>>414
海「お前がおとなしく私を人質として扱うわけないよな……。要件は何?」
死「物わかりが良くて助かるよ。そうだね、君には僕の仕事の協力をしてほしい」
海「? そんなの、イリーナ先輩が」
死「君がスタンさせちゃったじゃないか」
海「………」
俺たちが見守っている中で、海はビッチ先生の首のあたりに手刀をくらわせた。
ビ「かはっ……」
死「……へぇ、何それ」
海「クラップスタナーは相手の意識の波長の山に山をあてるスキル。でも、この手刀を使えばクラップスタナーは一瞬で無効になる。クラスタを受けた波長に別の波長を当てることで、被験者を正常に戻すスキルだよ」
そのとき、設置されていた監視カメラの映像の中に見覚えのある人物が映った。
カ「死神さーん、あんた、また勘違いしてるみたいよ」
死「何故分かった」
見覚えのある人物、まぁ1人は人外だけど。
原「烏間先生と殺せんせー!」
中「殺せんせー、ブラジルに行ってたんじゃ!」
死「困ったなぁ、だいぶ予定が狂ってしまった。プラン16で行こう」
ビ「私の出番ね」
死「海はそこにいて」
海「気安く呼ぶな」
海が袖口から何かを飛ばした。
だが、それを死神は普通に避けた。
死「君はいったい、どんな武器を仕込んでいるかわからないから怖いね」
袖口から飛ばした何かは、矢だった。
死神とビッチ先生は立ち去った。
海「はぁ……。みんな、無事?」
中「なんとかね」
海はゆっくり歩きだして、さっきどこかへ投げ捨てた日本刀を取りに戻ってきた。しばらく日本刀をじっくり眺めてから。
海「よし、平気だ」
海は満足そうにうなずいて、柄にあるボタンを押した。すると、刃が柄の中に戻っていって、もとの20センチくらいの棒に戻った。いったい、どういう構造になってるんだか。
そこへ。
殺「にゅやーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
殺せんせーが牢屋の中に落ちてきた。
上の方で死神の声が聞こえた。
死「あっけなかったなぁ、人質を使うところまでもいかなかった」
殺「皆さん、無事ですか?」
岡野「殺せんせーまで捕まっちゃうなんて……」
殺「海さんは何故牢屋の外に?」
死「裏切ったのさ」
カ「はぁ?」
海が裏切るとか、誰が言ったんだよ。
海「ふざけんな、死神。私は裏切ったわけじゃない!」
殺「にゅう……。とりあえず海さんも無事そうなので安心です」
そう言いつつ、殺せんせーは牢屋の檻に触れた。瞬間、触手が溶け始めた。
死「ここは君が最期を迎える場所だよ、殺せんせー。洪水対策で国が作った放水路さ。密かに僕のアジトにつなげておいた。指令室で指示をだせば、水がすごい勢いででてきて、君はところてん状にバラバラになる」
烏「⁉ 待て、生徒ごと殺す気か⁉」
死「当り前さ、今更待てない」
烏「イリーナ、お前はそれを知って?」
ビッチ先生は顔をそむけていた。
殺「対せんせー物質の檻ですか。たしかに厄介ですが、私の肉体はついにこれを克服しました! 初めて見せますよ、私のとっておきの体内器官を!」
殺せんせーは四つん這いになると、檻をぺろぺろと、舌を使ってなめはじめた。
菅「た、たしかに殺せんせーの舌は初めて見るけど……」
殺「消化液でコーティングされた舌です。こんな檻、半日もあれば溶かせます」
皆「おせーよ!」
死「言っとくけど、そのペロペロ続けたら全員の首輪爆破してくよ」
海「………」
殺せんせーががっくりと肩を落とした。
当たり前だろ。
死「海、君にはこれを渡しておくよ」
海「だから気安く呼ぶなっ!」
死神が海に何かを渡す。海はそれを見てすぐに耳にはめたあたり、通信機か何かだろう。
死神が「放水路に水を流す」と言って立ち去ろうとすると、烏間先生が死神の肩をがしっとつかんだ。
死「なんだい、この手は。政府としては大助かりだろう」
烏「日本政府の見解を伝える……」
烏間先生は、死神をなぐった!
烏「28人の命は、地球より重い。もしお前が生徒ごと殺す気なら、俺が止める」
殺(か、かっこいい……)
死神が走り去る! その後ろを烏間先生が追いかけていった。
ビ「たしかにカラスマも人間離れしてるけど、彼はそれ以上。あのタコですら簡単に捕らえたのよ?」
倉「ビッチ先生、本気なの?」
カ「怖くなったんでしょ。プロだプロだ言ってたあんたが、ゆるーい学校生活で殺し屋の感覚を忘れかけてて、俺ら殺してアピールしたいんだよ。『私、冷酷な殺し屋よ〜』って」
俺が挑発するように言葉を投げかけると、ビッチ先生は自分の首についていた俺らと同じ首輪を投げてきた。その首輪は檻に引っかかった。
ビ「私の何がわかるのよ……。考えてもみなかったのよ! 自分が、こんなフツーの世界で過ごせるなんて。私の世界は、そんな明るい世界じゃないっ……」
海「………」
死『イリーナ、手伝ってほしい。爆弾を仕掛けたから、烏間がてこずっている間に背後から撃て』
ビ「わかったわ」
ビッチ先生が走り去っていった。
海「……殺し屋の世界は、E組みたいに温かいわけじゃないよ。本来の世界は、もっと残酷。先輩はそれを知っているから、現実と、E組との板挟みになってるんだと思う……」
矢「……海ちゃんは、どうなの?」
海「私だって、ときどき迷うときはあるよ」
渚「海……」
渚くんが海に声をかけた。
海「どうしたの? さっきまでぽけーっとしてたのに」
渚「うん……。ねぇ、海はさ。殺し屋になって後悔したことってある?」
海「あるよ」
⁉
海「後悔だらけだよ。殺し屋になってよかったなんて思ったこと、一度だってない……。あ」
海が何かに気づいたように声をあげた。自分の耳に手をあてると、
海「先輩、撃つ気なら銃をあと5センチ高くあげて。死神はあと12歩下がって」
ビ『わかったわ』
死『了解』
カ「何の指示?」
海「烏間先生が先輩と死神に挟み撃ちされてるみたいだから、2人に指示をして成功確率をあげさせようとしてるだけ」
倉「⁉ 海ちゃん、烏間先生を殺すつもりなの⁉」
倉橋さんの言葉に海は歯ぎしりをした。
海「みんなを助けるためには、こうするしかないっ」
海はそう言って立ち去ろうとする。
海「私がやっている間に、みんなはみんなで牢屋からの脱出方法を考えて」
殺「なるほど、わかりました。では海さん、頼みましたよ」
海は殺せんせーの言葉にうなずくと、走り去った。