>>899
「ねぇ渚、ちょっと走ったり歩いたりで疲れちゃったからさ。休まない?」
「そうだね……」
見ると、渚はどこか疲れているようだった。まぁ、あんなに大暴れしてたから疲れて当然なんだけど。それにしても、お酒の力ってすごいなぁ。
「飲み物買ってくるよ」
「あ、僕が行くよ」
渚はそう言って自販機に行った。
チャンスッ!
「お待たせ」
「ありがと」
って、1つだけ?
渚はペットボトルのフタを開けた。そして、自分で飲み始めた。
「はい、残りあげるよ」
はぁぁぁぁぁぁぁ⁉
て、てっきりそろそろ酔いが醒めるかと思ってたんだけど、どうして、どうして、まだ酔ってるのぉ⁉
「飲まないの? それとも飲ませてあげようか?」
渚が上目づかいで聞いてくる……。
ま、まだ酔ってる……。
「うぅっ……、の、飲むよ……」
か、間接キスとか。さっき、けっこうキスされたばかりなのに……。
そ、それに不破さんに渡された薬、盛る機会がなくなりそう。
えいっ。
「やった、間接キスだね!」
な、なんでそんなに喜んでるの、渚……。
とりあえず少し残しておいた。バレないように、そっと不破さんからもらった睡眠薬をペットボトルの中に流しこんだ。
よし、完了!
「……渚、ごめんね」
「うん?」
「渚がおかしくなったのは、私のせいだから」
「僕、おかしいかな?」
「うん。おかしいよ。今までにないくらい……」
私はなんだか笑いたくなった。
「でも、楽しかったかも」
「?」
私は渚にペットボトルを渡した。
たぶん、無意識の行動だったんだと思う。渚はそれを受け取り、そのままキャップを回して中身を飲んだ。
「うっ……」
「渚、ありがと。楽しかったよ」
渚はくずれるようにして、その場で倒れた。
「終わった?」
そっと現れたのは、カルマくんと杉野、神崎さん、奥田さんだった。
「あ、カルマくん。やっと終わったよ……」
「あーあ、人騒がせだったな」
「みんな、ごめんね。私のせいで……」
「とりあえず2人とも無事でよかったわ」
「そうだねー、こんな画像も手に入ったし」
カルマくんがにやにやしながら私にスマホの画面を見せてきた。
「ほら、これとか。これも」
「っっっっっ‼」
な、な、なんで⁉
ど、どこで撮ってたのよーーーーーーーーーーーーーー‼
カルマくんが私に見せてきた画像、それは。
私が渚にDキスされてたときとか、一緒にいるときとか、お、おもむろにキスしそうになったときとか……。それに、さっきの間接キスのとか……。
あーーーーーーーーー! 私もう、恥ずかしくて渚と顔を合わせられないーーーーーっっ‼
「動画もあるけど見る?」
やめてーーーーーーーーーーーっっ‼
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茅野が言っていた、「おもむろにキスしそうになったとき」とは、千葉と速水が現れる少し前に渚と茅野の会話があったんだが、そのとき茅野が「そして、そのまま……」のあとの箇所です。「キスしそうになった」と書いたら雰囲気壊しそうなので書かなかった。ごめんね。
あーあ、キャラ崩壊した……Ω\ζ°)チーン
渚side
うーっ、頭痛い……。
そう思いながら目を覚ますと、そこは自分の部屋じゃなかった。
あ、そっか。今、殺せんせー暗殺のためにクラスで合宿の最中だったんだった。そう思いながら辺りを見回すと……。
「え、もう朝っ⁉」
慌てて起きて外へと急いだ。部屋の中はたたまれた布団だらけで、すでにみんな起きていることがうかがえたからだ。
「ごめん‼ 寝坊し……あれ?」
なんでみんな、外で寝てるの? しかも、超体育着を着て。
新しい訓練……ってわけでもなさそうだし、まさか朝練してたのかな?
それにしても、昨日の夕飯のまんまなんだけど。バーベキュー用のコンロとかだしっぱなしだし……。
カタッ
後ろ――校舎の中で音がしたから振り返って見ると、
「あ、茅野。おはよう」
そこには茅野がいた。茅野は眠たそうにまぶたをこすって、それから僕の顔をまじまじと見つめてきた。
え、何かついてるかな?
「な、なななななな、なぎ、なぎ、さ……」
?
茅野はかなり動揺しているようで、僕の顔をしっかり認識するなり、顔を真っ赤にしてどこかへ走っていってしまった。
「え、茅野⁉ おーい」
僕は声をかけたけど、止まってくれそうになかった。
いったい何が……。
「……ん? って、渚っ!」
「うわっ! 杉野か……。おはよう」
「おい、みんな。渚が起きたぞっ!」
杉野の声にみんなが次々と起きだした。
「渚っ!」
「よかったー」
「心配したんだぞ」
「もう体調は平気なの?」
え、え、え、え⁉
僕は何が起こっているのか理解できず、みんなの質問責めに慌てるしかない。
いったい何があったの?
「って、おい。渚、フツーすぎないか?」
フ、フツーって何!
「あれ、ホントだ」
「ねぇねぇ、渚くん」
カルマくんがにやにやしながら聞いてきた。
い、いつものいたずらを考えているときの顔だ……。
「何があったのか、自分の姿見て分からない?」
「すが、た……?」
僕は首を傾げて、なんとなく自分の格好を見返した。
え……。
「何これーーーーーーーーーーーーっっ‼」
な、なんで女装してんのさ、僕‼
挙句、髪の毛もヘアゴムないしっ‼
「ど、どうして⁉」
「それはー、渚くんが自分の意志で着たんだよー」
中村さんが笑いながら言ってきた。
「ウソでしょ! それ、絶対ウソでしょっっ‼」
「ホントだってば。ねぇ、みんな」
中村さんの声に、みんながうなずいた。1人も残らず、本当に全員うなずいていた。
「え、え、え、え、え??」
頭が混乱してきた……。ただでさえ頭痛がするのに、なんで? 意味がわからないっっ‼
「さらに、さらに。とんでもない証拠写真もあるけ……」
「やめてーーーーーーーーーーーっっ‼」
カルマくんが言い終える前に、茅野がどこからかすっ飛んできた。そして、カルマくんが手にしていたスマホを手から奪い取って、それを死守し始めた。
「ぜーーーーーったい、やめて! お願いだから、やめてっっ!」
な、なんでそんなに必死そうな顔をしているんだ、茅野は……。