>>383
小「待てよ、たしかこいつら……。磯貝悠馬、社会14位。奥田愛美、理科17位。神崎有紀子、国語23位。中村莉桜、英語11位。なるほどなぁ、各教科だけなら張り合える奴もいるってわけだ」
荒「なら、こういうのはどうかな。各教科で1位を取った者がなんでも命令できるってのは」
え……。
瀬「どうした、臆したか? 俺らなら命賭けてもかまわないぜ」
瞬間、僕らはそれぞれ反応した。
僕は瀬尾くんに、磯貝くんは荒木くんに、中村さんは小山くんに、神崎さんは榊原くんに対して急所をついた。
渚「命はそう簡単に賭けないほうがいいと思うよ」
僕は思わずそう言っていた。
こんな騒がしい状況の中で、やっぱり海は黙々と勉強をしていた。
荒「お、覚えてろよ」
榊「どうなっても知らないからな!」
五英傑の人たちが立ち去ろうとしたところで。
海「待った。ちょっと、そこのえーっとなんだっけ? 五、五……あー、いいや。A組の頭が素晴らしくできてる人たち。ちょっと謝ってよ」
瀬「な、なんだよ。どうして俺たちがE組のために謝んなきゃ……」
海「僕らじゃなくて、この人たちにだよ」
海が示したのは僕らの席の周りにいる他クラスの生徒たちだった。
海「ここにいる人たちは、勉強するためにここに来たんだ。まぁ、もちろん僕らもそうだけど。君たちの勝手な都合で騒がされた挙句に謝らないのはおかしいと思う。あれ、見える?」
続いて海が示したのは、本棚にある『館内は静かに利用しましょう』の文字。
海「ルールを守れないなんて、成績以前に、人間としてどうかと思うけど。聞いたところによるとさ、A組ってみんなのお手本なんでしょ?」
海……。
茅「もしかして海ちゃん、間接的にケンカ売ってる?」
茅野が小声で僕に聞いてきた。
渚「もしかしたら、そうかも」
海はため息をついて、席に着いた。
小「お前、名前は」
海「名乗ってどうすんのさ。どうせ成績下位組の僕らのことなんて、君たちは興味もわかないでしょ。明日には忘れてるだろうよ」
海は片づけを始めた。
渚「え、帰るの?」
海「いや、ちょっと校舎に戻るよ。やっぱ数学は難しいや。せんせーに質問してくる。じゃね、みんな」
海は僕らがあっけにとられている中で、図書室をでていった。
次の日
渚「海、ごめんね」
海「何が?」
渚「昨日、怒ってたでしょ」
海「あー、あれね。私も大人気(おとなげ)なかったし。それに、渚たちは悪くないよ。悪いのはあいつらだよ」
僕が黙っていると、海はため息をついてさらに続けた。
海「こう言ったら身内びいきみたいに聞こえるかもしれないけどさ、ケンカを売ってきたのはあっちが先だよ。だから、渚たちが気にする必要なんてないよ。それに、あいつら……」
あ、あれ?
海、怒ってる?
海「一度として謝ってこなかったし……。ぜってー、私が総合順位で1位とって、あいつらに地べたをなめさせてやる……」
中「アハハッ、海。その意気だよ」
授業
海「ねぇ、殺せんせー」
殺「なんですか、海さん」
海「数学ってどうやったら得意になるかな」
殺「ふぅむ。ちなみに海さんは何故、数学が苦手なんですか」
海は少し考えた。
海「答えが確実に決まってるってとこかな。いくら公式を使ってもうまく導けない。出口はわかっているのに、そこまでたどり着くのが難しい。そういう脱出不可能な迷路の中にいる気分」
殺「別に得意にならなくてもよいのです」
海「え?」
殺せんせーからそのような台詞が飛びだすとは思わず、海はぽかんとした。
殺「一生懸命に勉強すれば、おのずとわかるようになりますから」
海「……そういうもんかな」
殺「ええ、そういうもんです」
一方で、カルマは授業中だというのに寝ていた。
殺「こら、カルマくん。ちゃんと勉強をしなさい。君なら総合でトップを狙えるでしょうに!」
カ「言われなくともちゃんととるよ。あんたの教え方がいいせいでね。それにさ、せんせー。最近あんた、トップトップばっか言って、つまらないね。そんなことよりいいのぉ? A組の持ちだした賭けって、なんか企んでると思うんだけど」
岡「心配ねぇって、カルマ。このE組が失う物なんてこれ以上はねぇよ」
倉「勝ったらなんでも一つかぁ。学食の使用券とかほしいなぁ」
殺「むぅ……。では、これをくれと命令するのはどうでしょう」
殺せんせーが取りだしたのは、学校案内?
殺「これです」
学校案内が開かれた、そのページには!
皆「わぁ……」
殺「せんせーはね、今度は君たちにバチバチのトップ争いを経験してほしいのです」