>>359
教室
茅「あ、海ちゃんおかえり」
海「ただいま……って、何やってんの、殺せんせー」
海が教室へ戻ってくると、そこにはヘルメットをかぶった殺せんせーがいた。ちなみに今、彼は木材で作られたバイクらしきものに乗っていた。
吉「まじかよ、殺せんせー。すげぇじゃん」
海「吉田がみんなの輪に加わってるなんて、珍しいな」
吉「いや、俺けっこうバイク好きでさ。こういうの見ると、興奮しちゃうんだよ」
殺「ヌルフフフ。何せ、私はかっこいいうえに、漢字の『漢』と書いて『おとこ』と読む、漢の中の漢の殺せんせー。このくらいのものを作るのはたやすいことです。それにしてもこのバイク、本物はとっても速いそうで。一度乗ってみたいですねぇ」
吉「バカが。そのバイク持って乗った方が速いだろ」
皆「あはは」
そこへ寺坂がやってきた。バイクを見るなり、それを蹴とばす。
殺「あぁっ!」
殺せんせーはいきなり壊された木材バイクを前にして、しくしくと涙を流した。
吉「おい、謝れよ寺坂」
中「そうだよ。かっこいいうえに漢字の『漢』と書いて『おとこ』と読む、漢の中の漢の殺せんせーが泣いてるよ!」
寺「うるっせえなあ、虫みたいにブンブンブンブン。駆除してやるよ!」
寺坂は自分の机の中から殺虫剤のような容器を取りだし、それを床にたたきつけた。すると、そこから薬品が飛びだし、教室じゅうに蔓延した。
皆「うわっ」
殺「こら、寺坂くん。やんちゃするのもいい加減に!」
寺「っるっせぇなぁ、モンスターが。俺はむかつくんだよ。てめぇも、モンスター相手に仲良しこよしのてめぇらも」
カ「そんなにむかつくんなら殺せばいいじゃん。せっかくそれが許されてるクラスなんだから」
寺「んだと、カルマ。てめぇは」
カルマはその瞬間、寺坂の口をがしっとつかんだ。
カ「ダメだってば、寺坂。ケンカするなら口より先に手ぇださなきゃ」
寺「っ……、うっせぇ!」
寺坂は肩をいからせながら教室をでていった。
海「ゲホッ、ゲホッ」
茅「海ちゃん、大丈夫⁉」
海「ゲホッ、うん……平気。ちょっと至近距離で浴びちゃったからむせただけ……ゲホッ」
海が激しくせき込む中で、茅野は心配そうに海を見ていた。
殺「海さん。咳がひどいですよ。少しうがいをしてきなさい」
海「ゲホッ、うん。そうするよ……」
その夜
寺坂はプールに続く川に薬品を流しこんでいた。
?「助かったよ、寺坂くん」
声のした方を向くと、そこにはシロとイトナがいた。
シ「何せあのタコは外部の人間に対しては鼻が敏感だ。君のように内部の人間に準備をしてもらった方がたやすい。ありがとう。はい、報酬の10万円」
寺(こっちのほうが居心地いいな)
寺坂はシロから報酬を受け取り、それをポケットにつっこんだ。
樹上で様子を見ていたイトナが寺坂の前に降り立って言った。
イ「お前の目にはビジョンがない。目の前の草を漠然と食っているノロマな牛は、牛を殺すビジョンを持った狼には勝てない」
寺坂の頭の中に、昼間の光景が映し出される。
カルマの挑発的な言葉に思わずビビってしまった自分を、思い出す。
寺「んだと、てめぇ!」
シ「まぁまぁ。では明日、頼んだよ寺坂くん」
次の日
………。
なんと言えばいいんだろうか。
ビ「何よ、意味もなく涙流して」
そう。殺せんせーは泣いているのだ。それをハンカチでおさえているものの、とめどなくあふれている。
殺「いいえ。これは涙ではなく鼻水です。目はここにあります」
ビ「まぎらわしい!」
なんだ、鼻水だったのか。
今はお昼休みの最中。みんなで机をくっつけあってお昼ご飯を食べていた。
何故かカルマくんと海の姿が見えなかった。カルマくんは例のごとく授業をサボったまま帰ってこないんだけど、海のほうはどうしたんだろう。
そこへ、教室のドアがガラリと開いて、寺坂くんが現れた。
殺「おぉ! 寺坂くん。今日はなかなか来なかったので心配しました」
殺せんせーは鼻水で顔をベチョベチョにしながら、寺坂くんのもとへやって来て、さらに鼻水で寺坂くんの顔をもベチョベチョにさせた。
寺坂くんは殺せんせーを押しのけ、殺せんせーのネクタイで自分の顔を拭くなり言った。
寺「おい、モンスター。聞いたぜ? 弱点なんだってな、水が。おい、お前らも手伝え! 俺たちで協力してこいつを殺すぞ」
一方的すぎない?
僕がそう思っていると、隣の席で一緒に昼食を食べていた前原くんが立ち上がった。
前「寺坂さぁ、お前。ずっと俺たちの暗殺には協力してこなかったろ。それを今更お前の都合で『はい、やります』なんてみんなが言うと思うか?」
寺「やりたくないならやらなくてもいいぜ? その場合、俺が100億を独り占めだ」
寺坂くんが教室をでていくと、みんながざわつき始めた。
吉「もう正直ついていけねぇわ」
村「ああ」
倉「私行かな〜い」
岡野「同じく」
殺「みなさん、行きましょうよ〜」
わっ!
殺せんせーの鼻水が教室じゅうに広がっていき、僕らは身動きがとれなくなった。
殺「寺坂くんがやっと私を殺る気になったんです。これを期に仲直りして、みんなで気持ちよくなりたいです〜」
木「まずあんたが気持ち悪い!」