを見るなり、それを蹴とばす。
殺「あぁっ!」
殺せんせーはいきなり壊された木材バイクを前にして、しくしくと涙を流した。
吉「おい、謝れよ寺坂」
中「そうだよ。かっこいいうえに漢字の『漢』と書いて『おとこ』と読む、漢の中の漢の殺せんせーが泣いてるよ!」
寺「うるっせえなあ、虫みたいにブンブンブンブン。駆除してやるよ!」
寺坂は自分の机の中から殺虫剤のような容器を取りだし、それを床にたたきつけた。すると、そこから薬品が飛びだし、教室じゅうに蔓延した。
皆「うわっ」
殺「こら、寺坂くん。やんちゃするのもいい加減に!」
寺「っるっせぇなぁ、モンスターが。俺はむかつくんだよ。てめぇも、モンスター相手に仲良しこよしのてめぇらも」
カ「そんなにむかつくんなら殺せばいいじゃん。せっかくそれが許されてるクラスなんだから」
寺「んだと、カルマ。てめぇは」
カルマはその瞬間、寺坂の口をがしっとつかんだ。
カ「ダメだってば、寺坂。ケンカするなら口より先に手ぇださなきゃ」
寺「っ……、うっせぇ!」
寺坂は肩をいからせながら教室をでていった。
海「ゲホッ、ゲホッ」
茅「海ちゃん、大丈夫⁉」
海「ゲホッ、うん……平気。ちょっと至近距離で浴びちゃったからむせただけ……ゲホッ」
海が激しくせき込む中で、茅野は心配そうに海を見ていた。
殺「海さん。咳がひどいですよ。少しうがいをしてきなさい」
海「ゲホッ、うん。そうするよ……」