>>489の続きです。
ブラッドは不気味に微笑んでいた。
ん?……怖い?
なぜかさっきより怖くなくなっている気がする。
なぜ?
私はよくブラッドを観察しようとした。
でも、その前にレーザーが飛んでくる。
ああ、もう!
考えるのは後!
でも、スタンガンは近距離武器だった。
それに比べてレーザーは遠距離武器。
スタンガンよりかは正確性は欠けるし、避け続ければ良いだけ!
私はレーザーガンの攻撃を避けながら、ブラッドを良く観察してみた。
すると、あることが分かった。
彼女の目。
今まで色んな犯罪者を見てきた。
その犯罪者の目には、必ず濁りがあった。
どこかで人生の道を間違えてしまったかのように。
ニックのような、残酷で冷酷な人は、冷たい輝きを放っていたこともあった。
でも、彼女は違った。
目が澄んでいた。
宝石にも負けないような輝きを放つ、綺麗で真っ直ぐなオレンジ色。
そこに挫折の濁りなど一切無いように見える。
初めて見た時の、響のように。
私は目を疑った。
ブラッドに近づいた瞬間だった。
レーザーガンの引き金を引く瞬間、指が震えていた。
それも毎回。
ん?
今目を擦らなかった?
……え?
こ、これは流石の私でも予想外だよ……。
彼女の目が涙ぐんでいた。
流石に流したりはしてないんだけど。
その顔は物凄く悲しく、辛そうだった。
なんで……そんな顔してるの?
そんな間でもレーザーの雨は止まらない。
ああ、もう!こ・う・な・っ・た・ら!!
私は素早く睡眠薬入りの玉を取り出し、握りしめた。
<続く>
あ、トリップ付け忘れました。
私は集中力と観察力を極限まで高くする。
成功するかは分からない。
一か八かの勝負よ!
私は一瞬だけ止まり、ブラッドに隙を与え、私の方向に光線銃を向けた瞬間―
パンッ!
玉の割る音が響き、ブラッドの周囲に睡眠薬が撒かれる。
「えっ?!」
驚いてる声を出してるけどもう遅い。
パタッと音がしてから暫くして、煙が晴れる。
ブラッドは床に座り込んでいた。
ね、眠らないんだ……。
でも、さっきまで戦っていて、疲労があったからだろう。全く動く気配は無い。
ただただ私を見つめ、眠気と戦っているみたい。
『なるほど。ただ指弾で玉を飛ばせば必ずかわされる。だから、レーザーを利用させて貰ったというわけか』
うん!
上手くいくかは分かんなかったんだけどね。
実は、ブラッドが私に銃を向けてきた瞬間、私は銃に向かって指弾で玉を飛ばしていたんだ。
あとは、ブラッドがレーザーを飛ばしてくれれば、
レーザーが勝手に玉を割ってくれるんだよね。
レーザーは光っていたし、玉が飛んでくるのは分かりにくかったと思うんだ。
それはそうとして……。
「ねえケイ、ちょっとお願いがあるんだけど……」
私はケイに相談する。
『ダメだ。危険が大きすぎる。さらに話を聞くとなるとこちらの情報も必然的に教えなければならなくなる。忘れたのか?彼女はスパイだ。そんな危険は犯せない』
「大丈夫。絶対にこっちの情報は教えないから。その条件守れたら、話を聞いてもいい?」
『……はぁ。分かった。ただし、ここからの明日の安全は保証できないからね』
ため息混じりだけど、オーケーを出してくれた。
大丈夫。その覚悟はある。私の勝手な頼みだもん。
私はブラッドに警戒しながら、ゆっくり近づいた。
<続く>