>>526
渚は海が鳴らしているテンポを頭の中で一緒に鳴らしてみた。
やはり、そうだ。
渚は一歩退いた。
茅「どうしたの、渚……」
矢「わからないけど、何かをしようとしていることはたしかだよね」
岡野「うん」
鷹「どうした、殺すんじゃなかったのか?」
鷹岡は何かに気づいたようだったが、異変には気づいていないようだった。
渚にしかわからない、異様なまでの……。
?「フッ」
鼻で笑う声に驚いて茅野が振り返ると、そこには。
茅「海、ちゃん……?」
海「よぉ、茅野。久しぶりだな」
矢「⁉ どうして、ここに……」
海「おい、潮田ぁっ‼」
渚がこちらを向いた。その表情にはほっとしたような顔が一瞬浮かんだ。
鷹「⁉ 何故、お前がそこに」
海「ついさっきだよ」
自分の計画を台無しにされたと知り、鷹岡は歯ぎしりをした。おもむろに、爆弾のスイッチを押した!
速「海っ!」
バァンッ
ヘリポートで突然爆発音が響いた。
鷹「何故だ」
海「悪いけど、手錠。はずさせてもらったぜ? あんな安物じゃなくてもっと堅そうな奴だったらはずすのに5分はかかったろうな」
海がだしたのは、針だった。
海「スキルがあればたとえ両手を縛られていても針だけでピッキングなんか可能だぜ?」
茅野は海の顔色が悪そうなことに気づいた。
茅「カイくん、顔色が悪そう……」
鷹岡が海をにらみつけて、顔を真っ赤にしながら言った。
鷹「それ以上、いらねぇ口をたたいてみやがれっ! この薬を破壊し……」
海「あー、薬ってこれか?」
海は振袖の中から3本の試験管を取りだした。
不「治療薬‼」
海「掏りのスキル。海は無駄にスキルを極めすぎだが、たまには役に立つよな」
そう言って海は歩きだした。
海「おい赤羽。これ、お前に預けるぞ」
海が渡した治療薬をカルマは黙って預かった。海はそのまま視線を上に――渚の方へ向けた。
海「じゃあな、潮田。あとは頼んだぞ……」
そう言って海はゆっくり倒れた。
茅「海ちゃんっ‼」
渚は黙ってそれを見ると、鷹岡に向き直った。
記憶は、夏休みの暗殺計画のときにさかのぼる。
夏休み暗殺計画
渚「今のが、必殺技……?」
ロ「そうだ。と言ってもピンとこないだろう。俺は殺し屋としてピンチのとき、これを編み出すことで切り抜けた」
渚は両の手をあわせてみる。
渚「でも、ロヴロさん。これって」
ロ「そう。相撲で言う猫だましだ」
渚は息を吸って、吐いた。
渚(この技の発動条件は3つ。1つは武器を2本持っていること、2つ目は敵が手練れであること、3つ目は敵が殺される恐怖を知っていること……よかった、全部そろってる)
渚は、鷹岡を真っ直ぐ見た。
渚(鷹岡先生、実験台になってください)
鷹岡は渚の笑顔を見て、寒気が走った。
片「渚、笑ってる?」
茅野は海を近くの壁によりかかせながら、渚を見守った。
渚はゆっくりとした足取りで鷹岡に近づいた。
鷹「こんの、クソガキ……」
渚(タイミングはナイフの間合いのわずか外。接近するほど敵の意識はナイフに集まる……。その意識ごと、ナイフを空中に置くように捨て、そのまま……)
パァンッ