>>525
最上階の部屋を襲撃する少し前、烏間は海に聞いた。
烏「海さん。ストッパーをはずすというのは要するにどういうことをするんだ」
海「え、あれ。言ってませんでしたっけ。えーっと、まぁ単純です。私ではなく、カイの名前をフルネームで叫べばいいんです」
不「なんか漫画みたい」
カ「てか、中二病の域だね」
海「カルマにだけは言われたくないなぁ」
ただ、そのとき海は「あまり使うのはよくないとは思います。私の理性で抑えることはできますけど、万が一ということがありますから」と言っていた。
寺「やれ、渚。死なねぇ範囲で、ぶっ殺せ‼」
渚「……っ‼」
渚は寺坂から投げ渡されたその、スタンガンを腰にさし、上着を脱いだ。
鷹「おーおー、かっこいいねぇ」
烏「本郷カイ‼」
烏間の突然の言葉に、みんなは言葉を失った。
殺「烏間先生、よく判断しました」
海は一瞬、烏間を見たが特に反応はなかった。烏間は失敗したのかと不安になったが、ここはもう成り行きで任せるほかなかった。
鷹岡は不思議そうに首をかしげていたが、渚にも海にも対して変化がなかったのを知ると、戦闘モードに戻った。
茅「殺せんせー。渚、スタンガンしまっちゃったよ」
殺「にゅぅ……」
鷹「ちなみに、ここに薬の予備がある。渚くんが、もしも本気で殺しに来なかったり、下の奴が俺の邪魔をしようものなら、こいつも破壊する。それから、こいつもな」
海「チッ」
鷹岡が海を引っ張っていき、みんなに見せつけた。
渚たちを助けようと準備をしていた千葉と岡野は、鷹岡に見つかってしまい、黙って見守ることしかできなくなってしまった。
鷹岡は海を乱暴に放すと、渚と向かい合った。
殺「烏間先生。もし、渚くんが生命の危機と判断したら、迷わず鷹岡先生を撃ってください」
烏(さきざきまで見通せるこいつが言うのだから、今までになく危険な状態ということか。いや、俺が見ても間違いなくまずい。今までの暗殺者はなんとかこちらのペースで倒すことができたが、今は完全に立場が逆。いくら潮田渚が暗殺に持ち込もうとしても……)
渚が歩きだしたところを、鷹岡はその顔面をなぐり、さらに拳をふるわせた。
茅野は見ていられず、顔をそむけた。
なぐる、蹴るを一方的に繰り返し続け、渚はなすすべもなくただ攻撃を受け続けるしかなかった。
烏(かつての精鋭軍人に勝つなど、全国模試で1位をとるよりも数倍至難だ)
鷹「そろそろ俺も、こいつを使うか」
へばっている渚の目の前で、鷹岡は地面に置いておいたナイフを手にした。
渚は海に視線を送る。
海は黙ったまま、投げ出した足で地面をコツコツたたいていた。渚にはなんの合図かはわからなかったが、それでも海は何かをしようとしているのはわかった。
コツ、コツ、コツ、コツ
このテンポは、まるで……。
渚は海が鳴らしているテンポを頭の中で一緒に鳴らしてみた。
やはり、そうだ。
渚は一歩退いた。
茅「どうしたの、渚……」
矢「わからないけど、何かをしようとしていることはたしかだよね」
岡野「うん」
鷹「どうした、殺すんじゃなかったのか?」
鷹岡は何かに気づいたようだったが、異変には気づいていないようだった。
渚にしかわからない、異様なまでの……。
?「フッ」
鼻で笑う声に驚いて茅野が振り返ると、そこには。
茅「海、ちゃん……?」
海「よぉ、茅野。久しぶりだな」
矢「⁉ どうして、ここに……」
海「おい、潮田ぁっ‼」
渚がこちらを向いた。その表情にはほっとしたような顔が一瞬浮かんだ。
鷹「⁉ 何故、お前がそこに」
海「ついさっきだよ」
自分の計画を台無しにされたと知り、鷹岡は歯ぎしりをした。おもむろに、爆弾のスイッチを押した!
速「海っ!」
バァンッ