暗殺教室〜もうひとつの物語〜Part5♪

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579:凪海◆L6:2016/05/12(木) 20:01 ID:ySs

>>577「後悔の時間」

 アンジェラは、ロベールを殺した。
 正しい、これで正しいんだ。
 殺し屋なんて、この世界で生きている価値なんてない……。
 それはもちろん、私もだ。

海「………」

 アンジェラは驚きの表情で、自分の手元を見つめていた……。

ア「私が、やったの……?」

 私はその様子をクローゼットの中で見つめていた。

ア「あ、ああ……」

 アンジェラは、ゆっくりと崩れ落ちて。

海「チッ」

 自らの喉を刺した。
 こういう行為は、よく見る。
 最初は自分の起こした行為に茫然とする。そして、泣き崩れ、最期は自分を殺すのだ。
 何回も、何回も、見てきた。

エ「ママ……?」
海「⁉」

 なんで、ここでエリナが入ってくるんだ。彼女が寝たのは確認済みだ。どうして、この部屋に入ってくるんだ!
 どうする。でるべきか……。
 まずい。こっちに来る!

 ガラッ

エ「ウミが、どうしてここに……? まさか、ウミが、こんなことしたの……?」
海「……アンジェラがロベールを殺したよ。私はその、一部始終を見ていた」
エ「どうして、ここにいるの……?」

 この目……。
 この目の名前を、私は知っている……。

エ「あんたのせいで、ママが、パパがっ‼」

 うるさい、うるさい。
 黙れ、黙れっ!



 目を開けると、エリナが倒れていた。
 大量に、血を流して。

海「死んでる……」

 突如、私の脳内に入ってきたのは、持っていた日本刀でエリナを殺す瞬間だった。
 それは、私ではなかった。

海(誰よ、あんた……)

 心でそっと問いかけた。
 声は、答えた。

 もう1人のお前だ、と――。

海(どうして、エリナを殺した)

 すると、そいつは答えた。

 お前が殺したがっていたからだ、と――。

海(私が……?)

 そうだ、お前が――私が殺した。
 目の前にいた、あの少女が、かつて私が「死神」に殺されかけたときに抱いた思いと、同じ思いを抱いたから。
 殺し屋が憎いという、目を。私に見せたから。
 どう、いうことよ……。
 結局、私のしてきたことは、「死神」と大して変わらなかったんじゃないの? 殺して、殺された奴と周囲の人間を不幸にして……!
 殺し屋を殺すために殺し屋になった私の判断は、間違えだったんじゃないの?
 私はその日から、自分がいったいどういう立場の人間か、わからなくなった……。



現在

海「結局、私がしてきた行為は、全て無駄だったんだ。殺し屋を殺すために殺し屋になったところで、そんなの殺し屋であることに変わりはしない。だから、私は、殺し屋をやめたんだ。まぁ、それだけが理由じゃないんだけど……」

 海は自分の手を握りしめた。

海「私の中に、もう1人の私――カイが、でてきたから。カイはまるで、『死』という文字を、体にそのまま表したような奴だったから……。
  あのときのこと、私は今でも夢に見る。殺さなくても良かった子を――エリナを、殺したことを……」

 僕は思わず、口を開いた。


凪海◆L6:2016/05/12(木) 20:21 ID:ySs [返信]


渚「でもさ、海。僕は海が殺し屋でよかったって、今でも思ってるよ。あのとき、僕を助けてくれたこと、僕は本当に嬉しかったから……」

 あのとき――僕が海と出会ってしばらくしてからのことだ。
 あのとき、海が僕を助けてくれなかったら、僕は今ごろ、どうなっていたことか……。

海「私は、後悔してるよ。あの日、渚に出会ったこと」

 え?

海「渚に出会わなければ、よかったって……」

 ………っ。

カ「渚くん!」

 カルマくんの声や、みんなが息を呑む声が聞こえたけど、僕は海の頬を平手打ちしていた。

渚「どうして、そういうこと言うんだよ……。僕はっ、あの日海に助けてもらったから、今ここにいられるんだ! それを出会わなければ良かったって、後悔しているだなんて言わないでよっ!」
海「うるさいっ! 何も知らないくせして、勝手なことを言わないでよっ!」

 海がこちらを思い切りにらみつけて怒鳴りちらした。
 でも、ここでひるむわけにはいかなかった。
 僕が口を開こうとすると、海はそれを遮るように続けた。

海「私は殺し屋になるべきじゃなかった。そして、それを早めに気づければよかったんだ! 気づくのが遅すぎたから渚に会った! 渚に会ったから、あんな事件が起こったんだ!」

 ………。
 かつて海が、ここまでして感情をあらわにしたことがあっただろうか。

海「勝手なこと言うなっ! 何も知らないくせして、何も知らない平和な世界で生きてきたくせして!」
奥「2人の間に、何があったんですか……?」

 奥田さんの言葉に、僕と海は口をつぐんで黙った。
 カルマくんの声が聞こえた。
 
カ「真実、全て話すんでしょ。そういう約束だっただろ。だったら、それも話すべきだと俺は思うけどね」

 海が、僕の顔をちらりと見た。
 僕は顔をそむけ、黙り続けようとして、口を開いていた。

渚「いいよ、話しても」
海「チッ……」

 海は舌打ちをした。

海「……ここからが、全ての始まり。どの道、話す予定では、あったんだけど」

 僕は驚いて海を見た。

海「私が、後悔してもしきれなくなった、始まり……」

 海は地面を見つめ、そこに拳をたたきこんだ。


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