>>467
僕らは知ることになる。
常に隣にいて、僕らの暗殺をサポートしていた本郷海という子が、本当に本物の殺し屋だということに。
海「まずはその物騒な銃、しまってくれないかな。こっちは怪我人もいるし」
ダム「あなたなら、弾をそのナイフではじけるでしょう」
海「それが面倒だから言ってるんだけど」
海はナイフを足にあるナイフ入れにさした。
というか、あんなところにナイフ入れがあるとは。
海「じゃあいいや」
海は走りだした。殺し屋の2人は続いて銃を構えようとしたのだけれど、でてきたのは。
パシャッ
ダ&デ「⁉」
水、鉄砲?
海「ふふっ」
海はいつの間にか殺し屋2人の背後にいた。そして、彼女が手にしていたのは、本物の銃。
海「あっれ〜。これなんだろなぁ」
デ「お前、今何を⁉」
海「知ってる? 外国ではよく人のお金を盗むためにとあるスキルを磨くんだ。バレてしまったら逮捕されちゃうからね。そのスキルの名前は、掏り(すり)。そう言えばわかるでしょ」
海は本物の銃を構えた。
海「じゃ、死んでください」
ダ「ま、待ちなさ……」
僕らは思わず自分たちの顔をおおった。
パン、パンパンッ‼
パリーン
⁉
顔をおおっていた手をどけると、見えてきた光景はそばにあった窓ガラスが割れていた。
海「なぁんてね。殺るわけないじゃん」
海はそこに銃2丁を放り投げて捨ててしまった。
海「私さぁ、こう見えて怒ってるんだよ? 人の仲間をウィルスで感染させた挙句、その犯人はそこのタコボールと治療薬を引き換えろときたもんだ。で、来てみれば来てみたで殺し屋があちらこちらで待ち伏せ態勢。いったい、どんな待遇だよ」
海は笑っていた。
それは、人間らしい笑みというよりも、獣が獲物をとらえるために見せる、そういう笑みだった。
海「さすがに他の子がいるから殺しはしないよ。しないけど、殺されたほうがマシなくらい、ひどい苦しみを味わわせたほうが数万倍いいや」
続いて海が取りだしたのは、2本のナイフ。どちらも足にあったナイフ入れからでてきた物だ。
海は走りだし、ナイフを両手で器用に扱いながら両方にいる殺し屋に対して突き刺す。
彼らはギリギリでよけ続けている。
殺「さすがですねぇ」
渚「え?」
殺「海さんは今、『殺しはしない、けれど殺されたほうがマシなくらいの苦しみを味わわせる』と言っていました。実際、ナイフは急所を狙ってはいるもののギリギリで避けている」
カ「避けてるっていうか、あの殺し屋さんたちがよけ続けてるんじゃないの?」
殺「いえ、少し違いますねぇ。君たちも私に対してやったでしょう。私を狙わない弾幕を、張ったでしょう」
あ。
殺「人は皆、当たるか当たらないかの攻撃に弱い。いつ、自分に対して必殺がくだるかわからないのですから。海さんはそれを心得たうえであのような攻撃を仕掛けています。みなさん、しっかり海さんの動きを観察して、そして技を盗みなさい。きっとそこには、私を殺すためのヒントが隠されているかもしれませんから」
殺せんせーはそう言ってナメ顔になった。
デ「捕まえたぞ‼」
⁉
トゥイードルディという名の殺し屋が海のポニーテールをつかんでいた。
海「チッ」
デ「捕まえちまえばこっちのもんだ。さぁ、消えろっ!」
トゥイードルディが取りだしたのは、ナイフだった。それを海の首に向かって……。
茅「やめてっ!」
ザクッ
僕らの大半は目をつぶって耐えた。
殺「大丈夫ですよ、みなさん」
茅「え?」
僕はおそるおそる目を開けた。
見えてきた光景は。
渚「⁉」
血が舞っていたのではなく、髪の、毛……?
海「長いからさ、切っちゃった」
海が手にしていたのは、相手の手。その人が手にしていたナイフには、髪の毛がついていた。
海の髪は長い髪から肩までの少し短い髪となっていた。
岡野「いったい、何が」
殺「海さんは相手の動きを予測していました。ナイフが飛びだすことも、おそらく計算のうち。そのナイフを持った手をつかみ、そのまま髪に持っていき、自ら髪を切ったのです」
吉「そんな判断、一瞬のうちにできるのかよ……」
殺「だから言ったでしょう。彼女の動きを観察し、技を盗めと。彼女は君たちとは一歩先を進んでいる、プロなんです」
海は2人の人間を同時に相手していた。
ナイフを上手く使い、ときどきウェストバッグから色々と飛び出してくる様々な武器。
あのバッグの中には、いったい何が入ってるんだ?
茅「そういえばさっき、何を言われていたの? 渚」
渚「え? あ、そういえば!」
合図をだしたら前線に出ろって言われてたんだった。
渚「ど、どうしよう……」
殺「渚くん」
殺せんせーが声をかけた。
殺「海さんの動きをよく見てください。そうすれば、君にしか分からない合図がだされるはずです」
僕にしか分からない、合図?