>>715
海「ゲホッ、ゲホッ……」
茅「海ちゃん平気?」
海「ゲホッ……ハハ、ごめん。ちょっと最近風邪気味でさ」
不「大丈夫なの?」
海「いやはや申し訳ない……。みんな今年受験なのにね。感染したら大変だわ」
うん?
渚「みんな受験って、海も今年受験でしょ? それとも……」
殺し屋に戻るのかと聞こうとして、ちょっとためらった。
海「あ、あー……。そういえばそうだった」
?
不「さて、到着よ」
不破さんを筆頭にして、僕らは高い塀を乗り越えた。
不「ふふん。体も頭脳もそこそこ大人の名探偵参上!」
渚「やってることはフリーランニングを使った、住居侵入だけどね……」
僕らは急いで物陰に隠れた。
寺「不破、どうしてここが次に犯人が現れる場所だってわかんだよ」
不「ふふっ。実はここで、巨乳アイドルのみを集めた合宿が開催されてるの。しかも、今日は合宿最終日。犯人がこの手を逃すはずないわっ!」
海「ふぅん。あ、あれ何?」
海が指さした方向を見ると、黄色い頭の……。
茅「こ、殺せんせー⁉」
渚「なぁんだ。殺せんせーも同じこと考えてたのか」
海「⁉」
寺「海、今度はなんだよ」
海「変な気配がする……」
カ「ん〜? あ、あれじゃない?」
カルマくんが指さした方向にはっ!
不「き、黄色い頭の大男⁉」
渚「やっぱり……」
カ「真犯人は別にいたみたいだね」
黄色いヘルメットをかぶったスーツ姿の人間が、物干し竿のあたりを右往左往していた。そして、次々と物干し竿に干されている下着を取っていった!
そこへ殺せんせーが飛びだしてきた!
殺「捕まえたぁぁぁぁっっ‼ よくも私のマネして羨ましいことしてくれましたねぇっ! 隅から隅まで手入れしてやる、ヌルフフフフフ‼」
僕らは物陰から出た。
寺「なんか、下着ドロより危ねぇことしてるぞ」
渚「笑い方も報道されてた通りだしね」
カ「でも、海。これで安心でしょ」
そういえば、変な気配がするって言ってたっけ。
僕は海を見たけど、海は依然(いぜん)厳しい表情をしていた。何があるというのだろう?
その時だった。
海「⁉ 殺せんせー、逃げてっ!」
渚「え⁉」
殺「にゅやっ⁉」
物干し竿で一緒に干されていたシーツが、殺せんせーを囲み始めた!
?「国にかけあって烏間先生の部下をお借りしてね。おかげであのタコをここまで誘い出すことができた」
この声は!
寺「シロっ!」
シ「君たちが夏休みに使った方法を利用させてもらったよ、あてるより、まずは囲うが易し。そして」
囲まれたせんせーの上空には。
不「イトナくん⁉」
イ「さぁ、兄さん。どちらが強いか。改めて決めよう」
イトナくんの触手が殺せんせーを追い詰めていた。
寺「俺らの獲物だぞっ!」
不「いっつもいやらしいところから手ぇまわして!」
シ「それが大人ってものだよ」
一方で、カルマくんの目は違う方向へ行っていたのに僕は気づいた。カルマくんが見ていたのは、海だった。
海はさっきからずっと黙っていた。
イ「殺せんせー、お前は俺より弱い。お前を殺して、たった一つの問題を解く。すなわち、最強の証明!」
シーツ越しだから、どうなっているかわからない。けれど、殺せんせーがおされている!
殺「にゅるん」
シーツの囲いの中では殺せんせーはイトナの攻撃を避けていた。
殺「さすがです、イトナくん。一学期までのせんせーなら殺られていたでしょう。ですが、君の攻撃パターンは単純です。いかに速くても、いかに強くても、いかに保護者が策を積み上げても、3回目ともなれば、せんせーも順応できます」
放たれたイトナの触手を、両腕で受け止める!
殺「イトナくん、せんせーだって学習するんです。せんせーが日々成長せずしてどうして生徒に教えることができましょう。さて、厄介な布の檻を始末しますか。夏休みを経て、せんせーも学習しました。イトナくん、覚えておきなさい。せんせーにとって暗殺は教育。暗殺教室のせんせーは教えるたびに強くなる!」
シーツの向こう側から光が放たれた。シーツがふっ飛ばされ、中から殺せんせーとイトナくんがでてきた。
殺「そういうことです、シロさん。イトナくんを置いてこの場を去りなさい。あと、私が下着ドロじゃないという正しい情報を広めてくださいっ!」
茅「わ、私の胸も正しくはび、B! Bだからっ!」
………。
イ「ぐっ、ぐぁぁぁぁぁっっ!」
⁉
イトナくんの触手が暴れだした!
イ「あ、たまが痛いっ!」
シ「どうやら度重なる敗北のショックで、触手が精神をむしばみ始めたか」
何を言ってるんだ?
シ「ここいらがこの子の限界かな」
そう言ってシロは去ろうとする。
殺「待ちなさい、シロさん! あなたはそれでも保護者ですか⁉」
シ「教育者ごっこしてんじゃないよ、モンスター。なんでもかんでも壊すことしかできないくせに……。さよならだ、イトナ。あとは1人でやりなさい」
シロが去った直後、イトナくんの触手がこちらに向かって襲いかかってきた。
殺「危ないっ!」
殺せんせーが慌てて僕らの盾になって、イトナくんの触手をはじいてくれた。
イ「ぐああああああああっ‼」
イトナくんは叫び声をあげて飛び去っていった……。
カ「……海」
海「………」
カ「海っ!」
海「え、あ。ごめん。ボーッとしてた」
何か、思い詰めてるような表情をしていた。
海「ゲホッ……。で、殺せんせー。どうすんの? このままだと」
殺「ええ、わかっています」
次の日
律「みなさん、見てくださいっ!」
休み時間中、律の声が教室じゅうに響いた。
律から表示されたのは、破壊された携帯ショップだった。
不「これは……」
殺「おそらく、触手のせいですね。触手でなければああいうことはできません」
不「ということは、イトナくんよね。でも、どうして携帯ショップばかりを?」
そこへ。
海「おはよ……」
茅「海ちゃん! どうしたの?」
海はマスクをしていた。
海「ちょっと病院行ってた。風邪みたい……」
殺「よかったです、海さん。せんせーはてっきり海さんが不良になったのかと……、連絡もしてくれなかったので……うぅっ」
殺せんせが泣き始めた……。
こんな状況だというのに。
海「ごめんごめん、次からは遅刻の連絡とかするから」