万里一空!

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1:まつり@ゆず◆Go @は全角:2018/06/25(月) 18:23


  

     青春を全力で!  

       >>2

8:まつり@結珠◆klVAly. トリップ被ったから変更 @低浮上気味?:2018/07/23(月) 11:46

『余り物でごめんね』


席替えをした。

班のメンバーは変えずに、席順、場所だけの移動。
一番前の真ん中の席が、私のお気に入り。
私たちの班は、誰かが一番前の真ん中の席になれる。

――私、そこがいい。

なんて…言えるはずもなく。

みんな、真ん中の前は嫌って言ってる。
私は?私の希望は?

私なんて、いらないもんね。
邪魔だよね。

班の中で、独りだけ輪の外にいる。
そのくらいは、気づいてた。

……でも、そんなの…気付かないフリしてたって同じだもん。
邪魔だなんて、勝手に思っていればいい。

こんなの、被害妄想だ。イタい奴。


五人班だから、誰かが他の班の人の隣になる。

友達の由美ちゃんが、『純玲(すみれ)ちゃんと伶々愛(れれあ)ちゃんが、ゆずちゃんを一人にするって話してたよ』って教えてくれた。

なによ、一人って。 
他の班の人でも、隣になる人がちゃんといる。
……だから、一人じゃないよ。

一人でいいの?大丈夫?って、由美ちゃんは言ってくれた。
……別に良いよ、って返した。

だって、五人班だもん。誰かが余ってしまうのは仕方がない。


……でもさ。

「一番前の真ん中、誰にするかじゃんけんね!」

四人が席を決めているなか、私は、独り突っ立っていた。
……前に、迷惑かけちゃったから。
私の希望なんて、言わない方がいい。

間違ってる。そんなの間違ってる。
知ってるけど、知ってるけど…!
知らないフリしてた方が、都合が良いの。

長谷部くんの、

「かわいそ」

って声が聞こえた。

私に対してじゃ、ないよね…?
学級委員に、かわいそうな人認定されるなんて。

「ゆずなちゃん、そこ。後ろ、理雄(りお)くんの隣」

伶々愛ちゃんの、決めつけるような声。
いや……完全なる決めつけ。
良いよ。良いんだよ。

――本当は、前が良かったけど…。


視界がぐにゃっと歪んだ。
下唇を嫌と言うほど噛み締めて、下を向き続けた。

「……ごめんね」

聞こえたかは分からない。
別に、聞こえてなくてもいい。

「余り物が隣で、ごめんね」


者ですらない。 

私はクラスの、


余 り 物 

9:まつり@結珠◆klVAly. トリップ被ったから変更 @低浮上気味?:2018/07/23(月) 11:46

>>8の小説の元です
http://otameshipost.gonna.jp/novels_original/novels_original.cgi?mode=view&no=12&id=6361215

10:まつり^^結珠◆klVAly. クッッソ熱ッいぜ!!この夏!!:2018/08/16(木) 12:15

「あっ凛条さん、やっぱりペットに異動してくれないかな」

 世界から色が消えた。

 
 《ブル部魂!》


 凜条 千図(りんじょうちず)、ピカピカの中学一年生。

 私立H大学附属新倉(にいくら)中学校に、そこそこの倍率の受験を乗り越えて入学した。

 同じ小学校からこの中学校に進学した人はいない。
 少しばかり心細かったけれども、そんなことは杞憂に終わった。

 一年生を迎える会、略して一迎会いちげいかいでの部活動紹介で、心を奪われたから。

 アンサンブル部――

 ノリの良さそうな、意外なことに男の部長さんの説明。

「活動していくなかで、楽器の個性を知ることができる。なんだろう、友達?相棒?……とにかく、一生の相手になるはずです」

 そのときは…ああ、良くあるセリフだな、と思った。
 どの部活も、そういう綺麗なことを大袈裟に言って。

 ……でもそれは、三年生にとっては大切なメッセージ。
 それをより教えてくれたのは、その次の演奏だった。

 曲名なんて、演奏が始まった瞬間に忘れたよ。
 一つ一つが合わさって、まさに一音入魂!って感じで。
 少人数編成だからか、すごくまとまりがあった。

 いいなあ。この部活。
 カッコいい。わたしも、一生の相手…楽器と、出会えるかな。
 こんな演奏、できるかな――

11:まつり^^結珠◆klVAly. クッッソ熱ッいぜ!!この夏!!:2018/08/16(木) 12:15

 というのが入部の動機で。
 わたしはユーフォニアム――通称ユーフォを希望した。

 なんかカッコいいし、オシャレな雰囲気もある。
 音だって……個性を知れば、自由に奏でることができるだろう。

 しかし、もうすぐ三年生も引退、わたしたちは本格的な練習に入ろうかとしているときに、この台詞だ。

 ……そう。ユーフォニアムは、希望者が募集枠よりも一人多かった。
 その分、トランペット――ペットの人数が一人減って。
 良しとなったはずなんだけど…。

 もしかしたら移動を頼むかも、とは言われた。

 でも、なんでわたし?
 もう一人の一年生、乙(おと)ちゃんでも良かったよね?

 ……と思ったので、訊いてみた。
 その答えが、

「乙凪(おとな)さんは少しだけど経験しているし、自分の楽器を持っているから……」

 とのこと。

 …………なによ。
 結局は経験じゃないの。

 なんて思ってしまうのは自然なことで。

 だって、初心者も大丈夫、って言ってたよね?
 ……そりゃあ、自分の楽器を持っていたらそちらを優先するかも、とも言ってたけど。

 ――良いよね、金持ちは……。自分の楽器を、買ってもらえてさ。

 うちに、何十万も部活動につぎ込めるほどの金銭的な余裕はなく。
 ユーフォニアムは、学校のものを借りることにしていたのだ。

 ……と悪態を付きまくるわたしの横には、部長さん。

「あのさ、説明のときに希望していない楽器になるかも、って言ったよね?」

 ああ、怒られるんだ。
 部長に怒られるなんて。

 そう考え、どんな中傷的な言葉にも耐えて見せようと、キッと部長さんを見た。

 ……睨んでる?そんなの知らないよ。

 「まあね、最初は苦痛かもしれないよ。仮に、キミがペットを悪く思っていたりしたら、特に」

 ……図星だ。
 わたしが、ペットを…ダサいとか、なんか嫌だとか思っていたのは紛れもない事実。

 そんなこと、思ってちゃダメなのに…。

 そこで部長も、「まあ、そんなことを思っているなんて、無いと思うけど」と。

「でもね、少し演奏してごらん。必ずその楽器を愛せるから。……先輩も、同じような経験をしている」

 なによ、そんな…。
 それでも、嫌なものは嫌で

「でも…」

 と口を開いた。
 だけど…なぜだろうか。
 口が動かないや。

「お前、分かっているだろう?合奏は、一人でやるものじゃない。だからこそ、誰かが少し我慢する必要だってあるんだ」

 言葉だけを聴くと、凄くキツいように思える。
 でも、そんなこと、わたしは微塵も思わなかった。
 その声は、不思議なほど優しかったから。

「ペットを、愛せたら…」

 少し、世界が変わるかな。
 なんて、なぜか前向きにとらえることができる。

「……分かりました。やります」

 下唇を噛み締めた。

 

 アンサンブル部、凜条 千図。
 全力を尽くします!!

 これがわたしの、ブル部魂!

12:まつり^^結珠◆klVAly. クッッソ熱ッいぜ!!この夏!!:2018/08/16(木) 12:16

>>10-11の小説です
http://otameshipost.gonna.jp/novels_original/novels_original.cgi?mode=view&no=10&id=6361215

13:まつり^^結珠◆klVAly.:2018/08/31(金) 23:36

「……………………これは、いったい……」

 どれくらい放置してたっけ?
 


 …………いやいやいやっ、この前夏休み入ったばっかりじゃん!?
 7月は毎日部活あったから、それに集中して宿題は出来なくてっ!!

 8月の前半は祖父母の家に行ってたから、お手伝いやら遊びやらで忙しかったしっ!!
 後半は部活も再開されたし! 出来なかったの仕方ないし!!

 
 ……だ、か、ら!!
 明明後日は始業式なのに、レポートなんにもやれてないのは仕方ないの! 不可抗力!
 
 …………一番の大物。社会科調べ学習。 
 自分で好きなテーマを決めて、調べる!
 レポートにまとめる!
 
 いけるいける〜、楽勝!
 ……本当に楽勝だったらとうの昔に終わらせているはずなんだけど。

「……やらないとなぁ……」

 時刻は真夜中の11時。
 大丈夫大丈夫!
 今まで、思いっっ切り徹夜して、スマホいじってたじゃん!
 
 さ〜てとっ。

「テーマ、何にしようかな……正直社会科で調べたいこととか無いし……」

 午後11時23分。
 私、莇 鈴(あざみ りん)対 社会科レポートの決戦が幕を開けた。

 

ピピピッ、ピピピッ、ピピピ…………(大文字)


 う〜ん、まだ頭が重くて眠いや。
 もう少しだけなら、大丈夫だよね…………

 ……と、枕元の置き時計を見た瞬間! 
 私は2度見した。マジで。

「さ、さ、さんじ…………!!」

 ……………………。

 『言葉が出ない』とか『目が点になる』とはこのこと。
 え、えーっと、確かベットに倒れ込んだのが朝の6時30分だから……。

 どんだけ寝てたんだーい!
 ……と脳内で突っ込みつつ、深く深く溜め息を付いた。
 明後日、始業式だぁ……英語のレポートとかもやってないなぁ……。

 よっこらしょ、と起き上がって、ふと昨日の戦場……学習机を見る。
 その下には、ごくありきたりな紙……レポート用紙が落ちていた。

 さて、出来はどうだろうか。

 鉛筆の黒一色で、乱雑に書かれた文字。
 全体的に、汚い。灰色で、適当にやった感満載のレポート。

 ……………………。

 ――夏休み明け、初っ端から評価Cコースじゃん。
 


 夏休み明け1発目の授業にて、レポートの発表があった。
 真面目にやった子と私との差は明確で。

 評価Cコースが、確定されましたとさ。



 …………ん?英語のレポートはどうなったかって?
 ――ご想像にお任せします。
 

14:まつり^^結珠◆klVAly.:2018/08/31(金) 23:37

途中、大文字とか書いてあるのは気にせずに……
>>13はこちらです
http://otameshipost.gonna.jp/novels_original/novels_original.cgi?mode=view&no=27&id=6361215

15:まつり^^結珠◆klVAly.:2018/08/31(金) 23:39

あ、題名載せ忘れた……(バカ)
『初っ端から評価Cコース』です!

16:まつり^^結珠◆klVAly.:2018/09/22(土) 12:13

『私に勇気があったなら』


「ねえ、あの子ダサいよね」

「関わりにくいし、てか、関わりたくないしー」

「なんなんだろうね、あのウジウジした態度」



「 みさきもそう思うでしょ? 」



 私には、笑うことしか出来なかった。
 ただ曖昧に、否定も肯定もせず。

 なんとなく笑っていれば、否定したことにも、肯定したことにもならないから。

 ――そうやって正当化して。

 放課後、私はその子と話していた。

 クラスでは、みんなに合わせて、助けることもせず……へらへら笑っているだけなのに。

 そんな私を、怒ることもせず。
 笑顔を見せてくれた。
 普通に、“友達”として。

 本当に当たり障りのない、趣味のこととか、部活のこととか。

 ――クラスは、辛くないの?学校、嫌じゃないの?

 気になる。でも、訊かなかった。

 ――大丈夫?

 なんて、思うだけで言わなかった。
 ……違う。言えなかったんだ。怖くて。

 でも……こんな日がいつまでも続くだろうと思っていて。


「ありがとう」

 いつも通りの放課後、いつもの空き教室。
 ひととおり話し終えた私たちが、帰ろうとしているとき。

 なんだろう、なんでありがとう…?

 多少の違和感は覚えたものの、

「うん……じゃあね」

 と返しておいた。



 「紫村楓さんは、昨日、転校しました」

 その一言を聴いたときの、私の顔。
 本当に真っ青だったと思う。
 
 血の気が引くって、こんな感じなんだ……。
 
 自分が情けなかった。

 あの、ありがとうは……そういうこと?
 なんで、ありがとう……?

 表ではみんなと同じように笑って、裏では仲良く話して。
 そんな偽善者が感謝された。

 ……なんで?なんで?なんで?

 辛さに気付いていた。
 それなのに無視した私。

 本当に誰にも言わずに転校した、楓ちゃん。

 私が、一言発していたら…?
『やめよう』『一緒に組もう』『大丈夫?』言えていたら…?

 本当の友達なら、そんな酷いことしない。


 私 に 勇 気 が あ っ た な ら ――

17:まつり^^結珠◆klVAly.:2018/09/22(土) 12:14

>>16です
http://otameshipost.gonna.jp/novels_original/novels_original.cgi?mode=view&no=22&id=6361215

18:まつり^^ゆず◆klVAly. hoge:2018/11/03(土) 22:36

「絢利ちゃんって、なんで感情を殺.すことができるの?」

 えっ、と声をなんとなく発した、気がする。
 表情が、貼り付いた笑みが、ストンと抜けていくことがわかった。



 気付いたら、いつも口角を上げていた。 
 面白くもなんともない。不快なことを言われる。

 それでも、なぜか笑っていた気がする。
 笑うしか、無かったのか。


「 無愛想、もっと笑いなさい 」
「 顔、怖いよ〜 」
「 常に笑顔でいられたら素敵ですね 」


 ――――――ああもう、めんどくさいや。


 私は感情に蓋をできた。

 すごく面白い、笑いが止まらないようなことが起きた。
 でも、『大したこと無いよね』『面白くもなんともない……』そうやって心のどこかに蓋をして、スイッチを切って。

 すると、フッと何にも感じなくなる。表情も気持ちも、何もかもが抜け落ちた。

 これは、誰にでも出来ることなんだ。今までは、そう思っていたのに。
 そんなことは無いらしい、十三歳にして気付いた。

19:まつり^^ゆず◆klVAly. hoge:2018/11/03(土) 22:37

 ――正直、悔しくはない。
 音楽に勝ち負けを付ける方が納得行かない。
 合唱コンクールは、クラスの団結力等を高めるためのものであるから、勝敗なんておまけみたいなもの。

 私はそれに需要を感じない。
 最後までみんなで走りきったという事実があるんだから、それで良いよ。


 パートリーダーの言葉として、クラスに向けて発した。
 嘘偽りの無い私の気持ちだ。私の、気持ち。
 なのに――――――――――――




「なんで、感情に蓋をできるの?」

 再度純粋な笑みで問いかけてきた指揮者ちゃんは、自然に首をかしげた。
 ――なんで、だろうねぇ……

「んー、そう? なんでだろーね、分かんないや」

 とりあえず戻った表情で言ってみた。
 いつも通り、軽く、ゆるく……


 笑えって言っただろ。それは、それは――偽りを無理強いした、あなたたちの――――――――


 


「本当は、」

 掠れた声を発すると、目から汗が絞り出された。



 悔しかった、優勝したかった、そうしたら……届いたんだって、物理的に証明できるから。
 本当は、本当は…………『悔しいね、って、みんなと一緒に泣きたかった』

20:まつり^^ゆず◆klVAly.:2018/11/03(土) 22:41

>>18-19
さっき衝動一発書きしたのをなんとなく投下。
今までみたいに他サイトで上げてるヤツではないです。書き下ろし?になるのかな。



本当の気持ちを知ることって、怖くないですか?
『絢利ちゃんだから――』『どうせ、適当に笑ってるんだよね』『なんでも笑って受け流すんだから』
そんな言葉の描写を入れたかったと投下後に思った駄作者()

21:匿名 hoge:2022/06/12(日) 14:27

整理のために四年ほど前にここの友達向けに書いた短編を投下。その友達に寄せて書いた記憶がある。添削はしていないです


*

「そらー!部活行こう!」

 わたしの名前は山上 空良(やまがみそら)。
 秋の文化祭での演奏に向けて、吹奏楽部での活動を頑張っている。

「うん、行こう!」

 笑顔で返事をすると、結可(ゆか)ちゃんと二人で駆け出した。



「はい、ちょっと止めて……。山上さん、少し遅れてる。大変だろうけど、練習しておいてね。それとドラムの音をよく聴いて……」

「はい……」

 まただ。夏休みの自主練習を怠ったせいで、だんだんとその差が出てきている。

 どうしよう…せっかく、ソロを任せてもらえたのに。
 足を引っ張ることだけは、絶対にしたくないのに……!

 自業自得だ。


『ファイトーッ!』

『ファイトーッ!』

『多宮田 ファイトーッ』

『ファイトーッ!』


「あ…」

 大知の声だ。

 野球部の掛け声。 
 濁った音の合間に響く。

 沢山の、沢山の音の中。
 わたしは必ず聞き分けられる。

 大知の声を。


「好きだ……」

 ――わたしは、小さな頃からずっと……仁平 大知(にひらだいち)に恋してる。


 今日も聞こえてくる掛け声。
 ――頑張れるよ、大知。



「ねえねえ璃々ちゃーん、大知くんと付き合っているってホント?」

「えっ……」

 ……今は、2月。
 文化祭での演奏も大成功!……と喜んで、冬休みを満喫して。
 
 久しぶりの部活動、といったところだ。
 そんな……浮かれているときに、この一言。

 話題の中心にいるトランペットパートの美嶋 璃々(みしまりり)ちゃんは、凄く大人っぽくて可愛くて……わたしなんかとは比べ物にならないほど優秀な女の子。

「ん〜、まだ付き合ってないけど。バレンタインに告白しようと思ってるの!」

「うわー、頑張ってね!」

「璃々なら大丈夫だよ〜」

 女子みんなが励ましている中、わたしが言い出せたはずがない。

 “わたしも大知のことが好きなの”

 ……もう、嫌だよ。
 昔から大好きだったのに。
 ずっと、ずっと。

 璃々ちゃん、野球部の掛け声、いつも聴いてる?
 大知の声、わかる?


 ――璃々ちゃんより、わたしの方が、昔から……!!

 
 恋って、こんなにも儚く散っちゃうんだ。
 ……わたしって、こんな性格だったんだ。

♯♯

22:匿名 hoge:2022/06/12(日) 14:27

「はよーっす!」

 朝から声が大きいこと。なぁんて思いつつ。
 大知の心地良い声を聴いて、一日が始まる。

 ……失恋、したんだっけ、わたし。

 もう、なんで?
 諦められないの。大好きなの。
 
 トクトクと鳴っている心臓。
 それが、少し気持ち良くて……。


「そら?」

「えっ!?」


 大知……?
 なんで、どうしたの?

 大知は、璃々ちゃんのことが好きなんでしょ?
 こんな、なんとも思ってない女子に気安く話しかけない方がいいよ。

 ……違う。

 わたしが、嫌なの。期待しちゃうから。
 話しかけてもらえて、嬉しくて。
 もしかしたら……を考えちゃうから。

「お前、今日元気無くね?」

 ――なんで。

「どうして、分かるの……」

 あなたのせいよ

 もう、やだ……。


 諦められないじゃん。


 “大好き”
 
♯♯♯

「ムードメーカーのお前が静かじゃ調子狂うよ」

 そう言ってくれた彼の元へ、わたしは走る。

 ドキドキドキドキ。

 頭の中で、強く強く鳴っている。
 心臓が暴れてるや。

 だって……今日はバレンタインデー。
 璃々ちゃんが、告白した日。

 ……に、まさかわたしも告白するなんて…………。

 あなたは運動神経抜群で。
 いつもリレーのアンカーだよね。

 そのくせ、勉強もできちゃうの。
 悔しいけど、あなたが教えてくれると、数学のテストの点数が上がる。

 でも、少し幼くてやんちゃだよね。
 そこが、本当に昔から変わらない。


 ドクドクドクドクドク。

 全身が心臓になった。
 スー、ハー、スー、ハー。
 子供みたいに、思い切り深呼吸して。


「好きだよっ!!」


 ああ……言っちゃった、言っちゃった。

 もう、おしまいかな。
 “幼馴染み”でいれた、最後の瞬間。


「オレも好きだよ」


♯♯♯♯


 璃々ちゃんと付き合っているという噂は、全くの嘘だったこと。
 璃々ちゃんにチョコレートを差し出されたけど、断ったこと。

 そして……昔から、わたしのことが、その……す、すき、だったこと。

 ゆっくりと説明してくれて……。
 悩んだ日々の疲れからか、ヘナヘナと崩れ落ちてしまった。

 ……それを大知に支えられるものだから、もう心臓が持たなくて。
 
 ああ……

「良かった……」

 そう呟くと、

「もう一度言ってやろうか?」

 なんてキザなことを言うもんだから、言い返してやった。

「なっ…なによ、どうせ恥ずかしくて言えないくせに!」

 そしたら、なんて返されたと思う?


「大好き」 


 ……もう、心臓が持たないって。

「好き、とは言わなかったよな?」

 って……本当に、やられたよ。


 ……だから、わたしも仕返ししたの。


「わたしだって、大知に負けないくらい……」

 息を吸って、

「大知のことが……」

 思い切り、

「 好 き だ か ら …… ! 」

 

23:匿名 hoge:2022/06/12(日) 14:33

同時期に也か何かの世界観イメージで書いたもの。そこまで生々しくはないだろうけど流血表現があって人が死ぬ。

*

«ヒマワリの彼方»

「……お前、ヒマワリ……好きだろう。ほら」

 そう言ってわたしの胸にヒマワリの束を押しつけた彼は、力なく笑った。
 腹部から溢れる紅いものが、私の膝に触れる。
 それは生温いようで、冷たかった。
 
「オレ……お前を守れた、よな。本望、だ……」

 嫌だ。いかないで。逝かないで!!

「やっ、やだぁっ……いっちゃ、だめ、だよぉ……っ!」

 視界が一気に歪んだ。
 なんで、なんで…!

 お腹の中からせり上がってきたあつい物が、目からポロポロとこぼれ落ちる。

「いやっ、いやだ、ねぇ……」

 行かないで……!
 ぎゅっと握りしめた、手と手。
 わたしの手も、だんだんと紅く染まる。

 わたしに会えない世界なんて。
 あなたに会えない世界なんて。
 
 嫌だ、嫌だよ。

「そんなとこ、行ったってっ…!つまらない、から、お願い」

 一緒に生きよう……!

 あなたのいない世界なんて――

「……愛してる、アカリ。お願いだ――」

 生きろ。

 彼の口がそう動いた。
 声は……どうだろう、分からない。

 ねえ……なんで? 
 手、冷たいよ……。

「うっ、ううっ、う……」

 うわああああああああっ!

 嫌だ、いかないで、行かないで、逝かないで!!
 泣き叫んだ、なんて。

 泣いているのか、叫んでいるのか、どちらでもないのか。わたしには分からない。

「嫌だ、嫌だよ。あなたのいない世界なんて、いらない!」

 絶え間なくこぼれるしずく。
 あなたの静かな顔に落ちた。

「嫌だ、嫌だ!!わたしもいく!連れてって、お願い!!」

 彼の手から滑り落ちた白刃を、自分に向けた。
 それには、倒した相手のものであろう血液がべっとりと付いている。

 ――生きろよ。幸せになれ……

 あなたのいない世界で、幸せになるなんて。
 できない。できないよ。

 あなたがいない世界で、わたしが幸せになれるなんて……!

 
 強い風が吹く。

 ヒマワリの花弁が舞った。

 それは風にのって、遥か彼方へ姿を消す。

 
 ――このヒマワリは、あなただね。

 ―――生きようか―――



 生温い。けれど、だんだんと冷たくなって行く、わたしの膝元の紅。

 紅く咲いた華。
 彼は、儚く散ってしまった。

24:匿名 hoge:2022/06/12(日) 14:38

同時期の(以下略
この夢は実際に見ました。大分脚色しているけれども。今思うと夢日記みたいな感じでちょっと怖い

*

<愛された“人形”>

 夢を見た。

 隣のクラスで同じ部活、部活動では役職が同じという関係でそこそこ話す男子のKくんが、私の頭を撫でてくれる。

 そこには部活が同じみんながいた。
 それでも夢の中の私は、なんの恥じらいもなくて。

 柔らかな視線を満足に受け取って、口元の優しい微笑みをとらえて。
 時に優しくサラサラと、時に悪戯にクシャクシャと、撫でられていた。

 ――撫でられている私は、ずっと黙っていて。

 なんの恥じらいも見せず、抵抗もせず。
 ただ、おとなしく撫でられていた。

 夢の中の私は、きっとお人形のように可愛いのだろう。

 
 そこは、プールだった。
 入水する前、プールサイドに腰かけて。

 私の太くて毛深い脚は、夢の中ではどうなのか……それは、考えないことにした。

 ウエストもキュッと引き締まって、柔らかな身体なのかな……と、想像してみる。

 プールを挟んだ向こう側で、誰かが物を投げて寄越していた。
 それを受け取りに、皆が入水する。

 Kくんが先に受け取るため、水中に飛び込んだ。

 難なく、無難に受け取って出水しようとしている。
 
 私の番になった。
 スッと飛び込む。

 久しぶりの水中。
 今までは水泳を習っていて。
 水は友達、自由な空間。

 受け取ったなにかを、無理矢理沈めてみる。
 それを取りに潜水して、深いところを、人の間を縫って泳いだ。

 気持ちいい……どこまでも行けそうな、開放的な空間。
 縛られていたなにかをほどかれたような。


 しばらくして、プールの隅の方で休んでいると、Kくんがやって来た。
 優しく頭を撫でられる。

 ホッとして……黙って撫でられる、ワタシ。

 
 あ――
 
 
 私じゃ、無いな。
 
 見た目は私。意識も私。それでも、私じゃない。
 私はあんな子じゃない。

 Kくんに愛される度に別人となって行く。
 Kくんに愛される。そうして……私の個性は―――

 愛されているのは“人形”である。


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