>>507
私は集中力と観察力を極限まで高くする。
成功するかは分からない。
一か八かの勝負よ!
私は一瞬だけ止まり、ブラッドに隙を与え、私の方向に光線銃を向けた瞬間―
パンッ!
玉の割る音が響き、ブラッドの周囲に睡眠薬が撒かれる。
「えっ?!」
驚いてる声を出してるけどもう遅い。
パタッと音がしてから暫くして、煙が晴れる。
ブラッドは床に座り込んでいた。
ね、眠らないんだ……。
でも、さっきまで戦っていて、疲労があったからだろう。全く動く気配は無い。
ただただ私を見つめ、眠気と戦っているみたい。
『なるほど。ただ指弾で玉を飛ばせば必ずかわされる。だから、レーザーを利用させて貰ったというわけか』
うん!
上手くいくかは分かんなかったんだけどね。
実は、ブラッドが私に銃を向けてきた瞬間、私は銃に向かって指弾で玉を飛ばしていたんだ。
あとは、ブラッドがレーザーを飛ばしてくれれば、
レーザーが勝手に玉を割ってくれるんだよね。
レーザーは光っていたし、玉が飛んでくるのは分かりにくかったと思うんだ。
それはそうとして……。
「ねえケイ、ちょっとお願いがあるんだけど……」
私はケイに相談する。
『ダメだ。危険が大きすぎる。さらに話を聞くとなるとこちらの情報も必然的に教えなければならなくなる。忘れたのか?彼女はスパイだ。そんな危険は犯せない』
「大丈夫。絶対にこっちの情報は教えないから。その条件守れたら、話を聞いてもいい?」
『……はぁ。分かった。ただし、ここからの明日の安全は保証できないからね』
ため息混じりだけど、オーケーを出してくれた。
大丈夫。その覚悟はある。私の勝手な頼みだもん。
私はブラッドに警戒しながら、ゆっくり近づいた。
<続く>
誤字がありました……
『……はぁ〜ここからの明日の安全―』
となっていました。正しくは―
『ここからのアスカの安全―』
です。申し訳ありませんでした!
>>515の続き (かなり久しぶりですね)
ブラッドは私を睨み、力が抜けたようにヨロヨロと立ち上がる。
眠らないのはすごいよね……。
それはそうとして……
「私の質問に答えてくれない?」
私は沈黙を破った。
レッドは悪事を許さない。
だからこそ、質問に答えてくれれば捕まえない、とは言ってあげられない。
これからどんな方向になっていくかは、私も知らない。
ブラッドは黙ったまま。
「あなたはなんで犯罪者なんかにわざわざなってるの?それは本当にあなたの意思なの?」
私は勝手に話を進めた。
『私の仕事だもの』ってさっき言ってた。
でも、これは仕事であって、本当はやりたいんじゃ無いのかもしれない。
ずっと気になっていた。
あの辛そうな目は何を思っていたのか。
それが、今はどうしても知りたい。
「……ここじゃ話せないわ。場所を変えないと……」
ブラッドはそう言って、あとは何も答えない。
『ならアスカ、今から俺が指示する。俺の居るビルまで来られるか?』
「分かった」
小声で返事を返し、ブラッドに向き直る。
「ならついてきて。走れる?」
ブラッドはコクリと頷き、廊下を走り出す。
でも、まだ睡眠薬の効果が切れていないのか、足取りが重く、少しおぼついている。
私達はエレベーターで1階まで降り、出口に向かって走った。
警備員達には皆眠ってもらった。