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学園祭が始まった。
海「で、何これ」
海は中村さんから渡された紙袋を見て、首をかしげた。
中「海だけ特別ー」
海「どういうこと?」
僕に聞いてきたけれど、聞かれても困る……。
海「いやらしいのじゃないよね?」
中「へーき、へーき。あ、なんならここで着させてあげよっか?」
そう言って中村さんは海の服をはぎとろうと!
ここでやらないでよ!
ばしんっ
乾いた音が響いた。
海「え、うわっ! ごめん、莉桜。痛かったでしょ!」
中「いや、痛かったけど……。なんかごめん」
僕らはあぜんとして、そのやり取りを見ていた。
中村さんが海の制服に手をかけようとして、海がその手を払いのけたのだ。
海は顔を真っ青にしながら謝っていた。
海「ご、ごめんはこっちだよ。本当にごめんなさい。怪我、してないよね?」
中「何よ、海ったら。大丈夫だってば!」
中村さんはケラケラ笑っていた。一方で海は、顔をすごく真っ青にしていた……。
中「ともかく着なよ。寒がりな海のために長そでにしといたから」
海「うん?」
しばらくして、海は戻ってきた。
茅「うわぁー」
僕らは思わず見とれていた。
中「うん、似合ってる!」
海「な、なんか恥ずかしいんだけど……」
普段、男子の制服を着ている海が、長そでワンピースを着ていた。ウェイトレスの格好をして。
海「……いつまで見てんのさ」
海がにらむようにこっちを見たから、僕らは慌てて視線をそらした。
それにしても珍しいよなぁ。
カ「あれ、海。珍しいの着てんじゃん」
そう言いつつ、カルマくんはスマホをかざして海の写真を撮った。
海「げっ! ふざけんな、カルマ! それ貸せ!」
カ「やだよー」
海がカルマくんを追いかけたけど、カルマくんは軽々と避けている。先に根をあげたのは海だった。
海「あー、スカートって走りにくいっ! よくこんなの着てられるよなぁ」
茅「じょ、女子のセリフじゃないよ……」
殺「おや、海さん。珍しい格好をしていますね」
海「あ、殺せんせー。おはよー……」
殺「みなさん、そろそろ始まりますよ」
皆「はーい」
☆
で、なんで僕が……。
中「金持ちなんでしょ、あいつ。この際、手段を選ばずに接客しなきゃ」
渚「うぅっ」
僕らの視線の先には、夏休みの南の島で出会ったユウジくんがいた。
海「あれ、渚は?」
海が休憩ついでに校舎に入ってくると、渚がいなかった。
倉「今、接客中だよ。なんでも、VIPなお客様がいるんだって莉桜ちゃんが言ってた」
倉橋は笑顔で答え、モンブランをトレーに載せて外へ行った。
海「VIPな客?」
海は首をかしげて考えるが、誰だか見当もつかない。
そこへ。
ロ「海」
海「あ、ロヴロ先生」
久しぶりに見たロヴロの顔に、思わず顔がほころんだ。
海「先輩なら向こうにいるよ」
ロ「……その前に、お前に聞いておきたいことがある。死神と会ったそうだな」
海「⁉」
海はビクリと肩を震わせた。
海「うん、会ったよ……」
ロ「何も変わりはないか」
海「平気。みんながいたから……」
海はそっと全体に視線を走らせた。
クラスメイトのみんなは、学園祭を楽しんでいた。
海「……私のことより、先輩のところへ行ってあげて」
海は笑って、ロヴロから離れた。
海「なんかすることない?」
STAFF ONLYの場所へ行き、原に声をかけた。
原「海ちゃん、休憩時間じゃないっけ?」
海「いやぁ、みんな。まだ頑張ってるからさ、もうひと踏ん張りしようかと……」
原「ダメよ、休めるときに休まなきゃ」
海「はーい」
と言いつつ、海は接客を続けていた。
海(今だけは、続けておきたい。今だけは、楽しい日々を生きていたい。1年後には……どうなっているかわからないんだから)
渚「あー、疲れた……」
海「って、渚。何その格好」
海は渚の女装を見てあきれて溜め息をついた。
渚「うわっ! 海……。もう、中村さん! 早く服返してよー」
渚は走ってどこかへ行った。
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ここから話を飛ばして、2学期期末テストにいきますよー。