暗殺教室〜もうひとつの物語〜Part5♪

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878:凪海◆L6 (ノ ゜Д゜)ノdice4:2016/06/12(日) 16:17 ID:ySs

>>836

 洋館の中へは、すんなり入れた。中は薄暗く、窓から差し込む月の光を頼りにして、僕らは2つの班にわかれて行動を開始した。

「どどどどど、どこに何が潜んでいるか、わわ、わかりませんからねっ。慎重に、慎重に、いきましょう……」

 そう言っている殺せんせーが1番びくびくしている。雪村先生も隣でびくびくしながら、次々と手当たり次第にドアを開けていく。

「ここでもない……」
「いったい、どこに?」

 そのとき、僕のスマホが震えた。

「海さんからです」

 律の声に、僕らの間を流れている空気がさらに緊張してきた。僕はスマホの通話ボタンを押して、それを耳にあてた。

「海?」
「残念でした。違います」

 おおかた予想はしていたけれど、やっぱり犯人からだったか。

「君らは今、もしかしなくとも洋館の中へ着いたのかい? 足音も何もしないから、ちょっとびっくりしたよ」
「どこにいるんですか?」
「ロビーにもう一度来てみなさい。そこで落ち合おう」



 ロビーに着くと、烏間先生とビッチ先生の班についていった他のみんなと合流した。

「いったい、どういうつもりなんだろう」
「さぁね」

 突然、ロビーの天井にあるシャンデリアが光り始めた。そのまぶしさに目をこらしながら、3メートル先にある階段に目をやると、そこには。

「海、あかりっ!」
「お姉ちゃん!」

 海と雪村さんが、いた。
 ただ、後ろには2人をさらった黒マントがいた。海と雪さんが両手を背中に回しているあたり、おそらくは縛られているのだろう。

「よく来たね」
「すぐに2人を解放しなさいっ!」

 殺せんせーは相手の出方をうかがっていた。
 僕らは僕らで、いつでもやれるだけの準備はできている。

「解放してやってもいいけど……」

 すると、海がジャンプをして、黒マントに頭突きをした。そして、そのまま回し蹴りをして黒マントを床にたたきつけた!

「あかり、逃げてっ!」
「⁉」

 雪村さんは一瞬驚いたような顔をして、でも、慌てるようにして階段を駆け下りた。僕は思わず走り寄って、彼女をかばった。

「海も早く!」
「ダメ。多分、私は……」

 黒マントが起きあがり、黒い布の向こうから腕が伸びてきて海の首にまわした。

「海っ!」
「チッ」
「残念だねぇ。雪村あかりをかばってまで助けようとするなんて、もしもそんなことをしなければ、君も助かったのかもしれないのに」

 黒マントの顔は、相変わらず見えない。でも、これだけはわかる。
 今、あいつはすごい不敵な笑みを浮かべているということは。

「今日のところはこれで勘弁しといてあげよう」
「待ちなさい!」

 殺せんせーがマッハのスピードで2人に近づこうとしたけれど、次の瞬間。2人はまるで手品のようにその場から消えていた。

「消え、た……?」


凪海◆L6 ( -.-)ノ ・゚゚・。dice1:2016/06/12(日) 16:41 ID:ySs [返信]


 結局、いくら洋館内を探しても何の手がかりも得られなかった。
 僕らは悔しい思いで、ホテルへの道を戻るしかなかった。
 烏間先生が防衛省に連絡をして、洋館に人が立ち入らないように手配をしてくれた。 
 僕はホテルの部屋に行ってからも眠ることができず、気づいたら海岸に来ていた。そこには、黒い髪を揺らしている女の子がいた。

「雪村、さん……?」
「あ、潮田くん」

 彼女は泣いていた。それもそうだ。自分をかばって、大切な家族が。それに今、どこにいるのかすら分からないんだから。

「僕のことは、渚でいいよ。みんな、そう呼んでるから」
「あ、うん……」

 雪村さんは涙を両手で拭いながら、溜め息をついた。

「海はね、大切な家族なの。もちろん、お姉ちゃんも大切な家族だよ。でも、海は。1人で暮らしている私に、いつも優しくしてくれた。相談に乗ってくれた。さっきだって、かばってくれたっ! もしも、もしも、私が……」
「それ以上は、言っちゃいけないよ」

 僕は雪村さんの言葉に口をはさんで止めた。彼女は僕を見て、弱々しくうなずいた。

「さっきは、ありがとう」
「え?」
「渚くん……、私のこと。かばってくれたよね。まだ、お礼言えてなかった……」
「いいって、そんなの」

 波のさざめきが聞こえる。海岸線の向こうは真っ暗で、見えなかった。空には、三日月が輝いていた。

「あのさ、渚くんって髪長いよね」
「え、あー。短くしたいんだけどね、本当は。でも、ちょっと色々あって切れないんだ……」

 1つに結んでいる髪に触れながら、僕は答えた。

「ヘアゴム、腕のやつ。使ってもいい?」
「え、あ、うん」

 僕は両腕につけているヘアゴムをはずして、雪村さんに渡した。彼女は僕の後ろにまわると、さささっと僕の髪を一気にまとめあげてしまった。頭の上に手をやると、2つの房があった。

「す、すごい……」
「あはは」

 雪村さんは笑って、僕の隣に戻ってきた。
 瞬間、僕の脳を、何かがフラッシュバックした。



「髪、長いね」
「あー。短くしたいんだけど、色々あって切れなくて……」

 女の子はほほ笑むと僕の髪をさささっといじり始めた。

「ほら、私と一緒!」



「か、や、の……」
「え……?」

 思わず口からでた言葉に、僕自身が驚いた。

「わっ、ご、ごめん! なんでもない、なんでもないからっ!」
「あ、え、ううん。気にしてないよ」

 雪村さんは僕の言葉に首を振った。

「私、そろそろ部屋に戻るね」
「僕もそうする」

 僕らはホテルまで一緒に行って、ロビーでさよならをした。
 僕は雪村さんが去ってから、ロビーにあるイスに倒れこむようにして座った。

「さっきのは、なんだったんだろう」

 雪村さんの笑顔を見て、なんだか、見たことあるような気がしたのだ。なんていうんだっけ……、海が前に言ってた気がする。たしか、そう……。

「デジャ・ヴ……だっけ?」

☆(あかりside)

 なんか、なんか、なんか、なんかっっ!
 どうしよう、私。どうしちゃったんだろう。心臓のドキドキが止まらないっていうか、海が行方不明だっていうのに、こんなときだっていうのに! ドキドキが止まらないっ!
 それに……。

「かやの、か」

 なんだか、渚くんにその言葉を呼ばれたとき、まるで……。そう、まるで。

「自分が呼ばれているような」

 そんな気がしたのだ。


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