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寺「おい、海」
海「何?」
寺「カルマは勝てるのか?」
海「わからない。でも、殺せんせーは彼に任せるみたいだし。私も任せるしかない。ただ、もし彼を死に追いやるような状況になったら、殺せんせー、それから烏間先生も。みんなをつれて逃げてください」
渚「どうするつもり⁉」
すると海は不敵に笑った。
海「とてもアマチュアには見せられないようなことを、するまでだよ」
カルマくんは殺し屋と戦っている。
それにしても。
茅「すごい。全部避けるか捌いてる」
殺「烏間先生の防御テクニックですねぇ」
烏(殺し屋にとって防御技術は優先度が低い。だから授業で教えた覚えはないが。目で見て盗んだな)
カ(よけられるけど、こっちから攻め込んだらつかまるからなぁ)
男「……どうした。俺を倒さなければここを永久に抜けられぬぞぬ」
カ「どうかなぁ。俺がひきつけるだけひきつけといて、みんながちょっとずつ抜けるってのもあるかと思ってー。……安心しなよ、そんなコスいことは無しだ。今度は俺から行くからさ。正々堂々、素手のタイマンで決着つけるよ」
カルマくんが走りだした。
すごい、殺し屋と戦ってる!
カルマくんが殺し屋の足にキックをくらわせると、殺し屋は足を痛めたのか背中を向けた。
カ(チャンス!)
瞬間!
ブシュッ
え、あのガス……。
男「ふぅ。長引きそうだからスモッグの麻酔ガスを試してみることにしたぬ」
吉「き、汚ねぇぞ!」
男「俺は一度も素手だけとは言ってないぬ」
殺し屋は片手でカルマくんの頭をつかんだ。
まずい!
僕らが焦るなかで、海だけが笑っていた。
海「さすがだわ。とてもマネできない」
渚「? 何言って……」
ブシュッ
⁉
男「ぬ、ぁ……」
カ「奇遇だね、2人とも同じこと考えてた」
カルマくんが持っていたのは、麻酔ガス⁉
海「おそらく、さっきくすねたんでしょ」
カルマくんは襲ってくる殺し屋をしめあげて、倒してしまった。
カ「ほら、寺坂。早く早く。ガムテと人数がなきゃこんなバケモン勝てないって」
寺「へーへー。お前が素手でタイマンの約束とか、もっとないわな」
数人が殺し屋の上にのしかかり、ガムテでしめあげた。
カ「それにしてもこのガス、使い捨てが勿体ないくらい便利だね」
男「俺は素手しか見せていないのに、何故ぬ」
カ「当然っしょ。素手以外の全部を警戒してたよ。ここで俺らを止めるためなら、どんな手も使うべきだし。俺もそっちの立場ならそうしてる。あんたのプロ意識を信じたんだよ。信じたから、警戒してた」
海「ふふっ」
殺(一度の敗北を実に大きな糧にした。君は将来、大者になれます)
殺し屋の男は笑った。
男「負けはしたが、楽しい時間を過ごせたぬ」
カ「え、何言ってんの? 楽しいのはこれからっしょ」
カルマくんは寺坂くんが持ってきていたバッグから小さな袋を取りだした。
その袋には、「そなえあればうれしいな」の文字……。
男「なんだぬ、それは」
カ「わさびアンドからし〜。おじさんぬの鼻の穴にねじこむの」
⁉
カ「これいれたら、専用クリップで鼻ふさいでぇ、口の中にトウガラシの3倍辛いブート・ジョロキアぶちこんでさるぐつわして、しょちかんりょ……」
そこへ、海がカルマくんの手を止めた。
ホッ。
海「カルマ、私ね。この前陽菜乃と見つけたんだぁ」
え?
海はウェストバッグからビンを取りだした。
海「これ、1匹のゴキブリに対しての卵ぜぇんぶ。人の中にぶちこんだら、どうなるかなぁ?」
⁉
海「一度でいいから、試してみたかったんだよねぇ」
ここにも、悪魔がいた……。
なんで、こんな格好しなきゃいけないんだ……。
速「自然すぎて、新鮮味がない」
渚「そんな新鮮さいらないよ‼」
……今、場所はダンスとか踊れるらしいパーティ会場みたいなところ。
そこで僕らはとある任務を遂行しなきゃいけないんだ。
ここを行った先にVIP専用のルートがある。そこを抜けないと、最上階にはたどり着けない。そこへ行くには鍵を開けなくちゃいけない。そのための任務なんだ。
でも、男子も連れていっては目立ちすぎるというわけで。かと言って、女子だけでは危険すぎる。そこでカルマくんの提案で僕が何故か。
海「大丈夫だよ、渚。その格好。凛香の言う通り、違和感ないから。その女装」
と言いつつ、海は笑っている。
茅「むしろ、違和感あるのは海ちゃんだよね。その格好」
海「うん。正直まずったけど、そこは潜入捜査が得意な私の見せどころだよ」
潜入捜査をする、ちょっと前のことだ。
渚「やだよ、女装とかっ‼」
カ「かと言ってさ、渚くん。女子ばっかり行かせるのはあんまりじゃない?」
渚「うっ……」
海「大丈夫だよ、渚。君が女装しても私のほうが数倍は目立つ」
不「というよりも、海ちゃんはついてくつもりなの?」
海「当たり前っしょ。じゃあさ、渚。せめて顔を隠すのとかないの? いやま、中性的な顔立ちをしているから目立たないとは思うけどさ」
カ「それなら、あれがあんじゃん。ほら、さっき荷物になるからって寺坂のバッグに入れてた」
渚「あ」
僕は寺坂くんから受け取った。
海「⁉」
渚「海?」
海「え、あ、いや。なんでもない。行こ、みんな」
女子「オッケ」
?「なぁ、そっちで俺と飲まねぇ? 金あるから、なんでもおごってやんよ」
……いきなりなんだ?
片「はぁい、渚。相手しといて」
渚「ちょ、片岡さん⁉」
片「作戦の下見が終わったら呼ぶからさ」
渚「うぅっ」
海「おい」
う、海。
ドスの利いた声はやめたほうが。
海「もしも渚に何かしたら、許さな……ちょっ」
茅野が海を引っ張って退散させた。
片「何が、『潜入捜査が得意』よ。目立つじゃない」
海「う……ごめん」
茅「海ちゃんってさ、何気に渚をかばってるよね」
海「え、そうかな」
不「たしかに、そういう節はあるかも」
速「うん」
矢「そうだね」
岡野「いえてるかも」
海「みんな、そこまで言うことないじゃん……」
(ごめんなさい、大幅に飛ばす! 矢田さんファン、ごめん‼)
階段にて
渚「はぁ……」
茅「どうしたの、渚」
渚「いや、今回女子が全部やってくれたし。僕がこんな格好した意味って」
カ「面白いからに決まってんじゃん」
カルマくんが見せつけてきたのは、僕の……。
渚「撮らないでよ、カルマくん‼」
茅「……そんなことないと思うよ。きっと誰かのためになってるって」
さっき、出会ったユウジくんという少年のことを思いだす。非合法なタバコを吸っていたユウジくん。
彼に、僕は何かをしてあげられただろうか。