暗殺教室〜もうひとつの物語〜Part5♪

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577:凪海:2016/05/12(木) 00:37 ID:ySs

>>571

海は「事件」のことを話す前に、中村さんに向かって頭を下げた。

海「ごめんね、莉桜。あの文化祭の日、ぶっちゃって……」
中「……だから、気にしてないって」

中村さんがあきれたようにつぶやいた。

中「服、仮に引っぺがしてたら、その……、傷が」
海「うん……。プールの時も、ダイバースーツ着てたのは、そのせい。傷、見られたくなかったから。でも、やっぱり不安でさ。透けたらどうしようとか、余計なこと。散々考えた……。だから、泳げないってウソ、ついてた……」

そして、なおも海は語り続ける……。

☆(海side)

11歳、4月

ロ「今まで彼は、500人もの人を殺してきた……」

今度の依頼は、かつて殺し屋だった人だそうだ。名前は、ロベール。一見、どこにでもいるような優しい人に見えた。
調べ上げた情報によると、現在は殺し屋を引退していて、妻・アンジェラと8歳になる娘・エリナと3人で暮らしているそうだ。

海「行ってきます」
ビ「待って、海」

イリーナ先輩が近づいてきた。

ビ「これ、忘れてるわよ」

それは、からくり職人である如月家にて私が初めて作った仕込み刀だった。一見、ただの棒だけどボタンを押すとそこから刀が飛び出して、日本刀になるというもの。頭(とう)には、私のかつてのイニシャル、U.Kが彫られている。

海「どーせ、今回も使わないよ」

直接手を下すのは、私じゃないんだから……。

ビ「いいから、持っておきなさい」

先輩に言われて、私はしぶしぶそれを愛用しているウェストバッグに入れた。

今回の仕事も、順調だった。ロベール一家にみなしごのフリをして近づき、早々に彼の家でお世話になることになった。

海(潜入は成功した……)

3歳年下のエリナは、私によく話しかけてくれた。

エ「ウミは何が好きなの?」
海「何って?」
エ「お菓子だよ」

彼女に小首を傾げてそう言われ、私はふと考えた。

海「マカロン、かな……」
エ「何それ」
海「めっちゃ美味しい砂糖菓子だよ! カロリーは高いけど……」
エ「へぇ……。ねぇ、ママ。わたしもマカロン食べたぁい」

エリナの言葉に、アンジェラは優しく微笑んだ。

ア「今度、買ってくるわね」

私は慌てた。

海「ごめんなさい、私が余計なことを言ったから……」
ア「いいのよ。だってウミはもう、私たちの家族みたいなものだから」

そう言って微笑んだアンジェラに、私は開いた口が塞がらなかった。
家族……。
でも……。

海「……アンジェラさん、少しいいですか?」
ア「?」

私はエリナに1人で遊んでもらっている間、アンジェラに耳打ちした。

海「ロベールさん、浮気してるみたいですよ」
ア「え?」
海「それも、けっこうな額を貢いでいるとかで……。いいんですか? このままだと彼、心がその浮気相手に傾いて……、この家庭を壊してしまうかもしれませんよ……」
ア「そ、そんなの見間違えよ!」

チャンス!
隙を見つけ次第、そこを全力で押し切る。
それが、この私の戦い方だ。

海「この前、見ちゃったんです……。その浮気相手と、キスをしている彼を……」
ア「⁉」
海「……彼を、この家に留めておく方法を、あなたにのみ心が行く方法を、私は知っていますよ。知りたいですか?」

今思えば、きっとこの時の私は、相当な悪人ヅラをしていただろう。
アンジェラは、疑う余地すら見せずに、私の次の言葉に耳を傾けていた……。


凪海◆L6:2016/05/12(木) 20:01 ID:ySs [返信]

>>577「後悔の時間」

 アンジェラは、ロベールを殺した。
 正しい、これで正しいんだ。
 殺し屋なんて、この世界で生きている価値なんてない……。
 それはもちろん、私もだ。

海「………」

 アンジェラは驚きの表情で、自分の手元を見つめていた……。

ア「私が、やったの……?」

 私はその様子をクローゼットの中で見つめていた。

ア「あ、ああ……」

 アンジェラは、ゆっくりと崩れ落ちて。

海「チッ」

 自らの喉を刺した。
 こういう行為は、よく見る。
 最初は自分の起こした行為に茫然とする。そして、泣き崩れ、最期は自分を殺すのだ。
 何回も、何回も、見てきた。

エ「ママ……?」
海「⁉」

 なんで、ここでエリナが入ってくるんだ。彼女が寝たのは確認済みだ。どうして、この部屋に入ってくるんだ!
 どうする。でるべきか……。
 まずい。こっちに来る!

 ガラッ

エ「ウミが、どうしてここに……? まさか、ウミが、こんなことしたの……?」
海「……アンジェラがロベールを殺したよ。私はその、一部始終を見ていた」
エ「どうして、ここにいるの……?」

 この目……。
 この目の名前を、私は知っている……。

エ「あんたのせいで、ママが、パパがっ‼」

 うるさい、うるさい。
 黙れ、黙れっ!



 目を開けると、エリナが倒れていた。
 大量に、血を流して。

海「死んでる……」

 突如、私の脳内に入ってきたのは、持っていた日本刀でエリナを殺す瞬間だった。
 それは、私ではなかった。

海(誰よ、あんた……)

 心でそっと問いかけた。
 声は、答えた。

 もう1人のお前だ、と――。

海(どうして、エリナを殺した)

 すると、そいつは答えた。

 お前が殺したがっていたからだ、と――。

海(私が……?)

 そうだ、お前が――私が殺した。
 目の前にいた、あの少女が、かつて私が「死神」に殺されかけたときに抱いた思いと、同じ思いを抱いたから。
 殺し屋が憎いという、目を。私に見せたから。
 どう、いうことよ……。
 結局、私のしてきたことは、「死神」と大して変わらなかったんじゃないの? 殺して、殺された奴と周囲の人間を不幸にして……!
 殺し屋を殺すために殺し屋になった私の判断は、間違えだったんじゃないの?
 私はその日から、自分がいったいどういう立場の人間か、わからなくなった……。



現在

海「結局、私がしてきた行為は、全て無駄だったんだ。殺し屋を殺すために殺し屋になったところで、そんなの殺し屋であることに変わりはしない。だから、私は、殺し屋をやめたんだ。まぁ、それだけが理由じゃないんだけど……」

 海は自分の手を握りしめた。

海「私の中に、もう1人の私――カイが、でてきたから。カイはまるで、『死』という文字を、体にそのまま表したような奴だったから……。
  あのときのこと、私は今でも夢に見る。殺さなくても良かった子を――エリナを、殺したことを……」

 僕は思わず、口を開いた。


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