きみのための物語

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1:◆RI:2020/11/01(日) 20:49

自分のキャラの過去話、裏話
スレッドにかけない小説のような話をどこかにあげたい人はここに書き込んでみてください

正直スレ主が欲しかっただけですがご自由にどうぞ

221:◆Qc hoge:2022/09/29(木) 01:03

『無題』



今日も今日とて怠惰な生活を送っている女性、御伽華。教職をすごい早さで解雇されたのが原因ではあるが、何故解雇されたかについてはわからない。
手元には数年は遊んで暮らせる程の退職金だけが残っている。そして生憎、華は遊んで暮らすような性格をしていない。
···そこにあるのは、虚無。色も形も何もない虚無である。

「···先生?」
そんな彼女にも、辛うじて交流はあった。
「···石鎚さ······篝ちゃん。ノックくらいしてよ」
「事前に手紙送っておいた方が良かったですかね······?」
「いや···寝かけてたからむしろよかった。おかげで目が覚めたよ」
虚空から前触れなく現れた少女が、華の意識を急速に鮮明にさせていく。冗談が通じなかった所はご愛嬌である。
······彼女の名前は石鎚篝。未だに華を『先生』と呼んでいることからも、その親愛······尊敬の情がわかる。
「······で、今日は何しに?」
「···特に用事はないですが······家に一人になったので······」
躊躇はするものの、ここに来た理由を包み隠さず言う篝。特に何もないのに来るというあたり、完全に慣れている。
「そっか。···最近どう?」
「ぼちぼち······ですね。あ、そういえばこれ······この問題分からないんですけど······」
「ぼちぼちかぁ······それで質問?嬉しいなぁ。······これはこうやってこうすれば······」
座りながらテーブルにノートを置く篝と、そのノートを見て解答例を赤ペンで書いていく華。······何となく距離が近い感じがする。
「この式が共通してるでしょ?これを文字に置き換えてコンパクトにして、因数分解した後に文字を元の式に戻せば簡単で確実だよ。時間はかかるかもしれないけどね」
「なるほど······こんな感じに······ありがとうございます」
篝はそう言った後も、そのままその場所を動かない。会話はなかった。

「······そういえば、最近冴月ちゃん達はどうしてる?」
先に空気に耐えきれなくなったのは華の方だった。大人の威厳などあったものではない。
「どうって······最近来てないんですか?」
「来てないね。······まあ、こんなになってる私に会いに来てくれる人なんて······よっぽどの物好きだよ」
「······」
華が教鞭を取っていたのは1年程度である。しかも、転任ならともかく······謎の解雇によって教員生命が中断されたのだ。ただでさえそのような文化が薄いのに、生徒が会いに来よう筈もない。
······篝と、先程話題に上った冴月を除いては。
「······篝ちゃん、無理に会いに来なくてもいいからね······?」
華はのんびりと言った。そこまで軽い調子で言える事柄ではないのは重々承知している。しかし彼女はこの生活でかなりネガティブになっていた。······少なくとも篝にとっては、今にも消えてしまいそうに見えたに違いない。
「······いえ。私は来たいから来てるんです。話をしたいから手紙を送ったり会いに来てるんです。一緒にいたいから······」
「······」
そこまで言って口を噤んだ篝に対して、華の反応はというと······赤面していた。
「······そこまで言われると、嬉しいを通り越して······恥ずかしくなってくるんだけど」
「······っ」

直後、華に負けず劣らず顔を赤くした篝は、すぐに手紙に自分を添付させ帰っていった。
······後には、僅かにかき混ぜられた空気と、珍しく頭を抱える華が残されていた。


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