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イトナくんの触手が殺せんせーを追い詰めていた。
寺「俺らの獲物だぞっ!」
不「いっつもいやらしいところから手ぇまわして!」
シ「それが大人ってものだよ」
一方で、カルマくんの目は違う方向へ行っていたのに僕は気づいた。カルマくんが見ていたのは、海だった。
海はさっきからずっと黙っていた。
イ「殺せんせー、お前は俺より弱い。お前を殺して、たった一つの問題を解く。すなわち、最強の証明!」
シーツ越しだから、どうなっているかわからない。けれど、殺せんせーがおされている!
殺「にゅるん」
シーツの囲いの中では殺せんせーはイトナの攻撃を避けていた。
殺「さすがです、イトナくん。一学期までのせんせーなら殺られていたでしょう。ですが、君の攻撃パターンは単純です。いかに速くても、いかに強くても、いかに保護者が策を積み上げても、3回目ともなれば、せんせーも順応できます」
放たれたイトナの触手を、両腕で受け止める!
殺「イトナくん、せんせーだって学習するんです。せんせーが日々成長せずしてどうして生徒に教えることができましょう。さて、厄介な布の檻を始末しますか。夏休みを経て、せんせーも学習しました。イトナくん、覚えておきなさい。せんせーにとって暗殺は教育。暗殺教室のせんせーは教えるたびに強くなる!」
シーツの向こう側から光が放たれた。シーツがふっ飛ばされ、中から殺せんせーとイトナくんがでてきた。
殺「そういうことです、シロさん。イトナくんを置いてこの場を去りなさい。あと、私が下着ドロじゃないという正しい情報を広めてくださいっ!」
茅「わ、私の胸も正しくはび、B! Bだからっ!」
………。
イ「ぐっ、ぐぁぁぁぁぁっっ!」
⁉
イトナくんの触手が暴れだした!
イ「あ、たまが痛いっ!」
シ「どうやら度重なる敗北のショックで、触手が精神をむしばみ始めたか」
何を言ってるんだ?
シ「ここいらがこの子の限界かな」
そう言ってシロは去ろうとする。
殺「待ちなさい、シロさん! あなたはそれでも保護者ですか⁉」
シ「教育者ごっこしてんじゃないよ、モンスター。なんでもかんでも壊すことしかできないくせに……。さよならだ、イトナ。あとは1人でやりなさい」
シロが去った直後、イトナくんの触手がこちらに向かって襲いかかってきた。
殺「危ないっ!」
殺せんせーが慌てて僕らの盾になって、イトナくんの触手をはじいてくれた。
イ「ぐああああああああっ‼」
イトナくんは叫び声をあげて飛び去っていった……。
カ「……海」
海「………」
カ「海っ!」
海「え、あ。ごめん。ボーッとしてた」
何か、思い詰めてるような表情をしていた。
海「ゲホッ……。で、殺せんせー。どうすんの? このままだと」
殺「ええ、わかっています」
次の日
律「みなさん、見てくださいっ!」
休み時間中、律の声が教室じゅうに響いた。
律から表示されたのは、破壊された携帯ショップだった。
不「これは……」
殺「おそらく、触手のせいですね。触手でなければああいうことはできません」
不「ということは、イトナくんよね。でも、どうして携帯ショップばかりを?」
そこへ。
海「おはよ……」
茅「海ちゃん! どうしたの?」
海はマスクをしていた。
海「ちょっと病院行ってた。風邪みたい……」
殺「よかったです、海さん。せんせーはてっきり海さんが不良になったのかと……、連絡もしてくれなかったので……うぅっ」
殺せんせが泣き始めた……。
こんな状況だというのに。
海「ごめんごめん、次からは遅刻の連絡とかするから」
海「で、これは何の騒ぎ?」
茅「イトナくんが町で暴れてるの」
海「ふぅん」
海はあんまり興味なさそうだった。まぁ、基本彼女は自分に関係なさそうだと、興味なくすんだよね。
カ(シロの性格はだいたいわかった。あいつにとって、周り全てが当たればラッキーの使い捨ての駒。ああいう奴は、何をしてくるか戦術が読めない)
「ほっといたほうが賢明だと思うけどね」
カルマくんの言葉に、僕らは黙ってしまった。だけど、殺せんせーは。
殺「それでも、教師として彼をほっとくわけにはいきません。どんなときでも生徒からこの触手を離さない。せんせーは先生になるとき、そう誓ったんです」
その夜
破壊された携帯ショップの近く。そこでイトナくんを見つけた。
イ「勝てる強さが、欲しい……」
殺「やっと人間らしい顔を見られました、イトナくん」
イ「にい、さん……」
殺「殺せんせーと呼んでください」
イ「うるさい、勝負だ。今度は、勝つ……」
イトナくんは弱りきった目をしながら、殺せんせーをにらみつけていた。
殺「勝負してもいいですが、お互い国家機密の身。どこかの空き地でやりませんか? それが終わったらバーベキューでもしながら、一緒にせんせーの殺し方を勉強しましょう」
カ「そのタコ、しつこいよ〜。ひとたび担任になったら、地獄の果てまで追ってくるから」
殺「当然です。目の前に生徒がいるのなら、教えたくなるのが先生の本能です」
そこへ。
ドーーーーーンッ
なっ!
イ「ぐっ」
殺「⁉」
シ「これが第二の矢。イトナを泳がせたのも、予定のうちさ」
この声は、シロ⁉
白い煙の中で前がよく見えなかったけれど、イトナくんに向かって何かが放たれたのがわかった。
シ「さて、イトナ。これが君への最後のご奉公だ」
エンジン音がしたかと思うと、何かが走り去っていく音が聞こえた。
煙が晴れた向こう側では、ネットに入ったイトナくんが軽トラックに引きずられるようにして走り去っていく姿だった。
殺「みなさん、大丈夫ですか⁉」
磯「多分、全員なんとか……」
殺「では、せんせーはイトナくんを追いかけます!」
マッハで飛び去っていく殺せんせー。
三「俺らを気にして、回避反応が遅れたな……」
海「ゲホッ、ゲホッ……⁉」
茅「海ちゃん、大丈夫?」
海「……うん、気管に入っただけだから、平気……」
海、まさか……。
寺「あんの、シロやろ〜。とことん駒にしやがってぇ……」
海の手、暗くてよく見えなかったけど濡れていた。
いったい、どうして?