「き、貴様らっ、何者だ!」
「……何者?評議員なら知っているでしょう、世界の姫を。女神族の血を引く、紅姫。」
……ルーシィ、イミテイシア、レイアロとそのパートナー達は評議会会議場に来ている。
それは、ある目的を果たすため。
「この、初代紅姫である私、ルーシィ・ハートソウルが命じます。」
ルーシィは床にへばりつき、怯える評議員の下っ端を見下ろす。
「…近日、正規闇ギルドを作ること。そして、正規光ギルドと正規闇ギルドの戦闘する機会を作ること」
表情を変えないまま、冷たい瞳のまま、桜色の唇で言葉を続ける。
「…そ、それは、いくら、な、な、なんでも…」
「…その戦闘で闇ギルドが負ければ、闇ギルドの勢力は落ちる。それは、国民にとっての幸せだと考えるわ」
ルーシィは、「…必ず、お願いね」とだけ伝えると、少し離れた場所で待つ二人の場所へ歩いていった。
ーーーー翌日、フェアリーテイルーーーー
「…皆の者、よく聞け!」
しんみりとする空気の中、マスター・マカロフの声が目立つ。
「近々、正規闇ギルドが出来るらしいのじゃが…わし等は正規光ギルドじゃ。その闇ギルドと光ギルド同士で……」
ーーー昨日、ルーシィの名により、評議会の緊急会議が行われた。
それの内容が、この正規闇ギルドと正規ギルド同士の戦い。
「正規、闇ギルド…?」
リサーナは困惑したような表情でマカロフに尋ねる。
「…そうじゃ。…しかし、その正規闇ギルドの管理者は、巫女の涙だそうじゃ」
マカロフは悲しそうに目を伏せた。
「…とりあえず、一ヶ月先の魔導闇光バトルに専念じゃ!」
全ての者が、苦しむ心を噛み締め、マスターに続くように雄叫びを上げた。
…間違えました。>>6のやつ、本来はこれです。
「くっ、貴様…!」
「…弱いわ。もっと、強くなれば?」
薔薇の花や蔓で出来た剣と刀がぶつかり合う。
エルザは苦しさに顔を歪めている。どちらが勝っているのかなんて、一目瞭然だ。
「貴様ら悪になど、 負けるわけがない…私を照らしてくれる光があるからだ…!」
エルザは負けが目に見えても、諦めない。…その性格、好きだ、とイミテイシアは心の中で嘲笑う。
「…闇に染まるのと、闇に負けるのは違うのよ?」
正規ギルドは光、か。それは、一体誰が決めたのかな。…ま、そりゃそうか。闇ギルドを倒してくれるもんね。
…突如、イミテイシアは動きを止める。待っていた!と言わんばかりの勢いでエルザはその隙をつく。
しかし、イミテイシアもにやり、と笑い、シュッとジャンプ。
イミテイシアを狙っていたエルザの刀は、イミテイシアの後ろにいたグレイに刺さる。
「…グレイッ!」 「か、はっ…」
「さすが、姉さん。よくつつくだけで分かりましたわね」
「…そりゃあ、魔力を抑えるためでもあるしね。」
隣では二人が談笑している。…そんなのも気にならないくらいに、エルザは動揺している。
自分の持つ刀はまだグレイに刺さっている。幸い、今回は魔法剣だ。傷口などは大きくない。
「エル、ザ…」
グレイは苦しそうに血を吐き出すと、倒れた。
ーーー離れたところでは、ルーシィがポーリュシカに回復薬を渡していた。
「……じゃあ、あたし達は帰りましょっか。」
「そうですね、姉さん」
二人は離れたところで暴れるレイアロを見つめる。
ちゃんと、三匹は取り返してきた。
「…レイは、大丈夫なの…?」
ルーシィの腕の中で震えるアルシアは、恐る恐るといった感じでルーシィに問う。
「…ふふ、レイアロよ?心が強いこと、アルシアが一番よくわかってるじゃない。」
ルーシィはアルシアににこりと微笑む。その笑顔に安心したアルシアは、眠りへ堕ちてしまった。
「…レイアロ、帰るわよっ!」
離れたところにいるレイアロにも届くように声を掛ける。
レイアロは、一瞬止まり、ルーシィ達の方をくるっと振り返る。
「…あ、うん!じゃあ、もうこんなこと、しないでくださいね〜」
先程の裏人格はすっかり消え、間延びした口調に戻ったレイアロは、戦っていた妖精の尻尾メンバーを嘲笑う。
………所詮、モブメンバーだ。殆どの人が重傷を負っている。
そして、ルーシィ達は会話を弾ませながら店を出て行った。
「あれが闇ギルド、巫女の涙…」
店に取り残された妖精の尻尾は、三人の出て行ったドアをぽかんと見つめる。
「…ナツ」
「…グレイ様…」
「……エル、ザ」
リサーナ、ジュビア、ミラは倒れこむ三人に近づく。
そして三人とも、倒れる三人の頬を優しく撫でる。まるで、ガラスを扱っているかの様に。
店には、三人の啜り泣く声だけが響いていた。