>>248 続きです!!
「………ふぅ、こんなものかしら?」
太陰は、再び木の実でいっぱいになった両手を見つめた。そして、ほんのりと微笑むと顔を上げて辺りを見回した。
帰り道は、なるべくまっすぐ進んできたから分かっている。
「早く戻らなきゃ、昌浩が可哀想ね」
そう呟き、歩き出した。
木が邪魔で飛べないし、両手が木の実で塞がっているので下手に走れない。
それでも早く戻ろうと気持ち急ぎ足で太陰は歩いた。
「ーーーーあ、いた…」
そうしているうちに、漸く昌浩を見つける。
しかし、見ると木の実は殆ど残っていて、昌浩はどうやら数個食べただけのようだった。それに、眠ってしまっている。
思わず呆れて溜息が出た。
「お腹空いたって言ってたじゃない。何してるのよ、昌浩………」
言ってから、はたと気がつく。
わざと、残してくれたのではないかと。
自分が、晴明にあげると言ったから。
昌浩は、そういう優しい子だから。
気を使ってくれたのかもしれない。
「………馬鹿ね…」
言葉とは裏腹に、太陰はひどく優しい瞳で昌浩を見つめ、木の実を他のと一緒に置くと昌浩の頭をくしゃりとひと撫でした。
「付き合わせちゃって…ごめんね…」
明るくなったら帰り道を探さなくては。
太陰は膝を抱えて空を見上げた。
まだ、夜明けまで刻はあるように思える。
何事もないように、と自分と昌浩を守る結界を作り、太陰は気持ちだけでも休もうと、目を閉じた。
ーーーー朝。
「昌浩、起きなさいっ!ほら、朝よ!」
「んん…………。ぅん…おはよ………」
「ほーらー、しゃきっとする!帰り道を探すわよ!」
「あっ!そうだった…。…ぁ、おはよう、太陰」
「ええ、おはよう。じゃあ、木の実を持って」
「わ、いっぱい採ってきたね」
「それはいいから、さっさと行くわよ!東はこっちよね?」
「うん。じゃ、行こうか」
漸く、帰れるかもしれない。
いや、帰らなくては。
二人は昨日よりは明るい気持ちで歩き出した。
久しぶりすぎる………!!
ごめんっ…忘れてて………!!
>>457 続きです!!
「あっ!太陰、あれ、森の外じゃない!?」
昌浩が、弾んだ声を上げた。
それに対し、太陰も嬉しそうに頷く。
「そうね、もうすぐ帰れるわ!」
二人は嬉しそうに微笑みあった。
何しろ、色々あったのだ。
やれ、飛べないのがつまらないだの、やれ、お腹が空いただの、やれ、動物を愛でていただの。
とにかく色々ありすぎて、もう陽は西に傾いてあの真白い物の怪の瞳と同じ色になっていた。
しかし、漸く森以外のものが見えたのだ。
木も、もうそれほど邪魔ではない。
太陰は、嬉々として風を巻き起こした。
「昌浩、木の実をしっかり捕まえてなさいよっ!!」
「 やだぁー、こわいー!!」
「早く帰りたくないの?」
「くっ…誰のせいだと…!?」
「煩いわねぇ!」
有無を言わさず風流に巻き込む。
悲鳴が聞こえた気がしたが気にしない。
太陰は安倍の邸に向けて全力で飛び出した。